なぜ季節や環境の変化で地震の震度が変わることがあるのか?

結論から言うと、地震の震度が「夏だから高く、冬だから低い」というように季節だけで決まることはありません。震度は、その地震によってある地点が実際にどれだけ強く揺れたかを表す値で、主に地震の規模・震源の深さ・断層からの距離・地震波の伝わり方・その地点の地盤条件によって決まります。

ただし、地表近くの地盤は完全に不変ではありません。寒冷地では凍結と融解、地域によっては降雨や地下水位の変化などによって、表層地盤の硬さや地震波速度が季節的に変わることがあります。そのため、同じ地点でも地盤の状態が変われば、地震波の増幅のしかたがわずかに変化する可能性があります。

重要なのは、季節そのものが震度を決めるのではなく、季節や環境によって変化した地盤条件が、震度を左右する多数の要因の一つとして働く場合があるという点です。

目次

震度は「その場所で観測した揺れ」の値

気象庁によると、震度はある場所における地震の揺れの強さを表す指標です。現在の日本では、震度計で観測した加速度波形から計測震度を求めています。

計測震度は単純な最大加速度だけで決まるわけではありません。揺れの大きさに加えて、周期や一定以上の揺れが続く時間も考慮して計算されます。

そのため、同じ最大加速度でも波の周期や継続時間が異なれば、震度が同じになるとは限りません。

また、震度は地震ごと・観測地点ごとの値です。ある地震で東京のある観測点が震度4だった場合、その地震の震度4という観測結果が季節の変化で後から震度3や5へ変わるわけではありません。

まず震度を大きく左右するのは季節より震源条件

震度を考えるとき、最も大きな違いを生むのは通常、地震そのものの条件です。

  • マグニチュードがどれくらいか
  • 震源が浅いか深いか
  • 断層から観測地点までどれくらい離れているか
  • 断層破壊がどの方向へ進んだか
  • どの周期の地震波が強く放出されたか

たとえば、冬に起きた小さな遠地地震より、夏に起きた大きな浅い直下地震のほうが強く揺れることは当然あります。これは季節差ではなく、震源条件の違いです。

したがって、異なる季節に起きた二つの地震の震度を比べるだけでは、「季節によって震度が変わった」と判断できません。

同じ地震でも地盤によって震度が違う

季節変化を理解する前に、地盤の影響を押さえる必要があります。

気象庁は、地震動は地盤や地形に大きく影響されるため、同じ市町村や同じ集落でも場所によって震度が異なる場合があると説明しています。

硬い岩盤では地震波の増幅が比較的小さい一方、柔らかい沖積地や厚い堆積層では特定の周期の揺れが大きくなることがあります。

USGSも、地表近くの土や地質の違いによって地震波が大きく変化する現象を「サイト応答」として扱い、一般に軟らかい地盤では岩盤地点より大きな地震動になることがあると説明しています。

この地盤条件が季節や環境によって少し変化すれば、同じ地点の揺れ方にも変化が現れる可能性があります。

寒冷地では凍結によって地盤が硬くなる

季節変化が地震動へ影響しうる代表例が、寒冷地の地盤凍結です。

土の中の水が凍ると、土粒子と氷が一体化して表層地盤が硬くなります。その結果、地震波の伝わる速度や地盤の共振特性が変化します。

北海道北見市で行われたJ-STAGE掲載の研究では、1年を通した重錘落下測定と地震観測により、凍結期に表層のレイリー波位相速度が速くなり、地盤震動特性に季節変化が現れることが確認されています。

別の同地域の研究でも、凍結期には表層地盤の位相速度が非凍結期より大きくなることが示されています。

つまり、冬に地面が凍結する地域では、夏と冬で「同じ地盤」とみなせない場合があるのです。

凍結すると必ず震度が高くなるのか

必ず高くなるわけではありません。

地盤が硬くなると、地震波速度が上がりますが、それが計測震度を大きくするか小さくするかは、地盤の層構造と地震波の周期によって変わります。

地盤は特定の周期の波を増幅しやすい性質を持っています。凍結によって地盤の硬さが変われば、増幅されやすい周期も変化する可能性があります。

一方、震度は複数の周期成分を含む地震動から計算されます。そのため、「凍る=震度が一段階上がる」といった単純な対応関係はありません。

寒冷地で重要なのは、地盤の季節変化を無視すると、地震動評価やサイト特性の推定に誤差が生じる場合があるという点です。

雨や地下水位の変化も地盤物性を変えることがある

寒冷地以外では、降雨や地下水の季節変化も地盤状態に影響します。

土の中に含まれる水の量が変わると、土粒子間の接触状態、密度、地震波速度、減衰特性などが変化する場合があります。地下水位も降雨や河川水位などに応じて季節的に上下することがあります。

海外の地震観測研究では、表層数十mの地震波速度に日変化・季節変化があり、土壌水分や熱弾性変形との関係が指摘されています。

ただし、その変化がそのまま気象庁震度の明瞭な季節差になるとは限りません。表層地盤の変化量、地震波の周期、震源条件などによって影響の大きさが変わるからです。

大雨の後は震度が高くなるのか

「雨で地盤が水を含むなら、大雨の後は震度が高くなるのでは」と考えたくなりますが、一般則としては言えません。

地盤に水が増えれば物性が変化する可能性はありますが、その影響は地質・土質・地下水位・層厚によって異なります。また、震度を決める震源や伝播経路の影響のほうが大きい場合が一般的です。

したがって、同じ地域の地震について「雨季は震度が高い」「乾季は低い」と一律に予測することはできません。

一方で、大雨や高い地下水位は液状化、斜面崩壊など別の地盤災害の条件を悪化させる場合があります。このため、震度の変化と地震被害の変化は分けて考える必要があります。

地下水位が高いと液状化しやすくなるが震度とは別

地下水位の高い緩い砂質地盤は、強い地震動を受けると液状化しやすくなります。

液状化が起きれば地盤沈下、噴砂、建物の傾斜、地下構造物の浮き上がりなどが生じることがあります。

しかし、これは「地下水位が高いから計測震度が必ず高くなる」という意味ではありません。

震度は震度計で観測した地震動を表す値です。一方、液状化はその地震動を受けた地盤がどう変形するかという現象です。

同じ震度でも地下水位や土質が異なれば、液状化被害の有無は大きく変わります。

積雪の重さは震度を変えるのか

積雪は地表に荷重を加え、地殻をわずかに変形させます。また、地表近くの温度や含水状態にも影響します。

しかし、一般的な積雪荷重があるだけで、地震発生時の震度が全国的に一段階変わるような効果が生じるわけではありません。

積雪の影響を考える場合は、雪の重さそのものより、寒冷地で同時に起きる地盤凍結・融解や建物への積雪荷重などを区別して考える必要があります。

特に建物被害では、屋根に大量の雪が載っている状態と雪がない状態では構造物の重量条件が異なります。そのため、同じ震度でも被害の出方が変わる可能性がありますが、それは震度そのものの変化とは別です。

気温が高い日と低い日で震度計の値は変わるのか

気象庁の震度は、適切に設置・管理された震度計で観測されます。

気象庁は正確な震度観測のため、局所的に特殊な揺れとなる地盤や交通振動などの影響が大きな場所を避け、地震以外の影響で誤った観測にならないよう震度計を設置・保護することを求めています。

そのため、単に「今日は暑い」「雪が降っている」といった天候そのものが、計算式の中で震度を上下させるわけではありません。

季節の影響があるとすれば、気温や水分が表層地盤の物理状態を実際に変え、その結果として地震動が変化した場合です。

同じ地点で震度の季節差を調べるのが難しい理由

季節による震度差を実証するには、本来ならほぼ同じ震源・規模・断層破壊・伝播経路の地震を、異なる季節に繰り返し比較する必要があります。

しかし自然地震は毎回条件が異なります。震源が数km違うだけでも地震波の伝わり方が変わり、マグニチュードや破壊方向が違えば地表の波形も変わります。

そのため、冬の地震と夏の地震で震度が違ったとしても、それが地盤の季節変化によるものなのか、震源条件の違いによるものなのかを簡単には分離できません。

研究では、地震観測、ボアホール観測、微動観測、人工振源などを組み合わせ、地盤側の変化だけを取り出して評価します。

季節変化よりも場所による差のほうが大きい場合が多い

USGSのサイト応答研究では、表層の地質や地盤条件によって地震動が大きく変わり、土質地点と岩盤地点で大きな差が出ることが示されています。

また、気象庁も、同じ市町村内であっても地盤や地形の違いによって震度が異なることがあるとしています。

これに対して、凍結・融解などによる季節変化は特定の地域・周波数帯で重要になるものの、一般には「硬い岩盤と厚い軟弱地盤」のような基本的なサイト差を置き換えるものではありません。

したがって防災上は、まず自宅や職場がどのような地盤にあるのかを把握し、そのうえで寒冷地などでは季節的な地盤変化も考慮するという順序が適切です。

震度と被害の季節変化を混同しないことが重要

季節によって大きく変わりやすいのは、震度そのものよりも「同じ揺れを受けたときの被害条件」である場合があります。

冬なら積雪による屋根荷重、凍結路面、暖房器具の使用などが被害や避難行動に影響します。大雨の後なら斜面崩壊や地盤の軟弱化、地下水位上昇による液状化リスクなどが問題になります。

同じ震度5強でも、季節や環境条件が違えば二次災害や建物・インフラへの影響は同じではありません。

そのため、「震度は同じでも災害リスクは季節で変わる」という視点が重要です。

まとめ

地震の震度は、季節だけによって規則的に変わるものではありません。震度を主に決めるのは、地震の規模、震源の深さ、断層からの距離、地震波の伝播経路、観測地点の地盤です。

一方、地表近くの地盤は季節や環境によって少し変化することがあります。寒冷地では凍結・融解によって表層地盤の地震波速度や震動特性が変化することが実際の観測で確認されています。降雨、地下水、土壌水分、気温なども地盤物性に影響する場合があります。

ただし、その効果が震度へどの程度現れるかは地点や地震の周期特性によって異なり、「冬は震度が高い」「雨の後は必ず強く揺れる」といった一般則はありません。

つまり、季節や環境によって変化するのは震度そのものを直接決める仕組みではなく、震度に影響する地盤条件の一部です。そして実際の震度は、震源・伝播経路・地盤という多くの条件が組み合わさった結果として決まります。

参考資料

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