エアコン暖房の効率は、カタログに書かれた一つの数値でいつも同じになるわけではありません。外気温、室内の暖房負荷、圧縮機の回転数、室外機の着霜や除霜などによって、同じ機種でも実際の効率は変化します。
なぜエアコン暖房の効率は、外気温・部分負荷・除霜で変わるのでしょうか。結論からいうと、ヒートポンプは外気から熱を取り込んで室内へ運ぶため、外気温が下がるほど熱を集める条件が厳しくなり、必要な圧縮仕事も増えやすいからです。また、設定温度に近づいたあとの部分負荷運転では圧縮機を低い回転数で動かせる一方、着霜すると熱交換が悪化し、除霜中は暖房を一時的に弱めたり停止したりするため、効率が変わります。
暖房効率は「出した熱」と「使った電力」の関係
エアコン暖房では、消費した電力以上の熱量を室内へ運べることがあります。これは電気をそのまま熱へ変えるのではなく、外気にある熱を冷媒で室内へ移動させるヒートポンプだからです。
暖房効率は、どれだけの暖房能力をどれだけの電力で得られたかという関係で考えます。ところが、この関係は運転条件によって大きく変わります。
外気温が低いほど、外気から熱を取り込みにくくなる
暖房時の室外機では、冷媒を外気より低い温度にして、外気から熱を受け取ります。
外気温が下がると、外気と冷媒の温度差を確保するために、冷媒側をさらに低い温度・圧力へ下げる必要が出てきます。その結果、圧縮機が冷媒を室内側の高い圧力まで押し上げる仕事が大きくなりやすくなります。
つまり、外気温が低いほど、同じ熱量を室内へ運ぶための条件が厳しくなります。
圧縮比が大きくなると、圧縮機の負担も増える
暖房では、室外側の低圧冷媒を圧縮機で高圧にし、室内側で高温の冷媒として熱を放出します。
外気温が下がると、室外側の蒸発圧力が低くなりやすく、室内側との圧力差、つまり圧縮比が大きくなります。
圧縮比が大きくなるほど圧縮機の仕事量も増えやすく、消費電力に対して得られる暖房能力の比率は低下しやすくなります。
寒い日は、建物側の暖房負荷も同時に増える
外気温が下がると、エアコン側の条件が厳しくなるだけではありません。
室内外の温度差が大きくなるため、窓・壁・床・換気などから逃げる熱も増えやすくなります。
つまり寒い日には、「エアコンの効率が下がりやすい」と「建物が必要とする暖房量が増える」が同時に起こります。
暖房能力の表示は、外気温条件で変わる
日本冷凍空調工業会では、空冷式エアコンの暖房能力を、外気温7℃の標準条件と、外気温2℃の低温条件などで評価しています。
外気温2℃条件では着霜や除霜による影響も考慮され、低温時の実力をより現実に近い形で見るための評価が行われます。
このことからも、暖房能力や効率は外気温と切り離して考えられないことが分かります。
部分負荷とは、最大能力を必要としない運転
暖房を始めた直後は、室温と設定温度の差が大きいため、エアコンは大きな能力で運転します。
部屋が暖まり、設定温度へ近づくと、必要な暖房能力は小さくなります。このように最大能力より小さい出力で運転する状態を部分負荷運転と呼びます。
インバータ機は、部分負荷で圧縮機回転数を下げられる
インバータエアコンでは、圧縮機の回転数を変えて冷媒の循環量を調整できます。
設定温度へ近づいたあとに必要な暖房量が小さくなると、圧縮機を低い回転数で動かし、必要な分だけ熱を運ぶ運転へ移れます。
日本冷凍空調工業会の期間消費電力量の説明でも、実際の使用中には室外機の圧縮機が停止したり、能力・消費電力を大きく抑えたりする時間帯があるとされています。
部分負荷では、いつも定格運転より効率が悪いわけではない
エアコンは定格能力の一点だけで動く機械ではありません。
機種によっては、部分負荷領域で圧縮機やファンを低い回転数で安定して動かすことで、高い効率を出せる場合があります。
年間性能を評価するAPFでも、定格点だけでなく中間能力や外気温の変化など複数の条件を考慮して評価します。
ただし、極端に小さな負荷では発停が増えることもある
必要な暖房量が機器の最小能力よりさらに小さくなると、圧縮機を連続運転できず、停止と再起動を繰り返す場合があります。
発停が増えると、運転が安定しているときより効率が下がることがあります。
そのため、能力が大きい機種ほど必ず効率が高いわけではなく、住宅の暖房負荷に合う能力範囲が重要です。
外気温が低いほど着霜しやすいわけではない
室外機の熱交換器に霜が付くには、低温だけでなく外気中の水分も関係します。
暖房中の室外熱交換器が外気の露点より低く、さらに表面温度が0℃以下になると、外気中の水分が霜として付着することがあります。
非常に乾燥した低温時より、0℃前後で湿度が高い条件の方が着霜しやすいこともあります。
霜が付くと、熱交換器へ空気が通りにくくなる
室外熱交換器のフィンに霜が付くと、空気の通り道が狭くなります。
すると、外気から冷媒へ熱を取り込む能力が低下し、同じ暖房を続けるには圧縮機の負担が増えます。
霜をそのままにすると暖房能力・効率が悪化するため、エアコンは必要に応じて除霜運転を行います。
除霜運転では、暖房を一時的に中断して霜を溶かす
一般的なヒートポンプでは、除霜時に冷媒の流れを一時的に切り替え、室外熱交換器へ高温の冷媒を送り、霜を溶かします。
この間は室内へ十分な熱を送れないため、暖房能力が一時的に低下したり、室内ファンが止まったりすることがあります。
日本冷凍空調工業会の暖房能力評価でも、低温条件では着霜による能力低下と除霜中の暖房停止を加味して正味の能力を評価しています。
除霜は「無駄な運転」ではなく、性能維持に必要
除霜中は一時的に暖房できないため、効率が悪くなったように見えます。
しかし霜を放置すると、室外熱交換器の空気流量と熱交換性能がさらに低下します。
除霜は、長時間の暖房性能を保つために必要なメンテナンス運転です。重要なのは、必要なときに必要な時間だけ除霜する制御です。
除霜制御の違いも実使用効率へ影響する
除霜を頻繁に行いすぎると、暖房を中断する時間が増えます。逆に遅すぎると、霜によって熱交換効率が悪化します。
そのため現在の機種では、室外熱交換器の温度、外気温、運転時間などを使って着霜状態を推定し、除霜開始のタイミングを制御します。
除霜方式や制御アルゴリズムの違いは、寒冷時の快適性や消費電力量にも影響します。
室外機の通風状態も、暖房効率に影響する
室外機の吸込口や吹出口が雪、落ち葉、荷物、カバーなどでふさがれると、外気との熱交換がしにくくなります。
すると、外気温が同じでも、実際の運転条件は悪化します。
暖房効率を保つには、室外機の周囲へ十分な空気が流れる状態を保つことが重要です。
断熱性が高い住宅では、部分負荷運転へ移りやすい
断熱性が高い住宅では、室内から逃げる熱が少ないため、設定温度へ達したあとに必要な暖房量を小さくしやすくなります。
その結果、圧縮機を低い回転数で安定して運転できる時間が長くなる場合があります。
つまり、機器単体の効率だけでなく、建物の熱損失も実使用時の暖房効率に関係します。
暖房効率を見るときのポイント
- 外気温が下がると、外気から熱を取り込む条件が厳しくなる
- 寒い日は建物側の暖房負荷も大きくなる
- 設定温度へ近づくと部分負荷運転へ移る
- インバータで圧縮機回転数を下げられると効率よく維持運転しやすい
- 着霜すると室外熱交換器の空気流量・熱交換能力が低下する
- 除霜中は暖房能力が一時的に低下する
- 室外機周囲の通風や住宅の断熱性も実使用効率へ影響する
まとめ
エアコン暖房の効率が外気温・部分負荷・除霜で変わるのは、ヒートポンプが外気から熱を取り込み、圧縮機で冷媒を圧縮しながら室内へ熱を運ぶ仕組みだからです。
外気温が下がると圧縮条件が厳しくなり、同時に建物の暖房負荷も増えます。一方、設定温度へ近づいたあとの部分負荷運転では、インバータで圧縮機回転数を下げ、必要な分だけ熱を運ぶことで効率よく運転できる場合があります。
さらに寒く湿った条件では室外熱交換器へ霜が付き、除霜が必要になります。暖房効率を理解するときは、カタログの一つの数値だけでなく、外気温、負荷、着霜・除霜という実際の運転条件を見ることが大切です。
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参考資料
- 一般社団法人日本冷凍空調工業会「業務用エアコンの能力表示について」
- 一般社団法人日本冷凍空調工業会「期間消費電力量を省エネ性の目安にお選びください」
- 一般社団法人日本冷凍空調工業会「期間エネルギー消費効率の算出に関する解説」
- U.S. Department of Energy「Heat Pump Systems」

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