山の斜面に雪が積もっているからといって、すぐに雪崩が起こるわけではありません。長いあいだ斜面にとどまる雪もあれば、ある瞬間に一気に崩れ落ちる雪もあります。
結論からいうと、斜面の積雪には重力によって下へ滑ろうとする力が働いており、新たな降雪や融雪、雨、弱い雪の層の形成などで「支える力」より「滑ろうとする力」が強くなると、積雪がまとまって崩れ落ちるからです。
雪崩とは斜面の雪が重力で崩れ落ちる現象
気象庁は「なだれ」を、山などの斜面に積もった雪が重力によって崩れ落ちる現象としています。
防災科学技術研究所も、斜面上の積雪には下向きに滑ろうとする「駆動力」と、それを斜面にとどめる「支持力」が働き、この釣り合いが崩れたときに雪崩が発生すると説明しています。
斜面が急なほど雪は下へ滑ろうとする
積雪には常に重力が働いています。平らな場所ではその力の多くが地面へ垂直にかかりますが、斜面では重力の一部が斜面に沿って下向きに働きます。
そのため、斜面が急になるほど雪は下へ滑ろうとしやすくなります。国土交通省は、一般に急な斜面ほど雪崩が発生しやすく、特に30度以上の斜面では注意が必要としています。
積雪が斜面にとどまれるのは「支える力」があるから
雪が斜面に積もった直後からすべて滑り落ちないのは、地面との摩擦や雪の層同士の結びつき、積雪内部の強度などが雪を支えているからです。
長野地方気象台は、積雪が斜面にとどまるのは、地面の凹凸との摩擦や雪の沈降などによって力の釣り合いが保たれているためと説明しています。
新しく雪が大量に積もると重さが増える
短時間にまとまった雪が降ると、斜面上の積雪の重さが急に増えます。すると斜面方向へ滑ろうとする力も大きくなります。
防災科学技術研究所は、雪崩の駆動力が増える原因として、短時間のまとまった降雪や積雪上への荷重を挙げています。
雪が多く降ること自体が必ず雪崩を起こすわけではありませんが、すでに不安定な積雪の上へ新雪が急に積もると、支えられる限界を超えやすくなります。
雪の中に「弱い層」ができると表面の雪が滑りやすくなる
積雪は一枚の均一なかたまりではありません。雪が降った時期や気温、風、日射などが異なるため、性質の違う雪の層が重なっています。
その中に強度の低い「弱層」ができると、その上に積もった雪の重さを十分に支えられなくなることがあります。弱層が壊れると、その上の雪が板状にまとまって滑り出し、表層雪崩につながります。
風で運ばれた雪も斜面を不安定にする
強い風が吹くと、雪は風上側から削られて風下側へ運ばれます。その結果、一部の斜面だけに短時間で大量の雪が積もることがあります。
防災科学技術研究所も、強風で飛ばされた雪が大量にたまることを、雪崩の駆動力を増やす要因の一つに挙げています。
風によって雪が移動する仕組みについては、なぜ雪は強い風で舞い上がると吹雪や地ふぶきになるのか?で詳しく解説しています。
気温上昇や雨で雪を支える力が弱くなる
雪崩は雪が新たに増えたときだけ起こるわけではありません。気温が上がったり雨が降ったりすると、積雪の中に液体の水が増え、雪粒同士の結びつきや地面との摩擦が弱くなることがあります。
防災科学技術研究所は、融雪や降雨による雪粒子の融解、積雪底面の摩擦低下を、支持力が低下する原因として挙げています。
表層雪崩と全層雪崩は滑る場所が違う
雪崩には大きく分けて表層雪崩と全層雪崩があります。
表層雪崩は、積雪の内部にある弱い層などを境に、上部の雪だけが滑り落ちる雪崩です。一方、全層雪崩は、積雪全体が地面との境界付近から滑り落ちます。
防災科学技術研究所は、雪の内部で滑るものを表層雪崩、地表面で滑るものを全層雪崩と説明しています。
春に雪崩が増えることがあるのはなぜか
春は気温の変化が大きく、日射も強くなるため、積雪が融けやすくなります。融雪水が積雪内部や地面との境界に入り込むと、雪を支える力が弱くなることがあります。
長野地方気象台は、春に気温が短い周期で変動するため、積雪のある山沿いでは真冬だけでなく春にかけても雪崩が発生しやすいと説明しています。
雪崩は「たくさん雪が積もったら必ず起こる」わけではない
雪崩の発生は、積雪量だけでは決まりません。斜面の角度、雪の層の構造、雪質、風、気温、日射、雨、地表の状態などが複雑に組み合わさります。
気象庁も、個々の斜面で雪崩が起こるかどうかを気象条件だけから正確に予測することは難しいとしています。
同じ斜面でも雪の状態は時間とともに変わる
積もった雪は、時間がたつと沈み込み、雪粒の形や結びつきが変わります。晴れて日射を受けた後に再び雪が降ると、古い雪面が新雪との境界となり、弱い層になることもあります。
長野地方気象台は、積雪表面が日射、風、気温の影響で変化し、次の降雪時にはその面が弱い層となる場合があると説明しています。
雪の結晶から雪崩までには段階がある
雪崩の材料になる雪は、もともと雲の中でできた氷の結晶です。雪の結晶が地上に降り積もり、斜面上で何層にも重なることで積雪がつくられます。
雪そのものができる仕組みについては、なぜ雪は氷の結晶が成長してできるのか?で解説しています。
気温は雪崩の起こりやすさにも影響する
気温は雪が雨になるかどうかだけでなく、積雪の状態にも影響します。気温が上がれば融雪が進み、反対に大きく下がれば積雪内部で雪質が変化し、弱い層が形成されることもあります。
雨と雪の分かれ方については、なぜ気温によって雪になったり雨になったりするのか?で詳しく扱っています。
地形や植生も雪崩の起こりやすさを変える
雪崩はどの斜面でも同じように起こるわけではありません。斜面の角度だけでなく、地面の凹凸や植生も積雪を支える力に影響します。
国土交通省は、低木林やまばらな植生、ササや草に覆われた斜面では雪崩の危険が高くなると説明しています。
雪崩の本質は「力の釣り合いが崩れること」
雪崩を理解するときに重要なのは、「雪が多いから落ちる」と単純に考えないことです。
斜面の積雪には、常に下へ滑ろうとする重力と、それを支える力があります。雪が増えて滑ろうとする力が強くなったり、融雪や弱層の形成で支える力が弱くなったりして、両者のバランスが崩れた瞬間に雪崩が起こります。
まとめ
斜面に積もった雪が雪崩を起こすことがあるのは、積雪に斜面方向へ滑ろうとする重力が常に働いているからです。
短時間の大雪や風で運ばれた雪が積もれば滑ろうとする力が増え、弱層の形成、気温上昇、融雪、雨などで雪を支える力が弱くなれば、積雪は斜面にとどまれなくなります。
つまり雪崩は、「積雪を滑らせる力」と「積雪を支える力」の釣り合いが崩れたときに起こる現象です。

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