地震の液状化が季節や環境によって変化するのは、液状化の起こりやすさを左右する地下水位や地盤の飽和状態が、降雨・融雪・地下水利用・海面水位などによって変わるからです。同じ砂地盤でも、地震が起きた時点で地下水位が浅く、砂層が水で飽和していれば液状化しやすくなります。逆に地下水位が深く、液状化しやすい砂層が不飽和なら、発生しにくくなることがあります。
ただし、季節だけで液状化の有無が決まるわけではありません。液状化には、緩い砂質地盤・高い飽和度・十分に強く長い地震動という条件が重なる必要があります。季節や環境は、このうち主に地下水条件を変える要因として働きます。
液状化の基本条件は季節に関係なく同じ
地震本部は、液状化が起こりやすい場所として、地下水位が高く、ゆるく堆積した砂地盤を挙げています。
地震で砂地盤が繰り返し揺さぶられると、砂粒はより密に並ぼうとします。しかし、砂粒のすき間が地下水で満たされていると、水がすぐに逃げられず、間隙水圧が上昇します。
すると砂粒どうしを押し付ける有効応力が低下し、地盤が建物を支える力を失います。これが液状化です。
したがって、液状化が起こる基本条件は次の三つです。
- 液状化しやすい緩い砂質地盤があること
- その砂層が地下水で飽和していること
- 液状化を起こすだけの強さ・継続時間の地震動を受けること
季節や環境が変化しても、土質そのものや地震の規模が毎回大きく変わるわけではありません。変わりやすいのは、主に二つ目の地下水・飽和条件です。
地下水位が浅いほど液状化しやすくなる
地下水位が高いと、地表に近い砂層まで水で飽和します。
すると地震時に過剰間隙水圧が上昇しやすくなり、液状化の対象になる層が地表近くまで広がります。
USGSが2009年の米国カリフォルニア州オランチャ地震を調査した研究では、M5.2という比較的小規模な地震でも広い液状化が発生しました。主因として、非常に液状化しやすい浅い砂層と、地表近くにある地下水位が挙げられています。
この例は、地震動の大きさだけでなく、地震が起きた瞬間の地下水条件が液状化を大きく左右することを示しています。
降雨の多い時期は地下水位が上がることがある
地下水位は一年中同じではありません。
雨水が地中へ浸透すると地下水が涵養され、地下水位が上昇することがあります。日本の住宅地を対象にしたJ-STAGE掲載研究では、地下水位が冬期に低く、梅雨から台風期にかけて高くなる季節変化が確認されています。
このような場所では、乾燥した時期には地下水面より上にあった砂層が、雨の多い時期には地下水面より下になり、飽和する可能性があります。
その状態で地震が起きれば、同じ場所でも乾燥期より液状化しやすくなる場合があります。
ただし、全国どこでも「夏は地下水位が高い」とは限りません。降雨の季節性、地形、帯水層の透水性、河川とのつながり、地下水利用などによって変化のパターンは地域ごとに異なります。
大雨の直後に必ず液状化しやすくなるわけではない
大雨が降ったからといって、すぐに深い地下水位まで上昇するとは限りません。
雨水がどの速さで浸透するかは、表土、舗装、地質、地盤の透水性、排水条件によって違います。また、浅い不圧地下水と深い被圧地下水では反応のしかたも異なります。
そのため、「昨日大雨だったから今日の液状化危険度が必ず高い」と単純には判断できません。
一方、地下水位がもともと浅い低地や埋立地では、降雨や河川水位の変化が地下水位へ反映されやすい場所があります。こうした地域では、地震時の実際の地下水位を把握することが重要です。
地下水利用が多い時期は逆に地下水位が下がることもある
地下水位の季節変化は、自然の雨だけで決まりません。
農業用水、工業用水、消雪用水、井戸利用などが季節的に増える地域では、地下水のくみ上げによって地下水位が低下することがあります。
その結果、雨の多い季節でも、深い帯水層では地下水位が低くなる場合があります。
液状化だけを考えれば、地下水位が下がって砂層が不飽和になれば液状化しにくくなる方向に働きます。
しかし、過剰な地下水くみ上げは地盤沈下など別の問題を引き起こすことがあります。そのため、「地下水位を下げればよい」と単純に考えることはできません。
融雪期に地下水位が上がる地域もある
雪の多い地域では、春の融雪が大量の水を地中へ供給します。
冬の間に地表へ蓄積された雪が短期間で融けると、河川流量や地下水涵養量が増え、地下水位が上がることがあります。
この場合も、液状化しやすい砂層が地下水で満たされる範囲が広がれば、地震時の液状化条件は変化します。
ただし、寒冷地では地盤凍結によって浸透経路が変わることもあるため、融雪水がどこへ流れるかは地域の地盤条件によって異なります。
海岸や埋立地では潮位や海面水位も地下水へ影響する
海岸付近の地下水位は、海面水位の影響を受けることがあります。
特に低い埋立地や砂質の海岸低地では、地下水面と海水準が近く、潮汐や長期的な海面変化の影響が地下水位に表れる場合があります。
短期的な潮汐の影響は内陸へ行くほど小さくなりますが、海に近く透水性の高い地盤では地下水位が潮位と連動することがあります。
そのため、沿岸の液状化リスクを考えるときには、地震時の地下水条件だけでなく、海岸からの距離や海面水位との関係も重要です。
海面上昇で将来の液状化危険度が変わる場所もある
季節変化とは異なりますが、長期的な環境変化として重要なのが海面上昇です。
USGSのサンフランシスコ湾岸を対象とした研究では、海面上昇に伴う地下水位モデルを使って液状化危険度を評価した結果、多くの地点では小さな海面上昇への感度は限定的だった一方、少数の地点では地下水位のわずかな変化によって液状化の発生可能性や深刻度が大きく上昇しました。
つまり、海面上昇がすべての沿岸地域を同じように危険にするわけではありません。地下水面の深さ、地盤の標高、砂層の位置などの条件が合う場所で影響が大きくなります。
土壌水分が増えることと「地下水で飽和すること」は同じではない
雨の後に土が湿っていても、それだけで液状化条件が整ったとは限りません。
液状化で重要なのは、液状化対象となる砂層の間隙が水でほぼ満たされた飽和状態です。
地表から数十cmの土が湿っていても、数m下の砂層まで地下水位が上がっていなければ、液状化条件は大きく変わらない場合があります。
逆に、地表は乾いて見えても、地下水位が浅い土地では、その下の砂層が十分に飽和していることがあります。
見た目の「地面が濡れているか」ではなく、地下水位と地層構成を確認することが重要です。
地震そのものが地下水位を変えることもある
環境条件と液状化を考えるときには、原因と結果を逆にしないことも大切です。
USGSは、大きな地震によって地下水位が急に上昇・低下したり、井戸水が濁ったりする現象を多数報告しています。
つまり、地震前の地下水位が液状化条件に影響する一方で、地震や液状化そのものが地下水位を変えることもあります。
地震後に井戸水位が変化していても、それを「地下水位が高かったから地震や液状化が起きた証拠」と即断することはできません。
同じ季節でも液状化する場所としない場所がある
地下水位が高い季節でも、すべての場所で液状化するわけではありません。
液状化には、地下水条件に加えて、砂の粒度、細粒分、締まり具合、地層の厚さ、地震動の強さ・継続時間などが関係します。
たとえば地下水位が同じ1mでも、緩い埋立砂が厚く分布する場所と、硬い礫地盤や粘土層が主体の場所では液状化のしやすさが大きく異なります。
つまり、季節による地下水位変化は「もともと液状化しやすい地盤の危険度を上下させる要因」の一つと考えるのが正確です。
一度液状化した土地は季節で元に戻るのか
液状化が終わると、過剰間隙水圧は徐々に消散し、砂粒は再び接触して地盤の支持力を回復します。
しかし、地盤が沈下したり砂が締まったりすると、地震前と完全に同じ状態には戻らないことがあります。
一方、地下水位はその後の降雨・排水・地下水利用などによって再び変化します。
そのため、同じ土地でも次の地震時には、前回とは異なる締まり具合・地下水位・地盤形状になっている可能性があります。
「一度液状化したから次はしない」とも、「必ずまた同じ程度で液状化する」とも言えません。
液状化ハザードマップは季節変化まで示しているのか
一般的な液状化ハザードマップは、地形・地質・ボーリングデータ・想定地震動・地下水条件などを使って地域の相対的な危険度を示します。
しかし、すべての地図が日々・季節ごとの地下水位変化まで反映しているわけではありません。
そのため、個別敷地の評価では、ハザードマップだけでなく、ボーリング調査や地下水位観測を確認することが重要です。
特に地下水位が季節的に大きく変動する地域では、一度だけ測った地下水位をその土地の代表値とみなすと、実際の高水位期を見落とす可能性があります。
住宅や施設の設計では「高い地下水位」を想定することが重要
液状化対策を考える場合、地震がいつ起きるかは選べません。
そのため、設計・地盤評価では、都合のよい低水位期だけでなく、地下水位が高くなる可能性を考慮する必要があります。
地盤改良には、砂地盤を締め固める、固化する、排水性を高める、地下水位を管理する、杭で支持層へ荷重を伝えるなど複数の方法があります。
どの方法が適切かは、地層、地下水、建物重量、周辺環境によって異なります。
まとめ
地震の液状化が季節や環境によって変化する主な理由は、地下水位と地盤の飽和状態が時間とともに変わるからです。
雨の多い時期、融雪期、河川水位が高い時期などに地下水位が上昇すれば、液状化しやすい砂層が水で飽和する範囲が広がり、同じ地盤でも液状化しやすくなる場合があります。逆に、地下水位が低下すれば危険度が下がる方向に働くことがあります。
沿岸部では、潮位や長期的な海面上昇による地下水位変化も重要です。USGSの研究でも、海面上昇によって一部の地点で液状化の可能性や深刻度が増すことが示されています。
ただし、季節だけで液状化が決まるわけではありません。土質、地盤の締まり具合、地下水位、地震動の強さ・継続時間が組み合わさって発生します。
つまり、季節や環境によって主に変化するのは「液状化を起こす地盤の水条件」であり、その変化がもともとの地盤特性と地震動に重なることで、同じ場所でも液状化の起こりやすさが変わるのです。
参考資料
- 地震調査研究推進本部「液状化現象」
- 日本水文科学会誌掲載「地下水位変動と地下水涵養機構」
- U.S. Geological Survey「Liquefaction caused by the 2009 Olancha, California (USA), M5.2 earthquake」
- U.S. Geological Survey「Changes in liquefaction severity in the San Francisco Bay Area with sea-level rise」

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