雪が降り続くと、地面の上には白い雪がただ一様に積み重なっているように見えます。しかし実際の積雪を断面で見ると、雪質や硬さ、密度、水分量の異なる層がいくつも重なっています。
結論からいうと、雪は降った時刻や気象条件ごとに性質が異なり、積もった後も圧密・変態・融解・再凍結などで変化し続けるため、時間の履歴が層として残るからです。積雪は単なる「雪の厚み」ではなく、過去の降雪とその後の変化が重なった構造体です。
積雪は「降った雪が地面に残ったもの」
防災科学技術研究所は、雪が降った後に融けずに積もったものを積雪と説明しています。降雪が始まると、まず地面の上に新雪の層ができます。その後さらに雪が降れば、その上に新しい層が重なっていきます。
この時点で、すでに積雪の中には「先に降った雪」と「後から降った雪」という時間の違いがあります。降った時刻が違えば、気温、湿度、風、雪結晶の形なども違うため、層ごとの性質も同じとは限りません。
新雪は降ったときから性質が同じではない
降雪時の気温が低く乾いていれば、軽く空気を多く含む新雪になりやすくなります。反対に、0℃に近い環境では水分を含んだ重い雪になりやすくなります。
つまり、一晩のうちに降った雪でも、気温や風が途中で変われば、上と下で密度や粒の状態が異なる層になることがあります。積雪の層構造は、降雪時の気象条件の変化を反映しています。
積もった雪は自分の重さで圧縮される
積もったばかりの新雪には多くのすき間があり、密度が小さく柔らかい状態です。しかし、その上に新しい雪が積もると、下の雪には重さがかかります。
防災科研は、この変化を「圧密」と説明しています。時間がたつにつれて雪は縮み、密度が高くなり、硬くなっていきます。
そのため、最初は同じような新雪だった層でも、上からの荷重を受けた古い層ほど締まり、上の新しい層とは違う性質を持つようになります。
雪の結晶は積雪の中で形を変える
雪の結晶は、地面に積もった後もそのままの六角形や枝分かれ形を保つとは限りません。防災科研は、積雪中で雪結晶がだんだん丸くなり、結晶同士が結合していく「変態」が起こると説明しています。
この変化によって、ふわふわした新雪は、しまり雪やざらめ雪など別の雪質へ変わります。積雪断面では、こうした雪質の違いが層として観察されます。
温度差があると層ごとの変化も違う
積雪の表面と地面付近では温度が同じとは限りません。地面から熱が伝わることもあれば、夜間に表面が強く冷えることもあります。
そのため、同じ積雪の中でも、上層と下層で雪粒の変化速度や形が異なることがあります。温度勾配が大きい条件では、しもざらめ雪など特徴的な雪質が形成されることもあります。
積雪断面観測で雪温が高さごとに測られるのは、このような内部変化を調べるためです。
融けた水が下へ移動すると新しい層ができる
気温上昇や日射で雪面が0℃に近づくと、雪は融け始めます。防災科研によると、融けた水は積雪の中を下方向へ浸透します。
この水が別の層で再び凍れば氷板のような硬い層ができることがあります。また、水を多く含んだ雪は粒が大きくなり、ざらめ雪へ変化していきます。
こうして積雪は、降雪だけでなく融解と再凍結によっても層構造を複雑にしていきます。
雨が降ると積雪内部の性質が急に変わることがある
雪の上に雨が降ると、水が積雪内部へ入り込みます。水分を含んだ層は重くなり、密度や硬さも変化します。
また、雨水が下へ移動して別の層にたまったり再凍結したりすると、周囲と性質の異なる境界ができます。層構造は降雪だけでなく、その後の雨や気温変化にも左右されます。
風も積雪層を変える
強い風が吹くと、雪面の雪が削られたり、別の場所へ運ばれて再び積もったりします。風で運ばれた雪は細かく砕かれ、締まった層をつくることがあります。
そのため、同じ場所でも「風の強かった時間帯にできた層」と「風の弱いときに積もった層」で硬さが異なる場合があります。積雪の層は、降雪だけでなく風の履歴も記録します。
積雪断面では何を観察するのか
防災科研の積雪断面観測では、雪質、粒径、雪温、密度、硬度、含水率などを高さごとに調べています。
長岡の観測資料でも、新雪、こしまり雪、しまり雪、ざらめ雪、しもざらめ雪、氷板、表面霜など、異なる雪質が層として記録されています。
このような観測をすると、積雪が一様な物体ではなく、性質の異なる複数の層からできていることが分かります。
層の境界は「天気が変わった跡」になる
新たな降雪、風の強まり、気温上昇、雨、融解、再凍結などが起こると、その前後で雪の性質が変わります。すると積雪断面には境界が残ります。
言い換えると、積雪の層構造は過去の天気の履歴を保存した記録のようなものです。いつ降った雪なのか、その後どのような熱や水の影響を受けたのかによって、一つ一つの層の状態が決まります。
積雪深が同じでも中身は同じではない
積雪深が50cmある二つの場所でも、内部構造が同じとは限りません。一方は軽い新雪が厚く積もっているかもしれず、もう一方は締まった古い雪や氷板を含んでいるかもしれません。
そのため、積雪深だけでは雪の重さや硬さ、雪崩の起こりやすさまで完全には分かりません。内部の層構造を見ることに意味があります。
「なぜ同じ量の雪が降っても積雪の深さは同じにならないのか?」との違いは「深さが変わる理由」ではなく「内部構造ができる仕組み」
なぜ同じ量の雪が降っても積雪の深さは同じにならないのか?では、沈み込み、融雪、雪質、風による移動によって積雪深が変わる理由を中心に扱っています。
この記事では、積雪がなぜ一枚の均質な雪ではなく、雪質・密度・硬さの異なる層の重なりになるのかに焦点を絞っています。深さの増減よりも、積雪内部の「構造」がどう作られるかが中心テーマです。
層構造は雪崩を考えるうえでも重要
防災科研は、崩れやすい雪の層の上に多量の雪が積もると、その弱い層を境に上部の雪が滑り落ちる表層雪崩につながる場合があると説明しています。
積雪全体の深さだけを見るより、どこに弱い層があり、その上にどれだけ重い雪が乗っているかを見ることが重要になる場面があります。
積雪は時間とともに更新され続ける
一度できた層構造も固定されたままではありません。雪は圧密され、粒が変化し、水が移動し、融けたり再凍結したりします。
そのため、昨日は柔らかかった層が今日は硬くなり、逆に新しい降雪によってその上に別の弱い層ができることもあります。積雪は冬の間ずっと変化し続ける構造体です。
まとめ
積雪が層構造をつくるのは、雪が降った時期ごとに気温・湿度・風などの条件が異なり、その後も圧密、変態、融解、再凍結、水分移動などの変化が続くためです。
先に降った雪と後から降った雪は異なる履歴を持ち、それぞれ別の雪質や密度、硬さへ変わります。その結果、積雪は地層のように性質の異なる層が重なった構造になります。
つまり、積雪の内部は「いつ、どんな条件で雪が降り、その後どのように変化したか」という時間の履歴が積み重なったものなのです。

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