同じ星を何度も観察すると、前より明るく見えたり、逆に暗く見えたりすることがあります。その原因は一つではありません。星自身や連星系の状態が変わって本当に明るさが変化する場合もあれば、地球大気、星の高度、観測波長、雲やエアロゾル、観測装置などによって、地球に届く光や測定値だけが変化する場合もあります。
そのため天文学では、「明るさが変わった」という観測結果だけで、すぐに星そのものが変化したとは判断しません。変化の時間スケール、周期性、同じ視野の比較星、観測した高度やフィルターなどを調べ、天体側の変化と観測条件による変化を切り分けます。
星の明るさの時間変化を理解するには、「本来の光度」「地球へ届く光」「観測装置が記録した値」という三つを分けて考えることが重要です。
同じ星の「観測された明るさ」は一定とは限らない
恒星は遠くから見ると一点の光源のように見えますが、その明るさは必ずしも時間に対して一定ではありません。
星自身が膨張・収縮したり、表面活動を起こしたりすれば、実際に放出するエネルギー量が変わります。また、連星系で一方の星がもう一方を隠せば、星系全体から地球へ届く光が減ります。
一方、星そのものがほぼ一定でも、星が地平線近くへ移動すれば大気を通る距離が長くなり、光がより多く散乱・吸収されます。薄雲や水蒸気、黄砂、エアロゾルなども地上へ届く光を弱めます。
つまり、観測された明るさの変化には「天体側」と「地球側」の両方の原因が含まれます。
脈動変光星では星自身の明るさが周期的に変わる
星自身の物理状態が変化する代表例が脈動変光星です。
国立天文台が紹介するくじら座のミラは、約332日の周期で大きく明るさが変わる長周期変光星です。進化の後期にあるミラは膨張と収縮を繰り返しており、膨張すると表面温度が下がって暗くなり、収縮すると温度が上がって明るくなります。
この場合、暗く見えた原因は大気の透明度が悪かったからではありません。星そのものの半径や表面温度が変化し、放出する光の量が変わっています。
OpenStaxも、明るさが時間とともに変わる星を変光星と呼び、その変化を時間に対して記録したグラフを「光度曲線」として扱うと説明しています。
食連星では星の光が隠されて暗くなる
明るさが変わっても、必ずしも一つの恒星そのものの光度が変化しているとは限りません。
2つの恒星が互いのまわりを回る食連星では、地球から見て一方がもう一方の前を通ると、星系から届く光の一部が遮られます。そのため、一定の周期で明るさが下がります。
OpenStaxは、食連星の光度曲線では、一方の星がもう一方を隠し始めると明るさが低下し、食が終わると元へ戻ることを説明しています。
この変化は地球大気による見かけの減光ではありませんが、一方の星が急に弱く光り始めたわけでもありません。星系内の位置関係が変わることで、地球へ届く合計光量が変わっています。
黒点やフレアでも星の明るさは変化する
太陽に黒点やフレアがあるように、他の恒星にも磁気活動があります。
恒星表面に周囲より暗い大きな黒点があり、星が自転すると、黒点が見える面と見えない面が交互に地球側へ向きます。その結果、明るさが自転周期に近い周期でわずかに変化することがあります。
逆にフレアが起きれば、短時間だけ光が急増する場合があります。脈動変光星、食連星、黒点、フレアでは変化の時間スケールや光度曲線の形が異なるため、継続観測によって原因を推定できます。
低い空では同じ星でも暗く見えやすい
星自身が変化していなくても、観測時刻によって見かけの明るさは変わります。
星が天頂近くにあるとき、その光は比較的短い距離だけ地球大気を通ります。しかし地平線近くでは、大気を斜めに長く通過します。通過する空気の量が増えるほど、光の散乱や吸収が大きくなり、星は暗く見えます。
国立天文台は、全天で2番目に明るい恒星カノープスについて、日本の多くの地域では低空にしか見えないため、大気の影響を強く受け、本来より暗く見えると説明しています。
この場合、同じ夜の中で明るさが変わって見えても、星の光度が数時間で大きく変化したわけではありません。星の高度が変わり、大気を通る距離が変化したためです。
大気の透明度は夜ごとに変わる
同じ星を同じくらいの高度で観測しても、夜によって明るさが違って感じられることがあります。
原因の一つは大気の透明度です。薄い雲、水蒸気、ちり、黄砂、エアロゾルなどが多いと、星の光は地上へ届く途中で弱められます。肉眼では「今日は星が少ない」「いつもより暗い」と感じることがあります。
このような変化を天体自身の変光と誤認しないため、精密な測光では、対象星だけでなく近くの比較星も同時に測ります。対象星と比較星が同じように暗くなっていれば、大気や雲など地球側の影響である可能性が高まります。
大気による瞬きと長時間の変光は別の現象
恒星は数秒以下の短い時間でキラキラと明るさを変えて見えることがあります。これは主に地球大気の乱流による「瞬き」です。
温度や密度の異なる空気の塊が動くと屈折率が変化し、恒星から来る光の進行方向や集まり方が細かく変わります。そのため、一瞬ごとに目や望遠鏡へ届く光量が揺らぎます。
一方、脈動変光星や食連星では、数時間、数日、数百日など一定の時間スケールで明るさが変化します。
「秒単位で不規則に揺れるのか」「一定周期で繰り返すのか」を見るだけでも、大気の瞬きと天体側の変光を区別する手がかりになります。
観測する波長が違えば同じ星の明るさも違う
恒星は可視光だけでなく、紫外線や赤外線など幅広い波長で光を放っています。そして、どの波長で強く光るかは星の表面温度や状態によって異なります。
そのため、青色のBフィルターと可視域のVフィルター、赤色や赤外線のフィルターでは、同じ星でも測定される明るさが異なります。
さらに変光星では、明るさの変化幅そのものが波長によって違う場合があります。表面温度が変化する脈動星では、青色側で大きな変化が見え、赤外線側では変化の仕方が異なることがあります。
したがって「昨日より0.2等暗くなった」と比較するには、同じ測光系・同じフィルターを使っているかを確認する必要があります。
観測装置の違いも測定値を変える
同じ星を同じ時刻に撮影しても、カメラ、望遠鏡、フィルター、露出時間、センサー感度が違えば、記録される信号は同じになりません。
特に明るい星でセンサーが飽和すると、本来の光量と記録値の比例関係が崩れ、正しい明るさを測れなくなります。逆に暗い星では、空の背景光や読み出しノイズの影響が大きくなります。
AAVSOは、恒星測光ではセンサーを飽和させず、標準的な測光フィルターを使い、比較星を選び、画像を校正して不確かさを記録することを推奨しています。
観測条件が違うデータを比較するときは、装置由来の差も補正する必要があります。
比較星を使うと大気や装置の影響を減らせる
変光星観測で重要なのが「比較星」です。対象星の近くにある、明るさが安定している星を基準にして、対象星との明るさの差を測ります。
AAVSOは、恒星測光では対象星と比較星を同じ視野で測り、明るさや色が近い比較星を選ぶことを勧めています。近い方向の星なら、光がほぼ同じ大気を通るため、雲や透明度の変化の影響をある程度共通化できます。
対象星だけが暗くなり、比較星がほぼ一定なら、天体側の変化である可能性が高まります。対象星と比較星が同時に同じ割合で暗くなれば、大気や装置の影響を疑えます。
このように相対的な明るさを比較する方法を差分測光と呼びます。
「エアマス」をそろえると大気減光を比較しやすい
大気中をどれだけ長く光が通るかは、天文学では「エアマス」という量で表されます。天頂付近ではエアマスが小さく、地平線へ近づくほど大きくなります。
AAVSOの測光解説でも、大気は星の光を弱め、通過する大気が多いほど減光が大きくなるため、対象星と比較星の高度差やエアマス差を考慮する必要があるとされています。
高精度の観測では、対象星がなるべく高い位置にある時間帯を選び、比較星とのエアマス差を小さくすることで、大気減光の誤差を減らします。
光度曲線を作ると原因の違いが見えやすい
一回だけの観測では、「暗くなった理由」を判断するのは難しいことがあります。そこで、一定間隔で明るさを測り、時間に対して並べた光度曲線を作ります。
OpenStaxは、変光星の明るさを時間に対して記録した光度曲線から、最大・最小の明るさや変光周期を読み取れると説明しています。
脈動変光星なら比較的滑らかな周期変化、食連星なら食の時刻に対応した特徴的な減光、フレアなら短時間の急増など、原因によって曲線の形が異なります。
一方、薄雲や大気透明度の変化では、比較星も同時に変動したり、不規則な変化になったりします。時間変化を連続して記録することで、原因を分類しやすくなります。
星までの距離が一晩で大きく変わるわけではない
星の見かけの明るさは距離にも依存しますが、通常の恒星について、数時間や数日で地球との距離が大きく変わるわけではありません。
そのため、同じ恒星の短期的な明るさ変化を説明するとき、距離の変化が主因になることは通常ありません。時間変化を考える場合は、星自身の変光、連星の食、表面活動、大気減光、観測条件などを優先して調べます。
これは、星どうしの見かけの明るさを比較するときに距離が重要であることとは別の話です。「星Aと星Bの明るさが違う理由」と「同じ星が昨日と今日で違って見える理由」は、分けて考える必要があります。
変化の時間スケールが原因を見分ける手がかりになる
明るさの変化が起きた時間スケールを整理すると、原因を推定しやすくなります。
秒単位で不規則なら大気の瞬き、数十分から数時間で星の高度とともにゆっくり暗くなるなら大気減光、一定の周期で深く暗くなるなら食連星、数日から数百日で滑らかに繰り返すなら脈動変光星などが候補になります。
ただし、一つの時間スケールだけで断定はできません。複数のフィルター、比較星、複数夜の観測、場合によっては別の観測地点や宇宙望遠鏡のデータを組み合わせて確認します。
明るさの変化は天文学の重要な情報になる
明るさが変わることは、観測の邪魔になるだけではありません。変化の原因を正しく切り分ければ、恒星の性質を調べる重要な情報になります。
脈動周期から恒星の内部構造や距離を調べたり、食連星の光度曲線から恒星の大きさや軌道を求めたり、フレアから磁気活動を調べたりできます。
一方、大気による減光を測れば観測環境を評価でき、差分測光によってごく小さな天体変化を取り出せます。
「明るさが変わった」という現象を、天体側と観測側に分けて考えることが、時間変動する宇宙を研究する基本になります。
まとめ
同じ星でも明るさが時間や観測条件で変わって見えるのは、星や星系そのものの変化と、地球側の観測条件による変化が重なっているからです。
脈動変光星、食連星、黒点やフレアでは天体側に原因があります。一方、低空での大気減光、薄雲や透明度の変化、瞬き、観測波長、カメラやフィルターの違いは、地球へ届く光や測定値を変えます。
これらを見分けるには、比較星を使った差分測光、同じフィルターでの継続観測、エアマスの確認、光度曲線の作成が有効です。
星の明るさは一つの固定された観測値ではありません。いつ、どの高さで、どの波長で、どの装置を使って測ったかをそろえて初めて、星自身が本当に変化したのかを判断できるのです。

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