なぜ穀物の精製はおいしさや品質に影響するのか?

玄米を白米にすると食感がやわらかくなり、炊飯時間も短くなります。小麦を製粉して外皮や胚芽を分けると、白い小麦粉になり、パンや菓子に使いやすくなります。一方で、精製を進めるほど食物繊維や脂質、ビタミン、ミネラルなどが減ることがあります。

穀物の精製がおいしさや品質に影響するのは、穀粒が外側から内側まで同じ組成ではなく、外皮・ぬか層・胚芽・胚乳で、成分、硬さ、水の通りやすさ、加工時の性質が違うからです。外側の層をどこまで取り除くかによって、吸水、糊化、硬さ、粘り、香り、保存性、栄養価が変わります。

つまり、精製は単に「きれいに白くする工程」ではありません。食べやすさや加工しやすさを高める一方で、外層に多い栄養成分や風味成分を減らすこともある、品質のバランスを調整する工程です。

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穀粒は外側と内側で成分が違う

米では、玄米の外側に果皮・種皮・ぬか層があり、胚芽も残っています。その内側に、主としてでんぷんを蓄える胚乳があります。小麦でも、外側にはふすまになる組織があり、その内側に胚乳、胚芽があります。

外層には、食物繊維、脂質、ミネラル、ビタミン、フェノール成分などが比較的多く含まれます。一方、胚乳はでんぷんを多く含み、精製度を高めるほど、食品全体に占めるでんぷんの割合は相対的に高くなります。

そのため、精製によって外層を取り除くと、見た目や食感だけでなく、食品の化学組成そのものが変わります。米の搗精研究でも、搗精が進むにつれて粗たんぱく質、粗脂肪などが減少し、吸水率や糊化特性が変化することが報告されています。

精製した米がやわらかく炊けやすいのはなぜ?

玄米の外側にあるぬか層は、水が胚乳へ入る際の物理的な障壁になります。玄米を白米へ精製すると、この外層が薄くなり、水がでんぷんを多く含む内部へ届きやすくなります。

日本の研究では、搗精度が高くなるにつれて米の吸水率が高くなり、糊化温度が低下する傾向が確認されています。つまり、精製によって水が内部へ入りやすくなると、加熱時のでんぷんの膨潤や糊化も進みやすくなります。

海外の研究でも、玄米から白米へ精製度を高めると、調理時間が短くなり、炊飯後の硬さや噛みごたえが低下することが示されています。外層を取り除くことが、加熱時の水と熱の移動を変えるためです。

精製度が上がると粘りや食味が変わるのはなぜ?

米飯の食味では、硬さと粘りのバランスが重要です。精製によって外層が除かれると、でんぷんが水を利用しやすくなり、炊飯中の膨潤やでんぷんの溶出が変化します。

2023年の研究では、精製度を高めた米は玄米より硬さが低く、官能的な食べやすさが改善する傾向が示されています。また、2023年の別の研究では、精製によるでんぷん構造と炊飯特性の変化が、硬さの低下と粘着性の増加に関係していました。

ただし、精製度を上げれば必ず食味が改善し続けるわけではありません。品種によって適した精製度は異なり、過度な精製は米粒を削りすぎて歩留まりを落とします。近年の研究でも、栄養と食味の両方を考えた場合、適度な精製に利点があるとされています。

古米では高白度精米によって食味が改善する場合がある

保存中の米では、ぬか層や胚芽に多い脂質が分解・酸化し、古米特有のにおいに関係する成分が増えることがあります。

日本の古米研究では、搗精白度を高くして外側をより多く除去すると、官能評価が改善し、におい識別装置で測定した古米臭も低下しました。また、粘度特性も良食味側へ変化しました。

これは、保存中に変化しやすい脂質や香気成分が外層に多く存在するため、その部分をより多く取り除くことで、古米臭や食感上の問題が軽減されたためと考えられます。

ただし、これは古米に対する品質改善の例であり、新鮮な米でも精製を強くすれば必ずおいしくなるという意味ではありません。

精製によって甘味やうま味に関わる成分の動きも変わる

米には、でんぷんやたんぱく質だけでなく、それらを分解する内在性酵素も存在します。精製度が違うと、酵素の分布も変わるため、炊飯中に生成する糖やアミノ酸の量にも差が生じます。

日本の研究では、搗精度の異なる米を炊飯すると、いずれの米でもグルコースを中心とした糖類が増えましたが、その増加率は精製度によって異なりました。また、グルコシダーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼなどの活性も搗精度によって違いが見られています。

つまり、精製は「外側を削る」だけでなく、炊飯中に働く酵素の分布を変え、最終的な米飯成分にも影響します。甘味やうま味の感じ方には香りや食感も関係するため、精製度と食味の関係は複数の要因が重なった結果です。

精製を進めると栄養成分が減るのはなぜ?

穀物の栄養成分は粒全体へ均一に分布しているわけではありません。食物繊維、脂質、ビタミン、ミネラルなどの多くは、胚乳より外層や胚芽に多く存在します。

そのため、玄米から白米へ精製すると、外層と一緒にこれらの成分も失われます。2025年の米の精製段階を比較した研究では、玄米から白米へ進むにつれて食物繊維が大きく減少し、ミネラル類も大幅に減りました。

一方、外層を除くことでフィチン酸などの成分も減るため、精製による変化を単純に「栄養が悪くなる」とだけ表現するのも適切ではありません。何を栄養上の利点と考えるか、どの程度の食べやすさが必要かによって評価は変わります。

精製は保存性にも影響する

玄米や全粒穀物の外層には脂質が多く含まれています。脂質は保存中に酸化・分解され、においや味の変化につながることがあります。

外層を除く精製によって脂質量が減ると、脂質酸化による品質低下が起こりにくくなる場合があります。その一方で、精製後の穀粒は外側の保護構造が変わり、割れや吸湿の影響も受けます。

そのため、玄米と精白米では「どちらが常に長持ちする」と一律に決めるのではなく、温度、水分、包装、保存期間を含めて考える必要があります。

小麦の精製では、ふすまの除去がパンや麺の性質を変える

小麦では、製粉によって外側のふすまと胚芽を分け、胚乳を中心に粉にします。精製度の高い小麦粉は、ふすま粒子が少なく、白く均一な生地を作りやすくなります。

一方、全粒粉にはふすまと胚芽が残るため、食物繊維やミネラルなどを多く含みますが、ふすま粒子がグルテンの連続した網目構造を物理的に妨げたり、水を多く保持したりします。その結果、パンでは生地の伸展性やガス保持性、体積、食感が白い小麦粉とは異なります。

つまり、小麦の精製は栄養組成だけでなく、グルテンを中心とした生地構造にも影響し、パンや麺の加工品質を変えます。

製粉時の「損傷でんぷん」も品質を左右する

小麦を粉にするときは、胚乳を機械的に砕きます。その際、でんぷん粒の一部が傷つき、損傷でんぷんになります。

損傷でんぷんは、損傷していないでんぷんより水を多く吸います。そのため、製粉条件によって損傷でんぷんが増えると、小麦粉の吸水量、生地の粘り、発酵中の糖供給などが変わります。

硬質小麦に関するレビューでは、ローター速度、粉砕温度、調質水分、供給速度などが損傷でんぷん量へ影響すると整理されています。適度な損傷は製パンに役立つ場合がありますが、多すぎると生地がべたついたり、製品品質が不安定になったりします。

したがって、小麦では「外皮をどこまで除くか」だけでなく、「胚乳をどのように粉砕したか」も最終品質に影響します。

白さや見た目も品質評価の一部になる

穀物食品では、味や栄養だけでなく外観も品質評価に含まれます。米では精製度を高めるほどぬか由来の色が減り、白度が高くなります。

2023年の米研究では、精製度の上昇に伴って白度が高くなり、官能評価や食味指標も変化しました。2025年のレビューでも、精製度を上げることは外観品質を改善する一方、微量栄養素の損失を伴うと整理されています。

つまり、消費者が感じる「品質」には、白さ、つや、粒ぞろいといった見た目も含まれます。そのため、精製では栄養だけでなく、外観、食感、調理性、価格、歩留まりまで含めたバランスが求められます。

「精製度が高いほど高品質」とは限らない

精製を進めると、米では水が入りやすくなり、炊飯時間が短く、やわらかい食感になりやすくなります。小麦ではふすまが減り、均一な生地を作りやすくなります。

しかし、その一方で次のような変化も起こります。

  • ぬかや胚芽に多い食物繊維、脂質、ビタミン、ミネラルが減る
  • 精製しすぎると原料の歩留まりが下がる
  • 米では品種によって、精製度に対する食感や食味の反応が異なる
  • 小麦では製粉条件が強すぎると損傷でんぷんが増えすぎることがある
  • 全粒穀物特有の風味や食感は、精製によって失われる

したがって、最適な精製度は一つではありません。白米、部分精米、玄米、白い小麦粉、全粒粉では、それぞれ求めるおいしさ、栄養、加工性が違います。

まとめ:精製は食べやすさと栄養・風味のバランスを変える工程

穀物の精製がおいしさや品質に影響するのは、外皮、ぬか、胚芽、胚乳で成分と構造が違い、精製によってそれらの比率が変わるからです。

米では、外層を除くと吸水と糊化が進みやすくなり、炊飯時間が短く、硬さが低下し、粘着性や食べやすさが変わります。一方で、外層に多い食物繊維、脂質、ビタミン、ミネラルなどは減少します。

小麦では、ふすまを除くことで生地を作りやすくなる一方、全粒粉とは栄養組成や風味が変わります。また、製粉時のでんぷん損傷も吸水や加工特性へ影響します。

つまり、精製は食べやすさ、外観、調理性、加工性を高める方向の変化と、栄養・風味・歩留まりを失う方向の変化を同時に起こす工程です。穀物の品質を考えるときは、精製度を高低だけで評価せず、最終用途に合ったバランスを見ることが重要です。

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主な参考資料

  • 大西真理子ほか「搗精度が米の性状に及ぼす影響」日本家政学会誌、1997年。
  • 深井洋一・石谷孝佑「高白度搗精による古米の食味改善」日本食品科学工学会誌、2004年。
  • 馬橋由佳ほか「搗精度合の異なる米における米内在性酵素の米飯成分への影響」日本調理科学会誌、2010年。
  • Zhao S. et al. “Effects of milling degree on nutritional, sensory, gelatinization and taste quality of different rice varieties.” LWT, 2023.
  • Yılmaz Tuncel N. et al. “The impact of milling degree on physicochemical, nutritional, rheological, textural properties, and in vitro digestibility of rice: From brown rice to white rice.” Food Chemistry, 2025.
  • Comprehensive Review of the Quality and Processing Suitability of U.S. Hard Red Spring Wheat, Agriculture, 2024.

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