空気の「湿り具合」には、いくつかの表し方があります。代表的なのが相対湿度と絶対湿度です。
相対湿度は、いま空気中にある水蒸気が、その気温で飽和するときの水蒸気量に対して何%あるかを示します。一方、本記事でいう絶対湿度は、気象学でいう単位体積あたりの水蒸気の質量で、一般に g/m³ などで表します。
この二つが関係しているのは、同じ空気中の水蒸気を別の尺度で見ているからです。絶対湿度が「実際にどれだけ水蒸気があるか」を表すのに対し、相対湿度は「その気温での飽和量に対してどれくらいまで来ているか」を表します。したがって、相対湿度は絶対湿度だけでなく、飽和量を決める気温にも左右されます。
絶対湿度とは何を表すの?
北海道大学の気象学資料では、絶対湿度を「水蒸気質量」を単位体積で表す量として説明しています。米国気象学会の用語集でも、absolute humidity は moist air の単位体積あたりに含まれる水蒸気の質量、つまり水蒸気密度として定義されています。
たとえば、空気1m³の中に水蒸気が10g含まれていれば、絶対湿度は10g/m³です。水蒸気が15gなら15g/m³となります。
この値を見ると、その体積の空気に実際にどのくらいの水蒸気が存在するかを知ることができます。相対湿度のように「飽和に対して何%か」という比ではなく、水蒸気の実量に近い見方です。
相対湿度は何を表すの?
気象庁は、日常の天気予報でいう「湿度」は普通、相対湿度を指すとしています。相対湿度は、実際の水蒸気量と、その気温での飽和水蒸気量との比を百分率で表したものです。
NOAAも、相対湿度について「現在の温度で存在できる最大の水蒸気量に対して、実際の水蒸気量がどれくらいあるか」を百分率で示す指標として説明しています。
つまり相対湿度50%とは、「空気の半分が水蒸気」という意味ではありません。その気温で飽和するときの水蒸気量を100とした場合に、現在はその約半分に相当する状態だという意味です。
なぜ相対湿度は絶対湿度と結び付くの?
絶対湿度も相対湿度も、対象にしているのは同じ水蒸気です。違うのは、何を基準に表すかです。
絶対湿度は、単位体積あたりの水蒸気量そのものを見ます。一方、相対湿度は、その気温で飽和したときの水蒸気量と比べます。
同じ気温で考えれば、概念的には次の関係で理解できます。
相対湿度 = 実際の水蒸気密度 ÷ その気温での飽和水蒸気密度 × 100
実際の水蒸気密度は絶対湿度に相当します。そのため、同じ気温なら絶対湿度が大きいほど相対湿度も高くなりやすくなります。
なぜ気温が変わると相対湿度も変わるの?
相対湿度の分母にあたる「飽和水蒸気量」は、気温によって大きく変わります。暖かい空気ほど、飽和に達するまでに多くの水蒸気を存在させることができます。
そのため、実際の水蒸気量がほぼ同じでも、気温が上がれば飽和までの余裕が大きくなり、相対湿度は下がります。反対に気温が下がると飽和までの余裕が小さくなり、相対湿度は上がります。
NOAAは、同じ絶対湿度でも、冷たい空気の方が相対湿度は高く、暖かい空気の方が低くなると説明しています。
同じ絶対湿度でも相対湿度が違う例
同じ量の水蒸気を含む空気を考えてみましょう。
朝は気温が低く、飽和できる水蒸気量が少ないため、相対湿度が高くなります。昼になって日射で気温が上がると、飽和できる水蒸気量が増えるため、水蒸気量がほとんど変わっていなくても相対湿度は下がることがあります。
このため、晴れた日に「朝は湿度80%だったのに、昼は40%になった」という変化があっても、空気中の水蒸気が半分になったとは限りません。気温の上昇によって、相対湿度の基準となる飽和量が増えた可能性があります。
同じ相対湿度でも絶対湿度が違うことはある?
あります。相対湿度が同じ50%でも、気温10℃と30℃では、実際に含まれる水蒸気量は同じではありません。
30℃の空気は10℃の空気より飽和水蒸気量が大きいため、その50%に相当する水蒸気量も多くなります。したがって、同じ相対湿度でも、暖かい空気の方が絶対湿度が大きくなることがあります。
この違いは、夏と冬の湿度表示を比べるときに重要です。冬に相対湿度70%でも、夏の相対湿度60%より水蒸気量が少ない場合があります。
「湿度が高い=水蒸気が多い」とは限らないの?
天気予報の「湿度」は相対湿度なので、相対湿度だけでは水蒸気の実量を直接比較できません。
相対湿度が高いということは、その気温での飽和状態に近いという意味です。気温が低ければ、少ない水蒸気量でも飽和に近づくことがあります。
反対に、暑い空気では水蒸気量がかなり多くても、飽和量がさらに大きいため、相対湿度がそれほど高くならないことがあります。
したがって、「今日は湿度が低いから空気中の水分も少ない」と単純には言えません。水蒸気の実量を考えたいときは、絶対湿度や露点温度、比湿など別の指標も役立ちます。
絶対湿度は気温が変わっても必ず一定なの?
絶対湿度は相対湿度より水蒸気量を直接表しますが、「水蒸気の量が変わらなければ必ず一定」と言い切ることもできません。
絶対湿度は単位体積あたりの質量なので、空気の体積が膨張したり圧縮されたりすると値が変わります。米国気象学会は、絶対湿度は空気の断熱膨張や圧縮に対して保存される量ではないため、気象学では比湿や混合比などが使われる場面も多いと説明しています。
初心者向けには「絶対湿度は実際の水蒸気量を表す指標」と理解して問題ありませんが、厳密には体積の変化にも影響される点を覚えておくと、より正確です。
相対湿度100%になると何が起こる?
相対湿度100%は、その気温で水蒸気が飽和している状態です。さらに空気が冷えるなどして飽和を超えようとすると、水蒸気の一部が凝結し、細かな水滴になることがあります。
地面や物体の表面で起これば露になり、空気中で多数の水滴ができれば霧や雲につながります。
このとき重要なのは、絶対湿度と気温の組み合わせです。水蒸気量が多ければ、比較的高い温度でも飽和に達しやすくなります。水蒸気量が少なければ、さらに冷えないと相対湿度100%には達しません。
室内でも同じ関係が成り立つの?
室内でも基本的な関係は同じです。暖房で室温を上げたとき、加湿をしていなければ相対湿度が下がることがあります。これは、空気中の水蒸気量が急に減ったからではなく、温度が上がって飽和水蒸気量が増えたためです。
反対に、暖かく湿った室内空気が冷たい窓ガラスの近くで冷やされると、相対湿度が上昇し、表面温度が露点以下になれば結露が起こります。
このように、室内の乾燥や結露を考えるときも、相対湿度だけでなく、水蒸気量と温度をセットで見ることが役立ちます。
絶対湿度と相対湿度はどちらを見ればいい?
目的によって使い分けます。
- 天気予報で空気が飽和にどれくらい近いか知りたいときは相対湿度
- 気温の違う環境で水蒸気の実量を比べたいときは絶対湿度などの量
- 結露や霧の起こりやすさを見るときは相対湿度や露点温度
- 大気中の水蒸気を物理的に扱うときは比湿や混合比が使われることも多い
どちらが正しい、どちらが優れているという関係ではありません。同じ空気中の水蒸気を、目的に合わせて別の角度から表しているのです。
二つの湿度を見分けるポイント
相対湿度と絶対湿度を混同しないためには、単位を見ると分かりやすくなります。
相対湿度は%で表します。絶対湿度は、気象学では g/m³ など「単位体積あたりの水蒸気の質量」で表します。
また、相対湿度は気温が変わるだけでも大きく変化することがあります。絶対湿度は水蒸気の実量をより直接的に示しますが、単位体積で表すため空気の膨張・圧縮の影響を受けます。
数値を見るときは、名称と単位をセットで確認することが大切です。
まとめ
相対湿度が絶対湿度と気温の両方で決まるのは、絶対湿度が実際の水蒸気量を表し、相対湿度がその水蒸気量を「その気温での飽和量」と比べた割合だからです。
同じ気温なら、水蒸気量が増えて絶対湿度が高くなるほど相対湿度も高くなりやすくなります。しかし、気温が上がると飽和できる水蒸気量も増えるため、絶対湿度が同程度でも相対湿度は下がることがあります。
逆に、同じ相対湿度でも気温が違えば、実際の水蒸気量は同じとは限りません。相対湿度と絶対湿度は別々の現象ではなく、同じ水蒸気を「実量」と「飽和に対する割合」という二つの尺度で見たものです。気温を間に置いて考えると、両者の関係を理解しやすくなります。

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