飲み物には、透明、黄色、緑、赤、紫、茶色、白などさまざまな色があります。果汁は果物らしい色を示し、緑茶は黄緑色、紅茶は赤褐色、牛乳は白く見えます。
これらの色は、単に「色のついた成分が入っている」からだけではありません。飲み物に含まれる色素や反応生成物が特定の波長の光を吸収し、残った光が目に届くことで色として見えます。また、乳飲料のように微粒子が光を散乱することで白っぽく見える飲み物もあります。
さらに、同じ飲み物でもpH、酸素、光、温度、保存時間、加熱、発酵などによって色が変わります。つまり飲み物の色は、成分そのものの色と、加工・保存中に成分が変化して生じる色の両方からできています。
そもそも、なぜ液体に色が見えるの?
成分が特定の光を吸収するから
目に見える光は、波長によって赤、橙、黄、緑、青、紫などに分けられます。飲み物に含まれる分子が特定の波長の光を吸収すると、吸収されずに透過・反射した光が目に届きます。
たとえば、青や緑に近い光を強く吸収する成分が多ければ、残った赤系の光が目に届きやすくなり、飲み物は赤や橙に見えます。
色素分子がどの波長を吸収するかは、分子中の電子の状態や化学構造によって決まります。そのため、化学構造が少し変わるだけでも吸収する波長が変わり、見える色も変化します。
濃度が高いほど色が濃く見えやすい
同じ色素を含む液体では、一般に色素濃度が高いほど光の吸収量が増え、色が濃く見えます。
お茶を薄く入れれば淡い色になり、茶葉を多くしたり長く抽出したりすれば濃く見えやすくなるのは、この影響があります。
ただし、実際の飲み物では複数の色素や微粒子が共存しているため、単純に「濃度が2倍なら見た目も2倍濃い」とは限りません。
果汁の赤・紫・青っぽい色は何から生まれるの?
アントシアニンが大きく関係する
ブドウ、ベリー類、紫色の野菜などには、アントシアニンという水溶性色素が含まれています。
アントシアニンは赤から紫、青に近い色まで幅広い色調を示します。水に溶けやすいため、果汁や果実飲料の色に強く影響します。
海外の食品色素レビューでも、アントシアニンは果物や野菜に多い代表的な水溶性色素であり、飲料を含む食品の赤紫色をつくる重要な成分として整理されています。
同じアントシアニンでもpHで色が変わる
アントシアニンの特徴は、pHによって分子構造が変わり、見える色も変化することです。
酸性が強い条件では赤色系になりやすく、pHが高くなるにつれて紫や青に近い色調を示す場合があります。
そのため、同じ果実由来の色素を使っても、酸味の強い飲料と中性に近い飲料では色調が異なることがあります。飲料にクエン酸などを加えることが、味だけでなく色の安定性にも関係する場合があります。
緑色の飲み物は何で緑に見えるの?
クロロフィルが緑色をつくる
抹茶や一部の緑色飲料では、クロロフィルが緑色の重要な色素です。
クロロフィルは赤色や青色付近の光を強く吸収し、緑色付近の光を比較的多く残すため、私たちの目には緑に見えます。
ただし、クロロフィルは光、酸、熱などの影響を受けやすい色素です。加工や保存条件によって分解や構造変化が起こると、鮮やかな緑が弱まり、黄緑色や褐色方向へ変化することがあります。
2024年の日本食品科学工学会大会報告でも、緑茶溶液に光を当てるとクロロフィルの分解やカテキン類の変化が起こり、色調が変化することが示されています。
オレンジ色や黄色の飲み物は何で色づくの?
カロテノイドが関係する
オレンジ、みかん、マンゴー、にんじんなどの黄〜橙色には、カロテノイドという色素群が関係しています。
β-カロテン、ルテインなどは代表的なカロテノイドです。カロテノイドはアントシアニンとは異なり、水に溶けにくく、油脂や微細な粒子として飲料中に分散している場合があります。
そのため、カロテノイドを含む飲料では、色素の量だけでなく、乳化や分散状態も見た目の色に影響します。
自然由来食品色素のレビューでも、カロテノイドは黄色・橙色をつくる代表的な色素として飲料へ利用されています。
紅茶やコーヒーの茶色は最初からある色なの?
一部は原料由来ですが、加工中の反応によって新しく生じる色も大きく関係しています。
紅茶ではカテキンの酸化で色素が生じる
緑茶と紅茶は同じチャノキの葉から作られますが、加工中の酸化の進め方が異なります。
紅茶では、茶葉を揉むことで細胞が壊れ、カテキン類と酸化酵素が接触します。カテキンの酸化・重合によってテアフラビンやテアルビジンなどが形成され、黄橙色〜赤褐色の水色に関係します。
日本の解説「緑茶カテキンの酸化と紅茶色素の生成」でも、カテキンの酸化が紅茶色素形成に重要であることが整理されています。
つまり紅茶の色は、茶葉にもともと完成した状態で含まれていた色素だけではなく、加工中の酸化反応によって作られた色でもあります。
コーヒーでは焙煎による褐色物質が関係する
コーヒー豆は焙煎によって大きく色が変わります。加熱中には、糖とアミノ酸の反応などが進み、褐色の高分子成分やさまざまな反応生成物が生まれます。
抽出したコーヒーの濃い褐色は、こうした焙煎中に生じた成分が湯へ溶け出すことで見える色です。
そのため、浅煎りと深煎りでは、同じコーヒー豆でも液色が大きく異なります。
緑茶が時間とともに茶色っぽくなるのはなぜ?
カテキンなどが酸化し、褐色成分が増えるから
淹れた直後の緑茶は黄緑色でも、高温で長く置くと褐色が強くなることがあります。
日本の研究では、緑茶浸出液は保存温度が高いほど褐変しやすく、pHが高い条件でも褐変が進みやすいことが示されています。また、カテキン類が褐変に大きく関係することも報告されています。
つまり飲料の色は、作った直後に固定されるものではありません。酸素、温度、pH、光などによって成分が反応し、保存中にも少しずつ色が変わります。
水の種類でもお茶の色が変わるの?
変わることがあります。
水に含まれるミネラルや炭酸水素塩などは、飲料のpHや色素成分の抽出・反応へ影響するためです。
水出し紅茶を使った日本の研究では、ナトリウム量の増加に伴ってpHが上がり、水色が濃く暗くなる傾向が示されました。一方、カルシウム量の増加では色が薄く明るくなる傾向も報告されています。
このように、「同じ茶葉を同じ時間抽出すれば必ず同じ色になる」とは限らず、水質も色に関係します。
牛乳が白く見えるのは色素が白いから?
牛乳の白さは、主に色素ではなく光の散乱によって生まれます。
牛乳には脂肪球やカゼインミセルなど、多数の微細な粒子が分散しています。光がこれらの粒子に当たると、さまざまな方向へ散乱されます。
可視光の幅広い波長が散乱されるため、私たちの目には全体として白く見えます。
低脂肪乳などでは脂肪球が少ないため、条件によってやや青白く見えることがあります。これは黄色みを持つ脂肪由来成分が減ることや、光散乱の状態が変わることが関係します。
つまり、飲み物の色には「分子が光を吸収する色」だけでなく、「微粒子が光を散乱して見える色」もあります。
濁っている飲み物は色が違って見えるの?
はい。果汁、乳飲料、抹茶飲料などには微細な果肉、タンパク質、脂肪、茶葉粒子などが含まれています。
これらは光を散乱するため、透明な溶液とは違った見え方になります。
同じ色素濃度でも、透明な飲料と濁りの強い飲料では、明るさや鮮やかさが異なって見えることがあります。
さらに保存中に粒子が沈殿したり凝集したりすると、光の散乱状態が変わり、色むらや見た目の濃淡が生じることがあります。
光や酸素で飲み物の色が変わるのはなぜ?
色素やポリフェノールの中には、光や酸素によって分解・酸化されやすいものがあります。
アントシアニン、クロロフィル、カロテノイドなどは、温度、光、酸素、pHなどの影響で安定性が変わります。海外レビューでも、これらの食品色素は加工・保存条件によって色調が変わりやすいことがまとめられています。
緑茶飲料でも、光照射によるクロロフィルの分解やカテキン類の減少が色変化へ関与することが報告されています。
そのため、色を保つ必要がある飲料では、遮光性の高い容器、酸素を減らす包装、低温保存、pH調整などが利用されることがあります。
加熱すると飲み物の色が変わるのはなぜ?
加熱は色素そのものの分解だけでなく、さまざまな化学反応を速めます。
緑茶では高温になるほど褐変が進みやすく、カテキンやアスコルビン酸などの成分変化が関係します。
果汁ではアントシアニンやカロテノイドが熱の影響を受ける場合があります。また、糖とアミノ酸を含む飲料では、条件によってメイラード反応が進み、褐色色素が生成することがあります。
そのため、飲料製造では安全に必要な加熱を行いながら、色や香りの変化をできるだけ小さくする条件が検討されます。
着色料を加えた飲み物の色はどう決まるの?
飲料では、原料由来の天然色素だけでなく、食品添加物として認められた着色料を使用する場合があります。
着色料も基本的には、特定波長の光を吸収して色を示す物質です。製品では、目的の色調、pH、光や熱への安定性、他成分との相互作用などを考えて選ばれます。
天然由来の色素でも、種類によって安定な条件は異なります。アントシアニンは酸性飲料で利用しやすく、カロテノイドは水へ直接溶けにくいため乳化・分散技術が必要になる場合があります。
「天然なら色が変わらない」「合成なら安定」という単純な違いではなく、それぞれの色素の化学構造と飲料条件によって安定性が決まります。
色は味や香りの感じ方にも影響するの?
色は見た目だけの情報ではありません。
私たちは飲む前から色を見て、「甘そう」「酸っぱそう」「濃そう」「爽やかそう」といった味や香りを予測します。そのため、実際の味や香りが同じでも、色が違うと感じ方が変わる場合があります。
飲料メーカーが色の安定性を重視するのは、見た目の品質だけでなく、消費者が感じる風味の印象にも関係するためです。
まとめ
飲み物の色は、色素や反応生成物が特定の波長の光を吸収し、残った光が目に届くことで生まれます。アントシアニンは赤紫色、クロロフィルは緑色、カロテノイドは黄〜橙色に大きく関係します。
一方、紅茶の色のように、カテキンの酸化によって加工中に新しい色素が生じる場合もあります。緑茶の褐変のように、保存中の酸化や加熱で色が変わることもあります。
また、牛乳の白さのように、脂肪球やタンパク質粒子による光の散乱が色の見え方を決める飲み物もあります。
さらにpH、水質、酸素、光、温度、加熱、発酵、粒子の分散状態などが色を変化させます。飲み物の色は、単なる「着色」ではなく、分子が光を吸収する現象と、食品成分が加工・保存中に変化する化学反応、そして光散乱が組み合わさって見えているのです。
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参考資料
- 田中隆「緑茶カテキンの酸化と紅茶色素の生成」化学と生物
- 木村敬子ほか「緑茶浸出液の褐変について」調理科学
- 安田みどりほか「光照射による緑茶の色と成分の変化」日本食品科学工学会大会講演要旨集
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