なぜ照明の消費電力を抑えると、電気代・空調負荷・暮らしの省エネ性まで変わるのか?

照明の消費電力を減らすと、電気料金が下がることは想像しやすいでしょう。しかし影響はそれだけではありません。照明で使われた電力の一部は最終的に室内の熱となるため、夏は冷房が処理する熱負荷にも関係します。さらに、同じ明るさをより少ない電力で得られれば、住宅や施設全体の省エネ性も高めやすくなります。

なぜ照明の消費電力を抑えると、電気代・空調負荷・暮らしの省エネ性まで変わるのでしょうか。結論からいうと、照明は単独で電気を使うだけでなく、使った電力の多くが最終的に室内の熱となり、その熱を空調が処理する場合があるからです。高効率な照明や適切な制御を使うことで、照明そのものの電力と、場合によっては空調側の負荷も減らせます。

目次

まず、消費電力を下げると照明の電気代が減る

照明にかかる電気代は、基本的に使用した電力量に応じて増減します。電力量は、消費電力と点灯時間の積み重ねです。

たとえば同じ時間だけ点灯するなら、40Wの照明より20Wの照明の方が使う電力量は少なくなります。また、調光やセンサー制御で平均的な消費電力や点灯時間を下げれば、同じ設備でも年間の電力量を抑えられます。

資源エネルギー庁は、照明器具の省エネ性能を評価する指標として、消費電力に対してどれだけ光を得られるかという固有エネルギー消費効率を用いています。必要な光をより少ない電力で得られる器具ほど、省エネ性が高いと考えられます。

同じ明るさなら、高効率な照明ほど必要な電力を減らしやすい

省エネでは、単に暗くすることが目的ではありません。必要な明るさを保ちながら、そこへ使う電力を減らすことが重要です。

LED照明は、従来光源と比べて高い発光効率を持つ製品が多く、同程度の明るさをより少ない電力で得やすい特徴があります。

米国エネルギー省も、LEDは高効率で、光の方向を制御しやすく、調光やセンサー制御と組み合わせることで照明システム全体のエネルギー消費をさらに抑えられると説明しています。

つまり、暮らしの快適さを保ちながら消費電力を下げるには、「必要な光を減らす」のではなく、「同じ必要な光をより少ない電力で作る」ことが基本になります。

照明で使った電力の多くは、最終的に室内の熱になる

照明器具へ入った電力は、光だけに変わるわけではありません。LEDでも電源回路やLEDチップから熱が出ます。

さらに、照明から出た可視光も、壁・床・家具などへ吸収されると最終的には熱になります。そのため、室内で使われる照明電力の多くは、時間がたつと室内側の熱負荷になります。

このため、照明の消費電力を下げることは、単に電気料金の「照明分」を減らすだけでなく、冷房期には室内へ入る熱を減らすことにもつながります。

夏は照明の発熱を減らすと、冷房負荷も下げやすい

夏に冷房している室内では、照明が発生させる熱もエアコンが外へ運び出す必要があります。

高消費電力の照明を多数点灯している店舗やオフィスでは、照明からの発熱が室内負荷の一部になります。米国DOEの建築省エネ資料でも、照明は内部発熱源として扱われ、照明電力の削減が冷房負荷の低減につながるとされています。

そのため、高効率なLEDへ更新して照明電力を下げると、照明そのものの電力量に加えて、冷房に必要なエネルギーも少し減らせる場合があります。

ただし冬は、照明の発熱低下が暖房負荷を少し増やすこともある

照明の発熱は、夏には冷房の負担になりますが、冬の暖房期には室内を暖める熱の一部として働くことがあります。

そのため照明電力を減らすと、冬にはその分だけ暖房が補う必要が生じる場合があります。

ただし、照明は暖房機器よりも熱を供給する目的で設計されているわけではありません。高効率な照明をあえて低効率な照明へ戻して暖房代わりにするのは合理的ではありません。

建物全体で見ると、地域の気候、冷暖房期間、空調方式によって影響の大きさは変わります。

照明の省エネ効果は、冷房期の長い建物ほど大きくなりやすい

冷房を長時間使うオフィス、店舗、商業施設などでは、照明からの発熱を減らす効果が空調側にも現れやすくなります。

一方、冷房をほとんど使わない地域や季節では、空調負荷への影響は小さくなります。

つまり、同じ照明更新でも、電気代の削減効果は比較的直接的ですが、空調負荷への波及効果は建物の使い方や季節によって変わります。

省エネ評価では、照明だけでなく建物全体のエネルギー収支を見ることが重要です。

消費電力を抑える方法は「高効率化」と「必要なときだけ使う」の二つに分けられる

照明の電力を減らす方法には、大きく二つあります。

一つは、高効率な照明器具を使い、同じ明るさをより少ない電力で得ることです。もう一つは、調光・人感センサー・昼光利用などによって、必要のない光を使わないことです。

環境省のZEB資料でも、高効率照明に加えて、明るさセンサー、人感センサー、タイムスケジュールなどを組み合わせ、必要な照度を確保しながら照明エネルギーを削減する方法が紹介されています。

器具効率と運用制御を組み合わせることで、快適さを維持しながら電力量を下げやすくなります。

昼光を使えば、照明と空調の両方に影響することがある

窓から自然光が入る場所では、昼光に応じて人工照明を減光できます。これは照明電力の削減につながります。

ただし、窓から入る日射には熱も含まれるため、「自然光を取り入れれば必ず建物全体で省エネになる」と単純には言えません。大きな日射熱が入ると冷房負荷が増えることもあります。

そのため建築では、採光と日射遮蔽を組み合わせ、必要な光を取り入れつつ過剰な熱を抑える設計が重要です。

照明の省エネと空調の省エネは、別々ではなく一緒に考える必要があります。

必要以上の明るさを抑えると、照明の電力を直接減らせる

部屋がすでに十分明るいのに、照明を常に最大出力で使えば、その分だけ余分な電力を使います。

明るさセンサーや調光を利用すれば、必要な照度を保ちながら出力を下げられます。また、人感センサーを使えば、無人時の点灯を減らせます。

米国DOEは、在室検知、昼光利用、タスクチューニングなどを、照明システムのエネルギーを削減する代表的な制御方法として挙げています。

ここで重要なのは、「暗くするほどよい」のではなく、必要な明るさを確保したうえで余分な光を減らすことです。

電気代を見るときはW数だけでなく、年間のkWhを見る

消費電力が小さい器具でも、24時間点灯すれば年間の電力量は大きくなります。反対に、消費電力が少し大きくても、短時間しか使わなければ年間電力量は小さいことがあります。

そのため、暮らしへの影響を考えるときは、器具に表示されたW数だけでなく、1日何時間使うか、何灯あるか、調光やセンサーで平均出力がどう変わるかを見る必要があります。

電気代への影響は、最終的には年間の使用電力量と電気料金単価によって決まります。

高効率化で交換回数や設備容量へ波及する場合もある

照明の消費電力を小さくすると、同じ回路で必要になる電流も小さくなります。大規模な施設では、照明負荷が減ることで電気設備や空調設備の負荷設計に影響することもあります。

ただし、既存住宅でLED電球へ交換しただけで分電盤やエアコンをすぐ小型化できるという意味ではありません。

新築や大規模改修では、照明負荷を低く設計することが、建物全体の設備計画へ波及する可能性があります。

消費電力を抑えても、見づらくなれば暮らしの効率は下がる

省エネのために必要以上に暗くすると、文字が読みづらい、作業しにくい、段差を見落としやすいなど、暮らしの快適さや作業性を損なうことがあります。

そのため、省エネ照明では消費電力だけでなく、必要照度、配光、まぶしさ、演色性なども合わせて確認します。

高効率な照明は、「同じ見やすさを少ない電力で実現する」ことに意味があります。単純に出力を下げることと、省エネ性を高めることは同じではありません。

暮らしで確認したいポイント

  • 同じ明るさをより少ないW数で得られる器具か
  • 年間の点灯時間と使用電力量がどれくらいか
  • 必要以上に明るい場所を調光できないか
  • 無人時に消灯・減光できないか
  • 昼光がある時間に人工照明を抑えられないか
  • 冷房期に照明の発熱が室内負荷になっていないか
  • 省エネによって必要な明るさや見やすさを損なっていないか

まとめ

照明の消費電力を抑えると、照明そのものの使用電力量が減るため、まず電気代を下げやすくなります。さらに、室内で使われた照明電力の多くは最終的に熱になるため、冷房期には照明の省エネが空調負荷の低減にもつながる場合があります。

高効率なLED、調光、人感センサー、昼光利用などを組み合わせれば、必要な明るさを保ちながら余分な電力を減らせます。ただし、冬の暖房負荷や自然採光による日射熱など、建物全体では相互作用もあります。

暮らしの省エネでは、単に照明を暗くするのではなく、「必要な場所に必要な光を、できるだけ少ない電力で届ける」ことが重要です。照明電力と空調負荷を一緒に考えることで、快適さを保ちながら建物全体のエネルギー効率を高めやすくなります。

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