同じ市町村や同じ山域でも、ある場所では雪が深く積もっているのに、少し離れた場所では地面が見えるほど雪が少ないことがあります。雪雲の影響を同じように受けているように見えても、積雪の深さは一様にはなりません。
結論からいうと、積雪の深さは、その場所にどれだけ雪が降ったかだけでなく、標高や山の向きによる降雪量の差、風による吹き払いと吹きだまり、気温や日射による融け方の違いが重なって決まるからです。積雪は、降った雪がそのまま均一に地面へ保存された結果ではありません。
積雪の深さは「その場に残っている雪」の厚さ
気象庁でいう積雪の深さは、地面を覆っている雪の地面から雪面までの高さです。つまり、降った雪の総量そのものではなく、その時点でその場所に残っている雪の厚さを表します。
そのため、同じ地域でも、降り方、風、融雪、沈み込みなどが場所ごとに違えば、積雪の深さも違ってきます。
まず、降る雪の量そのものが場所によって違う
雪雲は地域全体へ均一に雪を落とすわけではありません。雲の発達や移動、地形による上昇気流の強さが場所ごとに違うため、数kmから数十kmの範囲でも降雪量に差が生じます。
気象庁の解析積雪深・解析降雪量も約5km四方で面的な雪の分布を示しますが、局地的な降雪の多寡はさらに細かく変化するため、個別地点の積雪と完全には一致しません。
標高が高い場所では雪が残りやすい
一般に標高が高い場所ほど気温が低くなりやすく、降った雪が雨へ変わりにくく、地上へ届いたあとも融けにくくなります。
そのため同じ地域でも、平地ではみぞれや雨になって積もらない一方、山沿いでは雪として積もることがあります。
山の風上側では雪雲が発達しやすい
湿った空気が山へぶつかると、斜面に沿って上昇します。上昇した空気は膨張して冷え、雲や降雪を発達させやすくなります。
そのため、季節風が当たる山の風上側では降雪が多くなりやすく、同じ山域でも風下側より積雪が深くなることがあります。
風下側では降雪が少なくなることもある
山を越えた空気は下降しながら暖まり、雲が弱まることがあります。その結果、山の風下側では降雪が少なくなることがあります。
ただし実際の分布は山の形や風向によって複雑で、単純に「風上は多く、風下は少ない」と決まるわけではありません。
風は積もった雪を別の場所へ運ぶ
雪が地面に落ちたあとも、強い風が吹けば雪粒は再び舞い上がり、別の場所へ移動します。
気象庁も、風が強いと雪が流されるため、解析積雪深や降雪量の局地的な再現が難しくなる場合があるとしています。つまり、降った場所と最終的に積もる場所が同じとは限りません。
風が強く当たる場所では雪が吹き払われる
尾根や広く開けた場所など、風が強く通る場所では、積もったばかりの軽い雪が削られやすくなります。
そのため降雪量が多くても、風にさらされ続ける場所では積雪が浅くなることがあります。
風が弱まる場所では吹きだまりができる
風で運ばれた雪は、建物の風下、林の縁、道路脇、尾根の風下など、風速が急に弱まる場所へ落ちてたまります。
防災科学技術研究所は、強風域から運ばれた雪が風速の急減する場所に堆積して吹きだまりや雪庇をつくると説明しています。
このため、数十mしか離れていなくても積雪深が大きく違うことがあります。
地形の小さな凹凸でも積雪差が生まれる
斜面のくぼみ、小さな谷、道路の切り通し、建物の陰などは風を弱め、雪がたまりやすくします。
逆に、尾根や吹きさらしの斜面では雪が削られやすくなります。積雪の地域差は、大きな山地だけでなく、身近な地形の違いでも生じます。
同じ山でも斜面の向きで融け方が違う
南向き斜面と北向き斜面では、受ける日射量が違います。北半球では一般に南向き斜面のほうが日射を受けやすく、雪が融けやすい傾向があります。
一方、日陰になりやすい北向き斜面では低温が保たれやすく、積雪が長く残ることがあります。
森林の有無でも雪の積もり方が変わる
森林では、降ってきた雪の一部が枝や葉に一時的に捕らえられ、その後に落下・融解・昇華します。
一方、開けた場所では雪が直接地面へ積もりやすいものの、風による移動も大きくなります。植生の違いも積雪分布を変える要因です。
海に近い地域と内陸では雪質も違いやすい
沿岸では比較的暖かく湿った雪になりやすく、内陸や高地では乾いた軽い雪になりやすい場合があります。
雪質が違えば密度も変わるため、同じ水分量の雪でも積雪の深さは同じにはなりません。
降った後の沈み込みにも場所差がある
積もった雪は時間とともに自重で圧縮され、雪粒同士のすき間が減っていきます。
気温が高めの場所や湿った雪が多い場所では、雪が締まりやすく、積雪深が早く減ることがあります。寒く乾いた場所では、軽い雪がしばらく厚く残ることがあります。
融雪の速さが違えば積雪差はさらに広がる
積雪は、日射、暖気、雨、地面からの熱などを受けて融けます。
市街地、日当たりのよい斜面、暖気が入りやすい場所では融雪が進みやすく、同じ量の雪が積もっても早く減ることがあります。
道路や建物の周辺では自然積雪と違う分布になる
建物は風の流れを変え、吹きだまりをつくることがあります。道路では除雪や車の熱、舗装面の蓄熱によって積雪が少なくなることがあります。
そのため、人が暮らす場所では自然地形だけでなく人工物も積雪分布へ影響します。
積雪の地域差は観測地点だけでは捉えきれない
アメダスでは雪の多い地域の観測所で積雪深を測っていますが、観測点は地域の一点です。
気象庁が解析積雪深を面的に作成しているのは、観測所のない地域も含めて大まかな雪分布を把握する必要があるためです。
解析積雪深が約5km四方なのには限界もある
気象庁の解析積雪深は約5km四方の平均的な状態を示します。そのため、局地的な吹きだまりや小さな谷の積雪差までは表現できません。
気象庁自身も、強風時には雪が流されるため局地的な積雪の再現が難しくなると注意しています。
NSIDCも地形と風で積雪深が大きく変わると説明している
NSIDCは、雪の積もり方が標高、植生、海岸からの距離、卓越風、地域の天候パターンなどで変わると説明しています。
さらに山地では、風が一方の斜面から雪を削って反対側へ運ぶことで、同じ山でも積雪深に大きな差が生じることがあるとしています。
地域差を見るときは「降雪」と「再配分」を分けて考える
積雪が多い場所では、必ずしもその場所に最も多く雪が降ったとは限りません。
風で運ばれて吹きだまった結果として積雪が深くなっている場合もあります。逆に雪が多く降っても、風で削られて浅くなっている場所もあります。
「なぜ同じ量の雪が降っても積雪の深さは同じにならないのか?」との違いは「同じ降雪量で深さが違う理由」ではなく「地域内の分布差」
なぜ同じ量の雪が降っても積雪の深さは同じにならないのか?では、同じ降雪量でも、雪質、沈み込み、融雪、風による移動によって積雪深が変わる理由を中心に説明しました。
本記事では検索意図を分け、同じ時刻の一つの地域の中で、なぜ地点Aと地点Bの積雪深が違うのかを、降雪量そのものの地域差、標高、山の風上・風下、吹き払い、吹きだまり、斜面の日射差などから説明します。
雪の多い地域でも積雪は均一な「白い布」にはならない
広い雪原を見ると一様に雪で覆われているように見えますが、実際には雪面の下の積雪深は場所ごとに大きく違うことがあります。
積雪は、降雪、風による再配分、融雪、沈み込みが同時に進むため、常に場所ごとの履歴を反映した分布になります。
まとめ
同じ地域でも積雪の深さが地形や風によって場所ごとに違うのは、雪が均一に降らず、降った後も風で移動し、さらに気温や日射によって融け方が変わるためです。
山の風上では雪雲が発達しやすく、尾根では雪が吹き払われ、風下のくぼ地では吹きだまりができます。標高、斜面の向き、植生、人工物も積雪の残り方を変えます。
つまり、積雪の深さの地域差は「どれだけ降ったか」だけでなく、「どこへ運ばれ、どれだけ残ったか」の違いによって生まれるのです。

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