結論からいうと、巻雲は「雲とは別のもの」ではなく、雲を高さや形などで分類したときの代表的な種類の一つです。 巻雲は空の高いところに現れる上層雲で、低温のため主に氷晶からできています。細い筋や羽毛のように見えるのは、その氷晶が上空の風に流されながら広がるためです。
つまり「雲」と「巻雲」の関係は、「大きな分類」と「その中の一種類」という関係です。この記事では、なぜ巻雲が雲の一種なのか、どのような場所でできるのか、なぜ細く白い形に見えるのか、巻層雲や巻積雲との違い、天気の変化との関係まで順番に解説します。
巻雲は雲の10種類のうちの一つ
気象庁では、地上から観測される雲を高さや形などによって10種類に分類しています。上層雲には巻雲・巻層雲・巻積雲、中層雲には高積雲・高層雲・乱層雲、下層雲には層積雲・積雲・層雲・積乱雲があります。
この分類からわかるように、巻雲は正式に「雲の一種」です。「雲」という言葉が空に見える水滴や氷晶の集まり全体を広く指すのに対し、「巻雲」はその中でも高い高度に現れ、細い筋状・繊維状に見えやすい雲を指します。
英語では cirrus と呼ばれます。Met Officeは、cirrus を高高度にある短く分離した毛髪状の雲と説明しており、NOAAも繊細で羽毛のような雲として紹介しています。日本語の「巻雲」という名称だけでは形を想像しにくいかもしれませんが、空に刷毛で白い線を引いたような雲を思い浮かべるとわかりやすいでしょう。
そもそも雲は何からできているのか
雲は、空気中の水蒸気が冷やされ、微小な水滴や氷の粒になって空中に浮かんでいるものです。NOAAは、雲は基本的に水滴または氷晶からできていると説明しています。
地表付近では気温が比較的高いため、水滴を多く含む雲がよく見られます。一方、上空へ行くほど一般に気温は低くなります。そのため、巻雲のように高いところにできる雲では、液体の水滴よりも氷晶が中心になります。
巻雲が雲でありながら、低い空の雲とは見た目が大きく違うのは、形成される高度と温度、そして雲粒の状態が違うためです。
巻雲が高い空にできるのはなぜか
Met Officeは、巻雲を含む上層雲の雲底がおよそ20,000〜40,000フィート、つまり約6〜12キロメートルの高さにあると説明しています。NOAAも巻雲を高層の雲として分類しています。実際の高度は地域や季節、大気の状態によって変わりますが、巻雲がかなり高い位置にある雲であることは共通しています。
この高さでは空気は非常に冷たく、雲の粒は主に氷晶になります。Met Officeによると、上空で空気が上昇し、その中の少量の水蒸気が氷へ変化することで巻雲が形成されます。
ここで重要なのは、巻雲が「冷たいから勝手に現れる」わけではないことです。雲ができるには、上空に水蒸気があり、その空気が十分に冷えて氷晶をつくる条件が必要です。上昇運動や水蒸気の供給、上空の温度などが組み合わさることで巻雲ができます。
なぜ巻雲は細い筋や羽毛のように見えるのか
巻雲の大きな特徴は、積雲のようにもくもくした塊ではなく、細い糸や羽毛、刷毛で引いた線のように見えることです。
その理由の一つは、巻雲をつくる氷晶が上空の風によって流されることです。NOAAは、巻雲の細く流れる形は風の流れによって氷晶がねじられ、筋状に広がることで生じると説明しています。
上空では高度によって風向や風速が異なることがあります。そのため、氷晶が同じ場所に固まっているのではなく、風に運ばれて細長く伸びたり、曲がったりします。これが巻雲独特の繊維状の姿につながります。
また、巻雲は雲の厚みが比較的小さいことが多く、太陽光を通しやすいため、白く薄い印象を受けます。夕方や朝方には、低い角度から差し込む太陽光の影響で赤や橙色に染まって見えることもあります。
巻雲と積雲はどう違うのか
巻雲と積雲はどちらも「雲」ですが、見た目もできる場所も大きく違います。
積雲は比較的低いところから発生し、地表付近で暖められた空気が上昇する対流によってできやすい雲です。輪郭がはっきりし、白い綿やカリフラワーのように縦方向へ盛り上がる形が特徴です。
一方、巻雲は非常に高いところに現れ、主に氷晶からできています。縦に大きく盛り上がるというより、細い筋や羽毛のように横へ伸びて見えます。
つまり、同じ「雲」でも、できる高度、温度、空気の動き、雲粒の状態によって姿が変わります。巻雲と積雲の違いは、雲が大気の状態を映し出していることのわかりやすい例です。
巻雲・巻層雲・巻積雲は何が違うのか
上層雲には、巻雲のほかに巻層雲と巻積雲があります。名前が似ていますが、見え方には違いがあります。
- 巻雲:細い筋や羽毛のように見えやすい
- 巻層雲:薄いベールのように広い範囲を覆いやすい
- 巻積雲:小さな雲片が規則的に並び、細かな波やうろこのように見えやすい
いずれも高い空に現れる上層雲ですが、「一本一本の筋が目立つのか」「空を薄く覆うのか」「小さな粒状の雲が並ぶのか」という形の違いがあります。
巻層雲では太陽や月の周りに暈が見られることがあります。これは雲の中の氷晶が光を屈折させるためです。一方、巻雲は広い膜になるより、繊維状の筋として見えることが多い点が特徴です。
巻雲は雨を降らせる雲なのか
地上から巻雲を見たとき、その雲から雨が直接降ってくることは通常ありません。Met Officeでは巻雲の降水について、雲から落下する氷晶などがあっても地面へ到達する前に蒸発・昇華してしまうため、地上には届かないと説明しています。
これは、巻雲が非常に高い場所にあることと関係しています。雲と地面の間には長い距離があり、落下する粒子が途中の乾いた空気を通るうちに消えてしまうことがあります。
したがって、「巻雲が出たから、その雲からすぐ雨が降る」という理解は正しくありません。ただし、巻雲が天気の変化を示すことはあります。
巻雲が見えると天気が変わることがあるのはなぜか
Met Officeは、巻雲が温暖前線の前方で現れることがあり、天気の変化が近づいているサインになる場合があると説明しています。前線では暖かい空気が冷たい空気の上にゆるやかに乗り上げるため、まず高いところで雲ができ、その後、時間とともに雲が低く厚くなることがあります。
このため、晴れている空に巻雲が増え、やがて巻層雲などが広がってくる場合には、前線や低気圧が近づいて天気が下り坂になることがあります。
ただし、巻雲を一つ見ただけで「必ず雨になる」と判断することはできません。NOAAは、積乱雲の上部が広がったものも巻雲として残ることがあると説明しています。また、Met Officeは飛行機雲が広がって巻雲になる場合もあるとしています。巻雲には複数の成因があるため、天気を判断するときは雲の増え方やほかの雲の変化、気象情報を合わせて見ることが大切です。
積乱雲の上部が巻雲になることもある
巻雲は、上空の水蒸気から直接形成されるだけではありません。積乱雲が高く発達すると、その上部は非常に低温の領域に達し、多くの氷晶を含みます。積乱雲が衰えたあと、その上部の氷晶が残って広がり、巻雲として見えることがあります。
NOAAのNational Weather Serviceも、雷雨を起こす積乱雲のかなとこ状の上部は巻雲の一形態であり、積乱雲が消えたあとに上部が巻雲として残る場合があると説明しています。
このことからも、「雲の種類」は完全に独立した箱ではなく、大気の変化の中で互いにつながる場合があることがわかります。巻雲も、雲全体の循環や発達の一部として現れるのです。
まとめ
- 巻雲は「雲」と別の現象ではなく、雲の10種類のうちの一つ
- 巻雲は高い空に現れる上層雲で、主に氷晶からできている
- 氷晶が上空の風に流されるため、細い筋や羽毛のように見えやすい
- 積雲とは、できる高度・温度・形・雲粒の状態が大きく異なる
- 巻層雲や巻積雲とは、同じ上層雲でも形や広がり方が異なる
- 巻雲そのものからの降水は通常地上まで届かない
- 温暖前線の前方、積乱雲の上部、飛行機雲の拡散など、複数の原因でできることがある
「なぜ雲と巻雲は関係しているのか?」への最も簡単な答えは、巻雲そのものが雲の一種類であり、高く冷たい空で主に氷晶からできる上層雲だからです。巻雲の細い筋状の姿には、上空の低い気温と風の流れという大気の特徴が表れています。
参考資料
- 気象庁「いろいろな雲」
- Met Office「High clouds」
- NOAA NESDIS「Types of Clouds」
- NOAA National Weather Service「Cloud Development」

コメント