湖によって青・緑・茶色など色が違うのは、水そのものの性質に加えて、植物プランクトン、細かな土砂、溶けた有機物など、水中に含まれるものが光の吸収や散乱のしかたを変えるからです。 同じ太陽光が当たっても、水中の成分が違えば、私たちの目に戻ってくる光の色も変わります。
たとえば、植物プランクトンが多い湖は緑色に見えやすく、細かな土砂や腐植物質が多い湖は茶色や黄褐色に見えることがあります。一方、粒子や色のついた溶存物質が少ない澄んだ湖では、水そのものの光学的な性質が目立ち、青く見えやすくなります。
ただし、湖の色だけで水質の良し悪しや安全性を断定することはできません。天候、見る角度、水深、湖底の色、空や周囲の景色の反射などでも見え方は変わるため、湖の色は水の状態を知る手がかりの一つとして考えるのが適切です。
湖の色は「どの色の光が戻ってくるか」で決まる
太陽光には、赤、橙、黄、緑、青などさまざまな波長の光が含まれています。その光が湖へ入ると、一部は水や水中の物質に吸収され、一部は散乱されます。そして水面方向へ戻ってきた光が私たちの目に届き、湖の色として見えます。
米国地質調査所(USGS)は、水の色を左右する主要な要素として、水そのもの、藻類や浮遊土砂などの粒子、色のついた溶存有機物などを挙げています。どの物質が多いかによって、吸収される波長と散乱される波長が変わるため、見える色も変化します。
つまり湖の色は、単に「水に色がついている」だけではありません。光と水中成分の相互作用が、色として現れたものです。
青く見える湖は粒子や色のついた物質が少ないことが多い
澄んだ深い湖が青く見える理由の一つは、水そのものが赤色側の光を比較的吸収しやすく、青色側の光が残りやすいことです。
特に、植物プランクトンや土砂、色のついた溶存物質が少ない湖では、それらによる色づきが弱いため、水本来の光学的な性質が目立ちます。その結果、青色や青緑色に見えやすくなります。
USGSも、溶存物質や浮遊物質が少ない透明な水は青く見えやすいと説明しています。
ただし「青い湖=必ず汚れが少ない」とは限りません。見た目の色だけでは、目に見えない化学物質や細菌などの有無までは判断できないからです。
空が青いから湖も青い、だけではない
湖面には空の色が映るため、空の青さも見た目に影響します。しかし、湖が青く見える理由を「空を反射しているから」だけで説明するのは不十分です。
水面反射の影響は確かにありますが、深い透明な水では、水中へ入った光が水そのものに吸収・散乱されることで青さが生まれます。そのため、見る角度や太陽の位置が変わって空の反射が弱くなっても、水自体の青さが確認できる場合があります。
実際の湖面では、水中から戻る光と水面で反射する光の両方が混ざって見えています。このため、晴天・曇天や見る方向によって同じ湖でも色合いが違って見えます。
緑色の湖は植物プランクトンが多いことがある
湖が緑色に見える代表的な原因は、植物プランクトンです。植物プランクトンには、光合成に使うクロロフィルaなどの色素が含まれています。
クロロフィルは青色や赤色付近の光を吸収しやすく、緑色付近の光を比較的反射・散乱しやすいため、植物プランクトンが多い水は緑っぽく見えます。
環境省の湖沼調査では、クロロフィルa濃度が高いほど透明度が低くなる強い傾向が確認されています。植物プランクトンが増えると水中で光を遮る量が増え、湖が緑色で濁って見えやすくなるためです。
ただし、緑色だから必ず水質が悪いわけではありません。植物プランクトンは湖の食物網を支える重要な生物です。問題になるのは、窒素やリンなどの栄養塩が過剰になり、一部の藻類が大量発生する場合です。
同じ緑色でも原因は一つではない
緑色に見える湖でも、すべてが同じ状態とは限りません。
植物プランクトンの種類や量によって緑色の濃さは変わります。また、非常に細かな鉱物粒子が水中に多いと、青緑色や乳白色を帯びた緑色に見える場合があります。
たとえば氷河から流れ出す水には「氷河粉」と呼ばれる非常に細かな岩石粒子が含まれることがあります。NASAは、こうした微粒子が光を強く散乱することで、氷河湖が鮮やかなターコイズ色に見える場合があると説明しています。
そのため、緑色や青緑色を見ただけで植物プランクトンの増加と断定することはできません。原因を知るには、クロロフィルa、濁度、浮遊物質などを測定する必要があります。
茶色い湖は土砂で濁っていることがある
大雨のあとなどに湖が茶色くなる場合、流入河川から細かな土や泥が大量に運び込まれていることがあります。
粘土やシルトのような細かな粒子は水中に長く浮遊し、光を散乱させます。その結果、水が黄土色、茶色、赤茶色などに見えることがあります。
USGSは、自然水域の色の大部分が、藻類や浮遊土砂など水中を漂う物質によって生じることがあると説明しています。土壌流出による水の色は、土の種類によって黄色、赤、茶、灰色などさまざまです。
大雨後に河口付近だけ茶色い帯が広がる場合は、流入河川が土砂を湖へ運び込んでいる様子が色として見えていることがあります。
茶色や黄褐色は腐植物質による場合もある
湖が茶色や紅茶のような色をしていても、必ずしも土砂で濁っているとは限りません。
森林や湿地では、落ち葉、木の根、植物の遺体などが分解されると、有機物の一部が水に溶け込みます。このうち光を強く吸収して水に色を与える成分は、色付き溶存有機物、英語ではCDOMと呼ばれます。
USGSは、タンニンなど植物由来の溶存有機物が水を黄色や茶色に見せる代表的な原因だと説明しています。紅茶の色を想像すると分かりやすく、細かな泥をろ過しても、溶けている有機物による色は残ります。
そのため、茶色い湖には「粒子で濁って茶色い場合」と「溶けた有機物で色がついている場合」があります。見た目が似ていても、水中で起きていることは違います。
環境省の調査でも湖ごとに透明度を下げる原因が違う
湖の色や透明度を左右する成分は、湖によって異なります。
環境省が湖沼の沿岸透明度を調べた資料では、透明度を低下させる主な要因として、クロロフィルaを含む植物プランクトン、トリプトンと呼ばれる非生物性の浮遊粒子、CDOMなどが整理されています。
湖ごとの解析では、諏訪湖や中海、宍道湖などでは季節によって植物プランクトンの影響が大きくなる一方、霞ヶ浦や琵琶湖南湖では浮遊粒子の影響が大きい時期があることが示されています。
つまり「湖の色が違う」という現象は、湖ごとに水中の構成物が違うことの表れでもあります。同じ茶色や緑色でも、主な原因は場所や季節で変わります。
湖の深さや透明度も見える色を変える
水中に同じ成分が含まれていても、水深によって色の見え方は変わります。
浅い湖では湖底まで光が届き、湖底の砂、泥、水草、岩などから反射した光が水面まで戻ってくることがあります。そのため底質の色が湖面の色に影響します。
一方、深い湖では湖底からの反射がほとんど届かず、水そのものや水中成分による光の吸収・散乱の影響が強くなります。
また透明度が高いほど光は深くまで進みます。粒子や植物プランクトンが増えて透明度が低下すると、深い場所から戻る光が少なくなり、表層の成分による色が強く見えるようになります。
季節によって同じ湖の色が変わることもある
湖の色は湖ごとに違うだけでなく、同じ湖でも季節によって変化します。
春から夏に植物プランクトンが増えれば緑色が強くなることがあります。大雨や台風のあとには流入土砂によって茶色くなることがあります。秋には森林や湿地から植物由来の有機物が流れ込む量が変わり、水の色に影響する場合があります。
また、湖水が季節的に混ざることで、深い場所にあった栄養塩が表層へ運ばれ、植物プランクトンの増殖につながることもあります。
そのため、一度見た色をその湖の「固定された色」と考えるのではなく、時間とともに変化する特徴として見る必要があります。
大雨の前後で色が変われば流域の影響が見える
湖の色は、周囲の流域で起きたことを反映することがあります。
大雨が降ると、農地、道路、斜面、河川敷などから土砂や有機物が流出し、河川を通じて湖へ入ります。そのため降雨前は青や緑だった湖が、降雨後に茶色や黄褐色へ変わることがあります。
河口から湖心へ茶色い水が広がる様子が見えれば、流入水がどこまで届いているかを推測する手がかりになります。
色の変化は、湖の中だけでなく「湖へ何が流れ込んだか」を知らせる情報でもあります。
人工衛星でも湖の色から水の状態を調べられる
湖の色は、人の目だけでなく人工衛星からも観測できます。
衛星センサーは、青、緑、赤、近赤外線など複数の波長帯で水面から戻る光を測ります。USGSは、水中の主要な光学成分として、藻類や土砂などの粒子、CDOM、水そのものなどを挙げ、それらが水色を変えるため、リモートセンシングで水質を推定できると説明しています。
植物プランクトンが多い水、土砂が多い水、CDOMが多い水では、それぞれ反射光の波長パターンが異なります。その違いを利用すると、広い湖のどの場所で藻類や濁りが増えているかを地図として捉えることができます。
衛星観測は湖全体を一度に比較できるため、現地の採水調査だけでは把握しにくい広域的な変化を見つけるのに役立ちます。
色が鮮やかでも必ず異常とは限らない
湖が鮮やかな青や緑、茶色をしていると、人為的な汚染を想像することがあります。しかし自然現象だけでも強い色が生じます。
透明度の高い深い湖は自然に青く見えます。氷河由来の細かな鉱物粒子が多い湖はターコイズ色になることがあります。森林や湿地から腐植物質が入る湖は自然な茶色になることがあります。
反対に、見た目が透明でも、人の目では確認できない化学物質や微生物が存在する可能性があります。
したがって、色の鮮やかさや透明さだけで「自然」「汚染」「安全」を決めることはできません。
湖の色と水質は同じ意味ではない
湖の色は水質の一部を反映しますが、水質そのものと同じではありません。
環境省の湖沼の水質評価では、COD、窒素、リン、溶存酸素、pHなど複数の項目が使われます。これらの多くは目で見ただけでは分かりません。
緑色なら植物プランクトンが多い可能性、茶色なら土砂や有機物が多い可能性を考えることはできますが、正確な原因や安全性を判断するには、水質測定や顕微鏡観察などが必要です。
湖の色は「診断結果」ではなく、「何かが違うかもしれない」と気づくためのサインと考えると分かりやすいでしょう。
青・緑・茶色の違いを整理すると
- 青:浮遊粒子や色のついた溶存物質が少なく、水そのものの青い光が残りやすい場合に見えやすい
- 緑:植物プランクトンのクロロフィルが多い場合に見えやすい。細かな鉱物粒子による青緑色の場合もある
- 茶色・黄褐色:土砂などの浮遊粒子や、森林・湿地由来のCDOMによって生じることがある
- ターコイズ:非常に細かな鉱物粒子が光を散乱する氷河湖などで見られることがある
実際の湖では、これらの原因が一つだけではなく、複数重なっています。そのため青緑、黄緑、赤茶色など中間的な色になることも珍しくありません。
まとめ
湖によって青・緑・茶色など色が違うのは、水中に含まれる物質の種類と量によって、光の吸収・散乱のしかたが変わるからです。
- 粒子や色のついた物質が少ない透明な湖は青く見えやすい
- 植物プランクトンが多い湖はクロロフィルの影響で緑色に見えやすい
- 土砂が多い湖は黄色や茶色に濁ることがある
- 森林や湿地由来の溶存有機物でも黄褐色や茶色になることがある
- 氷河由来の微細な鉱物粒子はターコイズ色をつくることがある
- 水深、透明度、天候、見る角度、湖底の色でも見え方は変わる
- 色だけで水質の良し悪しや安全性を断定することはできない
湖の色は、湖の中に何が含まれ、光がどのように動いているかを映し出すサインです。色の違いを見ることで、その湖の植物プランクトン、土砂、有機物、透明度などの違いに気づくことができます。
参考資料
- 環境省「湖沼の底層溶存酸素量及び沿岸透明度に関する水質保全対策の手引き」
- 環境省「モニタリングサイト1000陸水域調査(湖沼・湿原)2009-2013年度とりまとめ報告書」
- U.S. Geological Survey「Water Color」
- U.S. Geological Survey「Introduction to Aquatic Remote Sensing」

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