太陽のコロナがとても熱いのは、太陽表面付近の対流によって生まれたエネルギーが磁場を通じて上空へ運ばれ、そこでプラズマを加熱していると考えられているからです。ところが、どの過程がどれほど重要なのかは、まだ完全には分かっていません。これが「コロナ加熱問題」と呼ばれる太陽物理学の大きな未解決問題です。
太陽の見えている表面である光球はおよそ6000Kですが、その上に広がるコロナは100万Kを超えることがあります。熱源に近いはずの表面より、さらに外側にあるコロナのほうがはるかに高温になるため、一見すると直感に反する現象です。
太陽のコロナとは何なのか?
コロナは、太陽のいちばん外側に広がる非常に薄い大気です。皆既日食のときに太陽の周囲を白く取り囲む光として見える部分がコロナにあたります。
コロナは密度がとても低い一方、温度は非常に高く、プラズマの状態になっています。NASAによると、コロナの高温は太陽研究における代表的な謎の一つであり、その加熱源は今も研究されています。
なぜ普通なら外側ほど冷えるはずなのか?
熱い物体から離れれば、普通は温度が下がっていきます。太陽でも中心部の核融合によって生まれたエネルギーが外側へ運ばれ、光球付近ではおよそ6000Kになります。
ところが、その外側にあるコロナでは温度が急に上がり、100万K以上に達します。つまり「太陽の熱が表面まで来て、その残りがコロナを温めている」という単純な説明では足りません。コロナへ追加のエネルギーを運び、熱へ変える仕組みが必要になります。
鍵になるのが太陽の磁場
太陽は高温のプラズマでできており、内部では物質が激しく動いています。電気を帯びた粒子が動くことで磁場が生まれ、その磁場もプラズマの動きに影響を与えます。NASAは、このプラズマ運動と磁場の相互作用が太陽の複雑な磁気活動を生み出すと説明しています。
太陽表面に近い対流層では、沸き立つようなプラズマの流れが磁力線を引っぱったり、ねじったりします。すると、表面で生まれた運動エネルギーや磁気エネルギーが、磁力線に沿って上空のコロナへ伝わります。
磁場はどうやってコロナを温めるのか?
現在有力視されている考え方の一つが、磁場を通じてエネルギーがコロナへ運ばれ、そこで熱へ変換されるというものです。ただし、その「変換の仕方」には複数の候補があります。
NASAの解説では、大きく分けてアルヴェーン波のような磁気流体波がエネルギーを運ぶ考え方と、非常に小さな爆発であるナノフレアが磁気エネルギーを解放する考え方が紹介されています。どちらか一つだけでなく、両方が関わっている可能性もあります。
アルヴェーン波とは何なのか?
アルヴェーン波は、磁場を持つプラズマの中を伝わる波です。太陽表面の激しい対流によって磁場が揺さぶられると、その変化が波として磁力線に沿ってコロナへ伝わると考えられています。
コロナへ運ばれた波のエネルギーが途中で失われたり、他の運動へ変換されたりすると、プラズマを加熱できます。NASAは、太陽内部から放たれたアルヴェーン波がコロナの荷電粒子を加速し、加熱につながる可能性を説明しています。
ナノフレアとは何なのか?
もう一つの考え方は、極めて小さな磁気エネルギーの爆発が無数に起きてコロナを温めるというものです。これがナノフレアです。
太陽表面の対流は磁力線をねじったり絡ませたりするため、磁場にはエネルギーが蓄積されます。その磁場の構造が急激に変わる磁気リコネクションが起きると、エネルギーの一部がプラズマの加熱などに使われます。大きなフレアほど明るくはなくても、非常に小さな加熱イベントが大量に起これば、コロナ全体の高温を維持できる可能性があります。
磁気リコネクションがなぜ重要なのか?
磁気リコネクションは、磁場のつながり方が急激に変化する現象です。磁場に蓄えられたエネルギーが、粒子の運動や熱などへ変換されるため、太陽フレアやその他の太陽活動を説明するうえでも重要です。
コロナ加熱では、こうした磁場の変化が非常に小さなスケールで繰り返されている可能性があります。ただし、ナノフレアだけが唯一の答えだと確定したわけではありません。
なぜコロナ加熱はまだ完全に解明されていないのか?
大きな理由は、コロナが薄く広がったプラズマであり、太陽表面から遠く離れた場所で起きている微細なエネルギー変換を直接見るのが難しいからです。
また、複数の加熱過程が同時に起きている可能性があります。波による加熱、磁気リコネクションによる加熱、細かな磁場の相互作用などが、場所や時間によって違う割合で働いているかもしれません。そのため、「一つの原因を見つければ解決」という単純な問題ではありません。
コロナが熱いことは太陽風とも関係するのか?
関係しています。高温のコロナは、太陽風として宇宙空間へ流れ出すプラズマの出発点でもあります。NASAでは、コロナの加熱と太陽風の加速を太陽物理学の重要な研究課題として扱っています。
特にコロナホールなどの領域では、開いた磁力線に沿ってプラズマが外へ流れやすくなります。そのため、コロナの温度や磁場構造を理解することは、太陽風がどのように生まれるかを理解することにもつながります。
太陽の表面より外側なのに、なぜもっと熱くなれるのか?
ポイントは、熱が太陽の中心から単純に外へ流れているだけではないことです。太陽表面の対流は機械的なエネルギーを生み、その運動が磁場を動かします。磁場はそのエネルギーを上空へ運び、コロナの中で熱や粒子の運動へ変えます。
つまり、コロナは「中心から離れたので冷える」のではなく、太陽表面付近の運動 → 磁場へのエネルギー移送 → コロナへのエネルギー輸送 → 熱への変換という別のエネルギー経路を持つため、高温を維持できると考えられています。
「太陽のコロナはとても熱い」仕組みをまとめると?
太陽コロナの高温を理解するには、太陽の対流と磁場を一つのシステムとして考える必要があります。対流層でプラズマが動くと磁場がねじれたり揺さぶられたりし、そのエネルギーが上空へ運ばれます。そしてアルヴェーン波や磁気リコネクションに伴うナノフレアなどを通じて、そのエネルギーがコロナのプラズマを加熱すると考えられています。
ただし、どの仕組みがどの条件でどの程度の役割を果たすのかは、まだ研究中です。NASAも、コロナ加熱は主要な未解決問題の一つとして位置づけています。
まとめ
- 太陽のコロナは光球よりはるかに高温で、100万Kを超えることがあります。
- その高温を生むエネルギー源として、太陽表面付近の対流と磁場の相互作用が重要です。
- アルヴェーン波がエネルギーをコロナへ運び、加熱する可能性があります。
- 小さな磁気爆発であるナノフレアが大量の熱を供給する可能性も研究されています。
- コロナ加熱の詳しい仕組みはまだ完全には解明されておらず、複数の過程が関係している可能性があります。
参考資料
- NASA Goddard Space Flight Center「How is the Corona Heated?」
- NASA「Parker Solar Probe and the Curious Case of the Hot Corona」
- NASA「Strong Evidence For Coronal Heating Theory Presented at 2015 TESS Meeting」
- NASA Science「Sun: Facts」

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