家庭の照明やコンセント、電子回路では、複数の部品を「並列」につなぐことがよくあります。並列回路では、各枝に同じ電圧がかかる一方、電流は分岐点で枝分かれします。
この性質は暗記するだけのルールではありません。各枝が同じ二つの接続点につながっていること、分岐点で電荷が保存されること、そして各枝でオームの法則が成り立つことから自然に導かれます。
では、なぜ並列回路では電圧が同じで、電流が分かれるのでしょうか。結論から言えば、各枝の両端が共通の二点につながっているため電位差が等しくなり、分岐点では電荷が消えたり生まれたりしないため、流れ込んだ電流が各枝へ分配されるからです。
並列回路とは「同じ二点の間に複数の道がある回路」
抵抗R1とR2の両端が、それぞれ同じ接続点AとBにつながっているとき、この二つの抵抗は並列接続されています。
直列回路では電流の通り道が一本でしたが、並列回路ではAからBへ進む経路が複数あります。
金沢工業大学の教材でも、並列接続された抵抗では各抵抗の両端に同じ電圧Vがかかり、全体の電流Iが各枝の電流I1、I2へ分かれるとして合成抵抗を導いています。
並列回路の性質を理解する出発点は、「部品が図で横に並んでいるか」ではなく、同じ二つの節点につながっているかを見ることです。
なぜ各枝の電圧は同じになるのか
電圧は二点間の電位差です。
並列につながれた各枝は、どれも同じ点Aから始まり、同じ点Bで終わります。したがって各枝の両端電圧はすべて、
V=VA-VB
です。
抵抗R1の両端もAとB、抵抗R2の両端もAとBなら、
V1=V2=V
となります。
OpenStaxも、並列抵抗では各抵抗に同じ電位差がかかることを示しています。
つまり「並列だから電圧が同じ」というより、「同じ二点に接続されているから電圧が同じ」と考える方が本質に近い説明です。
電流はなぜ分岐点で分かれるのか
電流は、単位時間あたりに通過する電荷量です。
分岐点へ1秒あたり10 Cの電荷が流れ込んできたとします。もし二つの枝へ流れ出す電荷が合計8 Cしかなければ、差の2 Cが毎秒分岐点にたまり続けることになります。
定常状態では、このような電荷の蓄積は続きません。
そのため、分岐点に流れ込む電流の合計と、流れ出す電流の合計は等しくなります。
I=I1+I2+…
これがキルヒホッフの第1法則、接点則です。OpenStaxは、この法則が電荷保存そのものを回路へ適用したものだと説明しています。
枝ごとの電流は何で決まるのか
各枝に同じ電圧Vがかかっていても、抵抗値が違えば流れる電流は異なります。
オームの法則から、
I1=V/R1
I2=V/R2
です。
したがって、同じ電圧なら抵抗が小さい枝ほど大きな電流が流れます。
近畿大学の「分流」の教材でも、並列接続では両抵抗の電圧が等しく、電流は各抵抗値に応じて分かれることが示されています。
たとえば12 Vの電源に12 Ωと6 Ωの抵抗を並列につなげば、12 Ωの枝には1 A、6 Ωの枝には2 Aが流れ、電源からは合計3 Aが流れます。
なぜ並列合成抵抗の逆数を足すのか
二つの抵抗R1、R2を並列につないだ回路を、一つの合成抵抗Rpへ置き換えることを考えます。
各枝には同じ電圧Vがかかるので、
I1=V/R1
I2=V/R2
です。
分岐前の総電流は、
I=I1+I2
なので、
I=V/R1+V/R2=V(1/R1+1/R2)
となります。
全体を一つの抵抗RpとみなすとI=V/Rpですから、
1/Rp=1/R1+1/R2
が得られます。
金沢工業大学とOpenStaxでも、同じ電圧と電流の加法則から並列合成抵抗の式を導いています。
なぜ合成抵抗は一番小さい抵抗よりさらに小さくなるのか
並列接続では、電流が通れる経路を追加します。
同じ電圧をかけたとき、新しい枝が増えれば、その枝にも電流が流れます。つまり電源から流れる総電流は増えます。
オームの法則R=V/Iで考えると、電圧Vが同じまま総電流Iが増えるなら、回路全体として見た抵抗Rは小さくなります。
そのため並列合成抵抗は、並列につないだ個々の抵抗のうち最も小さいものよりもさらに小さくなります。
これは「電流が流れる道が増えるほど、回路全体としては流れやすくなる」と理解できます。
同じ抵抗を並列につなぐとどうなるのか
同じ抵抗Rを2本並列につなぐと、
1/Rp=1/R+1/R=2/R
なので、
Rp=R/2
となります。
3本ならR/3です。
同じ抵抗の枝を増やすほど、同じ電圧で流せる総電流が増えるため、全体の合成抵抗は小さくなります。
この関係は、大電流を扱うために複数の同等経路へ電流を分担させる設計の基礎にもつながります。
電流は「抵抗が小さい道だけ」を流れるわけではない
「電気は抵抗の小さい方だけを流れる」と言われることがありますが、正確ではありません。
並列回路では、抵抗が有限で電圧がかかっている枝には、それぞれ電流が流れます。
抵抗が小さい枝には大きな電流が流れ、抵抗が大きい枝には小さな電流が流れます。
たとえば1 Ωと100 Ωの枝を同じ電圧につなげれば、1 Ω側には100 Ω側の100倍の電流が流れますが、100 Ω側の電流が0になるわけではありません。
並列回路の分流は、「一番楽な道だけを選ぶ」のではなく、各枝の抵抗やインピーダンスに応じて同時に分配されます。
家庭の電気機器が並列につながるのはなぜか
家庭の照明やコンセントにつながる機器は、基本的に並列接続として考えられます。
並列なら各機器が同じ二点、つまり電源の二線間につながるため、各機器にほぼ同じ電源電圧を与えられます。
また、一つの機器のスイッチを切ってその枝を開いても、他の枝は電源につながったままです。
もし家庭の機器をすべて直列につないだら、電源電圧が機器ごとに分かれ、一台を切るだけで全体の電流が止まる可能性があります。
並列接続は、各機器へ規定電圧を与え、独立して動作させるために適しています。
機器を増やすと総電流が増えるのはなぜか
並列回路に新しい機器を追加すると、新しい電流経路が一つ増えます。
その枝にも電源電圧がかかるため、その機器の抵抗や特性に応じた電流が流れます。
分岐前の総電流は各枝電流の和なので、機器を追加すれば総電流は増えます。
家庭で高消費電力の機器を同時に多く使うとブレーカーが動作することがあるのは、各機器の電流が幹線側で合流し、回路の許容電流を超える場合があるためです。
並列回路では、各機器が独立に動ける一方、電源側はすべての枝の合計電流を供給する必要があります。
一つの枝が切れても他の枝が動くのはなぜか
並列回路では、各枝が電源の同じ二点へ別々の経路で接続されています。
そのため、一つの枝が断線しても、他の枝の経路が閉じていれば電流は流れ続けます。
複数の照明を並列につなげば、一つの電球が切れても他の電球は点灯できます。
ただし、電源や分岐前の共通配線が切れれば、すべての枝が停止します。
並列接続は枝同士を独立させやすい構造ですが、共通部分まで独立しているわけではありません。
並列回路では電力も枝ごとに分かれる
各枝に同じ電圧Vがかかるとき、枝の電力はP=VIで表されます。
抵抗負荷なら、
P=V²/R
なので、同じ電圧では抵抗が小さい枝ほど大きな電流と大きな電力を受け取ります。
回路全体で電源が供給する電力は、理想的には各枝で消費される電力の合計です。
つまり並列回路では「電圧は共通」「電流と電力は枝ごとに分配」と整理できます。
分流器は並列回路の性質を利用する
並列回路では、抵抗値によって電流の分かれ方を決められます。
この性質は、大きな電流を測る分流器などに利用されます。
計器に流したい電流よりも大きな電流を測る場合、低い抵抗を計器と並列につなぎ、大部分の電流をその低抵抗側へ流します。
近畿大学の分流回路の説明でも、二つの並列抵抗で電流が抵抗値に応じて分割される関係が示されています。
並列回路は、単に複数の負荷をつなぐ方法ではなく、電流を意図的に分配する設計にも使われます。
電圧計が並列接続されるのはなぜか
電圧は二点間の電位差なので、電圧計は測りたい部品と同じ二点へ接続します。
つまり電圧計は測定対象と並列につながります。
ただし、電圧計に大きな電流が流れると元の回路状態を変えてしまいます。そのため理想的な電圧計の抵抗は無限大と考え、実際の電圧計も高い入力抵抗を持つように設計されます。
並列接続の「同じ二点なら同じ電圧」という性質そのものが、電圧測定の原理に使われています。
実際の配線では各枝の電圧が完全に同じとは限らない
教科書の理想回路では、導線の抵抗を0として扱います。その場合、同じ節点に属する場所はすべて完全に同じ電位です。
しかし実際の配線には小さい抵抗があります。
大きな電流が流れると共通配線にも電圧降下が生じるため、遠い負荷や大電流負荷では、枝ごとの端子電圧にわずかな差が出ることがあります。
車載回路や低電圧・大電流回路では、数十ミリオームの配線抵抗や接触抵抗でも問題になることがあります。
「並列なら電圧が同じ」という基本則は、同じ節点を理想導線で結んだモデルで成り立つ関係です。
交流回路でも基本構造は同じ
交流回路でも、同じ二点間につながった枝には同じ瞬時電圧がかかります。
ただし、コイルやコンデンサを含む場合は、枝ごとの電流は単純な抵抗Rだけでなく、交流に対する流れにくさであるインピーダンスによって決まります。
さらに電圧と電流の位相がずれる場合もあります。
それでも、分岐点での電流保存と、同じ二点間で電圧が共通になるという並列回路の基本構造は変わりません。
並列回路を理解すると複雑な回路の見方が変わる
実際の回路では、直列と並列が組み合わされています。
そのような回路でも、「どの部品が同じ二点につながっているか」を探せば、並列部分を見つけられます。
並列部分は合成抵抗へ置き換え、その後に直列部分と組み合わせることで回路を単純化できます。
さらに複雑な回路では、キルヒホッフの接点則と電圧則を使って各枝の電流や電圧を求めます。
OpenStaxでも、キルヒホッフの接点則を電荷保存、電圧則をエネルギー保存として説明し、複雑な回路解析へつなげています。
まとめ
並列回路で電圧が同じで、電流が分かれるのは、各枝が同じ二つの接続点につながっているため両端の電位差が等しく、分岐点では電荷保存によって流れ込む電流と流れ出す電流の合計が等しくなるからです。
各枝の電流は同じとは限らず、オーム性の抵抗ならI=V/Rによって決まります。抵抗が小さい枝ほど大きな電流が流れます。
また、枝を増やすと同じ電圧で流れる総電流が増えるため、並列合成抵抗は小さくなります。この性質が家庭配線、分流器、電圧測定などに利用されています。
並列回路を見るときは、「同じ二点につながっているか」「分岐点で電流がどう保存されるか」「各枝の抵抗で電流がどう決まるか」の三点を押さえると、公式を暗記せずに仕組みを理解できます。

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