結論からいうと、雨の雨粒に場所や条件による違いがあるのは、雨粒ができる雲の種類、雲の中の上昇気流、水蒸気の量、気温、そして地上まで落ちる途中の湿度などが場所ごと・時間ごとに違うからです。積乱雲のように強い上昇気流をもつ雲では比較的大きな雨粒ができやすく、霧雨のような弱い降水では小さな雨粒が中心になります。また、雲の下の空気が乾いていると、小さな雨粒ほど途中で蒸発しやすくなります。
つまり、雨粒の違いは「地域そのものが雨粒を大きくする・小さくする」というより、その場所でどのような雲と空気の条件がそろっているかによって生まれます。同じ地域でも、季節や天気の変化によって雨粒の大きさや数、落下速度は変わります。
雨粒は最初から同じ大きさではない
雨粒のもとは、雲の中に浮かんでいる非常に小さな水滴や氷の粒です。雲の中では、小さな水滴どうしがぶつかってくっついたり、氷の粒が成長したりして、次第に大きな降水粒子になります。
気象庁は、雲の中で小さな水滴が上昇流などによって衝突・合体し、ある程度大きくなると上昇流で支えられなくなって雨として落下すると説明しています。さらに、雨粒は落下中にもほかの小さな水滴と衝突して大きくなることがあります。
この成長の仕方は雲ごとに同じではありません。雲の厚さ、上昇気流、水蒸気量、雲内の温度などが違うため、地上へ届く雨粒にも違いが生まれます。
積乱雲では大きな雨粒ができやすいのはなぜ?
積乱雲は、強い上昇気流によって鉛直方向へ大きく発達する雲です。上昇気流が強いと、雲の中へ暖かく湿った空気が大量に運ばれ、雨粒の材料となる水分が増えます。
また、成長途中の水滴や氷の粒がすぐに落下せず、雲の中に長くとどまりやすくなります。その間にほかの粒と衝突・合体し、より大きな降水粒子へ成長することがあります。
NASAのGlobal Precipitation Measurement(GPM)は、雨粒の大きさには雲の中の水蒸気量と上昇気流の強さが関係し、雷雨のような強い上昇気流では大きな雨粒が生じやすいと説明しています。
気象庁も、夏の入道雲から降る大粒の雨では直径5mmほどになる例を示しています。こうした大きな雨粒は、小さな雨粒より速く落下します。
霧雨ではなぜ雨粒が小さいのか
霧雨は、非常に小さな水滴が細かく降る雨です。積乱雲のような激しい上昇気流を伴わず、雲の中で雨粒が大きく成長する機会が少ない場合、比較的小さな粒のまま地上へ落ちてきます。
NASAも、霧や霧雨では小さな雨滴が低い速度で落下すると説明しています。反対に、強い雷雨では大きな雨滴ができやすく、落下速度も大きくなります。
そのため、同じ「雨」でも、しとしと降る雨と、夏の夕立のようなどしゃ降りでは、雨粒の大きさや落下の勢いが違って見えます。
雨粒の大きさと落下速度はどう関係する?
雨粒は大きいほど重くなりますが、落下中には空気抵抗を受けます。重力と空気抵抗が釣り合うと、ほぼ一定の速度で落ちるようになります。
気象庁によると、普通の雨で直径約2mmの雨粒は秒速約7m、夏の入道雲から降る直径約5mmの大粒の雨は秒速約10mで落下する例があります。
NASAも、静かな空気中では雨滴の落下速度は大きさとともに増え、最大級の雨滴では秒速約10mに達するとしています。
したがって、大粒の雨では「粒そのものが大きい」だけでなく、地上へ届く速度も速くなるため、体に当たったときの強さや雨音にも違いを感じやすくなります。
雨粒は大きければ大きいほど成長できるのか
雨粒には大きさの限界があります。雨粒が大きくなると、落下中に受ける空気抵抗が強くなり、形が変形します。さらに大きくなると不安定になり、分裂することがあります。
NASA GPMでは、一般的な雨滴は大きくても直径約6mm程度までで、衝突や表面の不安定さによって大きさに限界が生じると説明しています。
そのため、非常に強い雨でも「巨大な一粒の雨」が降ってくるのではありません。さまざまな大きさの雨粒が多数含まれ、その数と大きさの組み合わせによって強い降水になります。
雨粒は涙のような形ではない
イラストでは雨粒が涙のような形で描かれることがありますが、実際の雨粒はその形ではありません。
小さな水滴は表面張力によってほぼ球形です。大きくなって落下速度が増すと、下側から受ける空気抵抗によって扁平になり、上が丸く下が平たい形に近づきます。さらに大きくなると形が不安定になり、分裂することがあります。
つまり、雨粒の形にも条件による違いがあります。粒が小さいか大きいか、どれくらい速く落ちているかによって形も変化します。
雲の下の空気が乾いていると雨粒はどう変わる?
雨粒は、雲を出たあとも変化します。地上までの空気が乾燥していると、落下する雨粒の表面から水が蒸発します。
そのため、小さな雨粒は地上へ届く前にさらに小さくなったり、完全に蒸発したりすることがあります。空から雨の筋が見えているのに地上ではほとんど雨を感じないことがあるのは、こうした蒸発が関係する場合があります。
気象庁も、雲の中へ乾いた空気が入ると小さな水滴が蒸発すると説明しています。雨粒の大きさは雲の中で決まって終わりではなく、落下する空気の湿り具合によっても変わります。
気温の違いは雨粒のでき方をどう変える?
気温は、雲の中で降水粒子が液体の水滴として成長するか、氷の粒として成長するかに関係します。
雲の上部が氷点下の場合、氷晶や雪の結晶が成長し、それが落下途中で暖かい空気の層を通って溶けると雨粒になります。気象庁の気象レーダー解説でも、上空で雪片だった降水粒子が、0℃付近の高度を通過して溶けると雨滴になることが説明されています。
一方、雲の大部分が0℃より高い場合には、水滴どうしの衝突・合体が雨粒形成の中心になることがあります。
このため、同じ地上の雨でも、雲の中でどのような温度環境を通ってきたかによって、雨粒が成長した経路は異なります。
場所による違いは「地域名」より「雲と空気の条件」で決まる
雨粒に地域差があると聞くと、「山では大粒」「海岸では小粒」のように場所だけで決まるように思えるかもしれません。しかし、実際にはそれほど単純ではありません。
山地では湿った空気が斜面に沿って上昇し、雲や雨が発達しやすくなることがあります。海の近くでは水蒸気が供給されやすい場合があります。都市や内陸でも、強い積乱雲が発達すれば大粒の雨になることがあります。
したがって「場所による違い」の正体は、その場所で生じやすい上昇気流、水蒸気量、雲の種類、気温、湿度の違いです。同じ場所でも、前線の雨と積乱雲の雨では雨粒の特徴が変わります。
同じ雨雲の中でも雨粒は同じではない
一つの雨雲の中でも、雨粒の大きさは均一ではありません。雨粒が成長する位置や時間、上昇気流の強さ、水滴どうしの衝突回数がそれぞれ違うためです。
NASA GPMでは、降水を正確に測るには、雨滴の大きさがどのような割合で含まれているかという「粒径分布」が重要だとされています。同じ降水量でも、大きな雨滴が少数含まれる雨と、小さな雨滴が多数含まれる雨では粒径分布が異なります。
この違いは気象レーダーによる降水量の推定にも関係します。気象庁の二重偏波レーダーでは、水平・垂直方向の電波の反射の違いを利用して、雨粒などの大きさや形、降水の強さをより詳しく推定します。
雨が強いほど必ず大粒なのか
強い雨では大きな雨粒が含まれやすい傾向がありますが、「強い雨=大粒だけ」というわけではありません。
降水の強さは、単位時間に地上へ届く水の総量です。そのため、比較的小さな雨粒でも非常に多く降れば強い雨になりますし、大きな粒が混ざっていても数が少なければ降水量はそれほど多くならないことがあります。
雨の強さを決めるには、雨粒の大きさだけでなく、粒の数と落下速度を合わせて考える必要があります。
季節によっても雨粒は変わる?
季節そのものが直接雨粒の大きさを決めるわけではありませんが、季節によって現れやすい雲や気象条件が変わるため、結果として雨粒の特徴にも違いが現れます。
夏は強い日射と暖かく湿った空気によって積乱雲が発達しやすく、大粒の強い雨が降ることがあります。一方、前線に伴う層状の雲では、広い範囲で比較的均一な雨が長く続くことがあります。
冬には上空で雪や氷として成長した降水粒子が途中で溶けて雨になる場合もあります。このように、季節による違いも、実際には雲の種類や温度構造の違いを通して雨粒に表れます。
雨粒の違いを理解するポイント
- 雨粒は雲の中の小さな水滴や氷の粒が成長してできる
- 強い上昇気流と豊富な水蒸気がある積乱雲では大きな雨粒ができやすい
- 霧雨では比較的小さな雨粒がゆっくり落ちる
- 一般に大きな雨粒ほど落下速度が速い
- 大きすぎる雨粒は空気抵抗で変形・分裂するため、大きさには限界がある
- 乾いた空気を通ると雨粒は蒸発して小さくなることがある
- 雲内の気温によって、水滴として成長する場合と氷から溶けて雨になる場合がある
- 場所による違いは、地域名そのものより、その場所の雲・気流・湿度・気温条件によって生まれる
つまり、雨の雨粒に場所や条件による違いがある最大の理由は、雨粒が成長する雲の環境と、地上まで落下する空気の状態が毎回同じではないからです。強い積乱雲、弱い霧雨、乾燥した空気、寒い雲など、条件が変われば雨粒の大きさ・数・形・落下速度も変わります。雨粒を見ることは、その雨を作った雲と大気の状態を見ることでもあるのです。

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