窓を開けて換気すれば、いつでも部屋を乾かせるわけではありません。外の相対湿度が室内より低く見えても、外気が暖かく多くの水蒸気を含んでいれば、換気によって逆に室内へ湿気を持ち込むことがあります。
そのため、換気で部屋を乾かせるか判断するときは、相対湿度の数字だけでなく、室内外の絶対湿度や露点の大小を見る必要があります。
絶対湿度は空気中に実際にどれだけ水蒸気が含まれているかを表す量です。室外の絶対湿度が室内より低ければ、換気によって水蒸気を外へ出しやすくなります。逆に外の絶対湿度が高ければ、換気は除湿ではなく加湿方向に働きます。
なぜ相対湿度だけでは換気の効果を判断しにくいの?
相対湿度は、その温度で飽和できる水蒸気量に対して、実際の水蒸気量が何%あるかを示す割合です。
そのため、気温が違えば同じ50%RHでも実際の水蒸気量は違います。暖かい空気は飽和水蒸気圧が高いため、50%RHでも多くの水蒸気を含むことができます。
たとえば、涼しい室内が60%RH、暑い屋外が50%RHだったとしても、屋外の方が実際の水蒸気量は多い場合があります。
この状態で「外の方が相対湿度が低いから乾いている」と考えて換気すると、室内へ水分を持ち込むことがあります。
絶対湿度を見ると何が分かるの?
絶対湿度を比べると、室内と室外のどちらの空気が実際に多くの水蒸気を持っているかを判断できます。
外気の絶対湿度が室内より低ければ、外気と入れ替えることで室内の平均的な水蒸気量は減る方向へ進みます。
反対に、外気の絶対湿度が高ければ、換気を増やすほど室内の水蒸気量は増える方向へ進みます。
換気を「水分の交換」として考えると、相対湿度より絶対湿度の差を見る方が直接的です。
露点でも同じように判断できるの?
できます。
露点温度は空気中の水蒸気量を強く反映する指標で、露点が高いほど実際の水蒸気量も多くなります。
米国環境保護庁は、換気によって室内を除湿できるのは、屋外空気の露点が室内空気の露点より低いときだと説明しています。
外気露点が室内露点より高ければ、その外気は室内へ湿気を追加する負荷になります。
したがって、家庭では絶対湿度計がない場合でも、露点を確認できれば換気の除湿効果を判断しやすくなります。
夏に窓を開けても部屋が乾かないことがあるのはなぜ?
日本の夏は、高温多湿の外気が流れ込みやすい季節です。
外の相対湿度が60%程度でも、気温が30℃を超えていれば、空気中にはかなり多くの水蒸気が含まれています。
冷房された室内は気温が低いため、相対湿度が同じ程度でも、実際の水蒸気量は外気より少ないことがあります。
この状態で窓を開け続けると、外の湿った空気が入り、室内の絶対湿度が上がります。
国内の室内環境研究でも、外気の絶対湿度が高い夏期には、通常換気によって外気中の水分が屋内へ取り込まれ、カビが発育しやすい環境になる可能性が示されています。
梅雨に「外は50%、室内は65%」でも換気しない方がよい場合がある?
あります。
たとえば外気温が高く、室内が冷房で低温になっている場合です。
外の50%RHは一見乾いて見えますが、高温の空気は多くの水蒸気を含むことができます。そのため、室内65%RHより絶対湿度が高いことがあります。
相対湿度の数字だけを比較すると、この逆転を見落とします。
換気で除湿したいときは、室外の絶対湿度または露点が室内より低いかを確認することが重要です。
冬は換気で乾燥しやすいのはなぜ?
冬の冷たい外気は、相対湿度が高くても実際の水蒸気量が少ないことが多くあります。
その外気を室内へ入れて暖めると、相対湿度は大きく下がります。
そのため冬は、外気の絶対湿度が室内よりかなり低くなりやすく、換気によって室内の水蒸気が外へ失われます。
これは冬に換気量が増えるほど加湿量も多く必要になる理由と同じ水分収支です。
換気による除湿はどんなときに有効?
代表的なのは、外気の絶対湿度が室内より低いときです。
- 秋や春の乾いた日に、室内へたまった湿気を出したいとき
- 冬に浴室や調理で増えた水蒸気を排出するとき
- 雨上がりでも、外気が十分乾いて室内より絶対湿度が低くなったとき
- 室内で洗濯物などから大量の水分が発生し、外気の方が乾いているとき
ただし、外気の絶対湿度が低くても、換気量が小さければ乾燥には時間がかかります。
換気で乾かすには空気の量も重要
室内外の絶対湿度差が大きくても、ほとんど空気が入れ替わらなければ水分は十分に排出されません。
換気による水分移動量は、室内外の水蒸気量の差と、実際に入れ替わる空気量の両方で決まります。
したがって、換気扇を使う、窓を二方向に開けるなど、空気が流れる経路を作ることも重要です。
一方で、外気が室内より湿っているときに換気量を増やせば、湿気の流入も増えます。
夏の除湿では換気だけでなく冷房・除湿が必要になることがある
外気の絶対湿度が高い季節は、外気をそのまま入れても室内を乾かせません。
この場合は、エアコンや除湿機で空気を露点以下まで冷やし、水蒸気を凝結させて取り除く必要があります。
米国エネルギー省も、高温多湿地域では外気の水分負荷が大きく、換気によって持ち込まれる湿気を機械的に除去する必要があるとしています。
つまり、換気はいつでも除湿手段になるのではなく、外気が室内より実際に乾いているときに限って有効な除湿手段になります。
デシカント空調でも外気の絶対湿度を見るのはなぜ?
デシカント空調は、吸湿材を使って空気中の水蒸気を除去する方式です。
国内研究では、温室の除湿で循環方式と換気方式を使い分ける際、外気の絶対湿度が重要な条件として扱われています。
外気が十分乾いていれば、外気を取り込む換気方式でも除湿できます。
一方、外気の絶対湿度が高ければ、外気を入れるだけでは水分負荷が増えるため、除湿処理や室内空気の循環除湿が必要になります。
「絶対湿度」と「湿度比」は同じもの?
日常向けの湿度計では、空気1m³あたりの水蒸気質量を絶対湿度として表示する製品があります。
空調工学では、乾燥空気1kgあたりに含まれる水蒸気質量を「湿度比」や「絶対湿度」と呼ぶこともあります。
定義は少し異なりますが、換気で乾燥するか判断する目的では、どちらも「相対湿度ではなく、実際の水蒸気量を比較する」という考え方が共通しています。
同じ種類の指標で室内外を比較することが大切です。
換気の判断で注意したいこと
- 室内外の相対湿度だけを比較しない
- 絶対湿度または露点を同じ指標で比べる
- 外気の絶対湿度が低いときは換気が除湿方向に働く
- 外気の絶対湿度が高いときは換気が加湿方向に働く
- 除湿量は絶対湿度差だけでなく換気量にも左右される
- 梅雨・夏は冷房や除湿機が必要になる場合がある
まとめ
換気で部屋を乾かせるか判断するときに相対湿度より絶対湿度を見るのは、換気で実際に移動するのは「湿度の割合」ではなく、空気に含まれている水蒸気そのものだからです。
相対湿度は気温によって大きく変わるため、外の数字が低くても、暑い外気の方が室内より多くの水蒸気を含んでいることがあります。
外気の絶対湿度や露点が室内より低ければ換気は除湿方向に働き、高ければ室内へ湿気を持ち込みます。
換気で湿気対策をするときは、室内外の絶対湿度・露点、換気量、季節を合わせて判断することが大切です。

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