なぜ唾液は朝夕・睡眠・加齢・脱水で量や成分が変わるのか?

朝起きたときは口が乾いているのに、昼間や食事中には唾液がよく出ることがあります。また、高齢になると口が乾きやすくなったと感じる人もいれば、薬を飲み始めてから乾燥を感じる人、脱水時だけ口が乾く人もいます。

このように唾液は、いつでも同じ量・同じ成分で分泌されているわけではありません。唾液腺は自律神経の支配を受け、睡眠と覚醒、食事、咀嚼、味刺激、水分状態、薬剤、病気などに応じて分泌量や成分を変えています。

つまり唾液が朝夕・睡眠・加齢・脱水などで変化するのは、唾液腺が固定量の液体を出す器官ではなく、自律神経や体内時計、口腔への刺激、体の水分状態、薬剤や病気などに反応して分泌を調節する器官だからです。

目次

唾液には一日の中で「出やすい時間」と「出にくい時間」があるの?

あります。

唾液分泌量や一部の電解質濃度には日内変動が知られています。古典的な生理学研究では、安静時全唾液の分泌量やナトリウム・塩化物濃度などに24時間周期の変動が確認されています。

日本の研究でも、健常な女子大学生を対象に朝から夜まで唾液を繰り返し採取したところ、唾液分泌量に日内変動がみられ、午前から午後・夕方へかけて変化することが報告されています。

このため、「自分の唾液量」を評価するときは、採取した時刻を無視できません。朝に測った値と夕方に測った値が違っても、それだけで唾液腺の病気とは限りません。

なぜ睡眠中は唾液が少なくなりやすいの?

睡眠中は、食事や会話、咀嚼、味覚刺激などがほとんどなくなるため、日中のように唾液分泌を強く促す刺激が減ります。

唾液分泌は自律神経によって調節され、特に副交感神経刺激によって水分の多い唾液が大量に分泌されます。眠っている間は覚醒時とは自律神経の状態も異なり、安静時分泌は低下します。

そのため、起床直後は口腔内の水分が少なく、粘つきや乾燥感を感じやすくなります。

ただし、朝の口の乾きが強い場合には、睡眠中の口呼吸や鼻づまり、薬剤、脱水など別の要因が重なっていることもあります。

朝起きたときに口が乾いていても、唾液腺が悪いとは限らないの?

限りません。

睡眠中は唾液分泌が低下しやすいうえ、口を開けて呼吸していると口腔内の水分が蒸発します。

口腔乾燥に関する生理学的レビューでは、口呼吸時には口腔内の水分が蒸発し、唾液分泌量がある程度保たれていても粘膜表面が乾燥する可能性が説明されています。

つまり、「口が乾く感じ」と「唾液腺が実際に出している唾液量」は同じものではありません。

朝だけ乾いて日中は問題ない場合と、一日中唾液が少なく飲み込みにくい場合では、考えるべき原因が異なります。

食事をすると唾液が急に増えるのはなぜ?

食事では、味、におい、咀嚼、口腔内への触覚刺激が唾液分泌を強く促します。

感覚神経からの情報が脳幹へ伝わると、自律神経を介して耳下腺、顎下腺、舌下腺などへ分泌指令が送られます。そのため、安静時より刺激時のほうが唾液流量は大きく増えます。

さらに、分泌速度が変わると、唾液中の重炭酸、ナトリウム、塩化物などの濃度も変化します。

つまり「食事中は唾液量が増える」だけでなく、口の中で酸を中和したり食べ物を飲み込みやすくしたりするため、唾液の性質そのものも食事に合わせて変化しています。

唾液の成分も時間によって変わるの?

変わります。

唾液には水分だけでなく、ナトリウム、カリウム、塩化物、重炭酸、カルシウム、リン酸、タンパク質、アミラーゼ、ムチン、免疫関連成分など多くの物質が含まれています。

研究では、唾液の流量だけでなく、ナトリウムや塩化物、タンパク質など一部の成分にも日内変動が報告されています。

ただし、すべての成分が同じリズムで変わるわけではありません。ある成分は日内変動が明確でも、別の成分は大きく変化しないことがあります。

このため、研究や検査で唾液成分を比較するときには、採取時刻や食事条件をできるだけそろえる必要があります。

年をとると唾液は必ず減るの?

「必ず」とはいえません。

加齢と唾液分泌の関係は、唾液腺の種類、刺激の有無、測定方法、健康状態、薬剤使用などによって研究結果が異なります。

高齢者で全唾液や顎下腺・舌下腺の分泌が低い傾向を示したメタ解析がある一方、耳下腺や小唾液腺では明確な年齢差がみられない研究もあります。日本の研究でも、耳下腺と顎下腺では加齢変化が異なる可能性が報告されています。

したがって、「年齢が上がるほど全部の唾液腺が同じ割合で弱くなる」と考えるのは正確ではありません。

高齢者に口腔乾燥が多いのはなぜ?

高齢者では口腔乾燥を訴える人が増えますが、米国国立歯科・頭蓋顔面研究所は、口腔乾燥は正常な加齢現象ではないと説明しています。

高齢者では、高血圧、うつ症状、排尿障害などに使われる薬を含め、唾液分泌を低下させる可能性のある薬を複数使用する機会が増えます。また、脱水、全身疾患、頭頸部への放射線治療、神経障害なども口腔乾燥の原因になります。

つまり高齢者の口の乾きを「年だから仕方ない」と片づけると、本当の原因を見逃す可能性があります。

薬で唾液が減ることがあるの?

あります。

NIDCRは、数百種類の薬が唾液腺の分泌低下に関係する可能性があるとしています。高血圧、うつ症状、膀胱機能などに使われる薬の一部でも口腔乾燥が起こることがあります。

薬によっては、自律神経のうち唾液分泌に関わる経路を抑えたり、口腔の水分バランスへ影響したりします。

同じ人でも、薬を始める前と後で口の乾きが変わることがあるのはこのためです。

ただし、口が乾くからといって処方薬を自己判断で減量・中止するのは危険です。薬剤との関連が気になる場合は、医師・歯科医師・薬剤師へ相談します。

脱水になると唾液はどう変わるの?

体の水分が不足すると、口腔内の乾燥感が強くなりやすくなります。

NIDCRは、高齢者を含む口腔乾燥の原因として脱水を挙げています。発熱、下痢、嘔吐、大量の発汗、水分摂取不足などがあると、体は循環を維持するために水分を節約する方向へ働きます。

その結果、唾液量が減ったり、口腔内の水分が不足して粘つきを感じたりすることがあります。

ただし、「口が乾く=必ず脱水」とは限りません。薬剤、病気、口呼吸などでも同じ感覚が起こります。

乾燥した環境にいると唾液そのものも減るの?

乾燥した空気に触れたからといって、必ず唾液腺の分泌能力そのものが低下するわけではありません。

一方、口を開けて呼吸していると、口腔表面の水分が蒸発しやすくなります。特に鼻づまりなどで口呼吸が続くと、唾液腺からある程度分泌されていても「乾いた」と感じることがあります。

この点でも、口腔乾燥感と実際の唾液分泌低下は区別する必要があります。

つまり、環境による変化の一部は「唾液を出す量」ではなく、「口腔内から水分が失われる速さ」が変わることで起こります。

緊張やストレスでも唾液は変わるの?

変わることがあります。

唾液腺は自律神経に支配されているため、緊張や不安などで自律神経のバランスが変わると、唾液量や粘りの感じ方が変化します。

人前で話す直前に口が乾いたり、唾液が粘ついたように感じたりするのは、この影響が関係します。

ただし、精神的ストレスの影響には個人差が大きく、常に同じ方向へ変化するわけではありません。

水を飲めば唾液はすぐ元に戻るの?

軽い水分不足が関係している場合には、水分補給によって口腔乾燥が改善することがあります。

しかし、薬剤、シェーグレン病、唾液腺障害、放射線治療後などが原因の場合には、水を飲むだけでは唾液分泌能力そのものは回復しません。

また、口腔乾燥感があるからといって必ず唾液流量が低いとは限らないため、「水分をとれば治る」「治らないから重い病気だ」と単純に判断することもできません。

唾液を測るなら、いつ測っても同じなの?

同じではありません。

唾液には日内変動があり、食事、歯磨き、咀嚼、カフェイン摂取、運動、喫煙、薬剤などでも値が変わる可能性があります。

実際、安静時全唾液の測定時刻が異なると、低唾液分泌と判定される人の割合が変わる可能性を示した研究があります。

そのため、唾液検査では、採取時刻、食後からの時間、刺激の有無などの条件をそろえることが大切です。

一回の測定だけで「唾液が少ない体質」と断定するのではなく、症状や服薬、病歴と合わせて評価します。

口腔乾燥が続くと何が問題になるの?

唾液は、食べ物を湿らせて噛みやすく・飲み込みやすくするだけでなく、歯や粘膜を守る働きも持っています。

唾液が持続的に少なくなると、むし歯、口腔内感染、粘膜の痛み、味覚の変化、会話や嚥下のしにくさなどにつながることがあります。

NIDCRも、唾液不足によって咀嚼・嚥下・味覚に影響が出たり、むし歯や口腔感染のリスクが高まったりすると説明しています。

どんな口の乾きなら医療機関や歯科へ相談した方がいいの?

朝だけ少し乾く、緊張時だけ乾くなど一時的な変化は珍しくありません。

一方、一日中口が乾く状態が長く続く、水がないと食べ物を飲み込みにくい、会話しにくい、味が分かりにくい、むし歯や口内炎が増えた、目の乾燥など別の症状もある場合には、歯科や医療機関で原因を確認することが大切です。

また、薬を始めた後に強い口腔乾燥が続く場合も、自己判断で中止せず、処方した医療者へ相談してください。

なぜ唾液は朝夕・睡眠・加齢・脱水で量や成分が変わるのか、一言でいうと?

唾液が朝夕・睡眠・加齢・脱水などで変化するのは、唾液腺が自律神経と体内時計、口腔刺激、体の水分状態、薬剤や病気などの情報を受けながら、その時々に必要な分泌量と成分へ調整しているからです。

睡眠中は刺激が減って唾液分泌が低下し、日中は覚醒や食事刺激によって増えます。加齢の影響は唾液腺ごと・測定条件ごとに異なり、高齢者の口腔乾燥には薬剤や脱水なども大きく関係します。

さらに、乾燥感は唾液腺の分泌量だけでなく、口呼吸などによる水分蒸発でも起こります。したがって、唾液の変化を理解するときは「何歳か」「どれだけ乾くか」だけでなく、いつ、どのような条件で変化したのかを考えることが重要です。

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