なぜ作用反作用は身近な現象や技術に利用されるのか?

歩く、走る、泳ぐ、自動車が加速する、ロケットが宇宙へ飛ぶ。これらはまったく違う動きに見えますが、どれも物体どうしが力を及ぼし合うことで成り立っています。その基本を表すのが、ニュートンの第三法則として知られる作用・反作用の法則です。

作用・反作用とは、ある物体Aが物体Bに力を加えると、同時に物体Bも物体Aへ同じ大きさで反対向きの力を加えるという関係です。身近な現象や技術でこの法則が重要なのは、物体が前へ進んだり、持ち上がったり、支えられたりするには、必ず相手へ力を渡し、その相手から力を受け取る必要があるからです。

ただし、「作用反作用を利用する」という表現には注意が必要です。作用・反作用は装置に後から付け足す特殊な力ではなく、力が生じるときに必ず成り立つ自然法則です。技術では、この法則を前提として、どの物体にどの向きの力を及ぼせば目的の運動を得られるかを設計します。

目次

作用・反作用とは何か

物体Aが物体Bへ力を及ぼすとき、BはAへ同時に反対向きの力を及ぼします。式で表せば、AがBへ及ぼす力をFABとすると、BがAへ及ぼす力FBAは、ベクトルとしてFAB=−FBAとなります。

重要なのは、二つの力が別々の物体にはたらくことです。OpenStaxも、作用・反作用の力は大きさが等しく向きが反対でも、異なる物体に作用するため互いに打ち消し合わないと説明しています。

たとえば人が壁を手で押すと、人は壁へ力を加えています。同時に壁も人の手へ同じ大きさで反対向きの力を返しています。手に圧力を感じるのは、その反作用を受けているからです。

「同じ大きさなら動かない」は誤解

作用と反作用が同じ大きさだと聞くと、「それなら力が相殺されて何も動かないのでは」と考えたくなります。しかし、これは二つの力がどこにはたらいているかを混同した考え方です。

人が地面を後ろへ押したとき、人が地面へ加える力は地面にはたらきます。一方、地面が人へ返す前向きの力は人にはたらきます。人だけを取り出して運動を考えるなら、地面から受ける前向きの力が人の加速に関係します。

力がつり合うかどうかを判断するときは、「同じ物体にはたらく力どうし」を足し合わせる必要があります。作用・反作用のペアは別々の物体にはたらくため、同じ物体上で相殺される一対ではありません。

歩けるのは、地面を後ろへ押しているから

歩行は作用・反作用を最も身近に感じられる例です。前へ進むとき、足は地面を後方へ押します。すると地面は足へ前向きの力を返します。この床から受ける力が、体を前へ進める力の一部になります。

J-STAGEに掲載された歩行分析の解説では、歩行中の床反力を前後・上下などの成分に分けて身体運動を評価しています。立脚後期には床反力の前方成分が歩行推進力と関係します。これは、人が地面へ力を及ぼし、地面から反作用として力を受けていることを定量的に捉えたものです。

氷の上のように足と地面の摩擦が小さい場所では、十分に地面を後ろへ押せません。そのため前向きの反力も得にくくなり、歩きにくくなります。作用・反作用の法則だけでなく、実際にどれだけの力を地面との間でやり取りできるかが重要です。

走る・ジャンプする動きでも床反力を利用する

走るときやジャンプするときは、歩行より大きな力を短時間で地面へ加えます。ジャンプでは足で地面を下向きに押すことで、地面から上向きの反力を受けます。その上向きの力が重力を上回る時間があれば、体は上向きに加速して地面から離れます。

着地では逆に、体が地面を押すと地面から大きな上向きの床反力を受けます。膝や足首を曲げて衝撃を吸収するのは、その反力を時間をかけて受け止めるためです。

スポーツでは、床反力の大きさや向きを調べることで、走行、跳躍、着地などの動作を分析できます。作用・反作用は抽象的な法則ではなく、運動能力や安全性を測るときにも使われる考え方です。

泳ぐときは水を後ろへ押して前へ進む

水泳でも同じ原理が働きます。泳ぐ人が手や足で水を後ろ向きに押すと、水から前向きの力を受けます。水を動かす方向と、自分が進みたい方向が反対になっているのがポイントです。

プールの壁を蹴ってスタートするときは、さらに分かりやすく作用・反作用を観察できます。足が壁を後ろ向きに押すと、壁は体を前向きに押し返します。OpenStaxでも、泳者が壁を押すと壁から反対向きの力を受けて加速する例が、ニュートンの第三法則の典型として紹介されています。

ボートや船は水へ力を加えて進む

オールで水をかくボートも作用・反作用を利用しています。オールが水を後ろへ押すと、水はオールを前へ押します。その力が艇へ伝わり、船体が前進します。

スクリュープロペラを使う船では、プロペラが水へ運動量を与えて後方へ流し、その反作用として船が前向きの推力を受けます。実際の推進性能は、プロペラ形状、回転数、水流、船体抵抗などにも左右されますが、推進力を得る根本には「周囲の物質へ力を及ぼし、その反作用を受ける」という関係があります。

自動車はタイヤで地面を後ろへ押して加速する

自動車が前へ加速するとき、エンジンやモーターが車体を直接前へ押しているわけではありません。駆動輪が路面を後ろ向きに押し、路面からタイヤへ前向きの力がはたらくことで車体が加速します。

この前向きの力を伝えるうえで重要なのが、タイヤと路面の摩擦です。摩擦が小さすぎるとタイヤだけが空転し、十分な前向きの力を受けられません。雪道や凍結路で発進しにくいのは、この力のやり取りが制限されるためです。

ここでも作用・反作用は必ず成り立ちますが、技術として重要なのは、必要な反力を路面から得られるようにタイヤ材料、接地面、駆動制御などを設計することです。

ロケットは空気を蹴らなくても進める

作用・反作用を説明する代表的な技術がロケットです。ロケットエンジンは高温・高圧のガスをノズルから高速で後方へ噴射します。ロケットが排気ガスを後方へ加速すると、排気ガスはロケットへ前方の力を及ぼします。この力が推力です。

NASAは、ロケット推進をニュートンの第三法則の応用として説明し、推力が排気の質量流量や排気速度などに関係するとしています。

ここで大切なのは、「ロケットは後ろの空気を押して進む」のではないという点です。ロケットは燃料と酸化剤を機体内に持つことができ、排気ガスとの力のやり取りによって真空中でも推進できます。宇宙空間でもロケットが進めることは、作用・反作用を理解する好例です。

ジェット機やプロペラ機も周囲の空気へ力を与える

航空機でも、推進装置が空気へ運動量を与え、その反作用で機体が推進力を得ます。ジェットエンジンでは空気を取り込み、燃焼などを経て後方へ高速で排出します。プロペラ機ではプロペラが空気を後方へ加速し、その反作用として機体が前へ進みます。

同じように、ヘリコプターのローターは空気を下向きに加速させ、空気から上向きの力を受けます。飛行技術では、作用・反作用だけでなく流体力学や圧力分布も重要ですが、「空気へ力を与えれば機体側にも反対向きの力がはたらく」という第三法則は基本原理の一つです。

椅子に座れるのも、床に立てるのも作用・反作用があるから

作用・反作用は「動くための法則」だけではありません。静止している場面でも成り立っています。

人が床の上に立つと、足は床を下向きに押します。すると床は足を上向きに押し返します。この床からの力が重力とつり合えば、体は鉛直方向に加速せず立っていられます。椅子に座る場合も、体が椅子を押し、椅子が体を押し返しています。

このとき「重力と床からの反力」が作用・反作用のペアだと考えるのは誤りです。重力と床からの力は、どちらも人にはたらく別の力です。一方、作用・反作用のペアは「人が床を押す力」と「床が人を押す力」です。

重力にも作用・反作用がある

地球が物体を重力で引くとき、その物体も地球を同じ大きさの力で引いています。人が地球から重力を受ける一方、人も地球へ同じ大きさの重力を及ぼしています。

それでも地球が人の方向へ目立って動かないのは、地球の質量が非常に大きいためです。同じ大きさの力を受けても、ニュートンの第2法則F=maにより、質量が大きい物体ほど加速度は小さくなります。

つまり、作用・反作用では力の大きさは等しくても、二つの物体の運動変化まで同じになるとは限りません。質量が違えば加速度は異なります。

作用・反作用と「つり合い」はどう違うのか

作用・反作用と、力のつり合いは混同されやすい概念です。作用・反作用は二つの物体の間に生じる力のペアです。一方、力のつり合いは一つの物体にはたらく複数の力の合力が0になる状態です。

机の上に置いた本を考えると、本には地球からの重力が下向きにはたらき、机からの力が上向きにはたらきます。この二つは本の上でつり合うことがありますが、作用・反作用のペアではありません。

机が本を上向きに押す力の反作用は、本が机を下向きに押す力です。地球が本を下向きに引く重力の反作用は、本が地球を上向きに引く重力です。どの物体に力がはたらくかを明確にすると混乱を避けられます。

なぜ作用・反作用の理解が安全設計に必要なのか

機械や構造物では、ある部品が別の部品へ力を加えれば、その部品自身も反対向きの力を受けます。そのため、押す側だけでなく「押し返される側」の強度や固定方法も考えなければなりません。

たとえばロケットエンジンでは、排気を高速で後方へ加速するほど大きな推力を得られますが、その推力をエンジン支持部や機体構造が受け止める必要があります。自動車ではタイヤが路面へ大きな力を伝えるほど、タイヤ、車軸、サスペンション、車体にも対応する反力が加わります。

つまり第三法則は、推進力を得る説明だけでなく、力がどこへ伝わり、どの部材がどれだけの反力を受けるかを考えるためにも重要です。

作用・反作用は「先に作用、その後に反作用」ではない

「作用」という言葉と「反作用」という言葉から、最初に作用が起き、その少し後に反作用が起きるように感じることがあります。しかしニュートンの第三法則では、二つの力は相互作用として同時に現れます。

人が壁を押している間だけ壁から力を受け、手を離せば相互作用もなくなります。どちらを作用と呼び、どちらを反作用と呼ぶかは便宜上の区別で、本質的には対等な二つの力です。

身近な技術で重要なのは「何を相手に力を渡すか」

歩行では地面、泳ぎでは水、飛行機では空気、ロケットでは排気ガスが、力を交換する相手です。技術によって相手は違っても、前へ進みたい物体は、自分以外の何かへ反対向きの運動量を与える必要があります。

この見方をすると、推進装置の共通点が分かります。車輪は路面へ、プロペラは空気や水へ、ロケットは排気ガスへ力を与えます。そして相手から受ける反作用によって本体の運動が変化します。

したがって、作用・反作用は単なる暗記用の法則ではなく、「力は必ず物体間の相互作用として現れる」という考え方を与えてくれます。

まとめ

作用・反作用が身近な現象や技術で重要なのは、物体が力を及ぼすときには、必ず相手から同じ大きさで反対向きの力を受けるからです。歩行では足が地面を後ろへ押し、地面から前向きの床反力を受けます。泳ぎや船では水へ力を加え、自動車ではタイヤが路面へ力を伝えます。ロケットは排気ガスを後方へ加速し、その反作用として前向きの推力を得ます。

重要なのは、作用と反作用が別々の物体にはたらくため、互いに打ち消し合わないことです。また、作用と反作用は時間差で起こるのではなく、相互作用として同時に生じます。

技術は作用・反作用という法則そのものを「発生させる」のではありません。この法則を前提として、どの相手へ、どの向きに、どれだけの力を伝えれば目的の運動や支持力が得られるかを設計しています。作用・反作用を理解すると、歩くことから宇宙飛行まで、多くの現象が同じ力学の原理でつながっていることが分かります。

参考資料

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