日射が直達光と散乱光に分かれ、地表へ届くエネルギーが変わるのは、太陽から来た光が大気を通る途中で、空気分子・水蒸気・雲・エーロゾルなどに反射・散乱・吸収されるからです。大気中でほとんど方向を変えずに太陽から直接地表へ届く成分が直達日射で、いったん大気中で散乱され、空のさまざまな方向から地表へ届く成分が散乱日射です。
地表が実際に受け取る太陽エネルギーは、この直達日射と散乱日射の組み合わせで決まります。さらに、地表面の向き、太陽高度、雲、エーロゾル、雪や水面などの反射率によって、どれだけ吸収されるかも変わります。日射を仕組みとして理解するには、「太陽から出た光がそのまま地面へ届く」と考えるのではなく、大気を通る途中で複数の経路へ分かれ、地表で再び吸収・反射されるエネルギーの流れとして見ることが重要です。
日射は、太陽から地球へ届く短波の放射エネルギー
日射とは、太陽から地球へ届く電磁波のエネルギーです。太陽からの放射には紫外線、可視光線、近赤外線などが含まれ、地球の気象や気候を動かす基本的なエネルギー源になります。
太陽から出た放射は、まず大気の上端へ到達します。しかし、そのすべてが地表まで届くわけではありません。NASAは、地球へ入ってくる太陽放射の一部が雲や大気、明るい地表面によって宇宙へ反射され、一部が大気に吸収され、残りが地表に吸収されると説明しています。
つまり、地表で観測される日射は、太陽が放ったエネルギーのうち、大気との相互作用を経て地上まで残った成分です。
大気をほぼまっすぐ通り抜けた光が「直達日射」になる
気象庁は、直達日射を太陽から地表面へ直接入射するエネルギーと定義しています。大気中で散乱されず、太陽の方向からほぼ一直線に届く成分です。
晴れた日に建物や人の影がはっきりできるのは、直達日射の方向性が強いからです。太陽から来る光が一方向から集中して届くため、物体がその光を遮ると明瞭な影ができます。
直達日射の強さは、大気中を通る距離や透明度によって変わります。空気中にエーロゾル、雲粒、水蒸気などが多ければ、途中で散乱・吸収される光が増え、直達成分は弱くなります。
大気で方向を変えられた光が「散乱日射」になる
太陽光が大気中の空気分子、エーロゾル、雲粒などにぶつかると、進む方向が変わることがあります。このように散乱され、太陽そのものの方向以外から地表へ届く成分が散乱日射です。
気象庁は、散乱日射を太陽面方向を除く天空の全方向から大気や雲で散乱されて地表へ入射する日射としています。NOAAも、地表へ届く太陽放射を直達成分と散乱成分に分け、散乱日射は分子・エーロゾル・雲などで方向を変えられた光だと説明しています。
曇りの日でも昼間が真っ暗にならないのは、直達日射が弱くなっても、雲や大気で散乱された光が空全体から地表へ届くためです。
直達日射は「太陽の方向から来る光」、散乱日射は「大気で方向を変えられて空全体から来る光」と考えると違いが分かりやすくなります。
地表が受ける「全天日射」は直達と散乱を合わせたもの
私たちが地表面で受け取る太陽エネルギーを考えるときは、直達日射だけでも散乱日射だけでも不十分です。
気象庁は、水平面が受ける全天日射を、直達日射の水平面成分と散乱日射を合わせたものとして扱っています。NOAAも、水平面で受ける総日射は、直達成分の水平面への寄与と散乱日射の和になると説明しています。
そのため、晴天時には直達日射の割合が大きくなりやすく、曇天時には直達日射が弱まって散乱日射の割合が大きくなります。ただし、雲が非常に厚ければ散乱光も含めて地表へ届く総エネルギー自体が小さくなります。
地表の加熱を考えるときに重要なのは、「直射日光があるか」だけではなく、空全体から届く散乱光も含めて、どれだけの太陽エネルギーが地表へ入っているかです。
雲は日射を弱めるだけでなく、直達と散乱の割合も変える
雲は太陽光を反射・散乱・吸収します。そのため、雲が増えると地表へ直接届く直達日射は一般に弱くなります。
一方で、雲の中で何度も散乱された光の一部は地表方向へ向かい、散乱日射として届きます。薄い雲では、直達日射がある程度残りながら散乱日射も増えることがあります。厚い雲では太陽からのエネルギーの多くが宇宙側へ反射されたり雲に吸収されたりするため、全天日射は大きく減ります。
NASAは、雲が地球へ入る太陽放射を宇宙へ反射する主要な要素の一つだと説明しています。つまり雲は、「光を遮る板」ではなく、太陽放射の進行方向と配分を大きく変える媒体です。
エーロゾルや空気分子も、日射の通り方を変える
晴れて雲がなくても、大気が完全に透明なわけではありません。空気分子による散乱があり、海塩粒子、砂じん、煙、硫酸塩などのエーロゾルも太陽光を散乱・吸収します。
NOAAは、大気中の分子・エーロゾル・雲が太陽放射を散乱し、その結果として散乱日射が生まれると説明しています。また、気象庁は直達日射の観測から大気の濁り具合に関する指標を求められるとしています。
空が青く見えることも、太陽光が空気分子によって散乱される現象と関係しています。地表へ届く日射は、目に見える雲だけでなく、大気中に含まれる微粒子や気体の状態にも左右されます。
吸収された日射は、大気や地表を暖めるエネルギーへ変わる
太陽光は散乱・反射されるだけでなく、大気や地表に吸収されます。NASAは、地球へ入る太陽エネルギーの一部が大気中の水蒸気、雲、エーロゾルなどに吸収され、多くは地表へ届いて陸や海に吸収されると説明しています。
光のエネルギーが物質に吸収されると、その物質を構成する分子や原子の運動エネルギーが増え、温度上昇につながります。
ただし、吸収された日射のすべてがすぐ地上気温を上げるわけではありません。地表へ入ったエネルギーは、地面や水を暖めるほか、蒸発、顕熱、地中への熱移動、赤外線放射などへ分配されます。この「日射を受け取った後」の気温応答はW00807で扱う内容で、W00817ではその前段階である「日射がどの経路で地表へ届くか」を中心に考えます。
太陽高度が低いと、直達日射は弱まりやすい
地表へ届く日射量は、太陽が空のどの高さにあるかでも変わります。太陽高度が低い朝夕や高緯度では、太陽光は大気中を斜めに長い距離通ることになります。
通過する大気の距離が長くなるほど、散乱・吸収される機会が増えるため、直達日射は弱まりやすくなります。さらに、斜めから入る光は同じエネルギーが広い地表面積へ分散するため、水平面が受け取る単位面積あたりのエネルギーも小さくなります。
正午ごろに日射が強く、朝夕に弱くなるのは、太陽そのものの出力が一日の中で大きく変わるからではなく、地表から見た太陽高度と大気中の通過経路が変わるためです。
地表へ届いた日射のすべてが吸収されるわけではない
大気を通り抜けて地表へ届いた太陽光も、そこで再び吸収と反射に分かれます。
NASAは、雪や氷のように明るい地表は太陽放射を多く反射し、暗い地表や海面などは相対的に多く吸収すると説明しています。この反射の割合を表す考え方がアルベドです。
地表が多く反射すれば、その場所に残る太陽エネルギーは少なくなります。逆に多く吸収すれば、地表の熱収支へ入るエネルギーが増えます。
したがって、同じ全天日射を受けても、雪原、森林、海、都市の舗装面では、実際に吸収されるエネルギーが同じとは限りません。
日射計は「どの方向から来た光か」を分けて測っている
日射の構造は、実際の観測方法にも表れています。気象庁では、直達日射は太陽方向から届く光だけを測る直達日射計で観測します。
散乱日射を測るときは、太陽から直接来る光を遮り、空のほかの方向から届く光だけを観測します。こうすることで、直達成分と散乱成分を別々に測定できます。
この観測を組み合わせることで、晴天・曇天・エーロゾルの多い日などに、地表へ届く太陽エネルギーがどの経路で変化したのかを詳しく調べることができます。
NOAAの地表放射観測でも、直達・散乱・総日射を別々に観測し、地表面の放射収支を把握しています。
日射の仕組みは「入射・散乱・吸収・地表での分配」で読める
太陽から地表へ届く日射の構造は、次の4段階で整理できます。
- 入射:太陽からの短波放射が大気上端へ到達する。
- 散乱・反射:雲、空気分子、エーロゾルなどによって光の方向が変わり、一部は宇宙へ戻り、一部は散乱日射として地表へ向かう。
- 吸収:大気中の水蒸気・雲・エーロゾルなどが一部の太陽放射を吸収し、残りが直達・散乱成分として地表へ届く。
- 地表での分配:地表へ届いた日射が反射と吸収に分かれ、吸収された分が地表の熱収支へ入る。
日射の本質は、太陽から地表へ一本の光がそのまま届くことではなく、大気中で直達・散乱・吸収・反射という複数の経路へ分かれ、その残りが地表のエネルギー入力になることです。
気温との関係を見るときも、「晴れているか曇っているか」だけでなく、直達日射がどれだけ残っているか、散乱日射がどれだけあるか、地表がどれだけ反射・吸収するかを見ると、なぜ同じ季節・同じ時刻でも地表へ届くエネルギーが変わるのかを理解しやすくなります。

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