照明には、人が近づくと自動で点灯するものや、周囲が暗くなると点灯するものがあります。どちらも「センサー付き照明」ですが、検知しているものは同じではありません。また、人を検知するセンサーにも、赤外線を使う方式、超音波を使う方式、複数の方式を組み合わせるものがあります。
なぜ照明のセンサーは、人感・明るさ・検知方式を用途で使い分けるのでしょうか。結論からいうと、照明を自動制御する目的が「人がいるかを知ること」と「周囲が明るいかを知ること」で異なり、さらに人の検知でも、見通し、動きの大きさ、空間の形、誤検知しやすい条件が違うからです。
照明用センサーは「何を検知するか」で役割が分かれる
照明に使われる代表的なセンサーは、人感センサーと照度センサーです。環境省は、人を感知して照明を点灯・消灯するものを人感センサー、周囲の明るさを検知して点灯・消灯するものを照度センサーとして紹介しています。
この違いは重要です。人感センサーは「誰かが使っているか」を判断するために使われ、照度センサーは「人工照明が必要な暗さか」を判断するために使われます。
たとえば玄関では、人が来たときだけ点灯したいので人感センサーが向きます。屋外灯では、人の有無にかかわらず日没後だけ点灯したい場合があるため、照度センサーが向きます。オフィスの窓際では、昼光が十分なら照明を暗くしたいので、照度センサーを使った自動調光が有効です。
人感センサーは「人そのもの」を直接見ているとは限らない
人感センサーという名前から、人の形をカメラのように認識していると思うかもしれません。しかし一般的な照明用センサーの多くは、人そのものを画像で認識するのではなく、人が動いたときに起こる赤外線や音波などの変化を検知します。
そのため、「人がいるのに反応しない」「人がいないのに反応した」ということも起こり得ます。センサーにはそれぞれ得意な検知条件と苦手な条件があり、その違いに合わせて設置場所を選ぶ必要があります。
PIR方式は、人の熱による赤外線の変化を検知する
住宅の玄関灯や廊下などで広く使われるのが、PIRと呼ばれる受動赤外線方式です。人の体などから出る赤外線と、周囲の背景から出る赤外線の変化を検知して、人が動いたと判断します。
PIRセンサーは自分から電波や音波を出さず、周囲から届く赤外線の変化を受け取ります。そのため消費電力を小さくしやすく、照明器具や電池式機器にも組み込みやすい方式です。
一方で、PIRは基本的にセンサーから見える範囲の変化を捉えます。壁や高い家具などで遮られた場所の動きは検知しにくくなります。また、人がセンサーに向かって一直線に近づく場合より、検知範囲を横切るように動いた方が赤外線の変化を捉えやすいことがあります。
このため、玄関、廊下、階段など、比較的動線がはっきりしていて見通しを確保しやすい場所に向いています。
超音波方式は、音波の反射変化から動きを検知する
超音波方式は、人の耳には聞こえない高い周波数の音波を空間へ出し、その反射の変化から動きを検知します。人や物が動くと反射波の状態が変わるため、その変化を利用して在室を判断します。
米国エネルギー省の資料では、超音波センサーはPIRのように明確な見通しを必要とせず、間仕切りや家具がある空間でも検知しやすいと説明されています。また、タイピングやページをめくるような小さな動きも捉えやすい特徴があります。
そのため、会議室、トイレ、複雑な形の部屋など、人が見えにくい位置にいる可能性がある場所に向く場合があります。
ただし、超音波方式は自ら音波を出す能動式なので、空調の風や振動など周囲の条件の影響を受けることがあります。設置場所によっては、必要のない動きを拾ってしまう可能性もあります。
複合方式は、異なるセンサーの弱点を補う
PIRは低消費電力で使いやすい一方、遮蔽物の向こうや小さな動きが苦手です。超音波は小さな動きや見通しの悪い空間に強い一方、周囲の振動などの影響を受けることがあります。
そこで、PIRと超音波など二つの方式を組み合わせた「デュアルテクノロジー」と呼ばれるセンサーがあります。米国DOEの施設向け資料でも、複数方式を組み合わせることで不適切な動作を減らす考え方が示されています。
たとえば点灯するときは二つの条件を確認し、消灯判断ではどちらか一方の在室検知を重視するなど、制御方法を工夫できます。これにより、誰もいないのに点灯する誤検知と、人がいるのに消灯する検知漏れの両方を減らしやすくなります。
照度センサーは「人」ではなく「明るさ」を測る
照度センサーは、周囲の光の量を検知します。人がいるかどうかではなく、「今の空間にどのくらい光があるか」を判断するためのセンサーです。
屋外では、夕方に暗くなると点灯し、朝に明るくなると消灯する自動点滅器として利用されます。室内では、窓から入る昼光が十分なときに照明を暗くし、曇天や夕方で暗くなったときに明るくする自動調光に使われます。
環境省も、照度センサーや人感センサーなどの制御技術をLED照明と組み合わせることで、さらなる省エネルギーにつながるとしています。
照度センサーは設置位置によって判断が変わる
明るさを測るセンサーでは、「どこの明るさを測っているか」が非常に重要です。窓のすぐ近くに置けば外光の影響を強く受け、照明器具の直下に置けば人工照明の影響を強く受けます。
たとえば、照明自身の光をセンサーが強く受ける位置では、「点灯したから明るくなった」と判断して消灯し、その結果また暗くなって点灯する、といった不安定な動作が起こる可能性があります。
そのため、照度センサーを使うときは、実際に明るさを確保したい場所とセンサーの位置関係を考えて設置します。オフィスなら作業面の明るさ、屋外灯なら周囲の自然光の変化を適切に反映できる位置が重要です。
人感センサーと照度センサーを組み合わせる理由
人感センサーと照度センサーは、どちらか一方だけを使うとは限りません。住宅の玄関灯などでは、「周囲が暗く、しかも人が来たときだけ点灯する」という制御がよく使われます。
明るい昼間なら、人が通っても照明を点ける必要はありません。反対に夜間でも、人がいなければ常に最大の明るさで点灯する必要がない場合があります。
二つのセンサーを組み合わせることで、「暗いか」と「人がいるか」という別々の条件を同時に判断でき、必要なときだけ照明を使いやすくなります。環境省も、人感センサーや自動点滅器、タイマーを利用した照明制御を、電力消費削減の方法として紹介しています。
用途によってセンサー方式を使い分ける
- 玄関・廊下・階段では、動線を捉えやすいPIR人感センサーが使いやすい
- 間仕切りが多い部屋や小さな動きを検知したい場所では、超音波方式が向く場合がある
- 誤検知や検知漏れを減らしたい場所では、複数方式を組み合わせたセンサーが有効な場合がある
- 屋外灯では、日没・日の出に合わせる照度センサーが向く
- 窓際の室内照明では、昼光に合わせて調光する照度センサーが役立つ
- 玄関灯などでは、人感と照度を組み合わせると昼間の不要点灯を防ぎやすい
このように、最適なセンサーは「最も高性能な方式」ではなく、「何を検知したいか」「空間がどのような形か」「人がどう動くか」によって決まります。
センサー付き照明でも設置すれば必ず省エネになるわけではない
センサーは無駄な点灯を減らすために役立ちますが、設定や設置場所が適切でなければ期待した効果が得られないことがあります。
たとえば、人が長時間静かに座っている部屋で検知感度が足りなければ、在室中に照明が消えてしまいます。反対に、検知範囲が広すぎて廊下の通行まで拾えば、不必要な点灯が増えることがあります。
環境省も、人感センサーを導入する際には感知範囲を確認し、感知漏れ、強い光、高い熱、電波障害などに注意して設置する必要があるとしています。
つまり、省エネ効果はセンサーの有無だけでなく、検知範囲、保持時間、調光レベル、設置位置などの設定によって変わります。
センサーは調光や配光とは別の役割を持つ
センサーは「いつ、どれだけ照明を動かすか」を判断するための入力装置です。一方、調光は光の出力を変える仕組みであり、配光は光をどの方向へ届けるかという設計です。
実際の照明では、センサーで人や周囲の明るさを検知し、その結果をもとに照明を点灯・消灯したり、調光したりします。さらに、適切な配光によって必要な場所へ光を届けます。
この三つを組み合わせることで、必要な場所へ必要な時間だけ必要な量の光を届けやすくなります。
まとめ
照明のセンサーに方法や用途による違いがあるのは、検知する対象と検知原理が異なるからです。人感センサーは人の動きや在室を捉え、照度センサーは周囲の明るさを測ります。
人感センサーの中でも、PIRは赤外線の変化を利用し、低消費電力で住宅などに使いやすい一方、見通しや動き方の影響を受けます。超音波方式は遮蔽物のある空間や小さな動きを検知しやすく、複合方式では異なるセンサーの弱点を補えます。
センサー選びで大切なのは、方式の新しさではなく、何を検知し、どの場所で、どのような照明制御を行いたいかです。空間の形や人の動き、自然光の入り方まで考えて使い分けることで、快適さと省エネを両立しやすくなります。
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参考資料
- 環境省「省エネ製品買換ナビゲーション しんきゅうさん:照明・器具」
- 環境省「住宅脱炭素NAVI 省エネ住宅とは」
- 環境省「温室効果ガス排出削減等に沿った取組のすすめ ~地方公共団体版~」
- U.S. Department of Energy「Wireless Occupancy Sensors for Lighting Controls」

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