なぜ大潮と小潮があるのか?

大潮と小潮があるのは、月と太陽がつくる「潮を動かす力」が、月の満ち欠けに合わせて強め合ったり、打ち消し合ったりするからです。新月や満月のころは、地球から見て月と太陽がほぼ一直線に並ぶため、両者の起潮力が同じ方向に重なり、満潮はより高く、干潮はより低くなりやすくなります。これが大潮です。

一方、上弦や下弦の月のころは、地球から見た月と太陽の方向がほぼ直角になります。このとき両者の起潮力は一部を打ち消し合うため、満潮と干潮の高さの差が小さくなります。これが小潮です。

気象庁は、新月と満月のころには大潮、上弦と下弦のころには小潮が現れ、新月から次の新月までの間に大潮と小潮がそれぞれほぼ2回ずつ現れると説明しています。つまり、大潮と小潮は海岸ごとに偶然起きる現象ではなく、月と太陽の位置関係が周期的に変わることで生まれる、天文学的なリズムなのです。

目次

そもそも潮の満ち引きはなぜ起こるのか

海面は、多くの場所で1日におよそ2回ずつ満潮と干潮を繰り返します。この周期的な海面の上下が潮汐です。

潮汐を起こす主な原因は、月が地球に及ぼす引力と、地球と月が共通の重心のまわりを動くことに伴う慣性力を合わせた起潮力です。太陽も地球の海に起潮力を及ぼします。

月は太陽よりはるかに小さい天体ですが、地球から非常に近いため、潮汐への影響は太陽より大きくなります。NOAAも、月が潮汐の主な要因であり、太陽も無視できない潮汐力を生み出していると説明しています。

大潮と小潮を理解するうえで大切なのは、月だけでなく太陽も海の満ち引きに関わっているという点です。月と太陽がどの方向にあるかによって、2つの起潮力の重なり方が変わります。

新月と満月のころに大潮になる理由

新月のとき、地球から見ると月と太陽はほぼ同じ方向にあります。満月のときは、地球をはさんで月と太陽がほぼ反対方向にあります。

一見すると、新月と満月では月の位置が正反対なので、潮汐への影響も逆になるように思えるかもしれません。しかし、どちらの場合も地球・月・太陽がほぼ一直線に並ぶという点は共通しています。

この配置では、月による起潮力と太陽による起潮力が互いに強め合います。その結果、海面の高い場所はより高く、低い場所はより低くなりやすくなり、満潮と干潮の差である潮差が大きくなります。

これが大潮です。気象庁は、月と太陽が直線上に重なるとき、両者の起潮力の方向が重なるため、満潮と干潮の潮位差が大きくなると説明しています。

上弦と下弦のころに小潮になる理由

新月から約1週間たつと上弦の月になり、その約1週間後に満月になります。さらに約1週間後には下弦の月になり、その後また新月へ戻ります。

国立天文台によると、月の満ち欠けは平均約29.5日の周期で、新月、上弦、満月、下弦、新月という順番で繰り返します。上弦と下弦では、地球から見た太陽と月の方向がほぼ90度ずれています。

この配置では、月の起潮力で海面を大きく動かそうとする方向と、太陽の起潮力の方向が一致しません。両者は一部を打ち消し合うため、満潮は大潮のときほど高くならず、干潮もそれほど低くなりません。

その結果、満潮と干潮の潮位差が小さくなります。これが小潮です。

「大潮」は潮そのものの高さではなく、満潮と干潮の差が大きい状態

大潮という言葉から、「満潮の海面がとても高い日」とだけ考えてしまうことがあります。しかし、大潮を特徴づけるのは満潮の高さだけではありません。

大潮では一般に満潮が高くなりやすい一方、干潮も低くなりやすいため、満潮と干潮の差が大きくなります。つまり重要なのは潮差です。

逆に小潮では、満潮がやや低く、干潮がやや高くなるため、潮差が小さくなります。

そのため「大潮=海面が一日中高い」「小潮=海面が一日中低い」という理解は正しくありません。どちらの日にも満潮と干潮はあり、その上下の幅が違うのです。

なぜ大潮と小潮は約1週間ごとに入れ替わるのか

月は地球のまわりを公転しているため、地球から見た月と太陽の位置関係は毎日少しずつ変わります。

新月では月と太陽がほぼ同じ方向、上弦では約90度、満月では約180度、下弦では約270度離れた関係になります。

国立天文台によると、新月から次の新月までの周期は平均約29.5日です。その4分の1はおよそ7日なので、大潮と小潮はおよそ1週間間隔で交互に現れます。

新月ごろに大潮、約1週間後に小潮、さらに約1週間後の満月ごろに再び大潮、その約1週間後に小潮という流れです。この周期は季節に関係なく一年中繰り返されます。

「大潮」は春だけに起こる現象ではない

英語では大潮をspring tideと呼びます。この「spring」を春の季節と誤解することがありますが、大潮は春だけに起こるわけではありません。

NOAAは、spring tideの名称は潮が大きく「湧き上がる、跳ね上がる」という意味に由来し、季節のspringとは関係がないと説明しています。大潮は毎月、新月と満月のころにほぼ2回ずつ起こります。

小潮は英語でneap tideと呼ばれ、こちらも毎月ほぼ2回現れます。

同じ大潮でも、毎回まったく同じ潮差ではない

大潮の日なら、毎回同じ高さまで満潮になり、同じ高さまで干潮になるわけではありません。

その理由の一つが、月と地球の距離です。月の軌道は完全な円ではなく楕円なので、月は地球に近いときと遠いときがあります。

NOAAによると、月が地球に近い近地点付近では月の起潮力が通常より大きくなり、潮差も大きくなりやすくなります。反対に月が遠い遠地点付近では、起潮力はやや弱くなります。

そのため、新月・満月と月の近地点が近い時期には、通常の大潮よりさらに大きな潮差になることがあります。

太陽との距離も少し影響する

地球が太陽のまわりを回る軌道も完全な円ではありません。そのため、一年の中で地球と太陽の距離は少し変化します。

地球が太陽に近い時期には太陽による起潮力がやや強くなり、遠い時期には弱くなります。NOAAは、月との距離だけでなく、地球と太陽の距離も潮差に影響すると説明しています。

ただし、大潮・小潮の基本的な周期をつくっているのは、まず月と太陽の方向関係です。距離の変化は、その基本的な大潮・小潮に追加の強弱を与える要因と考えるとわかりやすいでしょう。

大潮・小潮の日でも場所によって潮差が違う

同じ新月の日でも、日本中の海岸が同じ潮差になるわけではありません。

実際の潮汐は、海の深さ、湾の形、海岸線、海峡、海底地形などの影響を強く受けます。潮汐は非常に長い波として海を伝わるため、湾の形によって増幅されたり、逆に小さくなったりします。

そのため、有明海のように大きな潮差が見られる場所もあれば、同じ大潮の日でも潮差が比較的小さい場所もあります。

つまり「大潮」「小潮」は、その場所における月ごとの潮差の変化を表す言葉であり、地球上のすべての海岸が同じ高さまで上下するという意味ではありません。

新月・満月の「その瞬間」に必ず最大潮差になるわけではない

大潮は「新月・満月のころ」と表現されます。これは、天体が一直線に並ぶ瞬間と、実際の海岸で潮差が最大になる時刻が完全には一致しないことがあるためです。

潮汐の波は海の中を伝わり、海岸線や海底地形の影響を受けます。そのため、月と太陽の位置関係が変わった効果が、その場所の潮位へ現れるまでに時間差が生じることがあります。

気象庁も「新月と満月の頃に大潮」と表現しており、大潮を天文学的な一瞬ではなく、潮差が大きくなる期間として扱っています。

天気が悪いと大潮・小潮の予測は外れるのか

大潮と小潮は月と太陽による天文潮の変化なので、天体の動きから高い精度で予測できます。

しかし、実際に観測される海面の高さは、気圧や風の影響も受けます。低気圧では海面が持ち上がりやすく、強い風が岸へ吹き続けると海水が吹き寄せられます。

そのため、大潮の満潮と台風や低気圧による高潮が重なると、実際の潮位がさらに高くなる場合があります。反対に、気象条件によっては予測された天文潮位より低くなることもあります。

ただし、天気によって「大潮が小潮になる」わけではありません。大潮・小潮は月と太陽の位置関係による分類であり、気象はその上に実際の海面変化を加える要因です。

大潮と小潮で潮流の速さも変わる

潮の満ち引きでは、海面が上下するだけでなく、大量の海水が水平方向にも移動します。これが潮流です。

一般に、大潮では満潮と干潮の差が大きいため、同じ時間内に移動する海水量も大きくなり、潮流が強くなる場所があります。小潮では潮差が小さいため、潮流も比較的弱くなる傾向があります。

NOAAも、新月・満月の時期には潮流が強くなり、上弦・下弦の時期には弱くなると説明しています。

ただし、潮流の速さは海峡の幅や水深など地形条件にも大きく左右されるため、「大潮ならどこでも同じ速さ」というわけではありません。

大潮と小潮は生き物や人の暮らしにも関係する

大潮では干潮時に海面が大きく下がるため、普段は海中にある干潟や磯が広く現れることがあります。そのため、潮干狩りや磯観察では大潮の干潮時刻が重視されます。

一方、満潮時には海面が高くなりやすいため、沿岸での作業や釣り、船舶の運航、防災では潮位を確認することが重要です。

海の生き物の中にも、潮の満ち引きに合わせて活動や産卵のタイミングを変える種類があります。潮汐は単なる海面の上下ではなく、沿岸生態系の日常的な環境変化をつくっています。

月の満ち欠けが潮を直接つくっているわけではない

「満月だから月が明るくなって潮を強く引く」と考えるのは誤りです。

月の満ち欠けは、太陽・地球・月の位置関係によって、月の明るい面が地球からどのように見えるかが変わる現象です。月そのものの質量が満月で増えたり、新月で減ったりするわけではありません。

大潮と小潮が月の満ち欠けと同じ周期で現れるのは、満ち欠けを決める太陽・地球・月の位置関係と、起潮力の重なり方を決める位置関係が同じだからです。

つまり、満月の「明るさ」が潮を大きくするのではなく、満月のときの天体配置が大潮を起こすのです。

結局、なぜ大潮と小潮があるのか

理由を整理すると、次のようになります。

  • 月と太陽の両方が潮汐を起こす:月の影響が主ですが、太陽の起潮力も無視できない。
  • 新月・満月では力が強め合う:地球・月・太陽がほぼ一直線に並び、潮差が大きくなって大潮になる。
  • 上弦・下弦では力が一部打ち消し合う:月と太陽の方向がほぼ直角になり、潮差が小さくなって小潮になる。
  • 約1週間ごとに入れ替わる:月の満ち欠けが平均約29.5日の周期で進むため。
  • 月との距離でも強さが変わる:月が地球に近い時期は潮差がさらに大きくなりやすい。
  • 実際の潮差は場所によって違う:湾の形、水深、海底地形などが潮汐を増幅・減衰させる。

大潮と小潮は、月と太陽が海を引く力の「重なり方」が周期的に変わることで起こります。新月と満月では両者が強め合い、上弦と下弦では一部を打ち消し合います。そのため、同じ海岸でも約1週間ごとに潮の満ち引きの幅が大きくなったり小さくなったりするのです。

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