生活用品は、一度使って終わるものばかりではありません。椅子、収納用品、調理器具、家電、工具などは、持つ、押す、曲げる、洗う、温める、冷やすといった動作を何度も繰り返しながら使われます。
そのため生活用品には、買った直後だけ性能を発揮するのではなく、想定される使い方を繰り返しても、必要な機能と安全性を一定期間保てる耐久性が必要です。ただし、耐久性とは「絶対に壊れないこと」ではありません。使い方や環境による劣化を見込み、点検・手入れ・交換も含めて安全に使えるようにする考え方です。
生活用品は毎日の繰り返しで少しずつ傷む
生活用品には、一回では問題にならない小さな力でも、何度も繰り返しかかります。椅子には座るたびに荷重がかかり、はさみや工具には開閉や曲げの力が加わり、電源コードや可動部は繰り返し曲げられます。
NIMSは、材料が繰り返しの荷重やひずみを受けて破損する現象を「疲労」と説明しています。見た目には大きく変形していなくても、繰り返し荷重によって小さなき裂が生じ、やがて破損につながることがあります。
このため製品設計では、一度の強い力に耐えるかだけでなく、何回も使ったときに壊れにくいかを考える必要があります。
耐久性は「強さ」だけでは決まらない
丈夫な製品というと、硬くて強い材料を使えばよいように思えます。しかし、実際の耐久性は複数の条件で決まります。
繰り返し曲げられる部分では疲労に強いこと、水回りでは腐食や吸水に耐えること、高温になる場所では耐熱性が必要です。屋外用品では紫外線や雨、温度変化への耐性も関係します。
つまり、耐久性は「最も強い素材を使うこと」ではなく、その製品が受ける力・熱・水分・薬品・光などに合った材料と構造を選ぶことです。
可動部は摩耗しやすい
引き出しのレール、ドアの蝶番、車輪、ファスナー、ボタンなど、動く部分では部品同士が接触し、少しずつ表面が削れます。これが摩耗です。
摩耗が進むと、がたつき、動きの重さ、異音、すき間などが増え、使いにくくなることがあります。さらに摩耗が大きくなると、部品が外れたり、固定力が不足したりする場合もあります。
そのため耐久性を高めるには、材料だけでなく、接触面の形、潤滑、部品の交換しやすさなども重要です。
熱は材料や部品を劣化させる
調理器具や暖房機器だけでなく、モーターや電源部を持つ家電も使用中に熱を発生します。熱が長期間加わると、樹脂や絶縁材料などが徐々に劣化することがあります。
NITEは、古い扇風機の事故について、コンデンサーの絶縁性能低下、モーター巻線の絶縁劣化、軸受部の固着、内部配線への繰り返し屈曲などが火災につながった事例を紹介しています。
これは、製品が動き続けているからといって、内部部品が購入時と同じ状態とは限らないことを示しています。
水分や薬品も耐久性を左右する
キッチン、浴室、洗面所などで使う用品は、水や洗剤に触れる機会が多くなります。金属は種類や環境によって腐食し、樹脂やゴムも薬品との相性によって膨潤・硬化・ひび割れなどが起こることがあります。
そのため、水回りで使う用品では、濡れても性能を保てる材料を選び、必要に応じて乾燥させる、指定された洗剤を使うなどの手入れが重要です。
耐久性は設計だけで決まるのではなく、実際の使用環境と手入れによっても変わります。
長く使う製品ほど経年劣化への注意が必要になる
経済産業省は、長期間の使用に伴う経年劣化によって重大事故が起こるおそれがある製品について、点検や注意表示の制度を設けています。
対象となるのは一部の長期使用製品であり、すべての生活用品に同じ制度が適用されるわけではありません。しかし、製品は長く使うほど部品が劣化し得るという考え方は、幅広い生活用品を安全に使ううえで重要です。
異常な音、振動、におい、発熱、ひび、ぐらつきなど、購入時にはなかった変化が現れたら、使い続ける前に説明書やメーカー情報を確認する必要があります。
耐久性が足りないと安全性にも影響する
壊れた生活用品は、単に買い直しが必要になるだけではありません。椅子や脚立の破損は転倒、調理器具の取っ手の破損はやけど、電気製品の絶縁劣化は感電や火災などにつながる可能性があります。
そのため、耐久性は「長持ちするか」という経済性だけでなく、「使用期間中に危険な壊れ方をしにくいか」という安全性とも関係します。
設計では、壊れる可能性をゼロにするのではなく、想定される使用期間と使い方の中で、危険な破損が起こりにくい余裕を持たせることが重要です。
長持ちすれば交換回数を減らしやすい
耐久性が高く、必要に応じて修理しながら長く使える製品は、短期間で交換する製品に比べ、買い替え回数を減らしやすくなります。
欧州委員会は、循環型経済を進めるうえで、製品の耐久性、修理可能性、資源効率、使用後の処理を設計段階から考えることを重視しています。長寿命化は、資源をより長く利用し、廃棄物を減らすための一つの方法です。
ただし、耐久性を高めるために必要以上に材料を増やせば、製品が重くなったり資源使用量が増えたりすることがあります。長寿命化と材料使用量のバランスも必要です。
「長持ち」と「修理しやすい」は別の性質
壊れにくい製品でも、消耗部品を交換できなければ、小さな故障で製品全体を買い替えることになる場合があります。
反対に、ある程度摩耗することを前提に、パッキン、刃、電池、フィルターなどを交換できる製品なら、必要な部分だけを更新しながら長く使えることがあります。
そのため、製品寿命を考えるときは、壊れにくさだけでなく、点検しやすさ、消耗品の交換、修理可能性も重要です。
耐久性が高ければ永久に使えるわけではない
どんな製品にも劣化はあります。高い耐久性を持つ製品でも、使用回数、保管環境、熱、水分、紫外線、衝撃などによって寿命は変わります。
特に安全に関わる製品では、「まだ動くから使える」と「安全に使える」は同じではありません。経済産業省も、異常な音・振動・においなどがある場合には使用を中止し、メーカーなどへ相談するよう案内しています。
耐久性は点検不要を意味するのではなく、適切な点検や手入れと組み合わせて使うものです。
過剰な耐久性は重さや価格を増やすことがある
あらゆる製品を極端に頑丈にすると、材料が増え、重く、高価になることがあります。持ち運ぶ製品では、重くなることで使いにくくなる場合もあります。
例えば、軽い収納用品と、人が乗る脚立では必要な強度や安全余裕が異なります。日常的に消耗する部品と、壊れると危険な主要構造部でも、求める耐久性は同じではありません。
そのため、良い設計では「最大限頑丈にする」のではなく、用途と危険度に合った耐久性を設定します。
使う側も耐久性を保つ役割を持つ
製品の耐久性は、設計・製造だけでなく使い方にも左右されます。耐荷重を超えて使う、屋内用品を雨ざらしにする、指定外の洗剤を使う、異常があるまま使い続けると、想定より早く劣化することがあります。
説明書に示された使用条件を守り、汚れや水分を適切に除き、消耗品を交換し、異常を感じたら点検することが、製品を安全に長く使うために重要です。
生活用品の耐久性を見るポイント
生活用品で「長く使えそうか」を考えるときは、次の点を見ると整理しやすくなります。
- 繰り返し荷重:開閉、曲げ、押す動作を何度も受ける部分はないか。
- 摩耗:回転部、引き出し、接触面などがすり減りやすくないか。
- 熱:高温になる部分で材料が劣化しないか。
- 水・薬品:濡れたり洗剤に触れたりする環境に適しているか。
- 交換:消耗部品や電池、パッキンなどを交換できるか。
- 点検:ひび、異音、ぐらつきなどの異常を見つけやすいか。
- 用途:必要以上に重く・頑丈にせず、使い方に合った耐久性か。
耐久性は一つの数字ではなく、製品が置かれる環境と使われ方を合わせて考えることが大切です。
まとめ
生活用品に長く安全に使うための耐久性が必要なのは、製品が毎日の繰り返し荷重、摩耗、熱、水分、薬品、経年変化などを受けながら使われるからです。
耐久性が不足すると、使いにくくなるだけでなく、破損や部品劣化が転倒、やけど、火災などの事故につながる場合があります。一方、用途に合った耐久性と修理・交換しやすさがあれば、製品を安全に長く使い、買い替えや廃棄を減らしやすくなります。
耐久性を考えるときは、「永久に壊れないこと」ではなく、「想定される期間と使い方の中で、必要な機能と安全性を保ち、劣化した部分を点検・交換できること」が重要です。
参考資料
- 経済産業省「消費者のみなさまへお願い|製品安全ガイド」
- NITE「扇風機の事故」
- NIMS「疲労データシートに関する用語説明」
- European Commission “Building a circular economy with the EU Ecolabel”

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