なぜ台風の最大風速は眼の壁付近で最も強くなるのか?

台風情報では「最大風速40m/s」「最大風速50m/s」といった数字が示されます。では、この最大風速は台風のどこで、どのような仕組みで生まれるのでしょうか。

結論からいうと、発達した台風では、中心の目そのものではなく、その周囲にある眼の壁付近で風が最も強くなります。中心へ近づくほど気圧が急激に低くなり、強い気圧傾度力が生まれることに加え、回転しながら中心へ流れ込む空気の角運動量が保たれることで風速が大きくなるためです。

目次

最大風速とは何を表すのか

気象庁でいう「風速」は10分間の平均風速を指します。そして「最大風速」は、その10分間平均風速の最大値です。

一方、「最大瞬間風速」は短い時間の瞬間的な風をもとにした値で、最大風速とは別の指標です。台風の強さの階級分けに使われるのは最大風速です。

そのため、「最大風速40m/s」という情報は、一瞬だけ40m/sの風が吹いたという意味ではありません。

台風の中心そのものは最も風が強い場所ではない

発達した台風には、中心付近に「目」と呼ばれる比較的風の弱い領域があります。気象庁も、中心のごく近くは目であり、その周辺が最も風の強い領域になると説明しています。

目の周囲には「眼の壁」と呼ばれる発達した積乱雲の壁があり、強い上昇流と激しい雨、そして最も強い風が集中します。

つまり、最大風速は「最も気圧が低い地点そのもの」ではなく、その少し外側で現れるのが一般的です。

中心へ近づくほど気圧差が急になる

風を生み出す重要な力の一つが気圧傾度力です。空気は気圧の高い方から低い方へ動こうとし、短い距離で気圧が大きく変化するほど、その力は強くなります。

台風では中心へ近づくほど気圧が低くなりますが、特に眼の壁付近では気圧の変化が急になります。

このため、眼の壁付近では強い気圧傾度力が働き、非常に強い風が吹きやすくなります。

回転しながら中心へ近づくと風が速くなる

台風の地上付近では、空気は渦を巻きながら中心へ流れ込みます。

回転している空気が中心へ近づくと、回転半径が小さくなります。このとき角運動量がある程度保たれるため、風速は大きくなりやすくなります。

フィギュアスケートの選手が腕を縮めると回転が速くなる現象に似た考え方です。

ただし、実際の台風では地表面との摩擦や気圧傾度力、コリオリ力なども同時に働くため、角運動量だけですべてが決まるわけではありません。

最大風速が現れる半径がある

台風には、中心からある距離で風速が最大になる場所があります。これを「最大風速半径」と考えることができます。

中心の目の中では風が比較的弱く、そこから外へ進むと風速が急に強くなり、眼の壁付近で最大になります。さらに外側へ離れると、気圧傾度も弱まり、風速は次第に小さくなります。

つまり、台風の風速分布は中心から外側へ単純に弱くなるのではなく、目の外側にピークを持つ構造です。

同じ中心気圧でも最大風速が違う理由

中心気圧が同じ台風でも、最大風速は同じとは限りません。

NOAAは、熱帯低気圧の風の強さは中心気圧そのものではなく、気圧傾度によって決まり、最大風速が現れる半径が異なると同じ中心気圧でも最大風速が変わると説明しています。

たとえば、中心付近に強い気圧差が集中した小さく引き締まった台風では、短い距離で気圧が急変するため、最大風速が強くなりやすくなります。

一方、同じ中心気圧でも気圧分布が広がった大型の台風では、最大風速が相対的に弱い場合があります。

最大風速と中心気圧は一対一ではない

一般には、中心気圧が低い台風ほど最大風速も強くなる傾向があります。しかし両者は完全な一対一対応ではありません。

NOAAの解説でも、同じ中心気圧であっても、最大風速半径が小さい熱帯低気圧は、半径が大きいものより強い最大風速を持つことがあるとされています。

したがって、台風の強さを見るときは中心気圧だけでなく、最大風速そのものを見る必要があります。

台風の「強さ」は最大風速で分類される

気象庁では、台風の「強さ」を最大風速で区分しています。

最大風速33m/s以上44m/s未満を「強い」、44m/s以上54m/s未満を「非常に強い」、54m/s以上を「猛烈な」と分類します。

一方、台風の「大きさ」は風速15m/s以上の強風域の半径で分類されます。

つまり、「強い台風」と「大型の台風」は別の意味です。最大風速は強さを、大きさは強風域の広がりを表しています。

台風が動くと左右で風速が変わる

台風そのものの回転だけでなく、台風全体の移動も地上で観測される風速に影響します。

北半球の台風は反時計回りに回転しています。気象庁によると、進行方向の右側では台風自身の回転風と台風の移動による風が同じ向きに重なるため、左側より風が強くなりやすくなります。

そのため、最大風速が現れる場所は完全な同心円状ではなく、台風の進行速度や周囲の風によって偏ることがあります。

地表面の摩擦は最大風速にどう影響するのか

地上付近では、海面や陸地との摩擦によって風速が弱められます。

海上は陸上より摩擦が小さいため、台風の最大風速は海上で強く保たれやすくなります。一方、上陸すると地形や建物、森林などによる摩擦が増え、地上付近の風は弱まりやすくなります。

ただし、地形によって風が局地的に強まることもあるため、ある地点で観測される風速は台風全体の最大風速と必ずしも同じではありません。

最大風速と最大瞬間風速はなぜ違うのか

最大風速は10分間平均風速の最大値です。一方、最大瞬間風速はごく短時間の風の変動を含む値です。

台風の中では、積乱雲による下降流や地形の影響などで風が大きく変動します。そのため、瞬間的には平均風速を大きく上回る風が吹くことがあります。

気象庁の台風情報では、最大風速と最大瞬間風速は別々に示されます。

最大風速はどうやって求めるのか

台風が海上にある場合、すべての場所で直接風速を測ることはできません。

そのため、気象庁では衛星画像、気象レーダー、船舶や島の観測、数値予報など複数の情報を使って台風の中心位置や強度を解析します。

台風情報で示される最大風速は、台風に伴って吹く可能性のある最大の平均風速を表す解析値・予報値です。

最大風速だけで危険度は決まらない

最大風速は台風の強さを知る重要な指標ですが、災害の大きさを一つの数字だけで決めることはできません。

同じ最大風速でも、強風域や暴風域が広ければ影響を受ける範囲は大きくなります。また、台風の進路や移動速度、地形によって、ある地域で実際に吹く風の強さは大きく変わります。

さらに、大雨や高潮などの災害は最大風速とは別の条件にも左右されます。

関連する台風の仕組み

台風が渦を巻く構造になる理由については、なぜ台風は渦を巻く構造になるのか?で詳しく解説しています。

台風の進路の仕組みについては、なぜ台風の進路はどのような仕組みで成り立つのか?、高潮の仕組みについては、なぜ台風で高潮が起こるのか?も参考になります。

まとめ

台風の最大風速が眼の壁付近で最も強くなるのは、中心へ近づくほど気圧の変化が急になり、強い気圧傾度力が働くことに加え、回転しながら中心へ流れ込む空気の角運動量によって風速が大きくなるためです。

中心の目そのものでは風は比較的弱く、その外側の眼の壁付近に最大風速のピークがあります。

また、同じ中心気圧でも最大風速半径や気圧分布が異なれば最大風速は変わります。そのため、台風の強さは中心気圧ではなく最大風速で分類されます。

参考資料

関連する「なぜ?」

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次