なぜ雪が降るときの気温は季節や天候によって変わるのか?

同じ地域でも、初冬の雪では地上気温が数℃あることがある一方、真冬の寒波では日中でも氷点下のまま雪が降ることがあります。春先の雪では、降り始めは雪でも途中から雨へ変わることもあります。

結論からいうと、雪が降るときの気温が季節や天候によって変わるのは、寒気と暖気の強さ、低気圧や前線の位置、風向、雲や降水による冷却、地表面の状態などが時間とともに変わり、雪が落ちてくる大気の温度構造そのものが変化するためです。

目次

「雪が降る気温」は一つの決まった数字ではない

雪というと0℃以下で降るものと思われがちですが、地上気温が0℃を少し上回っていても雪が降ることがあります。

反対に、地上付近がかなり寒くても、上空に暖かい層があれば雪が途中で融けて雨やみぞれになることがあります。気象庁も、雪か雨かを考える際には地上から上空までの気温分布が重要だと説明しています。

季節が変わると日本付近へ入る空気の性質が変わる

冬になると、日本付近ではシベリア大陸から冷たい季節風が吹き込みやすくなります。気象庁によると、冬型の気圧配置では北西の季節風が寒気を運び、日本海側では雪の日が多くなります。

一方、春が近づくと低気圧や高気圧が交互に通り、暖かい空気と冷たい空気が入れ替わるため、気温変化が大きくなります。

初冬は地面も大気もまだ十分に冷えていない

冬の初めは、上空に寒気が入って雪雲ができても、地上付近や地面には秋までの熱が残っていることがあります。

そのため雪が降っても地上気温が0℃を少し上回ったり、地面に落ちた雪がすぐ融けたりすることがあります。初雪がそのまま積雪になるとは限らないのは、このような背景もあるためです。

真冬は強い寒気に覆われると低温のまま雪が降りやすい

真冬に冬型の気圧配置が強まり、大陸から強い寒気が南下すると、地上から上空まで広い範囲で低温になりやすくなります。

このとき日本海側では、冷たい季節風が比較的暖かい日本海から熱と水蒸気を受け取り、雪雲が発達します。寒気が強いほど、雪が降っている間も地上気温が低く保たれることがあります。

春先の雪では暖気の入り方が大きく影響する

春が近づくと、低気圧の東側などで南から暖かい空気が入りやすくなります。

そのため降り始めは雪でも、暖気の流入が強まると上空や地上付近の気温が上がり、みぞれや雨へ変わることがあります。逆に低気圧通過後に寒気が流れ込むと、雨から雪へ変わる場合もあります。

南岸低気圧では少しの気温差が雨雪を分ける

太平洋側の大雪では、南岸低気圧の位置やコースが重要です。

気象庁は、低気圧が近づくと降水をもたらす一方、南側から暖かい空気も入りやすくなるため、雪が途中で融けて雨になる可能性が高まると説明しています。

このため気温がわずかに違うだけで、雪になるか雨になるか、さらに雪になっても積もるかどうかが大きく変わります。

低気圧の位置が変わると暖気と寒気の境界も動く

同じ地域でも、低気圧のコースが少し北寄りになれば暖気が入りやすくなり、南寄りなら冷たい空気が残りやすくなることがあります。

その結果、同じ冬の同じ都市でも、ある降雪では2℃前後、別の降雪では0℃前後というように、雪が降るときの気温が変わります。

風向が変わると運ばれてくる空気の温度も変わる

北寄りの風は冷たい空気を運びやすく、南寄りの風は比較的暖かい空気を運びやすい傾向があります。

もちろん地域や気圧配置によって例外はありますが、風向の変化は地上付近の気温だけでなく、上空の温度構造にも影響します。

降り始めてから気温が下がることもある

雪や雨が乾いた空気の中へ降り始めると、雪の昇華や水滴の蒸発によって周囲から熱が奪われます。

そのため、降水開始前はやや高かった気温が、降り続くうちに下がることがあります。南岸低気圧による雪で、最初は雨やみぞれだったものが雪へ変わる一因です。

雪が融けること自体も周囲の空気を冷やす

雪片が暖かい層を通ると融けますが、氷を水へ変えるには熱が必要です。その熱は周囲の空気から奪われます。

このため、降水が続くことで大気下層が冷やされ、雨雪の境界が変化することがあります。気温は単に「外から決められる条件」ではなく、降水そのものによっても変化します。

湿度が違うと同じ気温でも雪になりやすさが変わる

乾いた空気では、蒸発や昇華による冷却が起こりやすくなります。そのため地上気温が少し高くても、降水によって空気が冷え、雪が残りやすくなることがあります。

一方、すでに湿った空気ではこの冷却効果が小さくなりやすく、同じ気温でも雨雪の境界が異なる場合があります。

雲の有無は夜間の冷え方を変える

晴れて風の弱い夜は地表面から熱が逃げやすく、放射冷却が強まります。

一方、厚い雲に覆われると地表面から出た赤外線の一部が戻されるため、夜間の冷え込みが弱くなることがあります。降雪前後の雲量の変化も地上付近の気温に影響します。

雪が積もると地表面の熱のやり取りも変わる

積雪面は太陽光を強く反射し、また雪は熱を伝えにくいため、地表面と大気の熱交換を変えます。

そのため一度積雪ができた後は、雪のない地面より日中の昇温が抑えられ、次の降雪時にも低温が維持されやすくなることがあります。

同じ季節でも年によって気温は違う

「12月だからこの気温」「2月だから必ずもっと寒い」と固定的に決まるわけではありません。

気象庁の季節天候資料でも、暖冬の中に一時的な強い寒気が入ったり、逆に真冬でも暖かい空気に覆われたりすることが示されています。季節は背景条件ですが、実際の降雪時の気温はその日の気圧配置や気団に左右されます。

日本海側と太平洋側では雪をもたらす気象場が違う

日本海側の雪は冬型の季節風によるものが多く、太平洋側の雪は南岸低気圧などに伴うことが多くなります。

この違いにより、雪が降るときの典型的な気温環境も同じではありません。日本海側では強い寒気の中で雪が続くことがある一方、太平洋側では0℃付近の微妙な温度条件で雨と雪が入れ替わることがあります。

上空の温度構造も時間とともに変化する

地上気温だけでなく、上空の温度も固定されていません。前線や低気圧が近づけば暖気が上空へ入り、通過後には寒気が流れ込むことがあります。

そのため同じ場所でも、朝は上空に暖気があって雨、昼に冷気が厚くなって雪、夜にはさらに低温になるといった変化が起こります。

雪の予報では一つの気温ではなく温度分布を見る

気象庁は、雨か雪かを判断する際に、地上だけでなく上空までの気温の鉛直・水平方向の分布を重視しています。

推計気象分布でも、アメダスなどの観測値に加えて標高による気温差を考慮し、面的な気温分布を推定しています。雪の温度条件が時間と場所の両方で変化するためです。

W00712との違いは「縦の構造」ではなく「時間変化」

なぜ雪が降るときの気温は地上だけで決まらないのか?では、一地点の上空から地上までにどのような温度の層があるかという、鉛直方向の気温構造を中心に説明しました。

本記事ではその構造が、季節、寒気・暖気、低気圧、風、雲、降水などによって時間とともに変わるため、雪が降るときの気温も一定ではないという変化条件を中心に扱います。

W00722との違いは「場所差」ではなく「同じ場所の変化」

なぜ雪が降るときの気温は標高や地形によって場所ごとに違うのか?では、同じ時刻でも山地・盆地・海岸などで気温が違う理由を扱いました。

W00732では、同じ地域・同じ地点でも、初冬、真冬、春先、寒波、南岸低気圧などの気象状況によって、降雪時の気温環境がどう変わるかに焦点を置きます。

「雪は0℃以下で降る」と覚えるだけでは不十分

0℃は重要な目安ですが、地上の一つの数字だけで雪を説明することはできません。

地上気温が0℃を少し上回っていても雪が残ることがあり、逆に上空に暖気があれば地上が低温でも降水形態が変わることがあります。湿度や降水による冷却も加わります。

まとめ

雪が降るときの気温が季節や天候によって変わるのは、大気の温度構造が時間とともに変化するためです。

冬型の気圧配置では強い寒気が入りやすく、南岸低気圧では暖気と冷気の位置関係が少し変わるだけで雨雪が変化します。さらに風向、湿度、雲、降水による蒸発・融解冷却、積雪面の存在も気温を動かします。

つまり、「雪が降る気温」は季節ごとに固定された値ではなく、そのときの寒気・暖気・低気圧・風・湿度・降水がつくる大気環境によって変化するのです。

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参考資料

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