同じ部屋で、室温も目標湿度も同じなのに、外が寒い日の方が加湿器を強く運転しないと湿度を保てないことがあります。
理由は、寒い外気ほど実際に含んでいる水蒸気量が少なく、その空気を換気で室内へ取り込むたびに、室内の水分が薄められるからです。
つまり、必要な加湿量は「室内を何%RHにしたいか」だけでは決まりません。外気温、外気の水蒸気量、換気量によって、室内からどれだけ水分が失われるかが変わります。
同じ相対湿度でも寒い外気は水蒸気量が少ない
相対湿度は、その温度で空気が飽和できる水蒸気量に対して、実際にどれだけ水蒸気があるかを示す割合です。
気温が低いほど飽和水蒸気量は小さくなるため、同じ50%RHでも、0℃の空気と20℃の空気では実際の水蒸気量が大きく違います。
カナダ政府の資料では、0℃・50%RHの空気は1m³あたり約2gの水蒸気しか含まず、それを20℃まで暖めると、加湿しなければ相対湿度は約11%になる例が示されています。
このため、冬の冷たい外気を室内へ取り込んで暖めると、非常に乾いた空気になります。
換気すると室内の水分はどうなるの?
換気では、室内の空気を外へ排出し、その代わりに外気を取り込みます。
冬の室内空気が20〜24℃・40〜50%RH程度に保たれているとすると、外へ出る空気には比較的多くの水蒸気が含まれています。
一方、外が寒いほど、入ってくる空気の絶対湿度は低くなりやすくなります。
その結果、換気のたびに「水分の多い室内空気を捨てて、水分の少ない外気を入れる」ことになり、室内の水分収支はマイナスになります。
この不足分を補うのが加湿器です。
外が寒いほど必要加湿量が増える仕組み
必要な加湿量は、簡単に言えば「室内に保ちたい水蒸気量」と「換気で入ってくる外気の水蒸気量」の差に、換気量を掛けたものに近い考え方で捉えられます。
外気温が下がると、同じような相対湿度でも外気の絶対湿度は小さくなります。
すると、目標とする室内の絶対湿度との差が大きくなります。
同じ換気量なら、その差が大きいほど、1時間あたりに失われる水分量も増えるため、必要な加湿量が増えます。
具体例で考えると分かりやすい
室内を20℃・40%RHに保つとします。
このとき室内空気には、1m³あたりおよそ7g前後の水蒸気が含まれます。
外気が10℃・50%RHなら、外気の水蒸気量はそれより少ないものの、0℃・50%RHよりは多く含まれています。
外気が0℃や氷点下になると、同じ50%RHでも実際の水蒸気量はさらに減ります。
したがって、同じ量の外気を取り込むなら、寒い日の方が室内との差が大きくなり、加湿器が補うべき水分量も増えます。
「暖房すると乾燥する」のとは何が違うの?
暖房だけで空気を温めると、水蒸気量そのものが変わらなくても相対湿度は下がります。
これは、温度上昇によって飽和水蒸気量が増えるためです。
今回のテーマはそれに加えて、換気やすき間風で入ってくる外気そのものの水蒸気量が少ないため、室内の水蒸気量まで減っていくことです。
つまり、「暖房による相対湿度低下」と「冷たい外気の流入による水分損失」は別の現象ですが、冬の室内では同時に起こります。
換気量が多いほど加湿量も増えるの?
一般には増えます。
換気量が2倍になれば、同じ外気条件なら、室内へ入ってくる乾いた空気の量もほぼ2倍になります。
神戸大学の研究では、冬期オフィスの水分収支から加湿量を推定し、換気量や在室人数が加湿量の推定値へ比較的大きく影響することが示されています。
このため、同じ広さの部屋でも、換気量が多い場所では必要加湿量が大きくなりやすくなります。
在室人数が多いと必要加湿量は減ることがある
人は呼吸や皮膚から水分を放出しています。
そのため、同じ部屋でも在室人数が多いほど、室内へ自然に供給される水蒸気量は増えます。
オフィスの水分収支研究でも、人数は加湿量推定に比較的大きく影響する要因でした。
つまり、無人の部屋と多人数で使う部屋では、外気条件が同じでも必要加湿量が同じとは限りません。
建材や家具も一時的に水分を出し入れする
木材、紙、布、石こうボードなどの多孔質材料は、空気の湿度に応じて水分を吸ったり放出したりします。
乾燥し始めた直後には、こうした材料が蓄えていた水分を室内へ放出し、湿度低下を少し緩和することがあります。
反対に、加湿を始めた直後には材料側が水分を吸収し、空気の湿度がすぐには上がらないこともあります。
ただし、長時間の水分収支では、換気による水分損失の影響が大きくなります。
熱交換換気なら加湿量を減らせる?
熱交換換気には、熱だけを回収するタイプと、熱に加えて水分の一部も回収するタイプがあります。
全熱交換型やERVのように水分も移動できる仕組みでは、排気に含まれる水分の一部を給気側へ戻せるため、冬の室内湿度低下を抑えられることがあります。
Health Canadaも、ERVは冬に排気から熱と湿気の一部を給気へ移し、乾いた外気を取り込むことで室内湿度が下がるのを抑えると説明しています。
ただし、実際の効果は装置の性能、外気条件、換気量、室内の湿気発生量によって変わります。
気密性が低い家ではなぜ加湿しにくいの?
建物にすき間が多いと、計画換気以外にも外気が入り込みます。
冬は室内外の温度差が大きく、風も加わると、すき間風による空気交換が増えることがあります。
そのたびに、室内の湿った空気が外へ出て、乾いた外気が入ります。
そのため、同じ加湿器を使っても、気密性の低い家では湿度を維持しにくくなることがあります。
外が寒い日は加湿器を強くすればよい?
単純に強くすればよいとは限りません。
外気温が低い日は、窓や外壁の室内側表面温度も下がりやすくなります。
室内湿度を高くしすぎると、冷えた窓や壁面で露点を下回り、結露する可能性があります。
そのため、寒い日ほど必要加湿量は増えますが、同時に結露しない範囲で目標湿度を調整する必要があります。
Health Canadaも、冬の室内湿度を過度に上げると結露やカビにつながるため、季節に応じた湿度管理を勧めています。
同じ40%RHを目標にしても、外気温で難しさが変わる
室温20℃・40%RHという目標は、室内だけを見れば同じ条件です。
しかし外気が10℃の日と0℃の日、さらに氷点下の日では、外から入る空気の水蒸気量が違います。
寒くなるほど、同じ目標室内湿度との差が大きくなるため、換気による水分損失も増えます。
このため、同じ目標湿度でも冬の寒い日の方が維持が難しくなります。
冬の加湿量を考えるときの水分収支
室内の湿度は、次のような水分の出入りのバランスで決まります。
- 加湿器が加える水分
- 人の呼吸や皮膚から出る水分
- 調理・入浴・洗濯物などから出る水分
- 建材や家具が吸放湿する水分
- 換気・すき間風で外へ失われる水分
- 結露によって空気から失われる水分
寒い日は、この中でも「換気・すき間風で失われる水分」が増えやすいため、加湿器の負担が大きくなります。
必要加湿量を減らすにはどうすればいい?
必要な換気を止めるのではなく、水分損失を無駄に増やさないことが重要です。
- 計画換気を適切に保ち、不要なすき間風を減らす
- 全熱交換型換気など、水分回収が可能な設備を適切に使う
- 加湿器を排気口のすぐ近くへ置かない
- 生活域で湿度を測り、過加湿を避ける
- 寒い日は窓・外壁の結露にも注意する
換気は室内空気質を保つために必要なので、加湿のために停止するのではなく、換気量と加湿量のバランスを取ることが大切です。
まとめ
同じ室温・目標湿度でも寒い日の方が加湿量を多く必要とするのは、冷たい外気ほど実際に含む水蒸気量が少なく、換気で取り込むたびに室内の水分が大きく薄められるからです。
外気が寒くなるほど、目標とする室内の絶対湿度との差が大きくなり、同じ換気量でも失われる水分が増えます。その不足分を加湿器で補うため、必要加湿量も増えます。
したがって冬の加湿を考えるときは、室内の相対湿度だけでなく、外気温、外気の絶対湿度、換気量、在室人数、建材の吸放湿、結露リスクを合わせて見ることが重要です。

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