日本では、冬より夏の方が地表付近の絶対湿度が高くなりやすい傾向があります。
大きな理由は、夏は気温が高く、水面や地表から蒸発できる水分が増え、さらに暖かく湿った空気が日本付近へ流れ込みやすいからです。
絶対湿度は「空気1m³あたりに含まれる水蒸気の質量」です。相対湿度のような割合ではなく、実際にどれだけ水蒸気があるかに近い量です。そのため、夏と冬で空気中の水蒸気量そのものが違えば、絶対湿度にも大きな季節差が現れます。
東京の観測では水蒸気量に大きな季節差がある
気象庁の1991〜2020年平年値を見ると、東京の平均蒸気圧は1月が4.5hPa、8月が26.2hPaです。
蒸気圧は空気中の水蒸気量を表す代表的な指標の一つです。夏の値が冬より大きいことは、実際の空気中の水蒸気量にも大きな季節差があることを示しています。
同じ資料では、1月の平均気温は5.4℃、8月は26.9℃です。気温と水蒸気量が季節とともに大きく変わっていることが分かります。
なぜ気温が高い季節ほど水蒸気量が増えやすいの?
水面から水が蒸発すると、液体の水が水蒸気として大気へ入ります。
気温や水面温度が高くなると、水分子が液体から飛び出しやすくなり、蒸発が盛んになります。
さらに、暖かい空気では飽和水蒸気圧が高くなります。つまり、凝結せず水蒸気として存在できる上限が高くなります。
NOAAも、大気が1℃暖まると、飽和できる水蒸気量はおよそ7%増えると説明しています。
このため夏は、海や湖、土壌、植物から供給された水蒸気を大気中に多く保持しやすくなります。
「暖かい空気は水蒸気を多く含める」とはどういう意味?
よく「暖かい空気は水蒸気を多く含める」と表現されますが、空気がスポンジのように水蒸気を吸い込んでいるわけではありません。
正確には、温度が高いほど飽和水蒸気圧が大きくなり、凝結せず気体のままで存在できる水蒸気の量が増えます。
そのため、海面などから十分な水分供給がある環境では、暖候期ほど実際の水蒸気量も増えやすくなります。
逆に冬は、気温が低いため飽和水蒸気圧が小さく、空気中に存在できる水蒸気量も少なくなりやすいのです。
日本の夏は水蒸気の供給源が多い
日本は海に囲まれています。
夏は海面温度も高くなり、周囲の海から大気へ水蒸気が供給されます。
陸上でも、土壌からの蒸発や植物からの蒸散によって水蒸気が大気へ加わります。
植物の活動が盛んな夏は、蒸散による水分供給も大きくなりやすくなります。
このように、夏は大気が水蒸気を保持しやすいだけでなく、海や陸からの水分供給そのものも活発になりやすい季節です。
梅雨や夏の「暖かく湿った空気」も絶対湿度を上げる
日本の夏は、局地的な蒸発だけでなく、遠くから運ばれてくる水蒸気の影響も受けます。
梅雨の時期には前線の南側に太平洋高気圧が張り出し、暖かく湿った空気が日本付近へ流れ込みます。
気象庁も、太平洋高気圧の縁を回る流れによって南から水蒸気が運ばれ、梅雨前線や大雨へ水蒸気が供給されることを説明しています。
このような水蒸気輸送があるため、日本の夏は地表近くの実際の水蒸気量が多くなりやすくなります。
冬はなぜ絶対湿度が低くなりやすいの?
冬は気温が低く、飽和水蒸気圧が小さくなります。
また、大陸から日本へ吹く季節風のもとの空気は冷たく乾燥しています。
日本海を渡る間に水蒸気を受け取るため日本海側では雪雲が発達しますが、太平洋側では山越え後の乾いた空気が流れ込みやすくなります。
さらに、冬は植物の蒸散も夏より小さくなりやすく、陸上からの水蒸気供給も減ります。
こうした条件が重なり、地表付近の絶対湿度は冬に低くなりやすくなります。
相対湿度が高い冬の日でも絶対湿度は低いことがある
ここが重要なポイントです。
冬の朝に相対湿度が80%あっても、夏の相対湿度60%の空気より実際の水蒸気量が少ないことがあります。
相対湿度は、その気温での飽和水蒸気量に対して何%の水蒸気があるかを示す割合だからです。
冬は飽和できる水蒸気量そのものが少ないため、高い相対湿度でも絶対湿度は小さいことがあります。
逆に夏は、相対湿度が冬より低くても、気温が高いため実際の水蒸気量は多い場合があります。
露点温度を見ると季節の水蒸気量が分かりやすい
露点温度は、空気中の水蒸気量を反映する指標です。
米国国立気象局は、露点が高いほど空気中の水蒸気量が多いと説明しています。
日本の夏に蒸し暑く感じる日には、露点温度も高くなりやすく、これは絶対湿度が高いことと対応します。
冬は露点温度が低くなる日が多く、実際の水蒸気量が少ないことを示します。
夏ならどこでも絶対湿度が高いの?
必ずしもそうではありません。
高山では気温が低く、水蒸気量も少なくなることがあります。
乾いた大陸性の空気が流れ込んだ日や、フェーン現象で乾燥した空気に覆われた場所では、夏でも絶対湿度が低くなることがあります。
また、同じ地域でも雨の前後、海風の侵入、風向の変化などによって水蒸気量は変わります。
「夏だから必ず高い」というより、日本の平地では季節平均として夏の方が高くなりやすい、と考えるのが適切です。
冬でも日本海側では水蒸気量が増えることがある
冬の季節風は、大陸を出た直後は冷たく乾いています。
しかし日本海を渡る間に海面から熱と水蒸気を受け取ります。
そのため日本海側の沿岸では、冬でも周囲より水蒸気量が多くなることがあります。
ただし、気温が低いため夏の暖かく湿った空気ほど大きな絶対湿度にはなりにくく、上昇・冷却によって雪や雨として水分を失うこともあります。
都市では季節差の出方も少し変わる
都市では、コンクリートやアスファルトが多く、植物や裸地が少ないため、蒸発散による水蒸気供給が郊外より少なくなることがあります。
気象庁も、都市域では植物減少による蒸発散の弱まりが水蒸気量の減少へ寄与する可能性を指摘しています。
そのため、同じ夏でも都市中心部と緑地の多い郊外では水蒸気量の分布が異なることがあります。
絶対湿度の季節差を考えるときのポイント
- 夏は気温が高く、飽和水蒸気圧が大きい
- 海面や地表からの蒸発が活発になりやすい
- 植物の蒸散による水蒸気供給も増えやすい
- 梅雨や夏は暖かく湿った空気が流れ込みやすい
- 冬は低温で飽和できる水蒸気量が少ない
- 冬の大陸性の空気は乾燥していることが多い
- 相対湿度が同じでも夏と冬では実際の水蒸気量が違う
まとめ
日本で冬より夏の方が地表付近の絶対湿度が高くなりやすいのは、夏は気温が高く、水蒸気が凝結せず存在できる上限が大きいうえ、海や地表からの蒸発、植物の蒸散、南からの暖かく湿った空気の流入によって水蒸気が多く供給されるからです。
気象庁の東京の平年値でも、平均蒸気圧は冬より夏に大きく、実際の水蒸気量に明瞭な季節差があります。
一方、冬は低温で水蒸気を多く保ちにくく、乾いた大陸性空気の影響も受けやすいため、絶対湿度は低くなりやすくなります。
絶対湿度の季節差を見るときは、相対湿度の数字だけでなく、気温、水蒸気の供給源、風による輸送を合わせて考えることが大切です。

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