なぜ雪の結晶は六角形を基本に枝分かれして成長するのか?

雪の結晶というと、六本の腕が伸びた星のような形を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし実際の雪の結晶には、薄い板のようなもの、細長い柱のようなもの、針のようなもの、複雑に枝分かれしたものなど、さまざまな形があります。

それでも多くの雪の結晶に共通しているのが、六角形を基本とする対称性です。結論からいうと、氷の中で水分子が六角形を基本とした規則正しい構造に並ぶため、雪の結晶も六方向へ対称に成長しやすく、さらに水蒸気が結晶の角や突起へ集中して付着することで枝分かれが発達するからです。

目次

雪の結晶は「氷の結晶」が成長したもの

気象庁は、雪は大気中の水蒸気がちりやほこりなどを核として氷の結晶になり、そこへさらに水蒸気が付着して成長することでできると説明しています。

つまり、雪の結晶の形を理解するには、まず「氷という物質がどのような結晶構造をつくるのか」を見る必要があります。

なぜ雪の結晶には六角形が多いのか

水が氷になると、水分子はばらばらに固まるのではなく、規則正しい結晶構造をつくります。大気中で普通に見られる雪の結晶では、この構造が六角形を基本としています。

NOAAは、雪の結晶に見られる六回対称の形は、氷内部の水分子の並び方を反映したものだと説明しています。目に見える六本の腕は、分子レベルの規則性が大きなスケールまで現れたものです。

最初は小さな六角柱のような形から始まる

雪の結晶は、最初から複雑な星形をしているわけではありません。非常に小さな氷晶ができると、まず六角形を基本とした小さな柱や板のような形で成長を始めます。

NOAAは、雪の結晶が成長するときに平らな結晶面である「ファセット」が形成され、この面の形が氷の分子構造を反映して六角形になると説明しています。

六方向が似た形に育つのは同じ環境を経験するから

雪の結晶の六本の腕は、それぞれ別々に成長しています。それでもよく似た形になるのは、六本の腕が非常に近い位置にあり、ほぼ同じ温度と湿度の空気に同時にさらされるからです。

そのため、一つの腕で枝分かれが起こりやすい条件なら、他の腕でも同じような枝分かれが起こりやすくなります。これが雪の結晶の美しい六回対称につながります。

枝分かれは水蒸気が「先端」に集まりやすいため起こる

雪の結晶が成長しているとき、水蒸気は結晶表面へ運ばれ、氷として付着します。

表面に小さな突起ができると、その突起は周囲より先に水蒸気に触れやすくなります。するとその部分へ水蒸気がさらに付着し、突起がいっそう大きくなります。

NOAAは、このように小さな突起が水蒸気を先に受け取り、成長が強まることで枝が形成されると説明しています。

枝の先ほど成長しやすい

一度枝が伸び始めると、枝の先端は周囲の空気へ突き出した形になります。そのため水蒸気が届きやすく、さらに成長が速まります。

その結果、平らな六角板から細い枝が伸び、さらにその枝から小枝が分かれるような樹枝状結晶ができます。

温度によって板状になったり柱状になったりする

雪の結晶の基本は六角形でも、成長する方向は温度によって変わります。

ある温度域では横方向へ成長しやすく、薄い板状や星状の結晶になります。別の温度域では縦方向へ成長しやすく、柱状や針状の結晶になります。

NOAAの雪結晶解説でも、雪の結晶は六角形を基本としながら、温度や湿度によって異なる形へ成長するとされています。

湿度が高いほど複雑な枝が発達しやすい

結晶の周囲に水蒸気が多いほど、成長に使える材料が豊富になります。そのため、枝の先端へ水蒸気が次々と供給され、複雑な樹枝状の形になりやすくなります。

一方、水蒸気が少ない条件では、枝分かれがあまり発達せず、単純な板や柱のような形にとどまることがあります。

気温と湿度の組み合わせで結晶形が変わる

雪の結晶の形は、温度だけ、あるいは湿度だけで決まるわけではありません。両者の組み合わせによって、板状、柱状、針状、樹枝状などへ変化します。

気象庁が南極・昭和基地で観測した雪の結晶でも、気温がおよそ−15℃で湿度が高く、風の弱い条件では大きな樹枝状結晶が成長しやすいとされています。

同じ雪の結晶でも途中で形が変わることがある

雪の結晶は雲の中を移動しながら成長します。落下や上昇気流によって、異なる温度や湿度の層を通ることがあります。

そのため、最初は板状に育っていた結晶が、途中から柱状の成長を示したり、枝分かれの程度が変わったりすることがあります。

雪の結晶の最終的な形は、その結晶が通ってきた雲の環境の履歴を反映しています。

なぜ二つとして同じ雪の結晶がないといわれるのか

雪の結晶は、成長中にわずかな温度差や湿度差を何度も経験します。どの高さを通ったか、どれくらいの時間その条件にいたかによって成長のしかたが少しずつ変わります。

NOAAは、雪の結晶が通る経路や経験する微小な環境差が異なるため、二つの結晶が完全に同じ成長履歴をたどる可能性は非常に低いと説明しています。

六角形なら必ず星形になるわけではない

「雪の結晶は六角形」と聞くと、六本腕の星形だけを想像しがちですが、六角形はあくまで基本となる対称性です。

六角板、六角柱、針状、樹枝状など、外見は大きく違っていても、内部の結晶構造には六方向の規則性が反映されています。

雪片は一つの結晶とは限らない

空から降ってくる大きな雪片は、一つの巨大な雪結晶とは限りません。複数の雪の結晶が途中でくっつき、一つのまとまりになっていることがあります。

そのため肉眼で見る雪片の形は、顕微鏡で見る一個の雪結晶ほど整った六回対称になっていないこともあります。

「なぜ雪は氷の結晶が成長してできるのか?」との違いは「でき方」ではなく「形が決まる仕組み」

なぜ雪は氷の結晶が成長してできるのか?では、氷晶が生まれ、水蒸気を取り込み、地上まで落ちて雪になるまでの生成過程を中心に解説しています。

この記事ではその一段内側に入り、なぜその氷晶が六角形を基本にし、なぜ板・柱・枝分かれといった形へ成長するのかを扱っています。

雪の結晶は雲の状態を映す「記録」のようなもの

雪の結晶の形を見ると、その結晶がどのような温度や湿度の環境で育ったのかを推測する手がかりになります。

気象庁も、雪結晶の形と気象状態の関係を降雪研究に利用しています。結晶形の違いは、見た目の美しさだけでなく、雲の中の状態を知る情報にもなります。

まとめ

雪の結晶が六角形を基本に成長するのは、氷の中で水分子が六角形を基本とする規則正しい構造に並ぶためです。

その上で、温度と湿度が成長方向を変え、水蒸気が突起や先端へ集まりやすい性質によって枝分かれが発達します。

つまり雪の結晶の形は、「氷の分子構造がつくる六方向の対称性」と「雲の中の温度・湿度が左右する成長速度」の組み合わせで決まります。

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参考資料

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