なぜ雲が多い日は昼の気温が上がりにくく、夜は下がりにくいのか?

雲が多い日に昼の気温が上がりにくく、夜は下がりにくいのは、雲が太陽からの短波放射を反射・吸収して地表へ届く日射を減らす一方、夜には地表から出る赤外線を吸収し、地表方向へも再び放射するからです。昼は地表の加熱を弱め、夜は地表の放射冷却を弱めるため、雲は一日の気温変化を小さくする方向に働きやすくなります。

ただし、「雲があると必ず寒い」「雲があると必ず暖かい」という一方向の関係ではありません。雲の影響は昼と夜で反対になり、さらに雲の厚さ・高さ・種類、地表の状態、風や湿度、降水の有無でも変わります。この記事では、雲が気温を直接決めるのではなく、地表へ入る短波放射と地表から出る長波放射の両方を変えることで、昼の最高気温と夜の最低気温へ異なる影響を与える仕組みを中心に整理します。

目次

雲と気温の関係は「短波」と「長波」の2種類の放射で考える

地表の気温を考えるうえで重要なのが、太陽から届く短波放射と、地表・大気から出る長波の赤外放射です。気象庁は、太陽から地球へ届く日射の一部が雲やエーロゾルによって宇宙へ反射され、残りが地表や大気に吸収されると説明しています。

一方、暖められた地表や大気は赤外線を放出します。雲も赤外線を吸収し、その温度に応じて上向き・下向きの両方向へ再放射します。そのため雲は、太陽エネルギーを地表へ入りにくくする働きと、地表からの熱を宇宙へ逃げにくくする働きの両方を持っています。

雲と気温の関係が少し複雑に見えるのは、昼の短波放射と夜の長波放射に対して、雲が逆方向の効果を持つからです。

昼の雲は日射を反射し、地表の加熱を弱める

晴れた昼は、太陽からの日射が多く地表へ届きます。地面、道路、草地、水面などが日射を吸収すると表面温度が上がり、その熱が地表付近の空気へ伝わって気温が上昇します。

雲が広がると、太陽から来た短波放射の一部が雲粒や氷晶によって反射・散乱され、一部は雲に吸収されます。その分だけ地表へ直接届く日射が減り、地表面の加熱も弱くなります。

NASAは、雲は一般にその下の地表面より反射率が高く、特に低く厚い雲では太陽放射を強く反射して地表を冷やす方向に働くと説明しています。日中に厚い雲が広がったとき、晴天日ほど気温が上がらないのは、この短波放射の遮蔽が大きな理由です。

そのため朝から曇っている日は、前日の最低気温が同じでも、午後の最高気温が晴天日より低くなることがあります。

夜の雲は地表へ赤外線を返し、冷え込みを弱める

夜になると、太陽からの日射はなくなります。しかし地表は赤外線として熱を放出し続けます。晴れた夜には、地表が失う赤外線に対して上空から戻ってくる放射が少なくなり、地表は放射冷却で冷えやすくなります。

雲がある夜は状況が変わります。雲は地表から上向きに放出された赤外線を吸収し、その一部を地表方向へ再び放射します。National Weather Serviceは、夜の雲が赤外線を地面へ放射することで、地面とその上の空気を晴天時より暖かく保つと説明しています。

「雲が毛布のように熱を閉じ込める」と表現されることがありますが、より正確には、雲が赤外線を吸収・再放射し、地表が失う正味の放射エネルギーを小さくするという仕組みです。

このため、夜に雲が多いと最低気温は下がりにくくなります。特に晴れて弱風の夜と、同じ気団のもとで曇った夜を比べると、曇った夜のほうが冷え込みが弱いことがよくあります。

観測でも「曇ると昼は上がりにくく、夜は下がりにくい」傾向が確認されている

雲と気温の日変化の関係は、観測データからも確認されています。日本地理学会の長崎の気温・雲量データを使った研究では、雲量と気温日変化の大きさに有意な関係がみられました。

研究では、晴天時には日中の昇温と夜間の降温が大きくなり、気温の日較差が大きくなる一方、曇雨天時には日中の昇温が抑えられ、夜間も気温が低下しにくいことが示されています。

つまり雲は、昼だけを冷やすのでも、夜だけを暖めるのでもありません。一日の最高気温を抑え、最低気温を高めに保つことで、昼夜の気温差を小さくする方向に働きやすいのです。

これは、曇りの日に「昼も夜も気温の変化が小さい」と感じやすい理由でもあります。

雲の高さと厚さによって、冷却と保温の強さは変わる

すべての雲が同じように気温へ影響するわけではありません。NASAは、低く厚い雲は太陽放射を強く反射するため、地表を冷やす短波効果が大きいと説明しています。

一方、高く薄い雲は太陽光をある程度通しやすい一方、地表・下層大気から出る赤外線を吸収し、上空の低い温度で宇宙へ放射します。そのため、短波による冷却より長波による保温の効果が相対的に大きくなる場合があります。

この違いから、「雲が増えれば何℃下がる」と単純に決めることはできません。厚い層雲と薄い巻雲では、日射を反射する割合も、赤外線をやり取りする高度も異なります。

雲の影響を正確に考えるには、雲量だけでなく、雲頂高度、雲の厚さ、水滴や氷晶の量なども関係します。

同じ一日でも、雲が出る時間帯で最高・最低気温への影響が変わる

雲量が同じでも、いつ雲が広がったかによって気温への影響は変わります。朝から昼に厚い雲が広がれば、地表へ届く日射が減り、最高気温の上昇が抑えられやすくなります。

反対に、昼は晴れて地表が十分暖まった後、夕方から夜に雲が増えれば、日中の加熱は確保されたまま、夜の放射冷却だけが弱くなります。その場合、最高気温は高く、最低気温も高いという一日になることがあります。

逆に、日中は曇っていたのに夜遅く急に晴れれば、昼の昇温が弱かったうえに夜間の放射冷却が強まり、明け方に予想以上に気温が下がる場合があります。

このため、最低気温や最高気温を考えるときは「一日の天気が晴れか曇りか」だけでなく、何時ごろ雲が増えたり減ったりするのかを見ることが重要です。

雲が多い日は、湿度・雨・風の影響も一緒に現れる

実際の天気では、雲だけを完全に独立させて考えることはできません。曇りや雨の日には空気が湿っていることが多く、地面も濡れやすくなります。湿った地表では、受け取ったエネルギーの一部が水の蒸発に使われるため、日中の気温上昇がさらに抑えられることがあります。

また、低気圧や前線に伴う雲なら、風によって暖気や寒気が運ばれる影響も加わります。強い南風で暖気が入っていれば、曇っていても気温が高くなることがあります。逆に寒気が流れ込めば、雲があっても気温は低下します。

したがって、「昨日より雲が多いから今日は何℃低い」と雲量だけで予測することはできません。雲は放射収支を変える重要な要因ですが、気温そのものは風による移流、湿度、地表状態、降水などを合わせた結果です。

昼の雲と夜の雲では、天気予報で見るポイントが違う

日中の最高気温を考えるときは、雲がどのくらい日射を遮るかが重要です。午前中から厚い雲が続けば昇温は鈍りやすく、昼前後に雲が切れて日射が増えれば、短時間でも気温が上がることがあります。

夜の最低気温では、雲が地表へ返す赤外線が重要になります。夜通し曇っていれば冷え込みは弱まりやすく、夜中に晴れて風も弱くなれば放射冷却が急に強まることがあります。

つまり、最高気温では「昼にどれだけ日射が届くか」、最低気温では「夜にどれだけ地表が熱を失うか」という別々の視点が必要です。

この違いを知っていると、同じ「曇り」という予報でも、昼の暑さを抑える雲なのか、夜の冷え込みを抑える雲なのかを考えやすくなります。

雲と気温は「日射を遮る・赤外線を返す・時間帯」で読む

雲が気温へ与える影響は、次の3点に整理すると分かりやすくなります。

  • 日射を遮る:昼は雲が太陽からの短波放射を反射・吸収し、地表の加熱を弱めるため、最高気温が上がりにくくなる。
  • 赤外線を返す:夜は雲が地表からの長波放射を吸収し、下向きにも再放射するため、放射冷却が弱まり最低気温が下がりにくくなる。
  • 時間帯で効果が変わる:昼に曇るか、夜に曇るかで、最高・最低気温への影響の出方が変わる。

雲と気温が関係する本質は、雲が地球の放射収支の「入口」と「出口」の両方に関わることです。昼は太陽エネルギーの入口を狭め、夜は地表から宇宙へ逃げる熱の一部を地表へ戻します。そのため雲は、気温の日変化を小さくする調整役になりやすいのです。

天気を見るときは「雲があるから寒い」とだけ覚えるのではなく、昼か夜か、雲は厚いか薄いか、風や湿度はどうかを合わせて見ると、雲と気温の関係をより正確に理解できます。

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参考資料

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