なぜエアコンは、冷媒の蒸発・圧縮・凝縮・膨張を繰り返して冷暖房できるのか?

エアコンは、室内機から冷たい風や暖かい風を出しています。しかし、内部で電気をそのまま冷気や暖気に変えているわけではありません。中心にあるのは、冷媒という物質を循環させ、蒸発・圧縮・凝縮・膨張を繰り返しながら熱を運ぶ仕組みです。

なぜエアコンは、冷媒の蒸発・圧縮・凝縮・膨張を繰り返して冷暖房できるのでしょうか。結論からいうと、冷媒は液体から気体へ変わるときに周囲から熱を受け取り、気体から液体へ戻るときに熱を放出するからです。さらに圧縮機と膨張機構で冷媒の圧力を変えることで、室内と室外のどちら側で熱を吸収・放出するかを制御できます。

目次

エアコンは「熱をつくる」のではなく、熱を運ぶ

家庭用エアコンの多くはヒートポンプです。冷房では室内の熱を外へ運び、暖房では外気の熱を室内へ運びます。

その熱を運ぶ役目をするのが冷媒です。冷媒は配管の中を循環し、状態変化と圧力変化を繰り返します。

日本冷凍空調工業会や米国エネルギー省も、ヒートポンプは冷媒を使って熱を一方から他方へ移動させる仕組みだと説明しています。

冷媒は、蒸発するときに周囲から熱を奪う

液体の冷媒が気体へ変わるときには、周囲から熱を受け取ります。これが蒸発です。

冷房では、室内機の熱交換器の中で低温・低圧の冷媒が蒸発し、室内空気から熱を受け取ります。

その結果、熱を奪われた空気が冷たくなり、ファンによって部屋へ戻されます。

圧縮機は、気体の冷媒を高温・高圧にする

室内機で熱を受け取った冷媒は、気体の状態で室外機側へ向かいます。

そこで圧縮機が冷媒を圧縮すると、圧力と温度が上がります。

冷房時には、この高温・高圧になった冷媒を外気より高い温度にすることで、室外機から外へ熱を放出しやすくします。

圧縮機は冷媒を循環させる心臓部であり、エアコンの消費電力の大きな部分を占める主要部品でもあります。

凝縮では、冷媒が熱を放出して液体へ戻る

高温・高圧の冷媒が室外機の熱交換器を通ると、ファンで流される外気へ熱を放出します。

熱を失った冷媒は、気体から液体へ変わります。これが凝縮です。

冷房時に室外機から暖かい風が出るのは、室内から集めた熱と圧縮機で加えられたエネルギーを外へ放出しているためです。

膨張機構は、冷媒の圧力を下げて再び蒸発しやすくする

凝縮して液体になった冷媒は、そのままでは室内で効率よく熱を吸収できません。

そこで膨張弁や毛細管などの膨張機構を通し、冷媒の圧力を大きく下げます。

圧力が下がると冷媒の沸点も下がり、室内の熱交換器で蒸発しやすい状態になります。

この低温・低圧の冷媒が再び室内へ戻り、室内の熱を受け取ることで冷房サイクルが続きます。

冷房は「蒸発→圧縮→凝縮→膨張」の循環

冷房時の冷媒サイクルを整理すると、次のようになります。

  • 室内機で冷媒が蒸発し、室内の熱を吸収する
  • 圧縮機で冷媒を高温・高圧にする
  • 室外機で冷媒が凝縮し、外へ熱を放出する
  • 膨張機構で圧力を下げ、再び蒸発しやすくする

この循環を繰り返すことで、室内の熱が少しずつ屋外へ運ばれます。

暖房では、熱を運ぶ向きを逆にする

暖房でも使う部品や基本原理は同じです。違うのは、室内と室外のどちらで蒸発・凝縮させるかです。

暖房時には、室外機側で冷媒を蒸発させて外気から熱を受け取り、室内機側で冷媒を凝縮させてその熱を室内へ放出します。

つまり、冷房で外へ運んでいた熱の流れを、暖房では室内側へ向けます。

四方弁が冷媒の流れを切り替える

冷暖房を一台で行うヒートポンプエアコンでは、四方弁と呼ばれる部品を使って冷媒の流れる方向を切り替えます。

四方弁が切り替わると、冷房時には室内機が蒸発器、室外機が凝縮器として働き、暖房時にはその役割が入れ替わります。

このため、同じ熱交換器でも冷房時と暖房時で役割が変わります。

暖房でも、外気が冷たくても熱を取り込める

冬の外気が0℃近くでも、空気の中に熱エネルギーがなくなるわけではありません。

暖房時には、膨張後の冷媒を外気よりさらに低い温度にすることで、外気から冷媒へ熱を移動させます。

ただし、外気温が下がるほど熱を取り込む条件は厳しくなり、暖房能力や効率は低下しやすくなります。

なぜ冷媒には「沸点が低い物質」が使われるのか

冷媒は、家庭の室温や外気温に近い温度範囲で蒸発・凝縮できる必要があります。

水は大気圧では100℃で沸騰しますが、エアコン用冷媒は圧力を調整することで、冷暖房に適した比較的低い温度でも蒸発・凝縮できます。

その性質があるからこそ、室内の20〜30℃程度の空気から熱を受け取ったり、外気へ熱を放出したりできます。

熱交換器は、冷媒と空気の間で熱を移す場所

室内機と室外機には、細い配管と多数のフィンを組み合わせた熱交換器があります。

冷媒は配管の中を流れ、ファンで送られる空気はフィンの間を通ります。

フィンを使って表面積を大きくすることで、冷媒と空気の間で効率よく熱をやり取りできます。

フィルター汚れや室外機周辺の通風不足が性能へ影響するのは、この熱交換に必要な空気の流れが弱くなるためです。

冷媒は配管内を循環し、通常は消費されない

エアコンの冷媒は、正常な状態であれば密閉された配管内を循環し続けます。

燃料のように運転するたび減っていくものではありません。

もし冷媒量が不足している場合は、配管接続部などから漏れている可能性があります。その場合は単に補充するだけでなく、漏えい箇所の点検・修理が必要です。

冷媒回路は高圧になるため、利用者が自己分解・自己充填を行わず、専門業者へ依頼します。

インバータは圧縮機の回転数を変えて能力を調整する

現在の家庭用エアコンでは、インバータ制御によって圧縮機の回転数を変え、冷媒の循環量を調整する方式が広く使われています。

運転開始時は冷媒を多く循環させて大きな冷暖房能力を出し、設定温度へ近づくと循環量を減らします。

このため、エアコンは常に同じ量の冷媒を同じ速さで循環させているわけではありません。

冷房では除湿も同時に起こる

冷房時、室内機の熱交換器表面が空気の露点より低くなると、空気中の水蒸気が結露します。

この水はドレンホースから屋外へ排出されます。

そのため、冷房では空気から熱を奪うだけでなく、条件によって湿気も取り除きます。

エアコンの除湿運転も、基本的にはこの冷却と結露の仕組みを利用しています。

暖房時に室外機へ霜が付くのも冷媒サイクルが関係する

暖房では、室外機の熱交換器が外気より低温になります。

そのため外気中の水分が熱交換器へ付き、条件によって凍って霜になります。

霜が増えると外気から熱を取り込みにくくなるため、エアコンは一時的に冷媒の流れを切り替えて霜を溶かす除霜運転を行います。

冷暖房の仕組みを見るときのポイント

  • 冷媒は熱を運ぶ媒体であり、燃料ではない
  • 蒸発時に熱を吸収し、凝縮時に熱を放出する
  • 圧縮機は冷媒を高温・高圧にする
  • 膨張機構は冷媒の圧力を下げ、蒸発しやすくする
  • 四方弁で冷媒の流れを切り替え、冷房と暖房を入れ替える
  • 熱交換器とファンで冷媒と空気の間の熱をやり取りする
  • 冷媒回路の点検・修理は専門業者へ依頼する

まとめ

エアコンが冷暖房できるのは、冷媒を蒸発・圧縮・凝縮・膨張させながら循環させ、室内外の熱を移動させているからです。

冷房では室内機で冷媒が蒸発して室内の熱を受け取り、室外機で凝縮して熱を外へ放出します。暖房では四方弁で流れを切り替え、室外機で外気の熱を受け取り、室内機で放出します。

この冷媒サイクルを理解すると、圧縮機・熱交換器・室外機・除霜・除湿がそれぞれなぜ必要なのかもつながって見えてきます。エアコンは、冷気や暖気を直接つくる機械ではなく、冷媒の状態変化を利用して熱を運ぶ機械です。

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