なぜ積雪は熱を受け取ると内部で融解と再凍結を繰り返すのか?

積もった雪が融けるというと、表面から順番に水へ変わり、そのまま流れ去るように思えます。しかし実際の積雪は、多数の氷粒と空気のすき間からなる層状の構造です。表面で生まれた融雪水は内部へ入り込み、まだ冷たい層に出会えば再び凍ることもあります。

結論からいうと、積雪は日射や暖かい空気などから熱を受け取ると氷が融けて液体水が生じ、その水が空隙を通って内部へ移動し、0℃より低い雪の層に入ると熱を放出して再凍結するからです。融雪は単なる「雪の消失」ではなく、熱と水が積雪内部を移動しながら雪質を変えていく過程です。

目次

積雪は氷だけの固まりではない

積雪は、小さな氷の結晶や粒が重なり、その間に多くの空隙をもつ多孔質な構造です。降った時期や気温、風などが違えば雪粒の大きさや密度も異なり、積雪には性質の違う層ができます。

そのため、融けた水は積雪表面だけにとどまらず、粒と粒のすき間や水が通りやすい経路を通って内部へ移動できます。

融雪の出発点は雪が熱エネルギーを受け取ること

氷を液体の水へ変えるには熱エネルギーが必要です。積雪は太陽からの日射、暖かい空気との熱交換、雨、地面から伝わる熱など、複数の経路からエネルギーを受け取ります。

雪がまだ0℃より低ければ、まずその雪を融点近くまで暖めるために熱が使われます。その後も正味の熱の流入が続けば、氷を水へ変える融解にエネルギーが使われます。

0℃になっただけで雪が全部融けるわけではない

雪を0℃まで暖めることと、0℃の氷を液体水へ変えることは別の段階です。氷が融けるときには融解潜熱が必要なので、積雪が0℃付近に達しても、十分な熱が供給されなければ大量の氷がすぐ水になるわけではありません。

したがって融雪量を考えるときは、気温だけでなく、雪面が実際にどれだけのエネルギーを受け取ったかという熱収支が重要になります。

表面でできた融雪水は雪のすき間へ入る

雪面で氷が融けると、液体水は重力の影響を受けて積雪内部へ浸透します。積雪は均一ではないため、水は全体へ同じ速さで染み込むとは限りません。

粒の大きさ、密度、層の境界、氷板などによって通りやすさが変わり、水が特定の経路を選んで下へ進むこともあります。

冷たい雪に入った融雪水は再び凍ることがある

表面が融け始めても、積雪内部のすべてが0℃になっているとは限りません。深い場所や日陰側などには0℃未満の雪が残っていることがあります。

そこへ0℃近くの融雪水が入ると、水は周囲の冷たい雪へ熱を渡し、自身は氷へ戻ることがあります。これが再凍結です。

再凍結すると潜熱が積雪内部へ放出される

水が氷へ変わるときには、融解のときに必要だったのと対応する潜熱が周囲へ放出されます。そのため再凍結は、単に水が固まるだけではなく、積雪内部を暖める作用ももちます。

融雪水が冷たい層で凍るたびに、その層は0℃へ近づきます。こうして熱と水の移動が結びつき、積雪内部の温度状態が変化していきます。

融けた水がすべてすぐ流出するわけではない

融雪水の一部は再凍結し、一部は雪粒の間に保持され、残りがさらに下へ移動します。NOAAのSNOW-17の説明でも、積雪には液体水を保持する能力と、冷たい積雪がもつ熱不足を考慮して融雪・再凍結を扱っています。

つまり、雪面で融解が始まった量と、積雪の底から実際に流れ出す水量は必ずしも同じではありません。

積雪全体が0℃に近づくと水は通り抜けやすくなる

融雪と再凍結が進むにつれて、冷たかった積雪は徐々に暖まります。積雪全体が0℃近くなり、再凍結に使える「冷たさ」が小さくなると、新たに生じた融雪水は内部で凍りにくくなります。

すると液体水が積雪の下まで到達しやすくなり、地面や斜面、河川へ流れ出す量が増えていきます。

再凍結は氷の層や硬い部分をつくる

融雪水が再凍結すると、雪粒同士を氷で結びつけたり、条件によっては薄い氷層をつくったりします。NSIDCも、融解と再凍結によって積雪に硬く滑らかな層ができることを説明しています。

そのため一度融けた雪が夜間の冷え込みで凍ると、朝には表面や内部が硬くなることがあります。融解と再凍結は雪の密度や粒の結びつき、通水性を変える重要な過程です。

昼に融けて夜に凍る周期も起こる

春先などは、昼間に日射と高い気温で雪面が融け、夜間に放射冷却や気温低下で再び凍ることがあります。

この融解・再凍結の繰り返しによって、ふわふわした雪は次第に粒が粗くなり、硬い層やざらざらした雪へ変化していきます。

日射は融雪を動かす重要なエネルギー源

晴れた日には太陽からの短波放射が雪面へ届きます。新雪は多くの光を反射しますが、雪粒が粗くなったり表面が汚れたりすると反射率が下がり、より多くのエネルギーを吸収することがあります。

このため同じ気温でも、日当たりや雪面状態が違えば融け方は変わります。

暖かい空気や風も雪へ熱を運ぶ

雪面より暖かい空気が接すると、空気から雪へ顕熱が移動します。風が強いと空気の交換が活発になり、条件によって熱輸送が大きくなります。

また湿った空気から水蒸気が雪面へ凝結すると、その相変化に伴う熱も雪へ与えられます。融雪は「気温」だけでなく、放射・風・湿度などを含むエネルギー交換の結果です。

雨が雪に入ると水と熱の移動が同時に起こる

積雪の上に雨が降ると、液体水そのものが雪の中へ入ります。雨水は積雪内部を浸透し、条件によっては冷たい層で凍ったり、積雪を暖めたり、そのまま下へ流れたりします。

NOAAの研究レビューでも、rain-on-snowでは雪面のエネルギー収支だけでなく、雪の内部を通る液体水の流れが流出の仕方を左右するとされています。

積雪の層構造によって水の通り道は変わる

なぜ積雪は降った雪が重なって層構造をつくるのか?で扱ったように、積雪は降雪時期や気象条件の異なる層が重なっています。

密度や粒径が違う境界では水が一時的にたまりやすくなったり、逆に特定の経路へ集中して流れたりします。そのため、融雪水の移動は単純な「上から下への均一な流れ」ではありません。

粉雪が融け始めると空隙に液体水が加わる

なぜ粉雪は低密度で空気を多く含む構造になるのか?で説明したように、新しい粉雪は氷粒の間に大きな空隙をもっています。

融雪が始まると、その空隙の一部へ液体水が入り、雪粒の形や結合状態も変わります。融解は雪の体積を減らすだけでなく、内部構造そのものを変えるのです。

湿雪では液体水が雪粒の間に存在する

なぜ湿雪では氷の粒のすき間に液体の水が入り込むのか?で扱った湿雪は、氷粒だけでなく液体水も含む状態です。

本記事の焦点は、その液体水が積雪の熱収支によって生まれ、内部を移動し、冷たい層では再凍結するという一連の過程にあります。

「なぜ春になると積もった雪は融けて雪どけ水になるのか?」との違いは「春に融ける理由」ではなく「積雪内部で何が起こるか」

なぜ春になると積もった雪は融けて雪どけ水になるのか?では、春に日射や暖気、雨、地面からの熱が増え、雪どけ水が生じる理由と河川流出までを広く説明しています。

この記事では検索意図を分け、雪が受け取った熱が氷の融解に使われ、できた水が積雪内部へ移動し、冷たい層で再凍結して潜熱を放出するという内部の熱・水移動の仕組みに焦点を当てます。

融雪は雪を減らすだけでなく雪質を変える

融解と再凍結を経験した雪は、降った直後と同じ構造ではありません。雪粒が丸みを帯びたり大きくなったり、氷による結合が強まったり、氷層が形成されたりします。

その結果、密度、硬さ、水の通りやすさなどが変化します。積雪は融け始めてから消えるまで、内部構造を変え続ける物質なのです。

まとめ

積雪が熱を受け取ると、まず冷たい雪が0℃へ近づき、さらにエネルギーが供給されると氷が融けて液体水が生じます。その水は雪粒のすき間を通って内部へ移動します。

内部に0℃未満の層が残っていれば、融雪水はそこで再凍結し、潜熱を放出して周囲の雪を暖めます。積雪全体が0℃近くなるにつれて再凍結は起こりにくくなり、水が底まで抜けて流出しやすくなります。

つまり、融雪とは表面の雪が単純に水へ変わるだけでなく、熱の流入、氷の融解、液体水の浸透、再凍結、潜熱の放出が連動する積雪内部の変化なのです。

関連する「なぜ?」

参考資料

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次