なぜ作用反作用の力は質量や材質が違っても等しいのに、加速度や変形は同じにならないのか?

人が壁を押すと、壁も人を同じ大きさで反対向きに押します。軽い台車と重い台車がぶつかれば、衝突中に互いへ及ぼす力も、ニュートンの第3法則により同じ大きさで反対向きです。

それなのに、軽い物体の方が大きく加速したり、柔らかい物体の方が大きく変形したりします。

なぜ、作用反作用の力が等しいのに結果は同じにならないのでしょうか。

理由は、ニュートンの第3法則が決めるのは相互作用する二物体の「力の大きさと向き」であり、その力を受けた各物体がどれだけ加速・変形するかは、それぞれの質量・剛性・形状・支持条件などによって別に決まるからです。

目次

作用反作用の法則が等しいと言っているもの

物体Aが物体Bに力FABを及ぼすと、物体Bも物体Aに

FBA = −FAB

の力を及ぼします。

OpenStaxは、ニュートンの第3法則について、二つの物体が互いに及ぼす力は常に同じ大きさで反対向きであり、しかも別々の物体に働くと説明しています。

ここで重要なのは、「力が等しい」ということと、「運動や変形の結果が等しい」ということは別だという点です。

同じ力でも加速度が違うのはなぜか

各物体の加速度はニュートンの第2法則、

F = ma

で決まります。

したがって、

a = F/m

です。

作用反作用の二力の大きさが同じFでも、物体AとBの質量が違えば、

aA = F/mA

aB = F/mB

となり、加速度は異なります。

OpenStaxも、同じ大きさの力を異なる質量の物体に加えると、質量が小さい方が大きく加速すると説明しています。

軽い物体と重い物体が押し合うとどうなるのか

摩擦の小さい床で、軽い台車と重い台車がばねを介して押し合うとします。

ばねが軽い台車を右向きに10 Nで押している瞬間、軽い台車もばねを通じて重い台車側へ10 Nの反対向きの力を返します。

二台が互いに受ける接触力の大きさは等しいです。

しかし、1 kgの台車なら10 m/s2、5 kgの台車なら2 m/s2というように、加速度は質量によって変わります。

力が不公平なのではなく、同じ力に対する運動応答が質量によって違うのです。

質量が違っても作用反作用の力が等しいのはなぜか

第3法則は、物体の質量を比べて「重い方が強く押し返す」とする法則ではありません。

相互作用する二物体の間では、AからBへの力とBからAへの力が一対として現れます。

したがって、質量が違っても力の対そのものは等しい大きさになります。

質量の違いが現れるのは、その後の

a = F/m

です。

OpenStaxの運動量保存の説明でも、作用反作用の力の大きさは同じでも、質量が異なるため加速度は一般に同じにならないと整理されています。

加速度が違っても運動量変化は対応する

二物体が同じ時間Δtだけ互いに力を及ぼし合うなら、力積は

J = FΔt

です。

作用反作用の力は同じ大きさで反対向きなので、

ΔpA = −ΔpB

となります。

つまり、速度変化Δvは質量によって違っても、運動量変化mΔvは大きさが等しく反対向きになります。

軽い物体が大きく速度を変え、重い物体が少しだけ速度を変えるのは、この関係と一致します。

では、同じ力なら変形も同じになるのか

なりません。

変形の大きさは、質量だけではなく材料の弾性、部品の長さ・太さ・形状、支持方法などに依存します。

材料力学では、棒を引っ張る単純な場合、応力σとひずみεの関係を

σ = Eε

と表します。

Eはヤング率で、材料の弾性的な変形しにくさを表す量です。

筑波大学OCWも、弾性体では内力・応力と変形・ひずみの関係を構成則で結び、ヤング率を用いて材料の応答を扱うと説明しています。

同じ力でも柔らかい材料の方が大きく変形する

同じ断面積Aの棒に同じ引張力Fを加えれば、応力は

σ = F/A

です。

線形弾性範囲なら、

ε = σ/E

なので、ヤング率Eが小さい材料ほどひずみεは大きくなります。

つまり、同じ作用反作用の力を受けても、柔らかいゴムと硬い金属では変形量が違います。

第3法則は力の大きさを等しくしますが、材料の変形特性まで等しくする法則ではありません。

同じ材料でも形状が違えば変形は変わる

材料が同じでも、部品の形状が違えば変形量は変わります。

長さL、断面積Aの棒を軸方向へ引く単純な場合、伸びΔLは

ΔL = FL/(EA)

と表せます。

同じ力F、同じ材料Eでも、長い棒ほど大きく伸び、太い棒ほど伸びにくくなります。

したがって「同じ材質だから同じように変形する」とも限りません。

接触している二物体は同じだけへこむのか

硬い金属球を柔らかいゴム板へ押し付けると、接触力は両者で等しい大きさです。

しかし、ゴム側の方が大きくへこむことがあります。

これはゴムの弾性率や形状、接触面積が金属とは異なるためです。

接触力の大きさが同じでも、各物体内部に生じる応力・ひずみ分布は同じではありません。

「痛い方が大きな力を受けた」とは限らない

壁を手で強く押すと手が痛くても、壁が手から受ける力と手が壁から受ける力の大きさは同じです。

手の方が痛いのは、壁より柔らかく、組織が変形し、局所的な圧力や応力が感覚器官へ作用するからです。

痛みや損傷の大きさは、力の大きさだけでなく、接触面積、材料特性、形状、負荷時間などにも依存します。

「変形や損傷が大きい=受けた作用反作用の力が大きい」とは限りません。

接触面積が違うと応力が変わる

同じ力Fでも、力が伝わる断面積Aが違えば平均応力は

σ = F/A

で変わります。

同じ100 Nでも、広い面で受ければ応力は小さく、狭い面に集中すれば応力は大きくなります。

そのため、同じ作用反作用の力でも、細い先端で接触する場合の方が局所的な変形や損傷が大きくなることがあります。

材質が違っても力は等しいのに、損傷が違う理由

材料には、ヤング率、降伏強さ、破壊強さ、靱性などさまざまな特性があります。

同じ接触力を受けても、柔らかい材料は大きく弾性変形し、降伏強さの低い材料は塑性変形しやすく、脆い材料は割れやすい場合があります。

したがって作用反作用の力が等しいことと、損傷の程度が同じことは別です。

なぜ自動車と小さな物体の衝突では被害が同じにならないのか

衝突中、自動車が小さな物体へ及ぼす力と、小さな物体が自動車へ及ぼす力は各瞬間で同じ大きさ・反対向きです。

しかし、質量が違えば加速度は違います。

さらに車体と小物体では、構造、剛性、変形可能な距離、接触面積も異なります。

そのため速度変化、変形、損傷は同じになりません。

第3法則は「衝突被害も等しい」とは言っていないのです。

衝突時間が長いと力は小さくできる

運動量変化が同じでも、力を受ける時間によって平均力は変わります。

FavgΔt = Δp

なので、同じΔpなら衝突時間Δtを長くするほど平均力を小さくできます。

自動車のクラッシャブルゾーン、ヘルメット、クッションなどは、変形することで停止時間を長くし、ピークの力や加速度を抑えるよう設計されています。

ここでも、相手に及ぼす力と受ける力は対として等しいですが、変形の仕方を変えることで時間波形を変えられます。

ばねで押し合う二物体ではどうなるのか

二物体の間にばねがあるとします。

ばねが縮んでいる間、ばねは両側の物体を反対向きに押します。

理想的な質量の小さいばねなら、両物体がばねから受ける力は同じ大きさです。

しかし、軽い物体の方が大きく加速します。

また物体自身の柔らかさが違えば、ばねだけでなく物体側にも異なる変形が生じます。

ロケットと排気ガスでは何が違うのか

ロケットが排気ガスを後方へ押すと、排気ガスもロケットを前方へ押します。

相互作用する力は第3法則の対です。

しかしロケットと個々の排気ガスでは質量が大きく違い、運動の変化の仕方も異なります。

作用反作用が等しいからといって、両者が同じ速度で反対方向へ動くわけではありません。

歩くとき、人と地球の加速度が違うのも同じ理由

人が地面を後ろへ押すと、地面は人を前へ押します。

人と地球の間の相互作用力は同じ大きさです。

しかし地球の質量は人より桁違いに大きいため、

a = F/m

で地球側の加速度は極めて小さくなります。

人だけが動いているように見えるのは、力が一方だけに働くからではありません。

作用反作用の力が等しいのは「結果が対称」という意味ではない

ニュートンの第3法則は、相互作用する力の関係についての対称性です。

一方、物体AとBの質量、材料、形状、拘束条件、初速度などは一般に同じではありません。

そのため、力の対が対称でも、運動や変形の結果は非対称になります。

「入力される相互作用力が等しいこと」と「応答が等しいこと」を区別する必要があります。

材質は作用反作用の力の大きさに全く関係しないのか

ここは少し注意が必要です。

第3法則が言うのは、実際に生じた相互作用力の対は、その瞬間に同じ大きさで反対向きということです。

一方、その相互作用力が何Nになるか自体は、接触の変形、ばね定数、摩擦、衝突速度などによって決まります。

したがって材質が接触剛性や摩擦特性を変えれば、相互作用力の時間変化そのものへ影響することはあります。

ただし、そのときでもAがBへ100 Nを及ぼす瞬間には、BもAへ100 Nを反対向きに及ぼします。

柔らかい材料にすると最大衝突力が変わることがある

同じ速度で衝突しても、柔らかい材料はより長い距離・時間をかけて変形できます。

その結果、同じ程度の運動量変化をより長時間で行い、ピークの接触力を小さくできることがあります。

硬い材料同士では接触時間が短く、ピーク力が大きくなる場合があります。

つまり材質は、第3法則の「二力が等しい」という関係を変えるのではなく、衝突力が時間的にどのように立ち上がるかを変えることがあります。

支持条件が違えば変形も違う

同じ材料・同じ形の棒でも、片端を固定するか、両端を支えるか、自由に置くかで変形の仕方は変わります。

同じ外力でも、内部の応力分布や曲げ方が異なるからです。

そのため「同じ力なら同じ変形」という単純な対応は、構造物には一般に成り立ちません。

作用反作用と力のつり合いを混同しない

作用反作用の二力は別々の物体に働きます。

一方、一つの物体で力がつり合うとは、その物体に働く複数の外力のベクトル和が0になることです。

たとえば机の上の本では、本に働く重力と机からの垂直抗力がつり合っていますが、これらは作用反作用の組ではありません。

作用反作用の組は「机が本を押す力」と「本が机を押す力」です。

既存の作用反作用の記事とは何が違うのか

作用反作用の基本記事では、物体AがBへ力を及ぼすとBもAへ同じ大きさ・反対向きの力を及ぼす、という第3法則そのものが中心です。

また、別の記事では、作用反作用の二力が一つの物体では打ち消し合わず、物体系では内力として相殺することを扱っています。

一方、この記事では、作用反作用の二力が等しくても、なぜ各物体の加速度・変形・損傷などの応答は同じにならないのかを重点的に扱っています。

つまり主題は、第3法則そのものではなく「同じ力に対する物体側の応答条件」です。

まとめ

作用反作用の力は、質量や材質が違っても

FAB = −FBA

となり、同じ大きさで反対向きです。

しかし、加速度は

a = F/m

で決まるため、質量が違えば同じ力でも加速度は違います。

変形は、応力・ひずみの関係やヤング率、部品形状、接触面積、支持条件などで決まるため、同じ力でも柔らかい材料や細い部材の方が大きく変形することがあります。

さらに衝突では、材料の柔らかさや構造が接触時間を変え、力の時間波形や損傷の程度も変えます。

つまり、第3法則が等しくするのは相互作用の「力」であり、その力を受けた各物体の「応答」まで等しくするわけではないのです。

関連記事

参考資料

関連する「なぜ?」

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次