なぜ多くの爬虫類は、低温で代謝を落とし越冬場所にこもって冬を乗り切るのか?

寒い地域に暮らすヘビ、トカゲ、カメの多くは、冬になると活動が大きく減り、地中、落ち葉の下、岩の隙間、水底などで長い時間を過ごします。日本語では広く「冬眠」と呼ばれますが、爬虫類の冬季休眠は哺乳類の冬眠と同じ仕組みではありません。

爬虫類は外温動物なので、体温や代謝速度が周囲の温度に強く影響されます。気温が下がると筋肉や消化の働きが遅くなり、餌も少なくなるため、無理に活動するよりも安全な場所へ移動して代謝を下げ、蓄えたエネルギーを節約するほうが有利になります。

このような爬虫類の越冬休眠は英語でbrumationと呼ばれることがあります。ただし、すべての爬虫類が冬の間ずっと完全に動かないわけではありません。暖かい日に一時的に活動する種や、低水温でもある程度動くカメもいます。

つまり爬虫類で冬眠のような状態が見られるのは、低温で活動効率が落ちる季節に、代謝と行動を抑え、温度変化の小さい越冬場所を利用して、春までエネルギーと体の機能を温存するためです。

目次

なぜ寒くなると爬虫類は動きにくくなるの?

爬虫類は、鳥や哺乳類のように大量の代謝熱をつくって一定の高い体温を保つ動物ではありません。太陽光、地面、水など外部の熱を利用して体温を調節します。

そのため周囲の温度が下がると、体温も下がりやすくなります。酵素反応、神経伝達、筋収縮、消化などの速度も低下し、走る・泳ぐ・獲物を捕らえるといった活動が難しくなります。

一方、代謝速度も下がるため、必要なエネルギー量は減ります。これは冬を乗り切るうえでは大きな利点です。

2022年の爬虫類の冬季生態レビューでは、低温による代謝低下に加え、一部では代謝をさらに抑えるmetabolic depressionが越冬を支えると整理されています。

餌が少ない冬に、代謝を落とすことはなぜ有利なの?

冬は昆虫や小動物の活動が減り、植物資源も少なくなるため、多くの爬虫類にとって採餌効率が低い季節です。

低い体温では消化にも時間がかかります。十分に体を温められない状態で餌を食べても、消化を効率よく進められない場合があります。

そこで秋までに体内へ脂肪やグリコーゲンを蓄え、冬は活動量と代謝を下げて、その貯蔵エネルギーを少しずつ使います。

これは「何もしない」状態ではありません。心臓、脳、細胞膜、浸透圧調節など、生存に必要な最低限の機能を保ちながら、不要なエネルギー消費を減らす戦略です。

なぜ地中や落ち葉の下などへ隠れるの?

越冬場所は、単なる隠れ家ではありません。外気より温度変化が小さく、凍結や急激な乾燥を避けやすい微小環境です。

地表では昼夜や寒波で温度が大きく変わりますが、地中、石の下、落ち葉の中、樹洞などは温度変化が緩やかです。

2025年に宮崎県のキノボリトカゲ類を調べた研究では、冬季には個体が地面や落ち葉の下で不動化して越冬していることが確認されました。

このように、低温へ生理的に耐える能力だけでなく、致死的な寒さへさらされにくい場所を選ぶ行動も冬季生存に重要です。

水中で冬を越すカメもいるの?

います。日本のニホンイシガメでは、秋から春にかけて谷川や池で過ごし、低水温下でも一部の個体が活動することが報告されています。

つまり、カメの越冬は必ずしも「完全に動かない冬眠」ではありません。種や性別、地域、水温によって活動性は異なります。

さらに北米のペインテッドタートルなど一部の淡水ガメは、池が氷で覆われて水面へ呼吸に出られない冬を、水底で過ごします。水中の酸素が極端に少なくなる場合には、代謝を大幅に抑え、長期間の低酸素・無酸素へ耐えます。

このようなカメでは、低温による代謝低下に加え、嫌気代謝で生じる乳酸を甲羅や骨の炭酸塩で緩衝する仕組みまで利用されます。

ヘビは集団で冬眠することがあるの?

あります。寒冷地のヘビでは、地下の岩隙や洞穴など、凍結しにくい場所へ多数個体が集まる例があります。

同じ越冬場所を使う最大の理由は、そこが長期間安定して安全だからです。適切な地下空間は毎年限られているため、複数個体が同じ場所へ集まることがあります。

ただし、集まることそのものが必ず保温になるとは限りません。爬虫類は哺乳類のように大量の熱を生み出さないため、集団越冬の中心的な利点は、良好な越冬場所の共有と考えるほうが適切です。

「冬眠」と「brumation」はどう違うの?

日常語では、爬虫類が冬に長く動かなくなる状態も「冬眠」と呼ばれます。

一方、生理学や飼育分野では、外温動物の低温による越冬休眠を哺乳類の冬眠と区別するため、brumationという語が使われます。

哺乳類の冬眠では、体内の調節によって代謝や体温を大きく下げ、途中で自発的な覚醒と再加温を繰り返す種が多くいます。爬虫類では、外部温度の低下そのものが代謝と活動へ非常に強く影響します。

ただし、この区別は絶対ではありません。研究文献でも爬虫類の状態をhibernationと呼ぶ例はあり、爬虫類の越冬生理にも能動的な代謝抑制が含まれます。

そのため、「爬虫類の冬眠は偽物」という意味ではなく、同じ冬季休眠でも熱生理と代謝制御の仕方が哺乳類とは異なると理解するのがよいでしょう。

春になると、どうやって活動を再開するの?

越冬場所の温度が上がると体温と代謝が上がり、筋肉や神経、消化器官の働きも回復します。

温帯の爬虫類では、冬から春への温度変化が越冬終了や繁殖周期の重要な手がかりになります。ヘビでは低温期間とその後の昇温が、生殖内分泌や繁殖行動の季節性と結びつく例があります。

つまり越冬は、寒さを避けるだけでなく、春の繁殖や採餌へ生活環を同期させる季節調節にも関係します。

暖冬なら、爬虫類には必ず有利なの?

必ずしもそうではありません。

冬が暖かければ凍結や極端な低温の危険は減る可能性があります。一方、温度が上がると代謝も上がるため、冬の間に貯蔵エネルギーを多く消費してしまうことがあります。

また暖かい日に早く活動を始めても、餌がまだ少なければエネルギー収支が悪化します。春の出現時期が植物や獲物、繁殖相手の季節変化とずれる可能性もあります。

爬虫類の冬季温暖化研究をまとめたメタ解析でも、暖冬によって春の活動開始が早まる傾向はある一方、生存率や体状態への影響は単純ではないとされています。

すべての爬虫類が冬眠するの?

いいえ。

熱帯や亜熱帯のように一年中活動可能な温度が保たれる地域では、冬季休眠をほとんど行わない種類もいます。

温帯でも、暖かい日には日光浴や移動を行う種類があります。ニホンイシガメのように低水温下でも活動が観察される種もいます。

つまり冬眠・brumationは「爬虫類であれば必ず行う性質」ではなく、季節的な低温で活動と採餌が制限される環境に適応した越冬戦略です。

爬虫類で冬眠のような状態が見られる理由を一言でまとめると?

多くの爬虫類が冬に休眠するのは、外温性のため低温下では筋肉・消化・神経などの働きが低下し、餌も少なくなるので、安全な越冬場所へ移動して代謝を抑え、蓄えたエネルギーを春まで温存することが生存に有利だからです。

地中や落ち葉、水底などの越冬場所は極端な温度変化を避ける役割をもち、一部のカメでは低温・低酸素に耐える特別な代謝調節も発達しています。

つまり爬虫類の「冬眠」は、ただ寒くて動けなくなるだけではありません。低温による代謝低下、生理的な代謝抑制、越冬場所の選択、貯蔵エネルギーの節約を組み合わせ、活動に適さない季節をやり過ごす冬季生存戦略なのです。

参考資料

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