なぜ台風には暴風域ができるのか?

台風情報では、「暴風域に入る」「暴風域を伴う台風」といった表現がよく使われます。暴風域とは、台風のまわりで非常に強い風が吹いている範囲のことです。では、なぜ台風には中心のまわりに暴風域ができるのでしょうか。

結論からいうと、台風の中心付近では周囲との気圧差が大きく、強い気圧傾度力によって空気が高速で渦を巻くためです。その強い風が一定の範囲まで広がることで、風速25m/s以上の風が吹いている、または地形などの影響がなければ吹く可能性がある領域が「暴風域」として示されます。

目次

暴風域とはどんな範囲なのか

気象庁は、台風のまわりで風速15m/s以上の風が吹いている、または吹く可能性がある範囲を「強風域」と呼びます。その内側で、風速25m/s以上の風が吹いている、または吹く可能性がある範囲が「暴風域」です。

つまり、暴風域は台風そのものの輪郭ではありません。台風の風の分布の中から、一定以上の強い風が及ぶ範囲を区切って示したものです。

このため、暴風域の外でも強い風が吹くことがありますし、強風域の外でも局地的な突風が起こることがあります。暴風域は、あくまで台風に伴う風の広がりを示す重要な目安です。

なぜ台風の中心付近では風が強くなるのか

台風の中心は周囲より気圧が低くなっています。空気には気圧の高いところから低いところへ動こうとする性質があるため、中心へ向かう気圧傾度力が働きます。

北半球では、地球の自転によるコリオリの力の影響で、空気は中心へ一直線に流れ込むのではなく、反時計回りに渦を巻きながら中心へ近づきます。

中心付近では気圧の変化が大きくなりやすいため、風も強くなります。その強い風が一定の半径まで続くと、暴風域が形成されます。

暴風域は中心から同じ距離に広がるとは限らない

台風の風は、中心から完全な同心円状に同じ強さで広がるわけではありません。進行方向や周囲の気圧配置、地形などの影響を受けるため、風の強い範囲は左右非対称になることがあります。

特に、台風の進行方向と渦の風向きが重なる側では、風がより強くなることがあります。そのため、暴風域の半径が進行方向の右側と左側で異なる場合もあります。

気象情報では、暴風域を単純な一つの円ではなく、方角ごとの広がりを考慮して示すことがあります。

同じ最大風速でも暴風域の広さが違うのはなぜか

最大風速は、その台風の中で最も強い風の大きさを示します。一方、暴風域は「25m/s以上の風がどこまで広がっているか」を示します。

そのため、最大風速が同じでも、風の強い範囲が狭く集中している台風と、広い範囲に強風が広がっている台風では、暴風域の広さが異なります。

NOAAでも、熱帯低気圧の風の構造は最大風速だけでなく、34・50・64ノットなど一定の風速に達する半径で表現されます。つまり、台風の「強さ」と「風がどこまで広がるか」は別々に見る必要があります。

中心気圧が低ければ暴風域も必ず広いのか

中心気圧が低い台風ほど、一般には周囲との気圧差が大きくなり、強い風が吹きやすくなります。しかし、中心気圧が低いからといって、暴風域が必ず広いとは限りません。

小さく引き締まった台風では、中心付近に非常に強い風が集中していても、暴風域が比較的狭いことがあります。逆に、最大風速はやや弱くても、広い範囲で25m/s以上の風が吹けば暴風域は大きくなります。

つまり、中心気圧、最大風速、暴風域の広さは関連していますが、同じ指標ではありません。

「大型の台風」と「暴風域が広い台風」は同じなのか

気象庁が台風の「大きさ」を表すときは、風速15m/s以上の強風域の半径を使います。大型は強風域の半径が500km以上800km未満、超大型は800km以上です。

一方、暴風域は25m/s以上の風の範囲です。そのため、「大型の台風」と「暴風域が広い台風」は似ているようで、厳密には同じ意味ではありません。

大型でも暴風域が比較的狭い場合がありますし、台風全体はそれほど大きくなくても中心付近に広い暴風域を持つ場合があります。

暴風域に入ると何が危険なのか

風速25m/s以上の風では、屋外で立っていることが難しくなり、飛来物や倒木、屋根材の損傷などの危険が高まります。瞬間的には平均風速を大きく上回る突風が吹くこともあります。

また、暴風域に入ると、長時間にわたって非常に強い風が続く可能性があります。台風の移動速度が遅い場合や暴風域が広い場合には、危険な時間が長くなることがあります。

そのため、暴風域への接近が予想される場合は、風が強くなってからではなく、早めに安全な場所へ移動することが重要です。

暴風域の広さは時間とともに変わる

台風は発達・衰弱しながら移動するため、暴風域の広さも一定ではありません。海面水温、周囲の風、乾燥した空気の流入、陸地との摩擦などによって台風の構造が変化します。

発達すれば暴風域が広がることもありますが、必ずしも最大風速の増減と同じように変化するとは限りません。台風の構造が外側へ広がることで、最大風速があまり変わらなくても暴風域が広がる場合があります。

反対に、中心付近の風は強くても、外側の風が弱まって暴風域が縮小することもあります。

暴風域と予報円はまったく別のもの

台風情報では、「暴風域」と「予報円」が同時に表示されることがありますが、意味はまったく異なります。

暴風域は、現在または予報時刻に25m/s以上の風が吹く範囲です。一方、予報円は、予報時刻に台風の中心が入る可能性が高い範囲を示します。

予報円が大きいから暴風域が大きいわけではなく、暴風域が広いから進路予報の不確実性が大きいわけでもありません。この二つを混同しないことが重要です。

関連する台風の仕組み

台風そのものがどのように発生するのかについては、関連記事のなぜ台風は発生するのか?で詳しく解説しています。

台風の進路が太平洋高気圧や偏西風によって変わる理由については、なぜ台風の進路は太平洋高気圧や偏西風で変わるのか?、高潮との関係については、なぜ台風と高潮は関係しているのか?も参考になります。

まとめ

台風に暴風域ができるのは、中心付近の大きな気圧差によって強い風が生まれ、その風が一定の範囲まで広がるためです。

気象庁では、風速25m/s以上の風が吹いている、または吹く可能性がある範囲を暴風域と呼びます。暴風域の広さは最大風速や中心気圧だけでは決まらず、台風全体の風の分布によって変わります。

そのため、台風の危険性を見るときは、最大風速や中心気圧だけでなく、暴風域や強風域がどこまで広がっているかも合わせて確認することが大切です。

参考資料

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