湖がさまざまな原因で生まれるのは、湖そのものをつくる直接の条件が「水をためられるくぼみができること」と「そこへ水が供給されること」の2つだからです。 地殻変動、火山活動、氷河、河川の流れ、地すべりなどは一見まったく別の現象ですが、どれも地表にくぼみをつくったり、水の出口をふさいだりする働きをします。その結果、雨や雪どけ水、河川水、地下水などがたまると湖になります。
つまり「湖の原因が多い」のではなく、同じ完成形に至る地形づくりの方法が多いと考えるとわかりやすくなります。
湖ができる共通の仕組みは「くぼみ+水」
湖を理解するうえで最も大切なのは、まず「湖盆」と呼ばれる水をためる地形を考えることです。米国国立公園局(NPS)も、湖は地表の盆地状のくぼみに水が満たされることででき、氷河、断層、河川の侵食、火山など複数の原因があると説明しています。
ただし、くぼみがあれば必ず湖になるわけではありません。水が地中へすぐ浸透したり、低い出口から流れ出したりすれば、水面は維持されません。反対に、雨や河川、地下水などから入る水があり、流出や蒸発とのバランスのなかで一定量の水が残れば、湖として存続します。
このため湖の成因を考えるときは、次の2段階に分けると整理しやすくなります。
- どのように水をためる場所ができたか
- その場所にどこから水が供給され、なぜ流れ切らないのか
地殻変動でできる湖
地面は長い時間のなかで、断層運動や地殻のゆがみによって持ち上がったり沈み込んだりします。その結果、周囲より低い盆地や溝状の地形ができると、そこへ水がたまり湖になることがあります。
国土地理院は、断層によって生じた凹地にできる湖を「断層湖」として示しています。例として諏訪湖などが挙げられ、琵琶湖も長い地質時代を通して存在してきた古い構造湖として紹介されています。
このタイプの特徴は、湖をつくる力が一度きりの出来事とは限らないことです。地殻変動が長期間続けば、湖盆が沈降したり周囲の地形が変化したりしながら、湖の形や深さも少しずつ変わっていきます。
代表的な考え方
- 断層運動で地面に低い部分ができる
- 地盤の沈降で盆地が形成される
- 周囲から水が集まり、出口より低い部分に水が残る
火山活動でできる湖
火山も大きなくぼみをつくる代表的な原因です。噴火口に水がたまれば火口湖になり、大規模な噴火などで火山体の一部が陥没してできたカルデラに水がたまればカルデラ湖になります。
国土地理院の「日本の典型地形」でも、火山活動による地形として火口湖やカルデラ湖が分類されています。火山が水を直接つくるわけではなく、噴火や陥没によって大きな器をつくり、その後に雨や地下水などが入ることで湖になるのがポイントです。
また、火山から流れ出した溶岩や火山噴出物が谷をふさぎ、上流側に水がたまることもあります。この場合は「火口のくぼみ」ではなく「天然のダム」が湖を生みます。同じ火山活動でも、湖ができる経路は一つではありません。
氷河でできる湖
寒冷な地域や高山では、氷河も多数の湖をつくります。氷河は巨大な氷の塊ですが、ゆっくり移動するときに岩盤を削り、谷やくぼみを掘り下げます。氷河が後退してその場所からなくなったあと、削られた凹地へ水がたまると氷河湖になります。
さらに、氷河が運んだ岩石や土砂が末端付近に堆積して「モレーン」と呼ばれる地形をつくり、それが天然の堤防になる場合もあります。米国地質調査所(USGS)は、マンモス・レイクス盆地の湖について、氷河が削った岩盤の凹地や氷河堆積物の凹地に水がたまっていると説明しています。
このように氷河は、地面を削って器をつくる方法と、堆積物で水をせき止める方法の両方で湖を生みます。
河川の流れが変わってできる湖
河川は長い時間をかけて蛇行し、流路を少しずつ変えます。大きく曲がった川では、洪水などをきっかけに曲がりの首の部分が短絡し、古い流路だけが本流から切り離されることがあります。その水域が残ると、弓なりの形をした「三日月湖」になります。
国土地理院も、河川作用による典型地形の一つとして三日月湖を分類しています。これは地殻変動や火山のように大地が大きく動かなくても、流れる水自身が地形を削り、運び、堆積させることで湖をつくれることを示しています。
河川による湖は、周囲から土砂が運び込まれやすいため、長い時間のなかで浅くなったり湿地へ変わったりしやすい場合があります。湖は「できたら同じ姿のまま」ではなく、誕生後も地形変化の途中にある存在です。
地すべりや崩壊で谷がふさがれてできる湖
山地では、地震や大雨などをきっかけに地すべりや斜面崩壊が起き、大量の土砂が谷へ流れ込むことがあります。その土砂が川をせき止めると、上流側に水がたまり、堰止湖ができます。
国土地理院は堰止湖を、地震による土石流などで河川がせき止められ、できた凹地に水がたまった湖沼として説明しています。関東大震災で川がせき止められてできた神奈川県の震生湖も、その具体例として掲載されています。
このタイプは比較的短い時間で突然できることがあります。一方で、天然の堤防が侵食されると水が抜けて消える場合もあります。数千年、数百万年続く湖がある一方、短期間で消える湖もあるのは、湖を囲む地形の安定性が違うためです。
湖の成因が一つだけとは限らない
実際の湖を「地殻変動湖」「火山湖」など一つの名前だけで完全に説明できない場合もあります。もともと断層でできた凹地が、その後の土砂堆積で形を変えることもありますし、氷河が削った谷の出口がモレーンでふさがれて湖になることもあります。
つまり湖の形成は、複数の地質・地形作用が重なった結果であることが珍しくありません。原因を分類するのは理解しやすくするためですが、自然界ではそれぞれの作用が連続し、組み合わさっています。
なぜ世界には湖が多い地域と少ない地域があるのか
湖の多さには、その地域がどのような地形形成を経験してきたかが大きく関係します。たとえば過去に大規模な氷河に覆われた地域では、氷河が削った多数の凹地やモレーンによるせき止めが残り、湖が非常に多くなることがあります。一方、急な地形で水の出口ができやすい地域や、地下へ水が浸透しやすい地域では、くぼみがあっても湖が長く残らない場合があります。
したがって、湖の分布は単に降水量だけでは決まりません。地質、地形、過去の気候、断層や火山活動、河川の歴史などが組み合わさって決まります。
まとめ
湖がさまざまな原因で生まれるのは、湖になるために必要な「水をためるくぼみ」をつくる自然現象が一つではないからです。
- 地殻変動は断層や沈降によって盆地をつくる
- 火山は火口やカルデラをつくり、溶岩などで谷をふさぐこともある
- 氷河は岩盤を削り、モレーンで水をせき止める
- 河川は蛇行や流路変更によって三日月湖をつくる
- 地すべりや崩壊は谷をふさぎ、堰止湖をつくる
どの湖にも共通するのは、最終的に地表に水が残れる場所ができることです。湖の形や深さ、寿命がそれぞれ違うのは、その「器」をつくった自然の力と、その後に続く侵食・堆積・水の出入りが異なるためです。
参考資料
- 国土地理院「1.地殻の変動による地形」
- 国土地理院「2.火山の活動による地形」
- 国土地理院「4.河川の作用による地形」
- U.S. National Park Service「Lakes and Ponds」
- U.S. Geological Survey「Mammoth Lakes Basin, California」

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