なぜ積雪の深さや雪質は季節や天候によって変わるのか?

冬の初めにはふわふわした新雪が薄く積もっていた場所でも、真冬には積雪が深くなり、春先には雪が締まり、水を含みながら急速に減っていきます。同じ場所でも、積雪は冬の間ずっと同じ状態ではありません。

結論からいうと、積雪の深さや雪質が季節や天候によって変わるのは、新たに降る雪の量だけでなく、時間の経過による圧密、雪粒の変態、風による再配分、気温や日射による融雪、雨や融雪水の浸透、再凍結などが同時に積雪へ作用するためです。積雪は、降雪のたびに増えるだけのものではなく、冬の間ずっと内部構造と水分量を変え続ける物質です。

目次

積雪は「降った雪の合計」ではない

雪が降れば積雪は増えますが、その後に積もった雪は自分の重さで沈み込み、風で移動し、暖かくなれば融けます。

気象庁の解析積雪深でも、積雪を計算するときには新たに積もる雪の量だけでなく、とける雪の量や時間経過による沈み込みを考慮しています。つまり積雪深は、降雪量だけで決まる値ではありません。

冬の初めは積雪が増えても消えやすい

初冬は地面や大気がまだ十分に冷えていないことがあり、雪が降っても地面付近で融けたり、次の暖気でいったん消えたりします。

そのため、降雪が始まったからといってすぐに連続した積雪期へ入るとは限りません。気温が高めの年や低地では、降雪と融雪を何度か繰り返してから本格的な積雪になることがあります。

真冬は新たな降雪で積雪が増えやすい

真冬に気温が低く、雪として降る日が続くと、既存の積雪の上へ新雪が重なります。

一方で、積もった雪は時間とともに沈み込むため、降った雪の厚さがそのまま積雪深の増加量になるわけではありません。新雪が20cm降っても、時間がたてば沈降して厚さが小さくなることがあります。

新雪は時間がたつと密度が高くなる

防災科学技術研究所は、積もったばかりの雪が時間とともに縮み、重く硬くなっていく変化を圧密として説明しています。

新雪の結晶の間には多くの空気がありますが、その上へさらに雪が積もると下の雪には荷重がかかります。雪粒同士の接触も増え、積雪は徐々に締まります。

積雪深が減っても雪の重さはあまり減っていないことがある

圧密が進むと、雪の体積は小さくなっても、雪そのものの質量は急には減りません。

そのため「積雪深が10cm減ったから雪の量も同じ割合で減った」とは限りません。単に雪が沈み込んで密度が高くなっただけの場合もあります。

雪粒は積雪の中で形を変え続ける

降った直後の雪結晶は六角板や樹枝状などの形を残していますが、積雪の中では時間とともに丸みを帯び、雪粒同士の結びつきも変わります。

防災科研は、このような雪粒の変化を変態として説明しています。積雪は時間とともに、新雪、こしまり雪、しまり雪、ざらめ雪などへ性質を変えていきます。

寒い時期でも積雪内部は一様ではない

雪面は夜間の放射冷却で強く冷えやすい一方、地面に近い部分は地中からの熱の影響を受けます。

そのため積雪の上下には温度差ができることがあります。温度差が大きい状態が続くと、しもざらめ雪のような特徴的な雪質ができることもあります。

積雪は降雪のたびに新しい層をつくる

なぜ積雪は降った雪が重なって層構造をつくるのか?で説明したように、積雪には降った時期や気象条件の異なる雪が層として残ります。

強い風の日、静かな降雪の日、暖かい雪の日、寒く乾いた雪の日では、できる層の密度や硬さが違います。

風は積雪を増やすだけでなく減らす

強風が吹くと、雪面の雪が削られ、別の場所へ運ばれます。

気象庁も解析積雪深の留意点として、風が強い場合は雪が流されるため精度が下がると説明しています。実際の積雪は、降雪だけでなく吹き払いと吹きだまりによって大きく変わります。

同じ降雪でも場所によって積雪の増え方は違う

風上側では雪が削られ、風下側やくぼ地では吹きだまりができます。

そのため、同じ地域で同じ量の雪が降っても、尾根と沢、建物の風上と風下などで積雪深が大きく違うことがあります。

暖気が入ると積雪は急速に変わる

気温が上がると積雪は0℃へ近づき、さらに熱を受け取ると融解が始まります。

融雪は積雪深を減らすだけでなく、雪粒の形や密度、水分量も変えます。春に近づくほど、積雪は乾いた状態から湿った状態へ移行しやすくなります。

日射は春の積雪変化を強く進める

雪面は太陽光を多く反射しますが、日射の一部は吸収されて雪を暖めます。

春に日射が強くなり、日中の時間も長くなると、雪面が受け取るエネルギーが増えます。これが融雪を進め、積雪深の減少を速めます。

古い雪ほど日射を吸収しやすくなることがある

新雪は白く反射率が高い一方、時間がたって雪粒が粗くなったり、ほこりや土で汚れたりすると反射率が下がることがあります。

すると同じ日射でもより多くのエネルギーを吸収し、融雪が進みやすくなります。

雨は積雪の内部を急速に変える

雪の上に雨が降ると、液体の水が積雪内部へ入ります。

雨水や融雪水は雪粒の間を移動し、雪を湿らせ、密度や硬さを変えます。暖かい雨が続けば積雪深も急に減ることがあります。

融雪水は積雪の中を下へ移動する

なぜ積雪は熱を受け取ると内部で融解と再凍結を繰り返すのか?で扱ったように、雪面で生じた融雪水は雪粒のすき間を通って内部へ移動します。

まだ冷たい層に入ると、その水が再び凍ることがあります。この繰り返しによって積雪内部には硬い層や氷板ができることがあります。

春は積雪全体が0℃に近づいていく

冬の早い時期には、積雪内部に0℃よりかなり低い部分があります。

しかし日射や暖気、雨によって熱が入り続けると、積雪全体が徐々に0℃へ近づきます。全体が0℃付近になると、新たな融雪水は再凍結しにくくなり、下へ流れ出しやすくなります。

積雪重量と積雪深は別の変化をする

防災科研の積雪重量観測では、積雪重量の急増は主に新たな降雪、急減は積雪からの水の流出を示すと説明されています。

一方、積雪深は圧密だけでも減ります。そのため、積雪の変化を理解するには「深さ」「重さ」「密度」「水分量」を分けて考える必要があります。

真冬と春では同じ50cmの積雪でも中身が違う

真冬の50cmは、低密度の新雪を多く含んでいるかもしれません。

春先の50cmは、長期間の圧密や融解・再凍結を経験し、密度が高く、水を多く含むざらめ雪になっていることがあります。見かけの積雪深が同じでも、内部状態は同じではありません。

積雪の季節変化は一方向だけではない

「冬の初めから春へ向かって、積雪は単純に増えてから減る」と考えると実際とはずれます。

暖冬でも一時的な大雪で急増することがあり、真冬でも暖気や雨で減ることがあります。その後、寒気が戻って再び増えることもあります。

気象庁の積雪モデルも複数の気象要素を使う

気象庁の積雪変質モデルでは、降水量、気温、風速、相対湿度、短波・長波放射などを使って積雪状態を計算しています。

これは積雪の変化が単一の気象要素では説明できないためです。降雪、熱、風、水分の出入りをまとめて考える必要があります。

積雪の季節変化は雪質の変化でもある

防災科研の長岡・新庄の積雪断面観測では、新雪、こしまり雪、しまり雪、ざらめ雪、しもざらめ雪、氷板などが時期ごとに記録されています。

これは積雪の季節変化が、単に積雪深の増減だけではなく、内部の雪質構成の変化としても現れることを示しています。

同じ年でも場所によって季節変化の速さは違う

標高、日当たり、風、植生、積雪量が違えば、冬から春への変化速度も異なります。

低地や日当たりのよい斜面では融雪が早く始まり、高地や日陰では乾いた積雪が長く残ることがあります。したがって「春になったら一斉にざらめ雪になる」わけではありません。

年によって積雪の季節変化も違う

寒冬では積雪が長く保たれ、融雪開始が遅くなることがあります。暖冬では降水が雨になりやすく、積雪期間が短くなる場合があります。

NOAAの研究でも、暖かい冬では最大積雪深が小さく、積雪のない日が増える傾向が報告されています。積雪の年間サイクルそのものが気温条件に左右されるのです。

W00714との違いは「層ができる仕組み」ではなく「冬の間に全体がどう変わるか」

W00714では、降雪時期の違いと、その後の圧密・変態・融解・再凍結によって積雪が層構造をつくる仕組みを説明しました。

本記事では、初冬から真冬、融雪期へ進む中で、積雪深・密度・雪質・含水状態がどのように変化し、その変化速度が天候によってなぜ違うのかを中心に扱います。

W00719との違いは「内部の融解・再凍結の仕組み」だけではない

W00719は、融雪水が積雪内部へ浸透し、冷たい層で再凍結する熱と水の移動を中心に説明しました。

W00734ではその過程も含めつつ、降雪、圧密、風、日射、雨、融雪をまとめて、積雪全体の季節変化という広い視点から整理します。

「積雪深が減る=全部融けた」とは限らない

積雪深が減る原因には、融雪だけでなく圧密や風による吹き払いもあります。

逆に、積雪深があまり変わっていなくても、内部では密度上昇や雪質変化、融雪水の移動が進んでいることがあります。

まとめ

積雪の深さや雪質が季節や天候によって変わるのは、積雪が常に降雪・圧密・変態・風・熱・水の影響を受けているためです。

初冬には降雪と融雪が繰り返され、真冬には新雪が重なりながら圧密が進みます。春が近づくと日射や暖気、雨によって融雪水が増え、ざらめ雪や氷板が形成されながら積雪深が減っていきます。

つまり、積雪の季節変化とは、雪が単に増減することではなく、降った後の雪が圧密・変態し、熱と水を受け取りながら内部構造まで変え続ける過程なのです。

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参考資料

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