惑星が自転しているのは、惑星ができる前の材料がもともと運動しており、その回転の勢いである角運動量を受け継いだからです。
太陽系は、ガスやちりからなる大きな雲が重力で縮み、回転する原始惑星系円盤になって形成されたと考えられています。その円盤の中で微惑星や原始惑星が衝突・合体して成長すると、材料が持っていた角運動量は惑星の自転として残ります。
ただし、現在の自転速度や自転軸の向きがすべて誕生時のまま残っているわけではありません。巨大衝突や衛星との相互作用、太陽からの潮汐力によって、自転は長い時間をかけて変化します。
つまり惑星の自転は、形成時に受け継いだ角運動量と、その後の衝突・潮汐進化が合わさってできた運動なのです。
自転とは惑星が自分自身の軸のまわりを回る運動
惑星の運動には、自転と公転があります。
自転は惑星が自分の軸のまわりを回る運動で、公転は恒星など別の天体のまわりを回る運動です。地球では約24時間で1回自転し、約1年で太陽のまわりを1周します。
この二つは同時に起きていますが、同じ運動ではありません。公転は主に恒星との重力関係で軌道運動が保たれる現象で、自転は惑星自身が持つ角運動量に深く関係します。
惑星の材料は最初から完全に静止していたわけではない
惑星が形成される前、太陽系の材料となったガスやちりは、宇宙空間で完全に静止していたわけではありません。
星間雲が重力で収縮するとき、わずかな回転があれば、雲が小さくなるにつれて回転は目立つようになります。
国立天文台は、太陽系形成時にガスやちりの円盤が回転し、その中で惑星が形成されたと説明しています。
この回転運動が、後にできる惑星の公転や自転の角運動量の起源になります。
角運動量保存が自転を残す
回転している物体には角運動量があります。外から大きな回転作用を受けなければ、角運動量は保存されます。
よく使われる例が、スケート選手が腕を縮めると回転が速くなる現象です。質量が回転軸の近くへ集まると、同じ角運動量を保つため回転速度が上がります。
原始惑星も、周囲の物質を取り込みながら成長します。集まってくる物質が持つ角運動量が足し合わされるため、完成した惑星にも自転が残ります。
惑星が自転しているのは、形成後に誰かが回し続けているからではなく、形成時に得た角運動量が保たれているからです。
微惑星どうしの衝突が自転を作り変える
惑星形成は、静かに材料が均等に積み重なる過程ではありません。
多数の微惑星や原始惑星が衝突・合体する過程では、衝突の角度や速度によって惑星へ新しい角運動量が加わります。
正面衝突なら回転を強く増やさない場合もありますが、中心を外れた斜め衝突では大きな回転を与えることがあります。
そのため、同じ原始惑星系円盤から生まれた惑星でも、自転速度や自転軸の傾きは同じになりません。
地球の自転も形成と衝突の歴史を受け継いでいる
地球も、太陽系形成時の材料が持っていた角運動量を受け継いで自転しています。
さらに地球形成の後半には、巨大衝突が起き、月が形成されたとする巨大衝突説が有力です。
NASAは、初期地球への大規模衝突が地球・月系の角運動量や自転状態に大きな影響を与えた可能性を説明しています。
現在の地球の24時間という自転周期は、誕生直後から一定だったわけではありません。
月の潮汐作用で地球の自転は少しずつ遅くなる
地球の自転は、現在もゆっくり変化しています。
月の重力は海の潮汐を起こしますが、潮汐のふくらみは地球の自転と月の公転の関係によって完全には一直線になりません。そのずれを通じて、地球の自転角運動量の一部が月の公転へ移ります。
その結果、地球の自転は非常にゆっくり遅くなり、月は少しずつ地球から遠ざかっています。
惑星の自転は、形成時に決まって固定されるのではなく、衛星との重力相互作用でも変わり続けます。
潮汐力は自転と公転を結び付ける
惑星や衛星では、中心天体の重力が天体の手前側と奥側で少し異なるため、潮汐力が働きます。
潮汐力は天体をわずかに変形させ、その変形と回転のずれによってエネルギーが散逸します。長い時間がたつと、自転速度が公転運動と特定の関係へ近づくことがあります。
最も分かりやすい例が月で、月は地球のまわりを1周する時間とほぼ同じ時間で1回自転しています。そのため地球からはほぼ同じ面が見えます。
この状態を潮汐固定と呼びます。
水星では自転と公転が3対2の共鳴になっている
潮汐進化の結果は、必ず自転周期と公転周期が1対1になるとは限りません。
水星は太陽のまわりを2回公転する間に3回自転する、3対2のスピン軌道共鳴にあります。
NASAは、水星が太陽に近く、楕円軌道を持つため、潮汐作用によってこの3対2共鳴状態が安定していることを説明しています。
水星の例は、惑星の自転が単なる形成時の名残ではなく、その後の潮汐進化でも作り変えられることを示しています。
金星の逆行自転は「惑星は全部同じ向きに回る」という考えを崩す
太陽系の多くの惑星は、太陽の北側から見ると反時計回りに自転しますが、金星は非常にゆっくり逆向きに自転しています。
NASAは、金星の自転が他の多くの惑星と逆向きであることを紹介しています。
なぜ現在の逆行自転になったかについては、巨大衝突、太陽潮汐、大気潮汐など複数の要因が考えられており、単純に一つの原因だけで説明しきれるとは限りません。
この例からも、惑星の自転方向は「原始円盤が回っていたから全部同じ」と単純化できないことが分かります。
天王星の大きく傾いた自転軸も形成史の手掛かりになる
天王星は、自転軸が公転面に対して大きく傾いており、横倒しに近い姿勢で自転しています。
NASAは、天王星の極端な自転軸傾斜について、形成初期の大きな衝突が関係した可能性を紹介しています。
ただし詳細な形成過程には研究上の不確かさが残っています。
自転軸の傾きは、その惑星が形成後にどのような衝突や重力相互作用を経験したかを推定する手掛かりになります。
自転速度が速い惑星は赤道方向にふくらみやすい
惑星が自転すると、回転軸から離れた赤道付近では回転による遠心的な効果が大きくなります。
そのため、速く自転する惑星は完全な球ではなく、赤道方向に少しふくらんだ扁球になります。
木星や土星は自転が速く、赤道半径と極半径の差が比較的大きい惑星です。
つまり自転は、惑星の見た目の形にも影響します。
自転は昼夜の長さを決める
惑星が自転すると、恒星の光が当たる側と当たらない側が交互に入れ替わります。
地球ではこれが昼夜の基本原因です。
自転周期が短い惑星では昼夜の切り替わりが速く、自転周期が長い惑星では一つの昼・夜が長く続きます。
ただし、実際の「太陽が同じ位置へ戻るまでの1日」は、自転だけでなく公転も関係するため、単純な恒星に対する自転周期とは一致しない場合があります。
自転は大気や気候の流れにも影響する
自転している惑星では、大気や海洋の大規模な流れにコリオリ効果が現れます。
地球では、貿易風、偏西風、台風・低気圧の回転など、大気循環の形に自転が深く関係します。
木星の帯状の雲や巨大な渦も、高速自転と大気力学の組み合わせによって形成されています。
自転速度は、惑星の気象や気候を理解する重要な条件の一つです。
自転は惑星磁場にも関係する
地球や木星のような惑星では、内部の導電性流体の運動によって磁場が作られると考えられています。
自転は、この内部流体の運動を組織化する要因の一つです。
ただし「速く自転すれば必ず強い磁場ができる」という単純な関係ではありません。内部構造、熱輸送、導電性物質の状態なども重要です。
それでも、自転は惑星内部と磁場を考える際の基本条件になります。
系外惑星では自転を直接測るのが難しい
太陽系外惑星は非常に遠く、多くの場合は恒星のすぐそばに見えるため、自転速度を直接測るのは簡単ではありません。
それでも、惑星の明るさの時間変化、雲模様、分光観測、熱の分布などから自転周期を推定できる場合があります。
恒星に非常に近い惑星では潮汐作用が強いため、自転と公転が同期している可能性も重要な研究対象です。
自転を調べると、系外惑星の大気循環や昼夜温度差、気候を理解する手掛かりになります。
自転方向と公転方向は同じとは限らない
多くの太陽系惑星では自転方向と公転方向が同じですが、金星のように自転が逆向きの惑星もあります。
公転方向は原始惑星系円盤の大きな角運動量を反映しやすい一方、自転は個々の惑星が受けた衝突や潮汐進化の影響を強く受けます。
そのため、惑星系全体の公転方向がそろっていても、個々の惑星の自転状態には大きな違いが生まれます。
この違いは、惑星形成史を調べる重要な情報になります。
「自転しているから惑星になれる」わけではない
自転は多くの惑星に共通する基本運動ですが、自転そのものが惑星の定義条件ではありません。
国際天文学連合の太陽系惑星の定義では、太陽のまわりを公転し、自己重力でほぼ球形になり、軌道周辺を力学的に支配していることなどが基準です。
自転速度や自転方向は惑星ごとに大きく違い、金星のように非常にゆっくり逆行自転する惑星もあります。
したがって、自転は惑星の重要な性質ではありますが、「自転するから惑星」という関係ではありません。
まとめ
惑星が自転しているのは、惑星形成前のガスやちりが持っていた角運動量を受け継ぎ、微惑星や原始惑星の衝突・合体を通して回転運動が残ったからです。
ただし現在の自転速度や自転軸は、誕生時の状態そのままではありません。巨大衝突、衛星との相互作用、恒星からの潮汐力によって長い時間をかけて変化します。
地球では月の潮汐によって自転が少しずつ遅くなり、水星では3対2のスピン軌道共鳴、金星では非常に遅い逆行自転、天王星では極端に傾いた自転軸が見られます。
つまり惑星の自転は、惑星がどのように形成され、どんな衝突や潮汐相互作用を経験してきたかを残す運動の記録なのです。

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