同じ日に同じ地域で雪が降っていても、海岸では2℃、平野では1℃、山沿いでは氷点下というように、場所によって気温が違うことがあります。雪が降るという同じ現象が起きているのに、なぜ気温はそろわないのでしょうか。
結論からいうと、気温は標高だけでなく、地形、海からの距離、風向、寒気や暖気の流れ込み、夜間の放射冷却などによって場所ごとに異なるからです。雪が降る地域では、その小さな気温差が、雨・みぞれ・雪の違いや積もり方の差にもつながります。
気温は場所ごとに同じではない
気象庁は、気温を通常は地上1.25〜2.0m付近の大気の温度として扱っています。しかし実際の気温分布は、同じ時刻でも一様ではありません。
気象庁の推計気象分布でも、標高による気温差を考慮して面的な気温を推定しています。つまり、近い場所同士でも高さや地形が違えば、地上付近の気温は変わります。
標高が高いほど気温は低くなりやすい
一般に、空気は高度が上がるほど気圧が低くなり、上昇した空気は膨張して冷えます。そのため山地では、平地より気温が低くなりやすくなります。
気象庁の資料では、目安として高度が100m下がると気温が約0.6〜1.0℃上がる場合があると説明されています。逆にいえば、標高が高い場所ほど低温になりやすいということです。
数百メートルの標高差でも雨雪の境界が変わる
雪が降るか雨になるかは0℃だけで機械的に決まるわけではありませんが、地上付近の気温が数℃違えば雪片の融け方は大きく変わります。
新潟地方気象台は、平野部では雨でも山沿いでは雪になることがあると説明しており、その違いに標高による気温差が大きく関係するとしています。
谷や盆地では冷たい空気がたまりやすい
夜間に地面が冷えると、その近くの空気も冷えます。冷たい空気は暖かい空気より密度が大きいため、斜面を下って谷底や盆地へたまりやすくなります。
このような冷気だまりができると、周囲の高い場所より谷底のほうが低温になることがあります。通常の「高いほど寒い」という関係が局地的に逆転することもあります。
盆地の冷気層は雪片を融けにくくする
奈良地方気象台は、盆地などで夜間に大気下層へ冷気層ができると、雪片が融けにくくなる場合があると説明しています。
同じ上空の寒気の下でも、地上付近に冷たい空気が残る場所では雪になりやすく、暖気が入りやすい場所ではみぞれや雨になりやすくなります。
海に近い場所は内陸より冷えにくいことがある
海は陸地より温まりにくく冷えにくいため、冬でも海面が周囲の陸地より相対的に暖かいことがあります。そのため海岸付近では、海から流れ込む空気によって内陸より気温が高くなることがあります。
一方、内陸や盆地では夜間の放射冷却が強まりやすく、風が弱いと冷気がたまりやすいため、海岸より低温になる場合があります。
風向で寒気と暖気の入り方が変わる
同じ地域でも、北寄りの風が強まれば冷たい空気が流れ込みやすくなり、南寄りの風なら比較的暖かい空気が入りやすくなります。
低気圧や前線の位置が少し変わるだけでも、寒気と暖気の境界が移動し、数十km離れた地点で気温差が生じることがあります。
山は空気の流れを変える
山地は、単に標高が高いだけではありません。風を持ち上げたり、遮ったり、谷へ集中させたりするため、周辺の気温分布も変えます。
風上側では冷たい空気が流れ込みやすく、風下側では下降した空気が圧縮されて暖まりやすい場合があります。地形によって風の通り道が変わることが、局地的な温度差につながります。
晴れ間の有無でも冷え方が変わる
雲が少ない場所では、夜間に地面から宇宙へ熱が逃げる放射冷却が強まりやすくなります。一方、厚い雲がある場所では、地表から出る赤外線の一部が雲から戻されるため、冷え込みが弱くなることがあります。
雪雲の切れ間があるかどうかでも、近距離で最低気温が変わることがあります。
積雪そのものも地表の熱のやり取りを変える
雪が地面を覆うと、雪面は日射を強く反射しやすくなります。また雪は熱を伝えにくいため、地面の熱が空気へ直接伝わるのを抑えます。
そのため積雪のある場所と雪の少ない場所では、夜間や晴天時の地表付近の温度変化が違うことがあります。
同じ地域でも市街地と郊外で差が出ることがある
市街地では建物や舗装面が昼間の熱を蓄え、夜間も周囲より冷えにくいことがあります。一方、郊外の雪原や農地では放射冷却が効きやすく、低温になりやすい場合があります。
このため、同じ自治体の中でも雪が積もる場所と積もりにくい場所が分かれることがあります。
湿度が低いと雪片が周囲を冷やすことがある
乾燥した空気中では、雪片から昇華や蒸発が起こり、その際に周囲から熱が奪われます。
気象庁は、湿度が低いと地上気温が比較的高くても雪になることがあると説明しています。降り始めの雪が空気を冷やし、気温が下がる場合もあります。
降雪の強さでも地上付近の気温が変わる
強い降雪が続くと、多数の雪片が落下しながら融解・昇華するため、大気下層から多くの熱が奪われることがあります。
その結果、降り始めには2〜3℃あった場所でも、時間とともに1℃前後まで下がり、雨やみぞれが雪へ変わることがあります。
「場所の気温差」と「上空から地上までの縦構造」は別の見方
なぜ雪が降るときの気温は地上だけで決まらないのか?では、一地点の上空から地上までにどんな温度の層があるかという「縦方向の気温構造」を扱いました。
本記事ではそれとは検索意図を分け、同じ時刻でも地点Aと地点Bでなぜ地上付近の気温が違うのかを、標高、地形、海、風、冷気だまりなどの「横方向の地域差」から説明します。
地域差は雨・雪・みぞれの分布にそのまま現れる
気温が場所ごとに違えば、同じ雪雲の下でも降水の種類はそろいません。山地で雪、平野でみぞれ、海岸で雨という分布が同時に起こることがあります。
気象庁の推計気象分布でも、標高を考慮した気温推定を雨雪判別に利用しています。局地的な気温差が、そのまま天気の違いとして表れるためです。
雪が積もる深さにも気温差が影響する
気温が低い場所では雪が融けにくく、乾いた軽い雪として積もりやすくなります。気温が0℃に近い場所では湿った雪になりやすく、地面で融ける量も増えます。
そのため、同じ降水量でも場所ごとに積雪深が違うことがあります。
数℃の差が大きな違いになる理由
雪が関係する気温は、ちょうど水の融点である0℃付近に集まりやすいため、わずか1〜2℃の差でも意味が大きくなります。
0℃より少し低ければ雪片は残りやすく、少し高ければ融けやすくなります。そのため、普段なら小さく見える地域差でも、降雪時には天気や積雪の違いとしてはっきり現れます。
「雪の気温」という一つの温度があるわけではない
雪が降るときの気温は、全国共通の一つの数字ではありません。標高、地形、海からの距離、風、湿度、雲量、降雪強度などが組み合わさり、その地点ごとの温度が決まります。
だから同じ雪雲に覆われていても、場所ごとの観測値は違います。
まとめ
雪が降るときの気温が標高や地形によって場所ごとに違うのは、空気の温度が高度だけでなく、冷気のたまり方、海からの影響、寒気・暖気の流れ、風、放射冷却などで変わるためです。
山地は標高が高いため低温になりやすく、盆地では冷気がたまり、海岸では海の影響で比較的暖かくなることがあります。さらに風向や降雪による冷却でも、その差は時間とともに変化します。
つまり、雪が降る場所の気温差は、標高だけでなく、その地点が置かれた地形と大気の流れの違いが重なって生まれるのです。

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