同じ場所で雪が降っていても、初冬と真冬、寒波の日と低気圧の日では、地上付近の湿度が同じとは限りません。雪が降り始めた直後と、数時間降り続いた後でも湿度が変わることがあります。
結論からいうと、雪が降るときの湿度が季節や天候によって変わるのは、気温、水蒸気量、風向、海からの水蒸気供給、低気圧や前線、降雪そのものによる冷却・加湿などが時間とともに変化するためです。特に相対湿度は水蒸気量だけでなく気温にも左右されるので、同じ場所でも気象状況の変化に応じて大きく動きます。
湿度は水蒸気量だけで決まらない
気象庁で通常「湿度」と呼ぶのは相対湿度です。相対湿度は、実際に含まれている水蒸気量が、その気温で空気が含める最大量に対してどれくらいかを百分率で表したものです。
そのため、水蒸気量がほとんど変わらなくても、気温が下がれば相対湿度は上がり、気温が上がれば下がります。
季節が変わると空気が含める水蒸気量の上限も変わる
寒い空気は暖かい空気より飽和水蒸気量が小さくなります。冬は夏より空気中の絶対的な水蒸気量が少ないことが多くても、相対湿度は高くなることがあります。
つまり、冬の湿度80%と暖かい季節の湿度80%では、空気中に含まれている実際の水蒸気量が同じとは限りません。
初冬と真冬では雪をもたらす空気の性質が違う
初冬は地面や海面が比較的暖かく、雪雲が発生していても地上付近には比較的暖かい空気が残ることがあります。
真冬に強い寒気が流れ込むと、気温は大きく下がります。同じ程度の水蒸気量でも、気温低下によって相対湿度が高くなる場合があります。
日本海側では海からの水蒸気供給が重要になる
冬の季節風が日本海を渡ると、比較的暖かい海面から熱と水蒸気を受け取ります。その空気が日本列島へ流れ込むと、雪雲が発達しやすくなります。
寒気の強さや風速、海面との温度差が変われば、水蒸気の供給量も変わるため、雪が降るときの湿度環境も変化します。
風向が変わると入ってくる空気の水蒸気量も変わる
海から吹く風と、内陸から吹く風では、運んでくる水蒸気量が違います。低気圧や高気圧の移動で風向が変わると、同じ場所でも湿った空気が入りやすい時間帯と乾いた空気が入りやすい時間帯が生まれます。
このため、雪が続いていても湿度は一定ではありません。
低気圧や前線の接近でも湿度は上がりやすい
低気圧や前線の周辺では、暖かく湿った空気と冷たい空気がぶつかり、空気が上昇しやすくなります。上昇した空気は膨張して冷え、飽和に近づいて雲をつくります。
降水域が近づくと地上付近でも湿度が上がることが多く、降り始め前より雪が本格化した後のほうが高湿度になる場合があります。
降雪そのものが空気を湿らせることがある
雪片が乾燥した空気の中を落ちると、一部が昇華して水蒸気になります。
その結果、空気中の水蒸気量が増えます。また昇華では周囲から熱が奪われるため、空気が冷え、相対湿度もさらに上がりやすくなります。
乾燥した空気では雪が降り始めると気温も下がりやすい
乾いた空気では、雪片の昇華や水滴の蒸発が起こりやすくなります。これらの過程は周囲から熱を奪います。
そのため、降水開始前は比較的乾燥していても、雪が降り始めると気温低下と加湿が同時に進み、相対湿度が急に上がることがあります。
気象庁も雨・みぞれ・雪の判別に気温と湿度を使っている
気象庁の地上気象観測では、降水を検出した際に気温と湿度の観測値を用いて雨・みぞれ・雪を判別しています。
これは、同じ地上気温でも湿度によって雪片の融け方や蒸発冷却の効き方が変わるためです。湿度は単なる付随情報ではなく、降水形態を考える重要な条件です。
湿度が低いと比較的高い気温でも雪が残ることがある
気象庁の資料では、雨と雪の境界は地上気温だけでなく湿度にも依存します。湿度が低いと雪片の昇華による冷却が起こりやすく、比較的高い気温でも雪として地上へ届くことがあります。
そのため「気温が何℃なら雪」という一つの数字だけでは、降雪時の大気状態を説明できません。
雪雲の中では高い湿度が結晶成長を支える
雪結晶が成長する雲の中では、氷晶へ水蒸気が供給される必要があります。NOAA/NWSも、雪の成長域では十分な飽和状態が必要だと説明しています。
ただし、地上で観測した湿度と雲の中の湿度は同じではありません。地上湿度だけから雪結晶の成長状態を直接判断することはできません。
寒波の強さが変われば相対湿度も変わる
強い寒気が入ると気温が大きく下がる一方、乾いた大陸由来の空気が流れ込むこともあります。
このとき、水蒸気量は少なくても気温が非常に低いため相対湿度は高くなる場合があります。逆に寒気が弱まり気温が上がると、同じ水蒸気量でも相対湿度は下がります。
春先は暖気の流入で湿度の意味が変わりやすい
春先の降雪では、南から比較的暖かく湿った空気が入り込むことがあります。
気温が上がれば飽和水蒸気量も増えるため、実際の水蒸気量が多くても相対湿度の値だけでは単純に比較できません。季節をまたいで湿度を比べるときは、気温や露点温度も合わせて見る必要があります。
昼と夜でも相対湿度は変化する
日中に気温が上がると、同じ水蒸気量でも相対湿度は下がりやすくなります。夜間に気温が下がると、相対湿度は上がりやすくなります。
そのため雪が断続的に続く日でも、昼と夜で湿度の値が変わることがあります。
雲が広がると夜間の冷え込みは弱まりやすい
曇っている夜は、晴天時より放射冷却が弱まり、地上付近の気温低下が抑えられることがあります。
すると、水蒸気量が同じでも相対湿度の上がり方が小さくなる場合があります。湿度の時間変化は、雲量の変化とも関係します。
雪が止んで晴れると湿度が下がることがある
降雪域が通過して雲が切れ、乾いた空気が流れ込むと、湿度は下がりやすくなります。
さらに日射で気温が上がれば相対湿度は低下します。雪が積もっていても、空気は必ずしも高湿度とは限りません。
同じ相対湿度でも露点温度を見ると違いがわかる
露点温度は、空気を冷やしたときに相対湿度が100%になる温度です。水蒸気量そのものを考える手がかりになります。
たとえば相対湿度80%でも、気温0℃の場合と5℃の場合では露点温度や実際の水蒸気量が違います。季節や天候による変化を見るときは、相対湿度だけでなく露点温度も有効です。
W00713との違いは「湿度という値の仕組み」ではなく「なぜ時間とともに変わるか」
なぜ雪を考えるときの湿度は気温とセットで見る必要があるのか?では、相対湿度が気温依存の指標であり、水蒸気量そのものとは違うという基本的な仕組みを説明しました。
本記事ではその前提の上で、季節、寒気、風向、低気圧、降雪の進行などによって、同じ場所の気温と水蒸気量が時間とともに変化するため、降雪時の湿度も変わる理由を扱います。
W00723との違いは「場所差」ではなく「同じ場所の時間変化」
なぜ雪が降るときの湿度は海や地形によって場所ごとに違うのか?では、海岸・内陸・山地・盆地などで、同じ時刻でも湿度が異なる理由を説明しました。
W00733では、同じ地点でも初冬・真冬・春先、寒波・低気圧、降り始め・降雪中・降雪後で湿度がどう変わるかという時間方向の変化に焦点を置きます。
「雪が降っているから湿度100%」ではない
雪が降っていても、地上付近の空気が完全に飽和しているとは限りません。雪雲の下に乾いた空気があれば、雪片が昇華しながら落ちることがあります。
そのため地上の相対湿度が100%未満でも雪は降ります。降り続くうちに湿度が上がることもあります。
「冬は乾燥するから雪の日も湿度が低い」とも限らない
冬は絶対的な水蒸気量が少ないことが多い一方、気温も低いため相対湿度は高くなることがあります。
さらに雪雲や降雪が続けば、空気は飽和に近づきます。冬の乾燥という印象だけで雪の日の湿度を判断することはできません。
まとめ
雪が降るときの湿度が季節や天候によって変わるのは、相対湿度が気温と水蒸気量の両方で決まり、その二つが気象状況の変化に応じて動くためです。
寒気の強さ、海からの水蒸気供給、風向、低気圧や前線、昼夜の気温変化、降雪による昇華・蒸発冷却などが重なり、同じ場所でも湿度は時間とともに変化します。
つまり、雪の日の湿度は季節ごとに固定された値ではなく、そのときの気温と水蒸気の出入りがつくる大気環境を反映して変わるのです。

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