植物の根の深さは、植えた直後からずっと同じではありません。発芽したばかりの植物では根系は浅く、その後の生育にともなって下方へ広がります。また、雨が続く時期と乾燥期、やわらかい土と硬い土、暖かい時期と低温期では、根が伸びやすい深さや根が多く分布する層が変わります。
植物の根の深さが季節や生育条件によって変わるのは、根系が成長とともに新しい土層へ広がる一方、土壌水分、地温、土の硬さ、酸素、養分などが根の伸長を促したり制限したりするからです。ただし、すでに伸びた太い根が季節ごとに上下へ移動するわけではありません。主に新しい根がどこまで伸びるか、どの深さで細根が増減するかが変化することで、根系全体の「深さ」が変わって見えます。
根の深さにはいくつかの意味がある
「根の深さ」といっても、何を測るかで意味が異なります。最も深く到達した一本の根の深さを指す場合もあれば、根の大部分が分布する深さや、水を多く吸収している深さを指す場合もあります。
一本だけ深く伸びた根があっても、根系の大部分が浅い層に集中していることがあります。逆に、最大到達深度が大きく変わらなくても、深い層の細根が増えれば、その植物が実際に利用する土壌の範囲は深くなります。
そのため季節変化を考えるときは、最大根深だけでなく、深さごとの根長密度や細根量、吸水場所なども見る必要があります。
生育初期は浅く、成長とともに根系は深くなる
発芽した直後の植物では、根はまだ短く、表層付近にしか存在しません。その後、主根や種子根、冠根などが伸び、側根も増えることで、根系は横方向と下方向の両方へ拡大します。
トウモロコシの根系を生育期間中に追跡した日本の研究では、生育初期には根長密度の高い領域が株元から水平方向へ急速に広がり、その後、播種から時間がたつにつれて株直下の深い方向へも拡大しました。これは、根系の深さが生育段階とともに変化することを示す代表的な例です。
したがって、若い植物と成長した植物の根の深さを比べれば、一般には成長した植物の方が深くまで根を伸ばしていることが多くなります。ただし、土壌条件が悪い場合には、成長しても深根化できないことがあります。
季節変化の一部は植物の成長段階によるもの
一年生植物では、春に発芽して夏に大きくなるというように、季節と生育段階が重なります。そのため「夏になったから根が深くなった」ように見えても、実際には植物が成長して根系を拡大したことが主な理由の場合があります。
多年生植物でも、新しい根が盛んに伸びる季節と、根の伸長が鈍る季節があります。地温や水分が適した時期には新根が増え、低温期や強い乾燥期には新根の伸長が弱くなることがあります。
つまり根の深さの季節変化には、「季節そのもの」の効果と、「その季節に植物がどの生育段階にあるか」という効果が重なっています。
表土が乾くと深い層へ根を伸ばすことがある
根の深さを大きく変える条件の一つが土壌水分です。晴天が続くと、地表に近い土ほど蒸発や植物の吸水によって乾きやすくなります。一方、深い土層には水が残っている場合があります。
そのような環境では、深い層まで根を伸ばせる植物は、表土が乾いた後も水を利用できます。水ストレスに対する根系形態をまとめたメタ解析でも、乾燥条件では根の深さや根冠比など複数の形質が変化し、植物が水不足へ適応することが示されています。
ただし、乾燥すれば必ず深根化するわけではありません。乾燥が強すぎれば根の細胞伸長そのものが止まり、根の成長が抑えられます。また、深い層にも水がなければ、根を深く伸ばす利益は小さくなります。
雨の多い時期には浅い層の根が重要になることもある
雨が頻繁に降って表層に十分な水がある時期には、浅い根でも水を得やすくなります。特に短い降雨が繰り返される環境では、地表付近の水を素早く吸収できる細根が重要です。
植物は深い根だけを残して浅い根を捨てるわけではありません。多くの場合、浅い層と深い層の両方に根を配置し、その時々で水のある土層から吸収量を変えます。
そのため、ある季節に「根が浅くなった」ように見える場合でも、最大根深が縮んだのではなく、浅い層で新しい細根が増え、根量の中心が表層へ移った可能性があります。
地温が根の伸びる速さを変える
根の成長には細胞分裂と細胞伸長が必要で、その速度は温度の影響を受けます。地温が低すぎると代謝が遅くなり、根の伸長速度も低下します。
水稲とイヌビエを異なる地温で育てた研究では、根系の発達は地温によって大きく変化し、特に低温条件では水稲の根の伸長が強く抑えられました。植物種によって適温が異なるため、同じ季節でも根が深く伸びる程度には種差があります。
春先の低温土壌では地上部が日射を受けても根の伸びが遅く、地温が上がるにつれて根系が急速に拡大することがあります。逆に高温すぎる土壌では呼吸消費や障害によって根の成長が抑えられる場合があります。
土が硬いと根は深く進みにくい
根が下へ伸びようとしても、硬く締まった土層があれば物理的な抵抗を受けます。畑では耕盤、造成地では締め固められた盛土などが、深根化を妨げる原因になります。
森林総合研究所のクロマツを対象にした研究では、生育基盤の土壌硬度が根の発達に影響し、深耕によって硬さを改善することが根の発達につながることが検討されています。
このため、同じ植物でも、やわらかく深い土では根が深く伸びやすい一方、硬い層が浅い場所にあると、その上で根が横方向へ広がることがあります。生育期間が長くても、物理的な壁を突破できなければ最大根深は大きくなりません。
地下水位が高いと根は浅くなることがある
深い土に水が多ければ根も深くなるように思えますが、水が多すぎる場合は逆です。地下水位が高く土壌の空隙が水で満たされると、根が呼吸に使える酸素が少なくなります。
世界各地の根の深さを解析した研究では、水はけのよい場所では降水が浸透する深さと根の深さが対応する一方、地下水位が高く過湿な低地では、酸素不足を避けるため根が浅い層にとどまりやすいことが示されています。
つまり、水が深い場所にあることと、根が深く伸びられることは同じではありません。水分と酸素の両方が根の成長に適した範囲にあることが必要です。
養分の分布も根の深さを変える
窒素やリンなどの養分も土壌中に均一に分布しているわけではありません。落ち葉や肥料、有機物が多い表層に養分が集中することもあります。
表層に養分が豊富で水分も十分なら、浅い層に細根や側根を多く配置することが効率的です。一方、深層に利用できる窒素や水がある場合には、根が深く伸びる利益が大きくなります。
植物は水分と養分の両方を獲得する必要があるため、根の深さは水だけでなく、複数の資源がどの深さにあるかによって決まります。
根の年齢と細根の寿命も分布を変える
根系は、いったん完成したらそのまま残る構造ではありません。細い根は新しく生まれ、一定期間働いた後に枯れ、別の場所に新しい根がつくられます。
そのため、季節によって深さごとの細根量が変化します。春や雨期に表層で新しい細根が増える植物もあれば、乾燥期に深い層の根をより長く維持する植物もあります。
最大根深が同じでも、深さ20cmに根が多い時期と、60cm付近の根が増える時期では、根系の機能は異なります。「根の深さの変化」には、根の到達距離だけでなく、各層の根量の入れ替わりも含まれます。
深さの変化を整理すると
| 条件 | 根の深さへの主な影響 |
|---|---|
| 生育段階 | 成長にともなって根系が下方へ広がり、最大到達深度が増えることが多い |
| 表層の乾燥 | 深層に水が残っていれば、より深い根の成長や利用が有利になる |
| 十分な降雨 | 浅い層でも水を得やすく、表層の細根が増えることがある |
| 地温 | 低温や高温で根の伸長が遅くなり、深根化の速度が変わる |
| 土の硬さ | 硬い層が物理的な壁となり、根が深く進むのを妨げる |
| 地下水位・過湿 | 酸素不足の深層を避け、根が浅く分布することがある |
| 養分分布 | 養分の多い土層で側根や細根が増え、根量の中心が変わる |
「根が季節で浅くなる」とは限らない
季節によって根の分布が浅い側へ移ったように見えても、すでに伸びた深い構造根が地上方向へ戻るわけではありません。多くの場合、深い根の成長が止まる一方で浅い層に新しい細根が増えたり、逆に浅い細根が枯れて深い根の割合が高くなったりしています。
また、一年生作物では生育期間の前半に最大根深が増え、後半には深さの増加が止まって、既存の根の老化や細根量の変化が中心になる場合があります。
したがって、季節ごとの根系を比較するときには、「最大到達深度」「深さごとの根量」「新根の発生」「吸水している深さ」を区別することが重要です。
同じ植物でも場所によって根の深さが違う理由
同じ種でも、土壌と水の条件が異なれば根の深さは大きく変わります。世界規模の解析では、根の深さは植物種だけでなく、降水の浸透深度や地下水位など地域の水文条件にも強く関係していました。
これは、根の深さが遺伝的に完全に固定された数字ではないことを意味します。植物には根系の基本的な特徴がありますが、その範囲内で環境に応じて根の分布を変える可塑性があります。
季節や生育条件による変化も、この可塑性の一部です。植物は地下環境の変化に応じて、新しい根を伸ばす方向や深さを調整しています。
まとめ
植物の根の深さが季節や生育条件によって変わるのは、根系が生育とともに拡大するだけでなく、土壌水分、地温、土の硬さ、酸素、養分などによって、新しい根が伸びられる深さや細根が増える場所が変化するからです。
若い植物では根は浅く、成長とともに深い層へ広がることが一般的です。表層が乾燥し深層に水が残る場合には深い根が有利になりますが、過湿や硬い土層がある場合には深根化が妨げられます。雨が多い時期には、浅い層の新しい細根が増えることもあります。
つまり、根の深さは一度決まって固定される値ではありません。ただし、根全体が季節ごとに上下へ動くのでもありません。新根の成長、細根の増減、利用する土層の変化が積み重なることで、植物の根系は季節や生育条件に応じて立体的に変わっていくのです。
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参考資料
- 日本作物学会紀事「トウモロコシ根系領域の発達過程」
- 雑草研究「水稲およびイヌビエ幼植物の根系の発達におよぼす生育環境の影響」
- 森林総合研究所研究報告「海岸林の生育基盤盛土への深耕が土壌の硬さとクロマツの根の発達に与える効果」
- Hydrologic regulation of plant rooting depth

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