同じ年齢の子どもでも、1年間に身長が大きく伸びる人もいれば、ゆっくり伸びる人もいます。さらに同じ人でも、幼児期、学童期、思春期では身長の伸びる速さが変わります。
この違いが生まれるのは、身長の伸びが一つの要因だけで決まっているのではなく、遺伝、成長ホルモン・IGF-1、甲状腺ホルモン、性ホルモン、思春期の始まる時期、栄養状態、慢性疾患などが組み合わさって成長板の働きを変えるからです。
とくに思春期では、同じ年齢でも「すでに成長スパートに入っている人」と「まだ思春期前の人」がいるため、年間の身長増加量に大きな差が生じます。身長の違いを見るときは、今の身長だけでなく、どの発達段階にいて、どのくらいの速さで伸びているかを考えることが大切です。
身長の伸びる速さは年齢によって変わる
人は生まれてから成人になるまで、一定の速度で身長が伸びるわけではありません。乳児期は非常に速く伸び、その後は成長速度が徐々に低下します。学童期には比較的安定した速さで伸び、思春期になると再び急速に伸びる時期が訪れます。
この思春期の急な伸びは「成長スパート」と呼ばれます。日本人の縦断的な身長データでも、年間の身長増加量は年齢によって変化し、思春期に最大となる時期があります。
したがって、「1年間で何cm伸びるのが普通か」は年齢だけで一つに決められる数字ではありません。さらに、同じ暦年齢でも成熟段階が違えば、成長速度も変わります。
同じ年齢でも思春期の始まる時期が違う
身長の伸び方に大きな差が現れやすいのが思春期です。思春期が始まると、性ホルモンの増加に伴って成長ホルモン・IGF-1系も活発になり、成長板の軟骨細胞の増殖や成熟が促されます。
ところが、思春期が始まる時期には個人差があります。たとえば同じ12歳でも、一人はすでに成長スパートの途中で、もう一人はまだその前ということがあります。この場合、同じ年齢でも年間の身長増加量は大きく異なります。
思春期が早めの人は比較的早い年齢で伸びが加速し、その後は早く落ち着く傾向があります。遅めの人は学童期には小柄に見えても、後から成長スパートを迎えて長く伸びる場合があります。
そのため、一時点だけを比べて「この人はもう伸びない」「この人は将来必ず高身長になる」と判断することはできません。
男女では平均的な成長スパートの時期が違う
思春期の始まる時期には、平均的な男女差もあります。一般に女子は男子より早く思春期へ入り、身長の成長スパートも早い時期に現れます。
男子は平均すると女子より遅い時期に成長スパートを迎え、伸びが続く期間も後ろへずれます。このため、小学校高学年から中学生ごろには、同じ年齢の男女を比べても成長速度が同じとは限りません。
ただし、これは集団としての平均的傾向です。同じ性別の中でも思春期の開始時期にはかなりの幅があります。個人を見るときには「男子だから」「女子だから」だけでなく、その人自身の思春期段階を見る必要があります。
成長ホルモンの分泌と反応にも違いがある
身長の伸びには成長ホルモンとIGF-1が重要です。成長ホルモンは下垂体から分泌され、肝臓や骨の成長板へ働きます。IGF-1は成長板の軟骨細胞の増殖や成熟を支えます。
成長ホルモンの分泌は一日中一定ではなく、パルス状に変化します。また、年齢、睡眠、思春期、栄養状態などによって分泌パターンが変わります。
さらに、同じくらいのホルモンが分泌されても、受容体や細胞内の信号伝達の違いによって組織の反応性が少し異なることがあります。こうした違いも、長い期間では成長速度の個人差につながります。
遺伝的な違いは成長の速さと最終身長の両方へ関わる
身長は多くの遺伝子が関わる多遺伝子形質です。骨の成長板、ホルモン受容体、細胞外基質、細胞内シグナルなどに関わる多数の遺伝的な違いが、それぞれ小さな影響を与えます。
遺伝的な違いは、最終身長だけでなく、乳幼児期や思春期の成長速度、思春期のタイミングにも関係します。大規模な縦断研究では、成人身長と関連する遺伝的変異の一部が、乳幼児期や思春期の身長増加速度にも関連することが示されています。
そのため、同じ家庭で育つ兄弟姉妹でも、受け継いだ遺伝子の組み合わせが違えば、伸びる時期や伸びる速さが異なることがあります。
栄養状態によって成長速度は変わる
成長するためには、新しい組織を作る材料とエネルギーが必要です。たんぱく質、脂質、炭水化物、カルシウム、リン、ビタミンDなど、多くの栄養素が骨や筋肉の成長を支えます。
栄養不足が続くと、材料やエネルギーが不足するだけでなく、成長ホルモンが分泌されていてもIGF-1が十分に作られにくくなることがあります。その結果、成長板の働きが低下し、身長の伸びが遅くなる場合があります。
一方で、たくさん食べれば食べるほど最終身長が高くなるわけではありません。過剰なエネルギー摂取で体重が増えると、幼少期の身長増加が一時的に速く見える場合がありますが、思春期が早まり、その後の成長期間が短くなることもあります。
健康な成長には「多く食べること」より、年齢と活動量に見合った十分で偏りの少ない栄養が重要です。
病気や慢性的な炎症があると伸びが遅くなることがある
同じ年齢でも、慢性疾患の有無によって身長の伸び方が変わることがあります。消化器の病気で栄養吸収が悪くなったり、腎臓・心臓などの病気で体のエネルギー消費が増えたりすると、成長に回せる資源が減ります。
また、慢性的な炎症では、炎症性サイトカインが成長ホルモン・IGF-1系や成長板へ影響することがあります。
日本小児内分泌学会も、低身長の原因として成長ホルモンや甲状腺ホルモンの異常だけでなく、慢性疾患、骨や軟骨の病気、栄養など多くの要因を挙げています。
そのため、以前は順調に伸びていたのに急に成長速度が低下した場合には、単なる体質だけでなく健康状態の変化も確認する必要があります。
小さく生まれた子どもでは「追いつく成長」が起こることがある
出生時に身長や体重が小さかった子どもの多くは、乳幼児期に周囲より速く成長し、身長が追いつくことがあります。これはキャッチアップ成長と呼ばれます。
反対に、病気や栄養不足などで一時的に成長が遅くなった後、原因が改善すると成長速度が一時的に高まる場合もあります。
このように、身長の伸びる速さは固定された性質ではなく、以前の成長状態や現在の体調によっても変化します。同じ人の中でも「状態による違い」があるのです。
体重の増え方と身長の伸び方は同じではない
体重が急に増えたからといって、身長も同じ割合で伸びるとは限りません。体重は脂肪、筋肉、水分などの変化を比較的短期間で反映しますが、身長は成長板での長骨成長を中心とした長期的な変化です。
幼少期のBMI上昇と一時的な身長増加の関連を示した研究もありますが、その後の思春期が早まり、最終身長には単純な有利さが残らなかったという報告があります。
つまり、「体重が増えれば身長も伸びる」「太っている子ほど最終的に背が高くなる」と単純には言えません。
同じ年齢なら同じ成長速度でなくても普通なの?
一定の範囲の違いは正常な個人差です。子どもにはそれぞれの発育パターンがあり、ゆっくり伸びる人、早く伸びてその後落ち着く人などがいます。
WHOの成長基準や日本の成長曲線も、一つの理想値だけを示すものではなく、年齢ごとの身長や体重に幅があることを前提に作られています。
大切なのは、周囲の同年齢の子どもと一回だけ比べることではなく、その人自身の身長が時間とともにどのように変化しているかを見ることです。
「低いけれど伸びている」と「伸びが止まってきた」は意味が違う
ある子どもの身長が平均より低くても、一定の成長曲線に沿って伸びていることがあります。これは家族性の低身長や、思春期が遅めの体質など、正常な個人差の範囲で見られることがあります。
一方、以前は一定の曲線に沿っていたのに、徐々に下向きへ外れていく場合は、成長速度が低下している可能性があります。
日本小児内分泌学会は、身長が気になる場合には成長曲線を描き、単独の測定値ではなく経過を見ることを勧めています。成長速度の低下は、ホルモンの異常や慢性疾患などを見つける手がかりになることがあります。
思春期が早いと一時的に背が高く見えることがある
思春期が早く始まると、性ホルモンの作用で一時的に身長の伸びが加速します。そのため、同級生の中で早い時期から背が高く見えることがあります。
しかし、性ホルモンは成長を促す一方で、成長板の成熟も進めます。思春期がかなり早い場合には、早く伸びる代わりに成長板が早く閉じ、身長が伸びる期間が短くなることがあります。
このため、「今よく伸びている人ほど将来必ず高身長になる」というわけではありません。成長の速さだけでなく、その時期と骨の成熟度が重要です。
身長の伸び方を比べるなら何を見る?
成長の違いを比較するときには、現在の身長だけでなく、年間の身長増加量、過去からの成長曲線、思春期の段階、体重の変化、家族の体格などを一緒に見ると理解しやすくなります。
医療では必要に応じて骨年齢、甲状腺ホルモン、IGF-1などを確認し、成長ホルモン分泌などを詳しく調べることがあります。
ただし、すべての個人差に検査が必要なわけではありません。身長が低い・高いという一時点の差よりも、成長速度が急に変わったか、成長曲線を大きく横切っているかが重要な手がかりになります。
同じ年齢でも身長の伸びる速さが違う理由を整理すると
同じ年齢でも身長の伸びる速さが違う最大の理由は、暦年齢と生物学的な成熟段階が同じではないからです。思春期の始まる時期が違えば、同じ年齢でも成長ホルモン・IGF-1系や性ホルモンの働き方が異なり、年間の身長増加量に大きな差が生じます。
さらに、遺伝的な体質、栄養状態、慢性疾患、甲状腺や成長ホルモンの働き、出生時の状態なども成長速度を変えます。同じ人でも、病気から回復した後のキャッチアップ成長などによって伸びる速さが変わることがあります。
つまり、身長の伸びは年齢だけで決まるのではなく、その人が今どの発達段階にあり、どのような健康・栄養状態にあるかによって変わります。成長を比べるときは「何cmあるか」だけでなく、「どの時期に、どのくらいの速さで伸びているか」を見ることが大切です。
関連する「なぜ?」
参考資料
- 日本小児内分泌学会「低身長」
- Suwa S, et al. Longitudinal Standards for Height and Height Velocity for Japanese Children from Birth to Maturity. Clinical Pediatric Endocrinology. 1992.
- Lui JC, Palmer AC, Christian P. Nutrition, Other Environmental Influences, and Genetics in the Determination of Human Stature. Annual Review of Nutrition. 2024.
- Sovio U, et al. Genetic determinants of height growth assessed longitudinally from infancy to adulthood in the Northern Finland Birth Cohort 1966. PLoS Genet. 2009.
- World Health Organization: Child growth standards.

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