夜空の星を見ていると、明るさが細かく変わったり、少し揺れているように見えたりします。この「瞬き」は、ほとんどの場合、星そのものが短い時間で点滅しているからではありません。星の光が地球の大気を通る途中で、温度や密度の異なる空気の層に次々と通され、進む向きや光の集まり方がわずかに変化するためです。
空気は完全に均一ではなく、風や対流によって常に揺らいでいます。そのため、遠い星から届く光もわずかに曲げられ続けます。私たちの目には、その変化が明るさや位置の細かな揺れとして見え、「星がキラキラ瞬いている」ように感じられます。
星が瞬く主な原因は地球の大気
星の光は、宇宙空間を長い距離進んだあと、最後に地球の大気を通って私たちの目に届きます。宇宙空間ではほぼまっすぐ進んできた光でも、大気の中では空気の状態が場所ごとに少しずつ違います。
空気は温度が変わると密度も変わり、密度が違えば光の曲がり方、つまり屈折率もわずかに変わります。風や上昇気流、下降気流によって温度や密度の違う空気のかたまりが動くと、星の光が通る経路も刻々と変わります。
大阪大学大学院理学研究科・理学部の解説では、温度差や密度差のある大気中にできる空気のかたまりが、凸レンズや凹レンズのように働き、星の光を集めたり広げたりすることで、明るさが強くなったり弱くなったりして見えると説明されています。
なぜわずかな大気の揺らぎで見え方が変わるのか
星は実際には太陽のような大きな天体ですが、地球から非常に遠いため、肉眼ではほとんど大きさを持たない「点」のように見えます。この点光源のような見え方が、瞬きを目立たせる理由の一つです。
星から来る光が大気の揺らぎで少し曲げられるだけでも、ある瞬間には目に届く光がやや多くなり、別の瞬間には少なくなります。また、光の到来方向もわずかに変わるため、星の位置が小刻みに動いているように感じることがあります。
このような大気による光の強さや位置の変動は、天文学では「シンチレーション」や「シーイング」と関係する現象として扱われます。国立天文台スペースイノベーションセンターも、大気の揺らぎによって光の波面が乱れるため、それをリアルタイムで測定して補正する補償光学の技術を紹介しています。
地平線に近い星ほど強く瞬きやすい
星の瞬き方は、空のどこに見えているかによっても変わります。頭の真上近くにある星の光は、比較的短い距離で大気を通過します。一方、地平線近くの星の光は、大気の中を斜めに長く進んでから目に届きます。
通過する大気の距離が長くなるほど、温度や密度の違う空気の層を多く通りやすくなります。そのため、光が受ける屈折の揺らぎも大きくなり、瞬きが目立ちやすくなります。NASAのStarChildでも、地平線近くの星ほど大気中を通る距離が長いため、より強く瞬いて見えやすいと説明されています。
実際の観察では、同じ星でも空高く昇ったときより、昇り始めや沈む前の低い位置にあるときのほうが激しく揺れて見えることがあります。
星の色まで変化して見えることがある
強く瞬く星をよく見ると、白っぽい光が一瞬赤く見えたり、青く見えたりすることがあります。これも大気の影響です。
光は波長によって屈折のされ方が少し異なります。大気の状態が短時間で変化すると、赤や青など異なる波長の光が目に届く割合もわずかに変わります。そのため、特に地平線近くの明るい星では、明るさだけでなく色まで細かく変化しているように見えることがあります。
ただし、星本来の色が数秒ごとに変わっているわけではありません。星自身の色は主に表面温度に関係し、瞬きによる色の変化は地球の大気を通過した結果として現れる見かけの現象です。
なぜ惑星は星ほど瞬かないのか
夜空では、恒星は強く瞬いて見えるのに、金星や木星などの惑星は比較的安定して見えることがあります。この違いは、地球から見た天体の見かけの大きさに関係します。
遠い恒星はほぼ一点の光源として見えます。そのため、一つの光の束が大気の揺らぎを受けると、その影響がそのまま明るさの変化として目立ちます。
一方、惑星は恒星よりはるかに地球に近く、望遠鏡では面積を持つ円盤として観察できます。肉眼では点に見えても、実際には多数の点光源が集まったような広がりを持っています。それぞれの場所から来る光が異なる大気の揺らぎを受けるため、一部が明るくなっても別の部分が暗くなるなどして変化が平均化されやすくなります。
大阪大学の解説でも、惑星は像が大きいため、それぞれの点光源の揺らぎが重なり合って平均化され、全体として明るさの変化が目立ちにくいと説明されています。もっとも、大気の状態が悪いときや惑星が地平線近くにあるときには、惑星でも多少揺らいで見えることがあります。
宇宙から見る星は地上ほど瞬かない
星の瞬きが地球の大気によるものなら、大気の外から見れば状況は大きく変わります。宇宙望遠鏡は地球大気の外側から観測するため、地上望遠鏡のような大気の揺らぎの影響をほとんど受けません。
そのため、宇宙望遠鏡で得られる星像は、地上観測よりも安定しやすくなります。星そのものの光が本当に変化している場合は別ですが、地上で肉眼観察するときに見える短時間の細かな瞬きの多くは、大気を通過することで生まれています。
このことからも、星の瞬きは「星の性質」だけではなく、「地球からどう観測しているか」によって生じる現象だと分かります。
瞬きは天体観測では困ることもある
肉眼で見る星の瞬きは美しい現象ですが、天文学者にとっては観測を難しくする原因にもなります。大気の揺らぎによって星の像がぼやけたり揺れたりすると、望遠鏡の性能が高くても細かな構造を見分けにくくなるからです。
ESOは、地球大気の乱流が星の光をゆがめ、星を瞬かせると同時に、天体画像の鮮明さを低下させると説明しています。そこで大型望遠鏡では、「補償光学」と呼ばれる技術が使われます。
補償光学では、星やレーザーで作った人工星の光が大気によってどのように乱されたかを短時間ごとに測定し、その乱れを打ち消すように鏡の形を細かく変えます。これによって、地上からでも大気の影響を減らし、宇宙望遠鏡に近い鋭い画像を得ようとします。
星が本当に明るさを変える場合もある
「星が瞬くのは大気のせい」と説明すると、すべての明るさの変化が見かけだけのように思えるかもしれません。しかし、星自身の明るさが実際に変化する場合もあります。
たとえば変光星の中には、星が膨張・収縮を繰り返すことで明るさが周期的に変わるものがあります。また、連星の一方がもう一方の前を通ることで、地球から見える光が周期的に減る場合もあります。
こうした変化は、通常の瞬きより長い時間スケールで規則的に起こることが多く、複数回の観測や測光によって調べられます。したがって、「数秒ごとに細かくキラキラする現象」と「星そのものが明るさを変える現象」は区別する必要があります。
瞬き方を見ると大気の状態も分かる
星の瞬きの強さは毎日同じではありません。大気が安定している夜には星像の揺れが小さく、逆に上空の風や温度差による乱れが大きい夜には、瞬きが強く感じられます。
天文学では、星像がどれくらい大気によってぼやけるかを「シーイング」という指標で評価します。大型天文台が高い山や乾燥した地域に建てられる理由の一つは、暗い空だけでなく、できるだけ安定した大気を得るためです。
瞬きは単なる目の錯覚ではなく、星の光が通ってきた大気の状態を反映する現象でもあります。星を眺めるときには、星だけでなく、その手前にある地球の空気まで見ているともいえます。
まとめ
星が夜空で瞬いて見えるのは、星の光が地球の大気を通過するとき、温度や密度の異なる空気によって進む向きや光の強さが絶えず変化するためです。
- 多くの星は短時間に点滅しているわけではない
- 大気の温度差・密度差による屈折率の揺らぎが星光を乱す
- 恒星は点光源に近く見えるため、大気の影響が目立ちやすい
- 地平線近くでは光が長い距離の大気を通るため、瞬きが強くなりやすい
- 惑星は見かけの広がりがあるため、揺らぎが平均化されて瞬きが目立ちにくい
- 天文学では補償光学を使って大気の揺らぎを補正する
星の瞬きは、遠い宇宙の星と私たちの間にある地球の大気が生み出す現象です。キラキラする星を見たとき、その光が何年、何十年、あるいはそれ以上の時間をかけて宇宙を進み、最後のわずかな距離で地球の大気に揺さぶられていると考えると、夜空の見え方をより深く理解できます。
参考資料
- 大阪大学 大学院理学研究科・理学部「Q&Aコーナー」
- 国立天文台スペースイノベーションセンター「大気の揺らぎを補正する補償光学」
- NASA StarChild「Why do stars twinkle?」
- ESO「Twinkle, twinkle little star, but not on our watch」

コメント