なぜ電気式気圧計は真空部の変形を静電容量の変化に変えて測るのか?

電気式気圧計が真空部の変形を静電容量の変化に変えて測るのは、目に見えない大気圧を、薄い膜のごく小さな変位という機械的変化に変え、さらにその変位を高感度で読み取れる電気信号へ変換できるからです。

気象庁の気圧観測では、真空部を持つセンサーが大気圧によってわずかに変形し、その変形によって生じる静電容量の変化を電気信号として読み取る方式が使われています。

つまり電気式気圧計の本質は、大気圧→膜の変形→電極間隔の変化→静電容量の変化→数値という変換です。

目次

なぜ真空部を使うの?

測りたい大気圧と比較する基準を、できるだけ圧力の小さい状態にできるからです。

センサーの一方を真空に近い状態にしておけば、反対側から大気圧がかかったとき、その圧力差によって薄い膜や容器が変形します。

この変形量を測れば、外側からどれだけ強い圧力がかかっているかを知ることができます。

真空が基準になると何が分かりやすいの?

真空側の圧力が非常に小さいため、膜にかかる圧力差の大部分が外気圧そのものになるからです。

差圧計のように二つの未知の圧力を比べるのではなく、ほぼ一定の低圧側を基準にできるため、絶対圧に近い値を測りやすくなります。

なぜ薄い膜を使うの?

圧力の小さな変化でも、わずかにたわむからです。

厚く硬い部材では、気圧が数hPa変わってもほとんど変形しません。

適切な材質と厚さのダイヤフラムを使えば、大気圧の変化を微小な変位として取り出せます。

膜はどちらへ動くの?

外側の大気圧が高くなると、真空側との圧力差が大きくなり、膜はより強く押されます。

大気圧が低くなると押す力が弱まり、膜のたわみも小さくなります。

このたわみの変化が、気圧変化の最初の信号になります。

なぜ膜の変形をそのまま定規で測らないの?

変形量が非常に小さいからです。

人の目や普通の機械式目盛では読み取りにくいほど小さな変位でも、電気的な方法なら高い感度で検出できます。

そこで膜そのものを電極の一部として使い、変位を静電容量の変化へ変換します。

静電容量とは何?

向かい合った二つの導体が、電気を蓄える能力を表す量です。

電極の面積、間にある物質、電極同士の距離によって変化します。

特に電極間隔が変わると静電容量も変わるため、非常に小さな変位の検出に利用できます。

気圧センサーでは何が電極になるの?

構造によって異なりますが、圧力で変形するダイヤフラムと、その近くに固定された電極を組み合わせる方式が代表的です。

膜がたわくと両者の間隔が変わり、その結果、静電容量が変化します。

なぜ静電容量は高感度なの?

電極間隔の非常に小さな変化でも、電気回路で検出できるからです。

NISTは、容量式ダイヤフラム圧力計について、圧力によって合金製ダイヤフラムの位置が変化し、そのダイヤフラムがコンデンサーの一方の電極として働くことで圧力を測ると説明しています。

大気圧が高くなると静電容量は必ず増えるの?

センサーの具体的な電極配置によって、増える設計も減る設計もあり得ます。

重要なのは、気圧変化によって膜位置が変わり、それに対応して静電容量が再現性よく変化することです。

装置はその対応関係を利用して気圧を計算します。

静電容量の値が分かれば、すぐhPaになるの?

そのままではなりません。

静電容量と実際の圧力の対応関係を、基準となる圧力計と比較して校正しておく必要があります。

校正によって「この電気信号なら何Pa・何hPaか」という換算関係を決めます。

校正はなぜ必要なの?

センサーごとに膜の硬さ、寸法、電極間隔、電子回路の特性が少しずつ異なるからです。

さらに長期間使うと材料の経年変化や電子回路のドリフトも起こり得ます。

NISTは、容量式ダイヤフラム圧力計を含む各種圧力計について、基準器との比較による校正を実施しています。

温度も測定値に影響するの?

影響します。

温度が変わると、金属膜や電極がわずかに膨張・収縮し、材料の弾性や電子部品の特性も変化します。

そのため高精度の電気式気圧計では温度補正が重要です。

なぜNISTの高精度圧力計は温度を厳密に管理するの?

ごく小さな圧力差を測るとき、温度による微小な変形や電気特性の変化が測定誤差になるからです。

NISTの可搬型真空標準では、容量式ダイヤフラム圧力計などを温度制御された容器内で使用し、高精度測定を行っています。

電気式気圧計はアネロイド気圧計と何が違うの?

どちらも圧力による部材の変形を利用する点は共通しています。

アネロイド気圧計では、真空に近い金属容器の変形をてこや歯車で拡大して針を動かします。

電気式気圧計では、その微小変形を静電容量などの電気信号へ変換し、電子回路で読み取ります。

なぜ電気式にすると連続観測しやすいの?

測定値を自動でデジタル化できるからです。

人が針や液柱を読み続けなくても、センサーから出る電気信号を一定間隔で記録できます。

そのため自動気象観測、遠隔監視、数値処理に向いています。

なぜ気象庁は水銀気圧計ではなく電気式を使うの?

自動化しやすく、連続観測・データ送信・保守管理に適しているからです。

水銀気圧計は物理原理が明快ですが、大きく、液体を扱い、人による読み取りも必要になります。

電気式ならセンサー出力をそのまま観測システムへ取り込めます。

真空部の真空は完全な真空なの?

実用上は非常に低い圧力に保たれていますが、物理学的な完全真空を作る必要はありません。

基準側の圧力が十分に低く、安定していて、その影響を校正で把握できれば測定できます。

真空部の圧力が変わったらどうなるの?

基準が変わるため、同じ外気圧でも膜にかかる圧力差が変わってしまいます。

そのため真空側の密閉性や長期安定性は重要です。

高精度センサーでは、基準側を安定して保つ構造や材料が使われます。

センサーは気圧そのものを「感じて」いるの?

人間の感覚のように感じているわけではありません。

圧力によって膜が物理的に変形し、その変形によって電気的性質が変化するため、機械的変化を測定しているのです。

気圧変化が小さくても測れるの?

測れます。

静電容量型センサーは小さな変位を高感度に読み取れるため、数hPaより小さい変化も検出できます。

実際の分解能や精度はセンサーの設計・校正・温度安定性などによって決まります。

圧力が大きすぎると膜は壊れないの?

測定器には使用可能な圧力範囲があります。

設計範囲を大きく超える圧力がかかれば、膜が永久変形したり破損したりする可能性があります。

そのため用途に合った測定範囲のセンサーを使います。

なぜ一つのセンサーですべての圧力を測れないの?

高感度にすると大きな圧力に弱くなり、広い圧力範囲に対応させると小さな変化の分解能が下がりやすいからです。

NISTでも、測定圧力の範囲に応じて容量式ダイヤフラム圧力計、共振シリコン圧力計など複数方式を使い分けています。

共振シリコン圧力計とは何?

圧力によってシリコン素子にひずみが生じ、その共振周波数が変化することを利用する方式です。

NISTでは、容量式ダイヤフラム圧力計の高い分解能と、共振シリコン圧力計の長期安定性を組み合わせて利用する例があります。

静電容量型の弱点は何?

長期間ではゼロ点や感度が少しずつ変化するドリフトが起こり得ることです。

また温度変化、膜の材料特性、電子回路の変化なども影響します。

そのため定期的な校正や補正が必要です。

「真空を基準にする」とは、真空の値を測っているの?

いいえ。

真空側は基準として使い、測りたいのは外側の大気圧です。

既知・安定な基準と未知の外圧との差を膜の変形として取り出すことで、外気圧を求めます。

水銀気圧計と電気式気圧計は原理が全く違うの?

読み取り方法は違いますが、共通点があります。

どちらも「大気圧を別の測れる物理量へ変換する」という考え方です。

水銀気圧計は液柱の高さ、電気式気圧計は膜の変形と電気信号へ変換します。

「気圧計はなぜ空気圧を数値で測れるのか?」記事とは何が違うの?

既存記事では、水銀気圧計、アネロイド気圧計、電子式気圧計を横断して、空気の圧力を液柱・変形・電気信号へ変換する気圧計全般の原理を扱っています。

一方、この記事では、その中でも現代の電気式気圧計に絞り、なぜ真空部の微小な変形を静電容量の変化として読み取るのかというセンサー内部の構造を詳しく説明しています。

まとめ

電気式気圧計が真空部の変形を静電容量の変化に変えて測るのは、真空側を安定した基準にすると、大気圧の変化を薄い膜のたわみとして取り出せるからです。

その微小な変位によって電極間隔が変わると静電容量も変化します。その変化を電子回路で高感度に読み取り、校正によってPaやhPaへ変換します。

電気式気圧計の本質は、「目に見えない圧力を、膜の動きに変え、その動きを電気的な変化へ翻訳すること」なのです。

関連する「なぜ?」

参考資料

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次