なぜ植物の昼夜の光合成パターンは季節や育ち方によって変わるのか?

植物の光合成は、昼と夜で同じように進むわけではありません。多くのC3植物やC4植物では、昼に光反応が進み、二酸化炭素(CO₂)を取り込んで有機物をつくります。夜になると光反応は止まり、呼吸が続きます。ところが、この「昼にどれだけCO₂を取り込み、夜にどれだけ炭素を使うか」という一日のパターンは、一年中同じではありません。

春の展葉期、夏の高温・乾燥期、秋の老化期、冬の低温期では、同じ植物でも光合成の日変化が変わります。また、長日と短日、湿潤条件と乾燥条件、日向と日陰でも、昼と夜の炭素収支は異なります。CAM植物では、夜間のCO₂取り込み量や、夕方に気孔を開いて直接CO₂を取り込む割合まで季節によって変わることがあります。

つまり、昼夜の違いは「昼だからこう、夜だからこう」と固定されているのではありません。光、温度、水分、空気の乾燥度、日長、葉齢、植物の体内時計などが変わることで、昼夜それぞれの光合成・呼吸・気孔開閉のバランスが調整されるのです。

目次

昼夜の基本的な違いは、光があるかどうかから始まる

光合成の光反応は葉緑体のチラコイド膜で進み、光エネルギーを使ってATPやNADPHをつくります。これらはカルビン・ベンソン回路でCO₂を有機物へ固定するために使われます。

そのため、多くのC3植物やC4植物では、正味のCO₂吸収は明るい時間帯に大きくなります。夜には光反応が止まり、新たなATPやNADPHの供給がなくなるため、外気からの正味のCO₂取り込みは通常ほとんど起こりません。

一方、呼吸は昼夜とも続いています。植物は昼に光合成でつくった糖などを夜にも分解し、生命活動に必要なATPを得ています。そのため夜は、一般にCO₂を放出し酸素を消費する方向のガス交換が目立ちます。

同じ昼でも、朝と午後では光合成速度が違うことがある

昼間の光合成は、日の出から日没まで一定ではありません。朝は光が強くなるにつれて光合成速度が上がりますが、晴れた暑い日には、正午前後から午後にかけて光合成速度が低下する「光合成の昼休み」や「昼寝現象」が見られることがあります。

この現象には、強い光、高温、高い飽差(VPD)、葉の水分低下、気孔閉鎖などが関係します。光そのものは十分でも、空気が乾燥して水を失いやすくなると、植物は気孔を閉じて蒸散を抑えます。その結果、葉内へ入るCO₂が減り、光合成速度が下がります。

野外植物では、光合成速度や気孔コンダクタンスが午前中に高く、午後に低下する日変化が観察されています。つまり「昼」は一つの状態ではなく、朝・正午・午後で環境条件と植物の生理状態が変わる時間帯なのです。

夏は昼が長くても、午後の高温・乾燥で炭素獲得が落ちることがある

夏は日長が長く、光も強いため、光合成に使える時間とエネルギーは多くなります。しかし、夏ほど一日中高い光合成速度を維持できるとは限りません。

日中の気温が高くなり、VPDが上がると、葉から水が失われやすくなります。土壌水分が不足していれば、気孔閉鎖はさらに強くなります。そのため、朝は高いCO₂吸収を示していても、昼過ぎには光合成速度が低下し、夕方に気温やVPDが下がると少し回復する二峰型の日変化になることがあります。

日本の常緑広葉樹を通年測定した研究でも、光合成速度は午前中にピークを持ち、蒸散速度は正午ごろにピークを持つ傾向が報告されています。また、水利用効率は午後より午前中の方が高く、季節によっても変化しました。

春や秋では、同じ時刻でも葉の状態が夏とは違う

春の若い葉は、展開直後から最大の光合成能力を持つわけではありません。葉緑体、Rubisco、電子伝達系、気孔調節などが成熟するにつれて、昼間のCO₂固定能力が高くなります。

秋には逆に、葉の老化とともにクロロフィルや光合成関連タンパク質が分解され、昼間の光合成能力が低下します。夜間の呼吸も温度低下によって変化するため、昼と夜の炭素収支の差そのものが季節とともに変わります。

つまり、同じ「午前10時」でも、春の若葉、夏の成熟葉、秋の老化葉では、受けている光だけでなく、光を炭素固定へ変換する能力が異なります。

冬は昼に光があっても、低温で光合成を十分に進められないことがある

冬は日長が短くなり、低温によってカルビン・ベンソン回路や酵素反応も遅くなります。晴れた日には十分な光があっても、低温のためCO₂固定側がそのエネルギーを使い切れないことがあります。

このとき植物は、吸収した余分な光を熱として逃がすなどして葉緑体を守ります。常緑植物では、冬も葉を残したまま低温と強光を経験するため、光合成を最大化するより光損傷を避けることが優先される場合があります。

夜間はさらに温度が下がるため呼吸速度も変わりますが、低温によって昼の炭素獲得も小さくなるため、一日の正味の炭素収支は夏とは大きく異なります。

日長が変わると、光合成できる時間と夜間代謝の長さも変わる

季節によって昼の長さは変わります。長日では光合成できる時間が長くなり、短日では光反応を行える時間が短くなります。ただし、一日のCO₂取り込み量は日照時間に単純比例するわけではありません。

長い昼でも、午後に高温や乾燥で気孔が閉じれば、その時間帯の炭素獲得は小さくなります。反対に短日でも、光・温度・水分条件が良ければ、昼の時間を効率よく使える場合があります。

夜の長さも重要です。夜が長くなると、蓄えた炭水化物を呼吸や成長に使う時間も長くなります。植物は一晩でデンプンを使い切らないよう、夜の長さに合わせて分解速度を調節することが知られています。したがって季節的な日長変化は、昼の光合成だけでなく夜の炭素利用にも関わります。

体内時計は昼夜の切り替えを環境に合わせる

植物には概日時計があり、およそ24時間周期で気孔開閉、光合成関連遺伝子、糖代謝などを調節しています。日の出や日没の時刻が季節によって変わると、光情報によってこの時計も環境に同調します。

そのため、同じ光を突然与えたとしても、朝と夕方では光合成や気孔の応答が同じとは限りません。近年の研究でも、複数の植物で光合成速度や気孔コンダクタンスが午後に低下する日周変化が確認されています。

昼夜の光合成パターンは、外部環境の変化だけでなく、植物内部の時間制御とも組み合わさってつくられています。

CAM植物では「夜にCO₂を取り込む量」自体が季節で変わる

サボテン、アガベ、コチョウランなどに見られるCAM植物では、多くの場合、夜に気孔を開いてCO₂を取り込み、有機酸として蓄えます。昼は気孔を閉じ、夜に蓄えた有機酸からCO₂を放出してカルビン・ベンソン回路で利用します。

ただし、CAM植物の一日のパターンも固定されていません。CAMブロメリアを季節ごとに調べた研究では、春と夏の夜間CO₂取り込みは秋や冬より大きく、反対に夕方のPhase IVに外気から直接CO₂を取り込む割合は秋冬で大きくなるという季節差が報告されています。

このようにCAM植物では、夜間固定、昼間の内部CO₂利用、夕方の直接吸収の配分そのものが、日長や光量、温度などに応じて変化します。

乾燥すると、C3型に近い植物がCAMを強めることもある

CAMには、常に強いCAMを行う植物だけでなく、普段はC3型に近い光合成を行い、乾燥や塩ストレスを受けるとCAMを強める通性CAM植物があります。

このような植物では、水が十分なときは昼に気孔を開き、C3型に近いCO₂取り込みを行います。しかし乾燥すると、昼の気孔開度を下げ、夜間にCO₂を取り込む割合を増やします。

つまり、昼夜の違いは植物種ごとの固定した性質だけでなく、同じ個体が生育条件に応じて切り替えられる場合もあります。季節的な乾燥が強い環境では、この柔軟性が水を節約しながら炭素を得るうえで有利です。

水分条件は昼夜差を大きく変える

十分に水があるとき、多くのC3植物では朝から昼にかけて気孔を開き、光に応じてCO₂を取り込みます。しかし乾燥が進むと、日中の気孔閉鎖が強まり、昼の光合成が低下します。

慢性的な水ストレスを経験した植物では、気孔の開閉や水利用効率が長期的に調整されることもあります。つまり、現在の水分状態だけでなく、それまでどのような水環境で育ったかという生育履歴も、一日の光合成パターンに影響します。

夏の乾燥期と雨の多い時期では、同じ植物でも朝・昼・夕方のCO₂取り込みの配分が変わることがあります。

昼夜差の季節変化は、光合成と呼吸の両方を見る必要がある

一日の炭素収支は、昼にどれだけCO₂を固定したかだけでは決まりません。夜間に呼吸でどれだけ炭素を使ったかも重要です。

一般に呼吸は温度の影響を強く受けます。暖かい夜には呼吸による糖の消費が増えやすく、涼しい夜には低下する傾向があります。そのため、同じ昼間の光合成量でも、夜温が異なれば翌朝までに残る炭素量は変わります。

季節による「昼夜の違い」を考えるときは、昼の光合成速度だけでなく、夜の呼吸、糖やデンプンの利用、CAM植物なら夜間CO₂固定まで含めて考える必要があります。

季節によって主な制限要因が入れ替わる

春は葉の成熟と低温、夏は高温・高VPD・乾燥、秋は葉の老化、冬は低温と短日が大きな制限要因になります。つまり、昼夜の光合成パターンが変わるのは、季節ごとに光合成を制限する要因が入れ替わるからです。

同じ植物でも、春には昼の光を十分使えなかった葉が初夏には高いCO₂吸収を示し、真夏には午後の乾燥で光合成が落ち、秋には葉齢によって再び能力が低下することがあります。植物はこの変化に、短期的な気孔調節と、数日から数週間かけた光合成順化の両方で対応します。

季節・生育条件 昼夜の光合成パターンに起こりやすい変化
春・展葉期 葉の成熟とともに昼のCO₂取り込み能力が高まる
夏・高温高VPD 午前に高く午後に低下する昼休み型が起こりやすい
夏・乾燥 昼の気孔閉鎖が強まり、CAM植物では夜間取り込みの重要性が増す場合がある
秋・老化期 昼の光合成能力が低下し、日長短縮で光合成可能時間も短くなる
冬・低温 昼に光があっても炭素固定が遅く、光防御が強まる
長期的な生育条件の変化 気孔、葉緑体、酵素、CAMの強さなどが順化し、一日の配分が変わる

まとめ

植物の昼夜の光合成パターンが季節や生育条件によって変わるのは、昼夜を決める光の有無だけでなく、温度、水分、VPD、日長、葉齢、体内時計、呼吸、気孔の状態が同時に変化するからです。

C3植物やC4植物では主に昼にCO₂を取り込みますが、真夏には午後の高温や乾燥で光合成が低下することがあります。春や秋では葉の成熟・老化が日変化を変え、冬は低温と短日によって昼の光を十分利用できないことがあります。

CAM植物ではさらに、夜間CO₂取り込みと昼間の内部CO₂利用の配分が季節や水分条件で変わります。つまり、昼夜差は固定された二つの状態ではなく、植物が季節と生育履歴に合わせて、一日の炭素獲得と水利用を組み直した結果なのです。

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