同じ星や銀河を見ているのに、ある夜は明るく、別の夜は暗く見えたり、数時間の観測の中で明るさが上下したりすることがあります。さらに、同じ天体を同じ時刻に観測しても、望遠鏡や露出条件によって測定される明るさが少し違うこともあります。
天体の光が時間や観測条件で変わって見えるのは、天体そのものの放射が変化する場合、別の天体や物質が光を遮る場合、そして観測装置や地球大気などの条件が測定結果へ影響する場合があるからです。これらは見た目にはすべて「明るさが変わった」と表れますが、原因は同じではありません。
まず「光が変わる」と「見える明るさが変わる」を分ける
天文学では、観測された明るさの時間変化を調べるために「光度曲線」を使います。これは、横軸に時刻、縦軸に天体から受けた光の強さをとったグラフです。
NASAは、変光星、超新星、連星、ブラックホール周辺など、明るさが時間とともに変わる天体を調べる基本的な手段として光度曲線を利用すると説明しています。
ただし、光度曲線が上下したからといって、必ずしも天体が内部で明るくなったり暗くなったりしたとは限りません。星自身が変化している場合もあれば、前を別の天体が横切って一部の光を遮っている場合もあります。
さらに地上観測では、大気の透明度やシーイング、露出時間、検出器の特性なども測定値に影響します。
星自身が膨張・収縮すると明るさが周期的に変わる
代表的なのが変光星です。
国立天文台は、ケフェイド変光星について、星自身が膨張と収縮を繰り返すことで周期的に明るくなったり暗くなったりすると説明しています。星の半径や表面温度が変化すると、単位時間に放出する光の量も変わるためです。
このような場合、観測される明るさの変化は天体自身の物理状態の変化を反映しています。
周期が安定している変光星では、何日ごとに明るくなるかを測ることで、その星の性質を推定できます。ケフェイド変光星では変光周期と本来の明るさに関係があるため、宇宙の距離を測る重要な指標にもなります。
恒星の表面活動でも明るさは変化する
星が周期的に膨張しなくても、表面の状態が変われば明るさは変わります。
恒星の表面に大きな黒点があり、星が自転すると、その黒点がこちらを向く時期にはわずかに暗く見えることがあります。逆に明るい活動領域やフレアが現れれば、短時間に光が強くなることがあります。
つまり、星の自転周期と表面活動が組み合わさることで、数時間から数週間、あるいはさらに長い周期の明るさ変化が生じます。
この種の変動を長期間追うと、星の自転や磁気活動の性質を推定できる場合があります。
超新星や突発現象では短期間に明るさが大きく変わる
宇宙には、ゆっくり周期的に変化する天体だけでなく、突然明るくなる天体もあります。
超新星爆発では、星が短期間に急激に明るくなり、その後数週間から数か月かけて暗くなっていきます。新星、恒星フレア、ガンマ線バーストの残光、ブラックホールへ物質が落ち込む現象なども、さまざまな時間スケールで光が変化します。
NASAは、光度曲線の形を調べることで、明るさが変化した時間スケールや繰り返し周期を測り、天体の大きさや運動、物理過程を推定できると説明しています。
「いつ明るくなり、どれくらいの速さで暗くなったか」そのものが、天体の正体を知る重要な情報なのです。
惑星が星の前を横切ると、星は一時的に暗く見える
天体自身の光が変わっていなくても、私たちとの間に別の天体が入れば明るさは変わって見えます。
系外惑星を発見する代表的な方法がトランジット法です。惑星が恒星と観測者の間を横切ると、恒星表面の一部が隠され、受け取る光がわずかに減ります。
NASAは、トランジットによる明るさの低下を光度曲線の「くぼみ」として検出し、その深さから惑星の大きさ、繰り返し間隔から公転周期を推定できると説明しています。
国立天文台も、若い恒星V1298 Tauを回る惑星について、惑星が恒星の前を通る際の明るさ変化とその時刻の変動を利用して惑星の性質を調べています。
この場合、星そのものが暗くなったのではありません。観測者から見た配置が時間とともに変わり、光の一部が遮られたのです。
連星の「食」でも周期的な明るさ変化が起きる
二つの星が互いの周囲を回っている連星系では、一方の星がもう一方の前を通過することがあります。
私たちの視線方向と軌道面がうまくそろっていると、一方の星が相手を隠すたびに系全体の明るさが下がります。これを食連星と呼びます。
食が繰り返される周期を測れば、公転周期が分かります。食の深さや時間幅からは、二つの星の大きさや明るさの比、軌道の傾きなどを推定できます。
ここでも「明るさが変わる」という観測結果から、天体の運動と配置を読み解いています。
惑星の満ち欠けでも系全体の明るさは変わる
惑星が恒星を回ると、観測者から見える惑星の昼側と夜側の割合も変わります。
惑星自身が反射する光や赤外線放射まで高精度に測れる場合、恒星と惑星を合わせた系全体の明るさが公転周期に沿って少しずつ変化します。これを位相曲線として調べることがあります。
NASAは、位相曲線から惑星の昼側と夜側の温度差、反射率、大気による熱輸送などを推定できると説明しています。
つまり観測時刻によって見えている惑星面が変わるだけでも、受け取る総光量は変化します。
天体が変化する速さを知るには観測間隔が重要
時間変動を正しく測るには、どのくらいの間隔で観測するかが重要です。
10秒で起きる変化を1時間に一度しか測らなければ、その変化を見逃す可能性があります。逆に数年かけて変わる現象を数分だけ観測しても、ほとんど一定に見えるでしょう。
光度曲線は、観測した時刻にだけデータ点を持ちます。そのため観測の間隔が粗いと、本当は複雑な変化をしていても単純な形に見える場合があります。
天文学者は、調べたい現象の時間スケールに合わせて、秒単位、分単位、日単位、年単位など観測頻度を選びます。
露出時間が違うと短時間変動の見え方が変わる
カメラで天体を撮影するときには、一定時間光を集めます。この時間が露出時間です。
短い露出では時間変化を細かく追いやすい一方、集められる光子数が少ないため暗い天体ではノイズが大きくなります。
長い露出では多くの光を集められ、暗い天体を高い信号対雑音比で測りやすくなります。しかし露出中に天体の明るさが変化していた場合、その変化は平均化されます。
たとえば数秒だけ起きた急激なフレアを数十分露出で撮影すると、ピークの明るさは実際よりなだらかに見えることがあります。
つまり同じ天体でも、露出時間によって「どの時間スケールの変化まで見えるか」が変わります。
明るすぎる天体では検出器が飽和することがある
観測装置には、一度に記録できる光の量に上限があります。
明るい星を長時間露出すると、検出器の画素が受け取れる電荷の上限に達し、それ以上の光を正しく記録できなくなることがあります。これを飽和と呼びます。
飽和すると、本当はもっと明るいのに測定値が頭打ちになり、正確な測光ができません。
逆に露出が短すぎると、光子数が少なくなって統計的な揺らぎが大きくなります。
そのため精密な明るさ測定では、対象の明るさに合わせて露出時間や検出器設定を選ぶ必要があります。
地上観測では大気の透明度も測定値を変える
宇宙から届いた光を地上の望遠鏡で測る場合、最後に地球大気を通過します。
雲、水蒸気、エアロゾルなどは光を吸収・散乱します。そのため同じ天体でも、大気が透明な夜と薄い雲がある夜では、検出器へ届く光量が変わります。
精密測光では、対象星だけでなく近くの明るさが安定した比較星も同時に測り、大気による共通の変化を補正する方法が使われます。
つまり地上で測った「天体の明るさ」には、天体そのものだけでなく地球大気の状態も重なっています。
シーイングが悪いと星像が広がる
地球大気は温度や密度が完全に一定ではなく、空気の揺らぎによって屈折率が絶えず変化します。その結果、星の像が細かく揺れたり広がったりします。これがシーイングです。
国立天文台は、シーイングを精密な天体観測で重要な観測条件の一つとして扱い、星像の位置の揺らぎから測定しています。
理想的な測光では、広がった星像全体の光を正しく足し合わせれば総光量を補正できます。しかし星像が隣の天体と重なったり、測光に使う範囲から一部が外れたりすると、測定誤差が増えることがあります。
したがって、シーイングは星そのものを暗くする現象ではありませんが、観測精度や「どれだけ安定して明るさを測れるか」に影響します。
宇宙望遠鏡でも観測条件の影響は残る
宇宙望遠鏡は地球大気の影響を受けませんが、観測条件がすべて消えるわけではありません。
検出器の感度、背景光、宇宙線が検出器へ当たる影響、望遠鏡の姿勢変動、温度変化、読み出し方法などが測定精度に関係します。
また、同じ対象でも異なるフィルターを使えば、別の波長域の光を測ることになります。星の表面活動や惑星大気の吸収は波長によって異なるため、変光の深さが少し変わる場合もあります。
ただし「なぜ宇宙は可視光・赤外線・X線で違う姿に見えるのか?」で扱う多波長観測のように「波長ごとに別の物理成分を見る」という問題と、ここで扱う「時間変化をどう測るか」は区別して考える必要があります。
観測装置が違えば同じ天体でも数値が完全一致しないことがある
二つの望遠鏡が同じ天体を観測しても、測定値が完全に同じとは限りません。
望遠鏡の口径、フィルターの透過率、検出器の量子効率、画素サイズ、露出時間、データ処理方法などが違うからです。
そのため精密な長期観測では、標準星を使って装置ごとの差を補正し、同じ基準へそろえる作業が重要になります。
複数の観測所のデータをつなぎ合わせるときも、装置差を調整しなければ、本当の時間変化と機器差を混同する可能性があります。
「本当に変わった」のか「測り方で変わった」のかを分ける
天体の光が変わって見える理由は、大きく三つに分けると整理しやすくなります。
第一は天体自身の放射が変化した場合です。変光星の脈動、恒星フレア、超新星、ブラックホール周辺の活動などが該当します。
第二は視線上の配置が変化した場合です。系外惑星のトランジット、食連星、惑星の位相変化などです。
第三は観測条件や測定方法が違う場合です。大気の透明度、シーイング、露出時間、検出器飽和、観測間隔、装置の感度などが含まれます。
同じ「明るさが下がった」という結果でも、この三つでは科学的な意味がまったく異なります。
光度曲線では変化の「形」が重要
天文学者は、単に明るくなったか暗くなったかだけではなく、光度曲線の形を詳しく見ます。
滑らかに周期的な変化なら脈動星の可能性があります。一定間隔で鋭いくぼみが現れれば、食連星や惑星トランジットが考えられます。急激に明るくなってゆっくり暗くなるなら、爆発的な現象かもしれません。
変化の周期、振幅、立ち上がり時間、減衰時間、色の変化などを組み合わせることで、同じ「変光」でも原因を区別できます。
だからこそ、天体の明るさを一度だけ測るより、時間を追って何度も測ることに大きな意味があります。
天体の光を比較するときは5つを確認する
異なる時刻や観測所で得た明るさを比べるときは、次の五つを確認すると分かりやすくなります。
第一は天体そのものの時間変動です。変光星、フレア、爆発などが起きていないかを確認します。
第二は視線上の配置です。惑星や伴星が前を通っていないか、位相が変わっていないかを見ます。
第三は観測時刻と間隔です。短時間変動を十分細かく測れているかを確認します。
第四は露出・検出器条件です。露出時間、飽和、感度、フィルターなどをそろえます。
第五は観測環境です。地上なら大気透明度やシーイング、宇宙望遠鏡なら背景光や機器状態などを確認します。
この五つをそろえて初めて、観測された明るさの違いが天体物理によるものか、測定条件によるものかを適切に判断できます。
まとめ
天体の光が時間や観測条件で明るさが変わって見えるのは、「光の変化」に複数の原因があるからです。
変光星では星自身の膨張・収縮や表面活動によって本来の放射量が変わります。超新星やフレアでは短時間に大きな変化が起こります。一方、系外惑星のトランジットや食連星では、天体自身の光が弱くなったのではなく、視線方向で光の一部が遮られます。
さらに、観測間隔、露出時間、検出器の飽和、地球大気の透明度、シーイング、装置の感度などでも測定される明るさは変化します。
したがって「天体が暗くなった」という一つの観測結果だけでは原因を決められません。いつ、どれくらいの時間間隔で、どの装置を使い、どんな環境で測ったのかを確認し、光度曲線の形を調べることが重要です。
宇宙の光は固定された静止画ではありません。時間変化を記録することで、星の内部運動、惑星の公転、爆発現象、磁気活動など、画像だけでは見えない宇宙の動きを読み取ることができるのです。
関連記事
主な参考資料
- 国立天文台「膨張する宇宙とビッグバン」
- 国立天文台「環境モニター」
- NASA Science「What’s a transit?」
- NASA Imagine the Universe「Light Curves and What They Can Tell Us」

コメント