なぜ火山湖と断層湖では形や深さが違うのか?

火山湖と断層湖で形や深さが違うのは、湖の水をためる「湖盆」ができる仕組みそのものが違うからです。 火山湖は噴火や火山体の陥没によってできた火口・カルデラなどの凹地に水がたまるため、円形や楕円形に近い輪郭になりやすく、陥没が大きければ非常に深くなることがあります。一方、断層湖は地殻が断層に沿ってずれたり沈降したりしてできた凹地に水がたまるため、断層の方向に沿った細長い形や急な湖岸を持ちやすくなります。

ただし、「火山湖なら必ず丸くて深い」「断層湖なら必ず細長い」と決まっているわけではありません。実際の湖の形と深さは、火山の陥没量、断層の変位量、その後の侵食や堆積、流入河川などによって変化します。重要なのは、最初にどのような地形のくぼみがつくられたかです。

目次

湖の形は水より先にできた「器」の形を受け継ぐ

湖は、水が地面を自由に形づくってできるものではありません。多くの場合、まず地表に水をためられる凹地ができ、そこへ雨、雪どけ水、河川水、地下水などがたまって湖になります。この凹地が湖盆です。

そのため、湖の輪郭や最大水深を理解するときは「なぜ水があるのか」だけでなく、「なぜその場所にその形のくぼみができたのか」を考える必要があります。

国土地理院は、火山活動による湖として火口湖やカルデラ湖を、地殻変動による湖として断層湖を区別しています。両者は同じ湖でも、湖盆をつくる力の方向と範囲が大きく違います。

火山湖は火口やカルデラの輪郭を受け継ぎやすい

火山湖は、火山活動によって生じた凹地に水がたまった湖です。噴火口に水がたまる火口湖のほか、大規模な噴火などによって火山体の一部が陥没してできたカルデラに水がたまるカルデラ湖があります。

国土地理院はカルデラを、火山性の火口状凹地で直径が2kmより大きいものと説明しています。また、その全部または大半が湖で占められるものをカルデラ湖としています。

火口やカルデラは、火山の中心部を囲むように形成されるため、平面形は円形や楕円形に近くなりやすい傾向があります。周囲には火口壁やカルデラ壁が残るため、湖岸が急斜面になることもあります。

つまり火山湖の形は、噴火口や陥没地という「火山中心のまわりにできた凹地」の形を強く反映します。

カルデラ湖は大きな陥没によって非常に深くなることがある

火山湖の深さを決める大きな要因の一つが、火山体がどれだけ大きく陥没したかです。

大規模な噴火で大量のマグマが地下から失われると、その上にあった地盤を支えきれなくなり、火山の中心部が沈み込むことがあります。こうして深く大きなカルデラができれば、そこにたまる湖も深くなる可能性があります。

米国国立公園局によると、オレゴン州のクレーターレイクは、約7,700年前にマザマ山の大噴火と陥没によって生じたカルデラを水が満たした湖です。カルデラは約8×10km、深さ1kmを超える盆地で、現在の湖の最大水深は約594mです。

この例から分かるように、火山湖の深さは「火山だから深い」のではなく、火山活動がどれだけ深い凹地をつくったかに左右されます。

小さな火口湖は必ずしも深くない

一方、すべての火山湖が深いわけではありません。

小規模な噴火でできた浅い火口、爆裂による凹地、カルデラ内の一部分だけにできた湖などでは、水深が比較的小さいことがあります。また、火口の内部に新しい溶岩ドームや火砕物が積もれば、湖盆の一部が埋まり浅くなります。

火山活動後には、崩壊した岩石や火山灰、河川が運ぶ土砂なども湖底へたまります。そのため、火山湖の現在の深さは、最初の陥没の深さからその後の堆積量を差し引いた結果でもあります。

したがって「カルデラ湖は比較的大きく深くなりやすい」「小さな火口湖は規模が限られやすい」という傾向はあっても、成因名だけから水深を正確に予測することはできません。

断層湖は地面のずれによる凹地にできる

断層湖は、地殻に力が加わり、断層に沿って地面がずれた結果できた凹地に水がたまった湖です。

国土地理院は断層湖を、断層によって生じた凹地にできた湖で、断層盆地や地溝の中に見られるものと説明しています。また、湖岸は急傾斜で、湖底は比較的緩い傾斜を持ち広いことがあるとしています。

断層では地面の変形が一本または複数の線に沿って進みます。そのため湖盆も断層の走向に沿って伸びやすく、火山湖より細長い輪郭になる場合があります。

湖岸の一方に断層崖があれば、その側だけ急に深くなるような非対称の湖底地形ができることもあります。

断層湖が細長くなりやすいのは力が線状に働くから

火山性の陥没は火山中心の周囲に広がることが多いのに対し、断層運動は断層面や断層帯に沿って地殻を変形させます。この「力が働く形」の違いが、湖の輪郭にも表れます。

たとえば、二つの断層にはさまれた地盤が沈み込むと、細長い地溝ができます。その低地に水がたまれば、地溝の方向に沿った細長い湖になります。

一方、複数方向の断層が交差して盆地全体が沈降する場合には、幅の広い湖盆になることもあります。つまり、断層湖の形は「断層が何本あるか」「どの方向に延びているか」「どちら側がどれだけ沈んだか」によって変わります。

このため断層湖を見ると、湖岸線や湖底の長軸が、周辺の断層や山地の方向と対応している場合があります。

断層湖の深さは地盤の沈降量で大きく変わる

断層湖の深さを左右する基本要因は、地盤がどれだけ下がったかです。

一度の断層運動でできる高低差は限られていても、同じ地域で長期間にわたって断層活動や沈降が続けば、凹地は次第に深くなることがあります。

琵琶湖の湖盆を調べた研究では、西岸・南岸・東岸の湖底断層系が湖盆形態を決める重要な構造とされ、現在の中・北湖盆は断層に制約された地溝として説明されています。研究では、現琵琶湖盆が長い時間をかけ、浅い湖盆の段階から深い湖盆へ発達した過程も示されています。

つまり断層湖の深さは、単に「断層があるかどうか」ではなく、断層活動がどの程度続き、累積してどれだけ地盤を変位させたかに左右されます。

深くなる力と埋める力が同時に働く

断層湖では地盤沈降によって湖盆が深くなる一方、河川は山地から土砂を運び込みます。その土砂は湖底へ堆積し、凹地を少しずつ埋めます。

つまり湖盆では、断層運動で深くする作用と、堆積物で浅くする作用が同時に進みます。

沈降速度が堆積速度を上回れば深い湖盆が維持されやすく、土砂供給が大きければ、断層でできた凹地でも次第に浅くなります。

琵琶湖のような長寿命の湖では、断層運動、傾動、堆積作用が長期間組み合わさって現在の湖底地形が形成されています。この点でも、現在の水深は最初の地殻変動だけで決まった数字ではありません。

火山湖と断層湖の違いを比べると

  • 凹地のでき方:火山湖は噴火・爆発・陥没、断層湖は地殻のずれ・沈降によって形成される
  • 平面形:火山湖は円形・楕円形に近くなりやすく、断層湖は断層方向に細長くなりやすい
  • 湖岸:火山湖は火口壁・カルデラ壁、断層湖は断層崖によって急斜面を持つことがある
  • 深さの主因:火山湖は火口・カルデラの陥没量、断層湖は断層変位・地盤沈降の累積量が重要
  • その後の変化:どちらも侵食、崩壊、河川からの堆積、火山活動や地殻変動によって形が変わり続ける

この比較から分かるのは、湖の形と深さは「水の性質」よりも、まず湖盆をつくった地質作用を強く反映するということです。

「丸い=火山湖」「細長い=断層湖」と断定はできない

形は成因を推測する重要な手がかりですが、見た目だけで湖の成因を断定することはできません。

火山湖でも、カルデラの一部が崩壊したり、後から火山が成長したり、河川侵食を受けたりすれば、不規則な輪郭になります。断層湖でも、複数の断層が盆地を囲めば幅広い形になることがあります。

さらに、湖岸では波による侵食や河川からの堆積が進みます。三角州が発達すれば湖岸線が前進し、もともとの湖盆形状が見えにくくなる場合もあります。

そのため地質学では、湖の輪郭だけでなく、断層の位置、火山噴出物、岩石、地下構造、湖底地形、堆積物などを組み合わせて成因を判断します。

湖の深さや形はその後の水環境にも影響する

火山活動や断層運動で決まった湖盆の形は、その後の湖の環境にも影響します。

深い湖では夏に表層と深層の水温差が大きくなり、水温成層が発達しやすくなります。岸から急に深くなる湖では、光が湖底まで届く浅場の割合が小さくなります。

反対に浅い場所が広い湖では、水草が生育できる面積が大きくなり、風によって湖底の泥が巻き上がりやすくなる場合があります。

つまり、火山や断層が湖の「器」をつくり、その器の深さと形が、水温、酸素、光、水草、生物の分布などをさらに左右します。湖の成因は、現在の生態系や水質にも間接的につながっているのです。

まとめ

火山湖と断層湖で形や深さが違うのは、湖盆をつくる地質作用の形と方向が違うからです。

  • 火山湖は火口やカルデラの凹地を利用するため、円形・楕円形に近くなりやすい
  • 大規模なカルデラ陥没では、非常に深い湖盆ができることがある
  • 断層湖は断層や地溝に沿うため、細長い輪郭や急な湖岸を持ちやすい
  • 断層湖の深さは、断層変位や地盤沈降がどれだけ累積したかに左右される
  • どちらの湖も、形成後の土砂堆積・侵食・火山活動・地殻変動によって形や深さが変化する

湖の形や水深は偶然に決まったものではありません。火山が地面を陥没させたのか、断層が地殻をずらして沈ませたのかという「湖の生まれ方」が、現在の姿に地形として刻まれています。

参考資料

関連する「なぜ?」

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次