なぜ紫外線を浴びると皮膚が赤くなったり黒くなったりするのか?

日光を浴びたあと、皮膚が赤くなったり、数日たって褐色になったりすることがあります。日本語ではどちらも「日焼け」と呼ばれますが、体の中では別の反応が起きています。

紫外線を浴びて皮膚が赤くなる反応はサンバーン、メラニンが増えて褐色になる反応はサンタンと呼ばれます。サンバーンは主に紫外線による細胞損傷と炎症の結果で、サンタンはそれ以上の紫外線ダメージを減らそうとする色素防御反応の一つです。

つまり日焼けは、単に皮膚の色が変わる現象ではありません。紫外線による損傷と、それに対して皮膚が起こす防御反応が重なって見えているものです。

目次

結論:日焼けは、紫外線で皮膚が傷つき、その後に炎症やメラニン産生が起こるため

紫外線を浴びたあとに皮膚が赤くなったり黒くなったりする主な流れは、次のように整理できます。

  1. 太陽光に含まれるUVAやUVBが皮膚へ届く
  2. とくにUVBは表皮細胞のDNAへ直接的な損傷を起こしやすい
  3. 損傷した細胞や周囲の組織から炎症反応が起こり、皮膚が赤くなる
  4. 紫外線刺激を受けた表皮細胞から、メラノサイトへ働きかける信号が出る
  5. メラノサイトでメラニン産生が増え、周囲の角化細胞へメラニンが渡される
  6. 皮膚が褐色に見えるようになり、その後の紫外線をある程度吸収しやすくなる

ただし、日焼けで黒くなった皮膚が紫外線に完全に強くなるわけではありません。褐色化は防御反応の一つですが、すでに紫外線による損傷が起きたあとに現れる反応でもあります。

太陽光のうち、日焼けに強く関わるのはUVAとUVB

太陽光に含まれる紫外線は、波長によってUVA、UVB、UVCに分けられます。

UVCは大気中でほぼ吸収され、通常は地表まで届きません。地表へ届く紫外線の中心はUVAで、UVBも一部が届きます。

WHOは、UVAは皮膚のより深い層まで届きやすく、皮膚の老化や色素変化に関わる一方、UVBは表皮で多く吸収され、サンバーンの主な原因になると説明しています。

ただし、UVAとUVBは完全に別々の作用だけを持つわけではありません。どちらも皮膚細胞へ影響し、長期的には光老化や皮膚がんのリスクに関係します。

赤くなる日焼けは「炎症」

日光を強く浴びた数時間後から皮膚が赤くなり、ひりひりしたり熱を持ったりすることがあります。これがサンバーンです。

サンバーンでは、紫外線で損傷した表皮細胞をきっかけに炎症反応が起こります。血管が広がって皮膚への血流が増えるため、赤く見えます。

WHOは、サンバーンを主にUVBによって起こる皮膚の炎症と説明しています。強い場合には腫れや水疱ができることもあります。

つまり、皮膚が赤くなるのは「血行が良くなった健康的な反応」ではありません。紫外線による過剰曝露で皮膚が傷つき、炎症を起こしているサインです。

UVBはDNAを直接傷つける

UVBは表皮細胞のDNAへ直接作用し、シクロブタン型ピリミジン二量体などのDNA損傷を作ります。

日本の皮膚科学・光生物学の研究では、UVBによるDNA損傷がサンバーンや長期的な発がん過程の重要な出発点になることが示されています。

通常、細胞にはDNA損傷を修復する仕組みがあります。しかし、損傷量が多かったり、修復がうまくいかなかったりすると、細胞死や遺伝子変異につながることがあります。

このため、サンバーンを繰り返すことは一時的な痛みだけの問題ではなく、将来の皮膚がんリスクにも関係します。

UVAはより深く入り、酸化ストレスにも関わる

UVAはUVBより波長が長く、皮膚のより深い部分まで届きやすい特徴があります。

UVAは細胞内外の分子へ作用し、活性酸素種を生じさせることで、DNAや脂質、たんぱく質などへ間接的な損傷を与えます。

日本の総説でも、UVBによる直接的DNA損傷に加え、UVAによる活性酸素を介した細胞傷害が、光老化や皮膚障害に関わると整理されています。

そのため、「赤くならなかったから紫外線の影響がなかった」とは言えません。目立つサンバーンがなくても、UVAを含む紫外線曝露は皮膚へ影響します。

黒くなる日焼けは、メラニンが増えるため

日光を浴びたあと、皮膚がすぐ暗く見えたり、数日後から褐色になったりすることがあります。

皮膚の色を作る主要な色素がメラニンです。メラニンは表皮の基底層にいるメラノサイトで作られ、メラノソームという小さな構造に詰められて周囲の角化細胞へ渡されます。

WHOは、UVAがすでに存在するメラニンを暗く見せる即時的な色素変化に関与し、UVBは数日かけて新しいメラニン産生を増やす遅延型のサンタンに強く関与すると説明しています。

つまり「黒くなる日焼け」には、既存の色素が変化して早く見えるものと、新しくメラニンが作られて数日後から強くなるものがあります。

なぜ紫外線を浴びるとメラニンが増えるのか

紫外線によるメラニン産生は、皮膚の細胞同士の情報交換によって起こります。

UVBによって角化細胞のDNAが傷つくと、細胞内でp53というたんぱく質が活性化されます。p53はPOMCという遺伝子の発現を促し、そこから作られるα-MSHという物質がメラノサイトへ信号を送ります。

α-MSHがメラノサイト表面のMC1Rへ結合すると、MITFなどの転写因子が働き、メラニン合成に必要な酵素の産生が増えます。

こうして作られたメラニンはメラノソームとして角化細胞へ渡され、細胞核の周囲へ配置されます。この色素が紫外線を吸収することで、DNAへ届く紫外線量をある程度減らす働きがあります。

日焼けで黒くなるのは、防御反応でもある

メラニンは紫外線を吸収し、DNAへの損傷を減らす重要な防御色素です。

環境省の紫外線資料でも、皮膚が持つ強力な光防御の一つとしてメラニンが挙げられています。皮膚の色が濃い人では一般にメラニン量が多く、紫外線に対する抵抗性が高い傾向があります。

そのため、紫外線を浴びたあとにメラニン産生が増えることには、次に受ける紫外線から細胞を守る意味があります。

ただし、この防御は完全ではありません。WHOは、日焼けによる褐色化で得られる防御効果は限定的で、皮膚がんや光老化を十分に防げるものではないとしています。

「よく焼ける人」と「赤くなりやすい人」がいる理由

同じ量の紫外線を浴びても、皮膚の反応は人によって異なります。

もともとのメラニン量、メラニンの種類、メラノサイトの反応性、MC1Rなどの遺伝的な違いによって、赤くなりやすさや黒くなりやすさは変わります。

色白で赤くなりやすく、あまり黒くならない人もいれば、赤みが少なく比較的褐色になりやすい人もいます。

ただし、黒くなりやすい人でも紫外線ダメージを受けないわけではありません。肌色にかかわらず、過剰な紫外線曝露はDNA損傷や光老化、皮膚がんの原因になります。

赤みはすぐ出ず、あとから強くなる

強い日光を浴びても、その場ですぐ最大の赤みが出るとは限りません。

サンバーンの炎症反応には時間がかかるため、数時間たってから赤みや痛みが目立ち始め、翌日にかけて強くなることがあります。

そのため、「外にいた直後は赤くないから大丈夫」と判断するのは適切ではありません。

紫外線曝露はその場で止めても、すでに始まった細胞内の炎症反応はしばらく続きます。

黒くなる反応も、紫外線量を測る安全指標ではない

皮膚が黒くならなかったからといって、紫外線を受けていないわけではありません。

肌質によっては、メラニン産生が少なくても赤みやDNA損傷が起こります。反対に、よく黒くなる人でも、紫外線による細胞損傷は起こっています。

したがって、「どのくらい黒くなったか」を紫外線曝露の安全性の指標にすることはできません。

日焼けは「健康的な色づき」ではない

褐色の肌が健康的に見えることがありますが、医学的には日焼けは紫外線曝露に対する皮膚反応です。

WHOは、いわゆる「健康的な日焼け」は存在せず、褐色化は皮膚がすでに紫外線の影響を受け、防御反応を起こした結果だと説明しています。

日焼けが起こること自体が、紫外線を十分に浴びた証拠です。色が付いたから次は焼けにくいとしても、その防御力は限定的です。

日焼けを繰り返すと長期的な変化につながる

紫外線による影響は、赤みや褐色化だけで終わるとは限りません。

長期間にわたって紫外線曝露を繰り返すと、DNA損傷や酸化ストレスが蓄積し、しみ、しわ、皮膚の弾力低下などの光老化につながります。

さらに、修復されずに残った遺伝子変化が積み重なると、皮膚がんの発生リスクが高まります。NCIも、太陽光や人工的な紫外線源によるUV曝露が皮膚がんにつながる損傷を起こすとしています。

このため、日焼けは一時的な美容上の変化だけでなく、長期的な健康影響とも関係する現象です。

ビタミンDのために日焼けする必要はない

UVBは皮膚でビタミンDを作る反応にも関わります。

しかし、ビタミンDを作るためにサンバーンを起こしたり、意図的に強く日焼けしたりする必要はありません。

必要な紫外線量は地域、季節、肌の色、生活習慣などで異なり、食事やサプリメントから補える場合もあります。

紫外線の利益と害は別々に考える必要があり、「日焼けするほど浴びるほど健康に良い」という関係ではありません。

日焼けを防ぐには、紫外線を浴びる量そのものを減らす

紫外線対策では、日焼けしてから冷やすことより、まず過剰な紫外線曝露を避けることが重要です。

日陰を利用する、長袖や帽子を使う、紫外線の強い時間帯を避ける、必要に応じて日焼け止めを使うなどの方法があります。

日焼け止めは、製品ごとの使用量や塗り直し方が重要です。また、日焼け止めを塗ったから長時間強い日差しを浴びても安全という意味ではありません。

複数の対策を組み合わせることで、紫外線曝露を減らしやすくなります。

強い日焼けでは医療機関への相談が必要なこともある

軽い赤みだけなら時間とともに改善することが多いですが、広い範囲に強い水疱がある、強い痛みや腫れがある、発熱や悪寒、吐き気など全身症状を伴う場合には、重いサンバーンの可能性があります。

乳幼児や高齢者、持病がある人では、症状の程度に応じて早めに医療機関へ相談してください。

また、紫外線を浴びていないのに異常に赤くなる、少量の日光で強い発疹が出る場合には、光線過敏症や薬剤の影響など別の原因が関係していることがあります。

まとめ

皮膚で日焼けが起こるのは、紫外線が皮膚細胞へ影響し、炎症と色素防御反応を引き起こすためです。

主にUVBによるDNA損傷をきっかけに炎症が起こると、皮膚は赤くなります。これがサンバーンです。一方、紫外線刺激によってメラノサイトでメラニン産生が増え、角化細胞へ色素が渡されると、皮膚は褐色になります。これがサンタンです。

メラニンには紫外線を吸収してDNAへの損傷を減らす防御作用がありますが、その効果は限定的です。日焼けした皮膚は「紫外線に完全に強くなった皮膚」ではありません。

つまり、日焼けは紫外線による損傷と、それ以上の損傷を減らそうとする皮膚の防御反応が同時に表れた現象です。赤みや褐色化を健康の証拠と考えるのではなく、過剰な紫外線曝露を避けることが皮膚を守るうえで重要です。

参考資料

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