なぜ溶岩は火山の形をつくるのか?

火山と溶岩が関係しているのは、地下にあるマグマが火山の火口や割れ目から地表へ噴出し、地表を流れる状態になったものを溶岩と呼ぶからです。つまり、溶岩は火山活動によって地下のマグマが地表へ現れた姿の一つです。

ただし、火山の噴火で必ず大量の溶岩が流れるわけではありません。マグマが細かく砕けて火山灰や軽石になる爆発的噴火もあれば、地下水が急膨張する水蒸気噴火のように、新しい溶岩がほとんど出ない噴火もあります。火山と溶岩の関係を理解するには、マグマが地表へ出ると溶岩と呼ばれること、そして溶岩は火山をつくる代表的な噴出物の一つであることを押さえるのが基本です。

目次

地下にあるとマグマ、地表に出ると溶岩

USGSは、地下にある溶融した岩石をマグマ、地表へ噴出した溶融岩石を溶岩と呼ぶと説明しています。

つまり、マグマと溶岩はまったく別の物質ではありません。場所によって呼び方が変わります。

地下のマグマには、溶けた岩石だけでなく、鉱物の結晶や火山ガス成分が含まれることがあります。これが火口や割れ目を通って地表へ出ると、溶岩流や溶岩ドームなどを形成します。

そのため、「火山の中に溶岩がある」という言い方は日常的には通じますが、科学的には地表へ出る前のものはマグマと呼ぶのが基本です。

火山はマグマが地表へ噴出してできる

産業技術総合研究所の地質調査総合センターは、火山は地下のマグマが地表へ噴出することによって形成されると説明しています。

マグマが地表へ出ると、溶岩として流れたり、爆発によって火山灰・軽石・噴石などに砕かれたりします。

多くの火山は一回の噴火だけでできるのではなく、長い時間をかけて何度も噴火を繰り返します。溶岩流が積み重なり、その間に火山灰や火砕物が堆積することで、火山の山体が徐々に成長していきます。

つまり溶岩は、火山から出てくる物質の一つであると同時に、火山そのものの形をつくる材料でもあります。

なぜマグマは溶岩として流れ出すことがあるのか

気象庁は、地下から上昇してきたマグマの圧力が下がると、マグマ中に溶けていた火山ガスが発泡すると説明しています。

このとき、ガスが比較的スムーズに抜け、マグマが激しく破砕されなければ、マグマは液体状のまま火口や割れ目から流れ出します。これが溶岩流です。

反対に、ガスが抜けにくく内部圧力が高まると、マグマが細かく砕けて爆発的な噴火になることがあります。

そのため、溶岩が多く出るか、火山灰や軽石が多く出るかは、マグマの性質やガスの抜け方と深く関係しています。

溶岩の流れ方はマグマの粘り気で変わる

溶岩流の形や広がり方は、溶岩の粘り気によって大きく変わります。

一般に、玄武岩質のマグマは比較的粘り気が小さく、流れやすい傾向があります。そのため、溶岩が薄く広く流れ、火口から長い距離まで到達することがあります。

一方、安山岩質・デイサイト質・流紋岩質など、二酸化ケイ素を多く含むマグマは一般に粘り気が大きくなります。粘性が高い溶岩は遠くまで流れにくく、火口付近に厚くたまる場合があります。

USGSも、溶岩流の速度や到達距離は、溶岩の種類と粘性、斜面の傾き、流路の形、噴出率などによって変わると説明しています。

斜面の傾きや地形も溶岩流を左右する

同じような溶岩でも、流れる地形によって進み方は変わります。

J-STAGE掲載の研究では、溶岩流の形態はマグマの粘性だけでなく、斜面勾配や地面との摩擦などにも左右されるとされています。

急な斜面では重力の影響で流れが速くなりやすく、谷などの低い場所では溶岩が集中して流れる場合があります。

反対に平坦な場所では流れが広がり、冷却が進むことで前進速度が遅くなることがあります。

このため、溶岩流の危険範囲を考えるときには、火口の位置だけでなく周囲の地形を詳しく調べる必要があります。

溶岩は流れながら冷えて固まる

地表へ出た溶岩は、空気や地面、水などに熱を奪われて冷えていきます。

外側が先に冷えて固まり、内部にはまだ高温の溶岩が流れ続けることもあります。

特に流動性の高い溶岩では、表面が固まった後も内部を溶岩が流れ続け、溶岩トンネルのような構造ができる場合があります。

やがて全体が冷えて固まると、溶岩は火山岩になります。玄武岩、安山岩、流紋岩などは、地表付近で比較的速く冷えて固まったマグマに由来する代表的な火山岩です。

溶岩が積み重なると火山の形がつくられる

流れ出した溶岩は、冷えて固まるとその場に残ります。

噴火のたびに新しい溶岩がその上や周囲へ重なると、地形は少しずつ高く、広くなっていきます。

流動性の高い溶岩が繰り返し流れる火山では、なだらかで広い山体が形成されることがあります。

一方、粘性の高い溶岩が火口付近に盛り上がると、溶岩ドームと呼ばれる急な斜面を持つ地形が形成されることがあります。

このように、溶岩の性質は単に「流れる速さ」だけでなく、長期的には火山の形にも影響します。

溶岩ドームも溶岩でできる

溶岩というと、川のように流れる赤い液体を想像しがちですが、粘り気の強い溶岩はあまり遠くまで流れません。

そのような溶岩が火口付近へ繰り返し押し出されると、こんもりと盛り上がった溶岩ドームを形成することがあります。

溶岩ドームは高温の溶岩と岩塊でできており、成長中に一部が崩れると、高温の岩片とガスが斜面を高速で流れ下る火砕流につながることがあります。

つまり、溶岩はゆっくり流れる災害だけを起こすわけではなく、その形態によっては別の危険現象の原因にもなります。

溶岩流はなぜ火山災害になるのか

溶岩流は高温の溶融岩石なので、その通り道にある建物、道路、農地、森林などを焼いたり、押したり、厚く覆ったりします。

USGSは、多くの溶岩流は人が逃げられる程度の速度で進むことが多い一方、進路上の建物やインフラ、農地を破壊・埋没させると説明しています。

また、溶岩流が道路を横切れば交通が遮断され、電線や配管が被害を受ければ生活インフラにも影響します。

人命への直接被害だけでなく、土地そのものが厚い溶岩に覆われ、長期的に利用しにくくなることが溶岩災害の大きな特徴です。

溶岩流は必ず速く流れるわけではない

映像では溶岩が勢いよく流れているように見えることがありますが、実際の速度は条件によって大きく違います。

流動性の高い玄武岩質溶岩でも、平坦な場所の流れの先端は比較的ゆっくり進むことが多くあります。

一方、急斜面や狭い流路、溶岩トンネルの内部などでは流れが速くなる場合があります。

そのため、「溶岩流は遅いから必ず安全」と考えるのも適切ではありません。噴火地点、地形、噴出率、流路などをもとに警戒区域や避難判断を行う必要があります。

水と接触すると別の危険が生じることがある

高温の溶岩が海、湖、雪や氷など大量の水と接触すると、水が急激に加熱されることがあります。

条件によっては蒸気爆発が起きたり、高温の飛沫や岩片が飛散したりする危険があります。

また、雪や氷が多い地域では溶岩の熱で大量の融水が生じ、それが土砂と混ざると泥流やラハールにつながる場合があります。

つまり、溶岩の危険性は「高温の岩石が流れること」だけでなく、周囲の水や地形との相互作用によって変化します。

昔の溶岩流を調べると過去の噴火がわかる

冷えて固まった溶岩流は、地形や地層の中に長く残ります。

その分布、厚さ、化学組成、年代などを調べることで、過去にどの火口からどの方向へ溶岩が流れたのかを推定できます。

火山学では、このような過去の溶岩流を調べて噴火履歴を復元します。

どの地域まで溶岩が到達したことがあるかを知ることは、将来の溶岩流ハザードを考える基礎資料にもなります。

溶岩の化学組成から地下のマグマを調べられる

噴出直後の溶岩や、冷えて固まった溶岩を採取して化学組成を分析すると、地下のマグマがどのような性質だったかを調べられます。

含まれる元素や鉱物、結晶の組成を調べることで、マグマの温度、結晶化、別のマグマとの混合などの履歴を推定できる場合があります。

つまり溶岩は、火山が地表につくる地形材料であるだけでなく、地下のマグマ供給系を知るための重要な試料でもあります。

火山と溶岩の関係で間違えやすいこと

火山と溶岩については、いくつか混同されやすい点があります。

  • マグマと溶岩は別物ではない:地下ではマグマ、地表へ出れば溶岩と呼ぶ。
  • 噴火すれば必ず溶岩が大量に出るわけではない:火山灰中心の爆発的噴火や水蒸気噴火もある。
  • 溶岩は必ずさらさら流れるわけではない:粘性が高いと火口付近に厚くたまり、溶岩ドームになることがある。
  • 溶岩流の速さは一定ではない:粘性、地形、噴出率、流路で大きく変わる。

これらを区別すると、火山活動と溶岩の関係を正確に理解しやすくなります。

まとめ

火山と溶岩が関係しているのは、地下のマグマが火口や割れ目から地表へ噴出し、地表を流れる状態になったものが溶岩だからです。

溶岩の流れ方は、マグマの粘性、ガスの抜け方、斜面勾配、噴出率などによって変わります。流動性の高い溶岩は遠くまで流れやすく、粘性の高い溶岩は火口付近に厚くたまり、溶岩ドームをつくることがあります。

さらに、溶岩は冷えて固まることで火山岩となり、噴火を繰り返すたびに火山の山体を形づくります。一方で、進路上の建物や道路、農地を覆うなど、火山災害の原因にもなります。

つまり、溶岩は「火山から出てくる赤く熱い物質」というだけではなく、地下のマグマが地表へ現れた姿であり、火山の成長・地形・噴火様式・災害を理解するための重要な存在なのです。

参考資料

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