木材や紙は、周囲の空気が乾くと内部の水分を少しずつ放出し、逆に湿った空気に置くと水分を吸収します。これは、木材や紙が空気中の水蒸気と水分をやり取りする吸湿性材料だからです。
重要なのは、材料がいつも一定量の水分を持つわけではないことです。周囲の温度と相対湿度に応じて、材料には「その環境で落ち着こうとする含水率」があります。これを平衡含水率と呼びます。
乾いた空気に触れたとき、材料の現在の含水率がその環境での平衡含水率より高ければ、材料中の水分は空気側へ移動します。反対に、湿った空気に置かれて現在の含水率が平衡含水率より低ければ、空気中の水蒸気を吸収します。
木材や紙の中に水分はどう存在しているの?
木材や紙は、細胞壁や繊維からできた多孔質の材料です。内部には細かな空間があり、水分はそこに液体として残ったり、細胞壁や繊維の分子に吸着された状態で存在したりします。
特にセルロースなどの成分には、水分子と結びつきやすい部分があります。そのため、木材や紙は周囲の空気中の水蒸気を吸ったり、逆に内部の水分を放出したりします。
米国森林局のWood Handbookでも、木材は吸湿性を持ち、含水率は周囲の相対湿度と温度に応じて変化すると説明されています。
平衡含水率とは何?
木材をある温度・湿度の空気中に長く置くと、最初は水分を吸ったり放出したりしますが、やがて含水率の変化がほとんど止まります。
このときの含水率が平衡含水率です。
米国森林局は、木材中に残る水分は周囲空気の相対湿度と平衡しようとする性質があると説明しています。日本建築学会の研究でも、木材の平衡含水率と相対湿度の関係が測定され、湿度が高いほど平衡含水率も高くなる傾向が確認されています。
つまり、平衡含水率は「その空気条件なら、木材が最終的にどの程度の水分を持つか」を表す目安です。
なぜ乾いた空気では水分を放出するの?
乾いた空気では、空気中の水蒸気圧が低く、材料表面近くの水分との間に差ができます。
材料中の水分子は常に動いているため、表面から空気中へ出ていく分子もあれば、空気中から材料へ戻る分子もあります。
周囲の空気が乾いていると、空気側から材料へ戻る水分子が少なくなり、全体としては材料から空気へ移る水分の方が多くなります。その結果、材料の含水率が下がっていきます。
この水分移動は、材料の現在の含水率が、周囲の温度・湿度に対応する平衡含水率へ近づくまで続きます。
湿度が低いほど、必ず速く乾くの?
一般には乾いた空気ほど材料から水分が出やすくなりますが、乾燥速度は相対湿度だけでは決まりません。
材料の厚さ、表面積、温度、風、内部での水分移動の速さ、表面加工なども影響します。
たとえば、薄い紙は内部から表面までの距離が短いため比較的速く水分状態が変わります。一方、厚い木材では表面が乾いても内部に水分が残り、内部から表面への移動に時間がかかります。
そのため、「平衡含水率へ向かう方向」と「そこへ到達する速さ」は分けて考える必要があります。
なぜ木材は乾燥すると縮むの?
木材の水分の一部は細胞壁の中に吸着されています。この水分が減ると、細胞壁を構成する分子同士の間隔も変化し、木材は縮みます。
米国森林局のWood Handbookは、木材の含水率変化が寸法変化につながり、乾燥によって収縮、吸湿によって膨張が起こると説明しています。
ただし、木材は方向によって縮み方が違います。繊維方向よりも、年輪に沿う方向や年輪を横切る方向の方が寸法変化は大きくなります。
家具や床材にすき間や反りが生じることがあるのは、湿度変化に伴う含水率変化が材料の寸法へ影響するためです。
紙が湿度で波打ったり反ったりするのも同じ仕組み?
基本的には同じです。
紙もセルロース繊維からできているため、周囲の湿度に応じて水分を吸ったり放出したりします。
紙が水分を吸えば繊維が膨らみ、乾けば縮みます。紙全体が均一に変化すれば大きな変形は起こりにくいですが、片面だけが湿ったり、部分的に乾燥したりすると、場所ごとの伸び縮みの差によって反りや波打ちが生じます。
本や書類を急に乾燥した場所へ移したとき、ページが反ることがあるのも、内部の水分が新しい平衡状態へ移る途中で不均一になるためです。
同じ相対湿度でも温度が違えば平衡含水率は変わる?
変わります。
木材の平衡含水率は、相対湿度だけでなく温度にも依存します。米国森林局の資料でも、木材の平衡含水率は相対湿度と温度の組み合わせで整理されています。
そのため、湿度計が同じ50%を示していても、温度が違えば木材が最終的に落ち着く含水率が完全に同じとは限りません。
材料の乾燥や保管を正確に管理する場面では、相対湿度と温度の両方を見る必要があります。
なぜ湿度変化にすぐ追いつかないの?
材料内部の水分は、一瞬で表面まで移動できるわけではありません。
表面の水分状態は比較的早く変わっても、内部の水分が細孔や細胞壁を通って移動するには時間がかかります。
日本木材学会の研究では、湿度変化に対して木材の含水率は追従して変化する一方、微細構造の変化には時間的な遅れが見られることが報告されています。
このため、室内湿度が急に下がっても、木材全体の含水率がすぐ同じ割合で下がるわけではありません。
吸湿するときと放湿するときで同じ経路をたどるの?
完全には同じではありません。
同じ相対湿度でも、「乾いた状態から湿らせてきた木材」と「湿った状態から乾かしてきた木材」では、平衡に近い含水率が少し違うことがあります。
この現象は吸脱着ヒステリシスと呼ばれます。
Wood Handbookでも、木材の平衡含水率には吸湿過程と放湿過程の履歴による差があることが説明されています。
これは、材料内部の細孔構造や水分子の結びつき方が、過去の水分状態の影響を受けるためです。
塗装すると水分の出入りは止まる?
完全には止まりません。
塗装や表面仕上げは、水蒸気や液体水の移動を遅らせることはできます。しかし、一般的な塗装では長期的な水分移動を完全に遮断できるとは限りません。
米国森林局も、保護塗装は木材の水分変化や寸法変化を遅らせることはできるものの、完全に防ぐわけではないとしています。
そのため、木製家具や建材では、塗装の有無だけでなく、使用環境の湿度変化そのものを小さくすることも重要です。
冬の暖房で木材や紙が乾きやすくなるのはなぜ?
冬の外気は水蒸気量が少ないことがあり、その空気を室内に取り入れて暖房すると相対湿度が下がりやすくなります。
室内の相対湿度が下がれば、木材や紙がその環境で目指す平衡含水率も低くなります。
その結果、材料の現在の含水率が新しい平衡含水率より高ければ、水分を放出して乾いていきます。
冬に床材や家具のすき間が広がったり、紙製品が乾燥して反りやすくなったりするのは、この含水率変化が一因です。
逆に梅雨時に木材や紙が湿るのはなぜ?
湿度の高い空気では、その環境に対応する平衡含水率も高くなります。
材料が乾いた状態にあり、現在の含水率が平衡含水率より低ければ、空気中の水蒸気を吸収します。
その結果、木材はわずかに膨張し、紙は柔らかくなったり波打ったりすることがあります。
つまり、乾燥と吸湿は別々の現象ではなく、材料が周囲の空気との水分平衡へ近づこうとする同じ仕組みの逆向きの過程です。
木材や紙を安定して保管するにはどうすればいい?
最も重要なのは、急激な温湿度変化を避けることです。
材料が置かれる環境の相対湿度が大きく上下すると、含水率もそのたびに変化し、膨張と収縮を繰り返します。
木材では反り、割れ、すき間などにつながることがあり、紙では波打ちや変形の原因になります。
一定に近い温湿度を保ち、急激な乾燥や加湿を避けることで、材料の含水率変化を小さくしやすくなります。
乾燥の仕組みを整理すると
- 木材や紙は吸湿性を持つ多孔質材料である
- 周囲の温度・湿度ごとに平衡含水率がある
- 現在の含水率が平衡含水率より高ければ水分を放出する
- 低ければ空気中の水蒸気を吸収する
- 材料内部の水分移動には時間がかかる
- 含水率変化は木材の収縮・膨張や紙の反りにもつながる
まとめ
乾いた空気に触れると木材や紙が水分を放出するのは、それらが吸湿性材料であり、現在の含水率を周囲の温度・湿度に対応する平衡含水率へ近づけようとするためです。
乾いた空気では、その環境での平衡含水率が低くなります。材料がそれより多く水分を含んでいれば、表面から空気へ水分子が移り、内部からも少しずつ水分が補われながら乾燥が進みます。
反対に湿った空気では、材料は水蒸気を吸収します。木材や紙の乾燥と吸湿は、周囲との水分平衡へ向かう一つの仕組みとして理解できます。

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