なぜ植物以外の生物も光合成でき、その仕組みは種類や環境によって違うのか?

「光合成」というと、葉を持つ植物だけが行う反応だと思われがちです。しかし実際には、植物以外にも光エネルギーを利用して有機物や化学エネルギーをつくる生物がいます。藻類やシアノバクテリアは、植物とよく似た酸素発生型光合成を行います。一方、紅色細菌や緑色硫黄細菌などの光合成細菌には、酸素を発生しない「無酸素型光合成」を行うものがあります。

こうした違いが生まれるのは、光を受け取る色素、電子を取り出す物質、反応中心の構造、二酸化炭素(CO₂)の利用法、そして暮らしている環境がそれぞれ異なるからです。植物以外の光合成を理解すると、光合成は「葉緑体を持つ植物だけの仕組み」ではなく、生命がさまざまな環境で光を利用するために発達させてきた多様なエネルギー獲得法だと分かります。

目次

植物以外にも光合成する生物はいる

光合成を行う生物には、陸上植物だけでなく、藻類、シアノバクテリア、紅色細菌、緑色硫黄細菌、クロロフレクサスの仲間、ヘリオバクテリアなどが含まれます。

ただし、これらがすべて同じ光合成をしているわけではありません。大きく分けると、水を使って酸素を発生する「酸素発生型光合成」と、酸素を発生しない「無酸素型光合成」があります。

植物、藻類、シアノバクテリアは酸素発生型です。これに対し、多くの光合成細菌は無酸素型です。この区別が、植物以外の光合成を理解する最も重要な出発点になります。

藻類の光合成は基本的に植物とよく似ている

緑藻、紅藻、褐藻など、多くの藻類は葉緑体を持ち、酸素発生型光合成を行います。光化学系IIで水から電子を取り出し、その過程で酸素を発生させ、光化学系Iも使ってATPやNADPHをつくります。そのエネルギーを利用してCO₂を固定します。

この基本原理は陸上植物と共通しています。葉緑体は、祖先的なシアノバクテリアが真核細胞の祖先に取り込まれて細胞内共生したことに由来すると考えられています。そのため、植物や多くの藻類の葉緑体には、シアノバクテリア由来の特徴が数多く残っています。

一方で、藻類は水中の光環境に適応しているため、陸上植物とは異なる色素構成を持つことがあります。水の中では波長によって光の届き方が違うため、紅藻や褐藻ではクロロフィル以外の色素を利用し、緑色光や青色光などを効率よく吸収します。

シアノバクテリアは「細菌」だが酸素を出す光合成をする

シアノバクテリアは、かつて「藍藻」と呼ばれることもありましたが、分類上は細菌です。核や葉緑体のような膜で囲まれた細胞小器官は持ちません。

それでも、シアノバクテリアは光化学系Iと光化学系IIの両方を使い、水を電子供与体として酸素を発生させます。この点では植物や藻類と非常によく似ています。

植物の葉緑体がシアノバクテリア由来と考えられているのも、この共通性と深く関係しています。葉緑体は独立した細菌ではなく植物細胞の一部になっていますが、光合成装置の基本設計にはシアノバクテリアとのつながりが残っています。

光合成細菌の中には酸素を出さないものがいる

紅色細菌や緑色硫黄細菌などの一部の細菌は、光を使ってエネルギーを得ますが、植物のように水を分解して酸素を発生させることはできません。これが無酸素型光合成です。

これらの細菌は、水の代わりに硫化水素、水素、還元型硫黄化合物、有機物などから電子を得ます。たとえば緑色硫黄細菌や紅色硫黄細菌では、硫化水素を電子供与体として利用する種類が知られています。

水を電子源にしないため、酸素は発生しません。環境によっては硫黄が生成されたり、さらに酸化されて硫酸塩などになることがあります。このため、無酸素型光合成を行う細菌は、炭素循環だけでなく硫黄循環にも関係しています。

植物と光合成細菌では反応中心の数も違う

植物、藻類、シアノバクテリアの酸素発生型光合成では、光化学系Iと光化学系IIという二種類の反応中心が協力して働きます。水から電子を取り出すには大きな酸化力が必要であり、二つの光化学系を連携させることでその反応を可能にしています。

一方、多くの無酸素型光合成細菌では、反応中心は一種類だけです。系統によって、光化学系Iに似たタイプを使うものと、光化学系IIに似たタイプを使うものがあります。

つまり、無酸素型光合成は「植物の光合成から酸素発生だけを抜いたもの」ではありません。反応中心の構成や電子の流れそのものが異なります。

使う色素も植物と同じとは限らない

陸上植物ではクロロフィルaとbが主要な光合成色素です。藻類では、クロロフィルaに加えてクロロフィルb、c、フィコビリン系色素など、グループごとに異なる色素を使います。

無酸素型光合成細菌では、バクテリオクロロフィルと呼ばれる色素が重要です。バクテリオクロロフィルは、植物のクロロフィルとは吸収しやすい波長が異なります。

この違いによって、同じ場所に複数の光合成生物がいても、使う光の波長をある程度分けることができます。表層では植物やシアノバクテリアが可視光を利用し、より深い場所では別の波長を利用できる光合成細菌が生育する場合があります。

緑色硫黄細菌は非常に弱い光でも生きられる

緑色硫黄細菌には、クロロソームと呼ばれる大きな集光装置を持つものがあります。クロロソームには大量のバクテリオクロロフィルが集められており、非常に弱い光でも光エネルギーを集めることができます。

そのため、湖の深い層や、上に別の光合成生物がいて光の大部分が吸収されてしまった場所などでも生育できる場合があります。

ただし、こうした場所では酸素が少ないことも重要です。緑色硫黄細菌の多くは嫌気的な環境で無酸素型光合成を行うため、「弱い光がある」「酸素が少ない」「利用できる硫化水素などがある」という条件がそろう場所に適応しています。

紅色細菌は光以外の代謝も使える種類が多い

紅色細菌には、光合成だけでなく多様な代謝を使い分ける種類があります。光があり酸素が少ない条件では光合成を行い、条件が変わると呼吸や有機物利用へ切り替えるものもあります。

特に紅色非硫黄細菌には、光エネルギーを利用しながら有機物を炭素源として使う光従属栄養を行うものが多く知られています。

このような柔軟性は、光、水、酸素、有機物などの条件が頻繁に変わる環境で有利です。植物の光合成と比べると、「光を使えば必ずCO₂だけから有機物をつくる」というわけではない点が大きな違いです。

CO₂を固定する方法も一種類ではない

植物や多くの藻類、シアノバクテリアでは、カルビン・ベンソン回路がCO₂固定の中心です。しかし、光合成細菌のすべてが同じ回路を使うわけではありません。

紅色細菌の多くはカルビン・ベンソン回路を利用しますが、緑色硫黄細菌では逆向きTCA回路と呼ばれる別の炭素固定経路を使うものがあります。

光をエネルギー源として使うという共通点があっても、最終的に炭素を細胞の材料へ取り込む経路は系統によって異なります。この違いも、それぞれの生物が進化してきた環境や代謝の特徴を反映しています。

酸素の有無が光合成生物のすみ分けを生む

植物、藻類、シアノバクテリアは酸素発生型光合成を行うため、明るく水があり、酸素が存在する環境でも活動できます。

一方、無酸素型光合成細菌の多くは、酸素が少ない環境を好みます。湖や海の堆積物付近、温泉、硫黄を含む水域、微生物マットなどでは、光は届くものの酸素が乏しい層ができます。そこは無酸素型光合成生物にとって適した環境です。

そのため、水中や微生物マットでは、深さに応じて酸素濃度、硫化水素濃度、光量、光の波長が変わり、異なる光合成生物が層状にすみ分けることがあります。

光の波長が環境ごとの違いを生む

光は水や他の生物に吸収されるため、深くなるほど弱くなり、波長構成も変化します。表面近くではさまざまな波長が利用できますが、深い場所では特定の波長だけが残りやすくなります。

光合成生物は、それぞれ異なる光合成色素を持つことで、自分が暮らす環境に残っている光を利用します。植物や緑藻、紅藻、シアノバクテリア、緑色硫黄細菌、紅色細菌で色が違って見えるのも、含まれる色素の組み合わせが異なるためです。

したがって、植物以外の光合成の違いは、単なる分類上の違いではありません。それぞれが使える光の「色」と生育場所の関係にも表れています。

水を使えるかどうかが酸素発生の大きな分かれ目になる

酸素発生型光合成の最大の特徴は、水を電子供与体として使えることです。水は地球上に豊富にありますが、非常に安定した物質なので、そこから電子を取り出すには強い酸化力が必要です。

シアノバクテリア、藻類、植物は、光化学系IIの酸素発生中心によって水を酸化し、電子、プロトン、酸素を生み出します。

無酸素型光合成細菌は水をこのように酸化できないため、より電子を取り出しやすい硫化水素、水素、有機物などを利用します。この電子供与体の違いが、「酸素を出す光合成」と「酸素を出さない光合成」の根本的な差になっています。

植物以外の光合成は地球環境の形成にも関わってきた

植物が陸上に広がるはるか以前から、微生物による光合成は地球上で行われてきました。特にシアノバクテリアによる酸素発生型光合成は、大気や海洋に酸素が蓄積していく過程と深く関係したと考えられています。

一方、無酸素型光合成は、酸素の少ない初期地球環境でも成立しやすい光利用法です。現在でも嫌気的な環境に残り、硫黄や炭素の循環を担っています。

このことから、植物以外の光合成を比較することは、現在の生態系だけでなく、光合成がどのように進化し、地球環境を変えてきたかを考える手がかりにもなります。

「植物以外の光合成」は一つの仕組みではない

植物以外の光合成生物をまとめて考えるときは、「植物ではない生物が植物と同じことをしている」と考えないことが大切です。

藻類の多くは葉緑体を持ち、植物と近い酸素発生型光合成を行います。シアノバクテリアは細菌ですが、二つの光化学系を使って水を分解し、酸素を出します。一方、紅色細菌や緑色硫黄細菌などは一種類の反応中心とバクテリオクロロフィルを使い、水以外から電子を得て酸素を出しません。

つまり「植物以外での光合成」には、植物に非常によく似たタイプから、反応中心、色素、電子供与体、炭素固定経路まで大きく異なるタイプまで含まれています。

主な生物群 光合成の型 主な電子供与体 酸素発生 特徴
植物・多くの藻類 酸素発生型 水 あり 葉緑体で光化学系I・IIを使用
シアノバクテリア 酸素発生型 水 あり 細菌だが植物型に近い光合成を行う
紅色細菌 無酸素型 硫化水素、水素、有機物など なし 一種類の反応中心を使用し、代謝が柔軟な種類も多い
緑色硫黄細菌 無酸素型 主に硫化水素など なし クロロソームで非常に弱い光を利用できる

まとめ

植物以外の生物も光合成できるのは、光エネルギーを化学エネルギーへ変える仕組みが、複数の生物群で進化してきたからです。ただし、その仕組みは一種類ではありません。

藻類やシアノバクテリアは植物と同じように水を利用して酸素を発生する光合成を行います。一方、紅色細菌や緑色硫黄細菌などは、硫化水素や水素などを電子源として使う無酸素型光合成を行います。さらに、光合成色素、反応中心、CO₂固定経路、必要な酸素条件にも違いがあります。

こうした違いは、それぞれの生物が暮らす場所の光量、光の波長、酸素濃度、利用できる硫黄化合物や有機物などに適応した結果です。つまり、植物以外の光合成の多様性は、生命がさまざまな環境で光を利用するために発達させてきた多様な戦略の表れなのです。

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